きみの明日になれたなら   作:ふじさきらんこ

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前回から続き、ラヴェンツァからの説明回です。夢主の自我強めです。かなりいい根性です。


01 謎解きはキャラ変とともに

―9th April 20XX―

 

なんて現実逃避をしていても何も始まらないことはわかってるんだけどね。

あまりにも突拍子の無いことを聞かされると、無意識に現実逃避しちゃうんだよね。

はあ…夢じゃ無いんだろうなあ…。

 

「君達の言いたい事はわかるけど、それをなんで僕達が解決しなくちゃいけないのかな?」

 

「貴方がたにしか頼めないのです」

 

私のことをスルーして何やら話をしている明智吾郎くんとラヴェンツァ。

ふむ。どうやら謎の美少女ラヴェンツァと明智吾郎くんは顔見知りらしい。

問い掛ける言葉の端々にラヴェンツァの側に他に仲間が居るようなことを匂わせてるし。

 

この調子だと後からラヴェンツァについて何か聞いてもはぐらかされそうだな。

あの時の会話の流れで理解しなかったの?とか平気で言うやつだからねコイツは。

 

「"時間の流れに介入する能力"ってことについて教えてもらうことは出来る?」

 

本来なら私より明智吾郎くんの方が質問をするべきなんだろうけど、こいつに会話のイニシアチブを取らせるともれなく嫌味付きになっちゃうからな。

決して会話の流れに乗り損ねてハブられそうになったから慌てて口を挟んだとかじゃないからね。

 

ラヴェンツァが私を見上げてくる。

この子、随分大人びた話し方をしているけどかなーり幼い。中学生……いや、小学生くらい?外見と喋り方のギャップがすごい。

探偵ってのはこんな美少女ともお友達になれちゃうのか?

 

「はい。まず、"時間の流れに介入する"という事についてご説明します。

件のペルソナの能力は、対象者が定められた選択から外れてしまった場合、特定の日にちから同じ時間を繰り返してしまうというものです」

 

「つまり、ペルソナっていうのがプレイヤーで、世界がゲームそのもの、私がゲームキャラだと仮定して、キャラクターが選択肢を間違えた瞬間、プレイヤーがセーブデータをロードしているというような解釈?」

 

「その認識で間違いありません。我らは、こちらの暦で言う12月の15日頃の夕方から、今日のこの地点へと戻って来ました。

既に100周を超える周回をしておりますが、前回の12月15日が最長記録になります。

強制的に時間を戻されても、大衆にそれらの記憶はありません。ですが、少しずつ世界に歪みが出来てしまっています。

 

その歪みの影響で、ループする世界の理から外れる存在が生まれた――それがお二人なのです」

 

「ループ、ね…。それはわかったけどさ、僕達が何かをしなくちゃいけない理由にはならないんじゃないの?」

 

一生懸命喋るラヴェンツァにやたら厳しい明智吾郎くん。

すっげーな、私こんな小さい子にあんな冷たい言葉かけらんないわ。人の心も捨てないとやってられないんだね、探偵ってのは。

ああでもこいつの場合、素でコレってこともあり得るな…。

 

「言っとくけど、君のそれも聞こえてるからね」

 

「おっとウッカリ」

 

「我らがこの日へ戻される条件、それは怪盗団及び明智吾郎の生死が関係している事がわかりました。

誰か1人でも死亡の可能性のある行動をしてしまうと、強制的にここへ戻されます」

 

ということは、ラヴェンツァの言う"定められた選択"というのは、怪盗団と明智吾郎くんが必ず生存する選択をしなきゃいけないってことか。

何回も周回してきたって言ってたけど、それじゃあこれまでの周回では―――いや、言葉にするまでも無い話だ。

 

「前々回はトリックスター…そして前回の12月から今日この日へ戻されたのは明智吾郎、貴方の死亡が確認されたからです」

 

ラヴェンツァの一言は、予想だって出来たしわかってもいたけど、なんだか私の胸にぐさりと突き刺さって、いつまでも消えない後味の悪さを醸す。

 

