斯くして彼ら彼女らの青春ラブコメは終わり、また新たな青春ラブコメが始まる。 作:枕魔神
最終話になります。
少し長いですけれど、最後までお付き合いください。
『稲葉くんさ、重すぎて怖いわ』
それが、彼女だった人が僕に最後に吐き捨てた台詞だった。
稲葉一朗太。13歳。中2。
恋人に浮気され、さっきこっぴどくフラれた四月。
僕は校舎裏でひっそり、一人で死んでいた。
「……石になりたい」
路傍の石になりたい。知らずの内に蹴り転がされ、削れ、やがて砂になって消えたい。そんな気分だった。
事の始まりは、去年のクリスマスちょっと前くらいに、何度か見たことがある程度の一つ上の先輩に告白された事。
これまで彼女なんて都市伝説だと思っていた僕は、それはもう浮かれた。
こんな僕のことを好きだと言ってくれる彼女の事が知りたくて、大切にしたくて、とにかく思いつく限り尽くしてみた。
おはようから、おやすみまでちゃんとこまめに連絡するし、メッセージは勿論即レス。
困っていたら助けるし、デートの時は弁当を作ってみたりした。
愛情表現は勿論欠かさない。将来の事も真剣に考えていた。
そんで、そしたら浮気された。
曰く、重い、堅苦しい、暑苦しい。
『やっぱ大学生と付き合うことにしたわ、余裕がある人が良いよね!』
『重すぎてマジ無理』
『クリスマス前でイケメン彼氏が欲しかっただけなんだよね〜』
とは元彼女の意見である。
「重い……重いかぁ、石にぴったりな評価じゃないか」
ふふふ、と膝を抱えて不気味に笑う。気がつけば頬にしょっぱい雫が流れていた。放課後の西日に反射して、やけに眩しかった。
そんな時だった。
不意に西日が遮られ、僕が顔を上げると、
「大丈夫?」
そこには元カノと同じ学年の制服を着た、ボブカットの可愛らしい先輩が、上の膝を曲げて、その桜色の綺麗な瞳に心配の色を浮かべながら、僕を覗き込んでいた。
西日の影響で後光が指したその姿と、優しい声色は、まるで女神のようで、
「……す」
「……?」
「ぐすっ……大丈夫じゃないです」
もうなにか色々と限界だった僕は、ついに決壊、とめどなく涙が溢れてきた。
「わわ!? めっちゃ泣いてるし!? ちょ、ハンカチ、ハンカチ」
「ごべんなさいっ、気にしないでくださいっ」
「こんな状況で無理だから! ほら、落ち着いて話してみて、あたしが聞いてあげるから!」
改めて、稲葉一朗太13歳。号泣。
これが僕とガハマ先輩の初対面だった。
◇
デート当日。余裕を持って起床した僕は、随分懐かしい夢を見たものだと笑みを浮かべる。
「初心忘れるべからずって事かな」
朝ごはんは軽くトーストで済ませてしまい、いつもより念入りに身支度を行った
白のTシャツの上から、緑色のニットを着込んで、ブラックデニムを履いてみる。変に奇をてらうより高校生らしく清潔感のある格好の方がいいだろう。
ガハマ先輩と出かけたことは何度もあるけれど、なにせこれが初デートなのだ、失敗はしたくない。
鏡の前で違和感がないかをチェックを行い、髪を軽くセットする。
ヒゲの剃り残し、鼻毛の処理、眉毛も整えて完璧。何処に出しても恥ずかしくない仕上がりとなった。
濡れた手をタオルで拭きながら時計を確認、時刻は丁度8時半を示していた。
「ここから待ち合わせの千葉駅まで30分だから……」
たどり着くのは九時くらいかな。
ガハマ先輩との待ち合わせ時間は午前11時だけど、電車が遅れる可能性もあるし、早く着くぶんには問題は無いだろう。
絶対に早すぎるとは思うが、家にいても落ち着かないしね。
そう一人で納得して、僕は昨夜用意していた肩掛けのカバンを背負って、街に繰り出した。