そりゃあ、時間がループする原因になってるなんてことは抜きにしてもさ、毎日何人もの人が世界で命を落としているのだ。

ある日突然、その"何人もの人"の中のひとりが、自分の知り合いだとしても、何もおかしくない。

そう、おかしくないんだけど、びっくりするじゃんか。

 

私は呑気にクリスマスパーティなんて計画してたのに、なんで生死の境をさまよった挙句運命に負けちゃってるんだよ明智吾郎くん。

思わず明智吾郎くんを見ると、眉間に皺を寄せて押し黙っている。

 

「このままループを続けていれば、いずれ世界は消滅してしまうでしょう。

ですからその前に、貴方がたに世界を救っていただきたいのです」

 

その言葉を最後に、ラヴェンツァの姿が徐々に霞み始めた。

 

「なんだこれ!ホログラム?」

 

「……これ以上の干渉は難しいようです。貴方がたにこれを。出来れば見ないでください」

 

そう言ってラヴェンツァが差し出すのは、彼女が持っているそれより一回りも二回りも小さな本だった。

こういう時って、"困った時には見てください"っていう類のアイテムなのでは!?

 

「ていうかそれって速攻見ちゃうフラグじゃない?」

 

「八重、ちょっと黙ってろ。…出来れば見ないでほしいと言うのに僕らにくれるって事は、"時間の流れに介入する能力"に対抗するのに必要だからかい?」

 

「具体的には、怪盗団のメンバーの詳しい行動が記されています。しかしそれは同時に、未来を知ってしまう事になってしまう」

 

まあつまり、決められたレールを無難に歩くのではなく、正しいと思う道を、あくまで自分の意志で選択することが大事ってことね。

世界を救うなんて一口に言っても大変なことなんだなあ。

 

「他人事みたいな顔してるけど、八重もやるんだからね」

 

「そろそろ、私の力も限界のようです。

あとはもう、貴方がたにお任せするほかありません。どうか、どうかお願いします」

 

そう言うとラヴェンツァの姿は完全に消えてしまった。

後に残されたのは、明智吾郎くんと、私と、ラヴェンツァから預かった本だけ。

 

遠くの方でガヤガヤと声や足音やいろんな物の音が聞こえてくる。

そうだ、いつもの放課後ってこんな感じ。

そう思った瞬間に肩の力が抜けて、深く息を吸う。そこで初めて肩に力が入っていたことに気が付いた。

 

明智吾郎くんは何やら深く考え込んでいる。

手に持っている本を見ると、ここが4月9日なのも、12月15日からループしてきちゃったんだなってことも嘘でも妄想でも夢でも無いことがわかってしまう。

本当にループしてるんだ。

 

来週の記憶があるなんてものすっごく変。一言だけでふんだんに矛盾しちゃってるもん。わけわかんないわ。

 

それと、怪盗団。

明智吾郎くんは確かにテレビで怪盗団を煽りまくって世間から超絶バッシングをくらってたけど、何?こいつら面識あんの?

 

「あるよ」

 

モノローグに返事しないでほしいんだけど。

 

「あら、友達居たんだねー。私、高校生(キャラ変)してからの明智吾郎くんを知らないからさ」

 

「高校デビューみたいに言うのやめてくれない?」

 

正確には再キャラ変かも。

昔の明智吾郎くんは今の外面に近い感じだったから。

捻くれ者にキャラ変してから、今の外面と素の切り替えモード搭載版に再キャラ変した感じ?

いやでもこの解釈だとバージョンアップだよな…。

 

「話逸れてるけど大丈夫?」

 

そうでした。

ていうか私、唯一の友達だと思ってたのにちゃっかり怪盗団のメンバーと友達になってたってわけ?

表であんなにディスってたのに?ひょっとして、そういうのが好きなお友達とか…?

 

…歪んだ友情、いや、人の数だけ友情の形があるんだよね。偏見、良くない。

明智吾郎くん、きみがどういう嗜好の人と友達になったって私はずっと友達だからね…。

 

「ていうかさ、八重の僕の呼び方は何なの?喧嘩売ってる?」

 

「え、だってキャラ変してからあんまり喋ってなかったから普通に呼んでいいのかわかんなくて」

 

「いいよ別に。いちいちフルネームで呼ばれる方がムカつく」

 

「そう?じゃあゴロちゃん、早速怪盗団のメンバーっていうのを」

 

「ちょっと待ってちょっと待ってゴメン僕が悪かったからちょっと待って」

 

「なんだよお前、普通に呼んでいいって言ったじゃん」

 

「だからってガキの頃のあだ名を持ってくんじゃねえよ懐かしいな!」

 

「キレるのか懐かしむのかどっちかにしてくれる?」

 

「ハァ…その呼び方はやめろ。無性に腹が立つ」

 

「はあ?ゴロちゃーんって呼ばれると僕たんイライラしちゃうんでちゅかー?」

 

「ぶっ殺す」

 

「ごめんて。んじゃあ、明智くん。これでどうよ」

 

「あ゛?」

 

「ガラ悪っ!何?呼び方がそんなに気に入らないの?吾郎!吾郎!いいかこれで!これでダメならゴロちゃんに戻すからな!」

 

「フン、まあいいんじゃない」

 

「お前いつか全力でぶん殴らせろな」

 

明智吾郎くん、もとい吾郎くんはゴロちゃん呼びが不満だったようだ。

だからといって苗字呼びも気に入らないときた。じゃあ最初っからあだ名じゃない名前で呼んでって言えよ。とんだわがままボーイだぜ。

 

「それでさあ、まず吾郎くんと怪盗団の関係について教えてほしいんだけど」

 

「お手手繋いで遊びに行くような仲だと言ったら?」

 

「笑止千万」

 

「うんまあ、そうだよね」

 

「聞きたいことはそれだけじゃないんだけどね。多過ぎて何から聞いたらいいのかわかんないけど…。

まず一つ目、そもそもどうして怪盗団と"明智吾郎"の生死がこのループに関係あるの?…テレビの"明智吾郎"が怪盗団を猛烈バッシングしていたのは知ってるけど、それだけの関係じゃないってことだよね。

このループの原因について怪盗団を主体にして考えた場合、怪盗団にとって難癖つけてくるだけのただのモブである"明智吾郎"がループ脱出条件になるには無理があるし。

つまり"明智吾郎"は怪盗団と直接会ったことがあって、面識がある?」

 

「ああ」

 

「二つ目、ペルソナとやらの暴走に、何故怪盗団と明智吾郎が関わってくるんだろう?どうして、吾郎くんはペルソナって言葉に覚えがあるんだろう?ひょっとして、怪盗団はペルソナに関する何かを知っていて、吾郎くんも怪盗団絡みでそれを知った?」

 

「悪くはないかな」

 

それじゃ、私の考えは半分くらいは当たってるってことだ。

大筋がわかれば細かい所は後々考えればいいし、ちょっとの差異には目を瞑ろう。

 

「確認だけど、怪盗団および明智吾郎の中のいずれか1人の死亡がトリガーになって時間がループするってことは、その逆で怪盗団と明智吾郎全員が無ことならループ脱出できるってことでいいんだよね」

 

「そうなるだろうね」

 

「つまりラヴェンツァの言う"世界を救って"というのは、少なくとも12月15日頃までは死ぬなよってことだよね」

 

「ああ」

 

「…吾郎くん、記憶あるんだよね?」

 

どうして死んじゃったの?なんて軽々しく聞いていいのだろうか…。

残機いくつ?って聞くのとはワケが違うんだよなあ。

 

「あー…そうだな。お前には話してもいいか。俺の過去も知ってるし」

 

ついに一人称まで昔に戻っちゃった吾郎くん。

成程、キャラ変はやめたようだ。




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