道すがら、一色と比企谷と一緒に考えて来たデートプランを改めて確認しながら歩く。緊張してるのに、楽しみで、結果足取りは軽い。
たぶん僕は今一番浮かれている。その自覚がある。
そのくらい、今日のデートが楽しみで仕方がなかった。
この一度で好きになってもらえる事はないだろう、だけど一つ一つ積み重ねる為の一つを作るために、
「頑張ろう」
僕は、意気込みを新たに拳をギュッと握りしめた。
◇
「やっぱりもう居るし!!」
時刻は10時丁度。
特に電車が遅れるなどのトラブルもなく、予定通り9時には待ち合わせ場所に到着していた僕。
待ち合わせの時間までの暇つぶしでスマホをイジっていると、慌てた様子でガハマ先輩が現れた。
少し大きめの白のニットに、黒のキュロットパンツ。シンプルながら、素材の良さが全面に出ている素晴らしいコーデ。
春らしく可愛らしい装いに、僕の心拍数が増える。
そんな胸の高鳴りを悟られぬように、思わず見惚れそうになっていたところを、僕は腕時計に視線を落として誤魔化した。
「……早いですね? まだ一時間前ですよ?」
「いやいや、それはこっちの台詞だから! 早すぎでしょいなばん」
「そうですか? 後輩が先輩より早く来るのはマナー的に常識ですよ?」
「だとしても早すぎだから、いったい何時から待ってるの?」
何時って、更に1時間前ですけど。
とは流石に答えない。僕だって、流石に2時間前に到着したのはやり過ぎてる自覚はあるのだ。
「……僕もさっき来たところですよ」
なのでそんな、デートのテンプレみたいな嘘で誤魔化してみる。
「いや、それ嘘でしょ」
だがしかし、当然ながらガハマ先輩には通じなかった。
「せめて顔見て言えし」
「いや、嘘じゃないですよ。僕にとってはあっという間でしたので、さっきで合ってます」
「なら、実際の時間は?」
「…………」
「…………」
逃さんとばかりに、じっと目を見つめられる。この目にとことん弱い僕が抵抗できるわけも無く、渋々白状する。
「…………更に、1時間前?」
「早すぎるわ!」
当然のツッコミだった。
「待ち合わせの二時間前は早すぎだよ、いつもそんなに早く待ってくれてたの?」
「いいえ、流石に、普段はここまで早くないですよ」
「そうなの?」
「はい、普段は精々1時間前です」
「それでも充分早いけど……。じゃあ、なんで今日はこんなに早いの?」
ガハマ先輩は、小首傾げてそう問いかける。
なんでも何も、いつも1時間も早く待っているのも、今日更に早く来ていた事も、理由なんて当然一つしか無い。
「楽しみだったからですけど?」
色々な後付の理由は沢山あるけれど、結局の根本は、家で待ってることもできないくらい、楽しみだったってことに尽きる。
隠すこともないし、僕はそう正直に答えた。
するとガハマ先輩は、少し目を見開いた後に、呆れた様子で「まったく、しょうがないなぁ」と笑った。
「だからって2時間前は、流石に早く来すぎ過ぎだし」
「それは自覚してます。まぁ、仕方なかったんですよ」
「楽しみ過ぎて?」
「はい、楽しみ過ぎて」
僕が即答すれば、ガハマ先輩はまた笑う。
春日和にピッタリな和やかな雰囲気に、僕はなんとも言えない幸せを噛み締めた。
どうしよう、デートはまだ始まってすら無いのに、もう楽しい。さっきから心臓はドキドキしっぱなしで、何処か浮足立った感触だ。
すごいな、ガハマ先輩とは何度も遊びに行った事はあるけれど、デートと名前が変わるだけで、ここまで違うのか……。
これが好きな人とのデート、素晴らしい。
と、そんな感じで僕が感極まっていると、ガハマ先輩は「じゃあ」と呟いて、
「今日は思いっきり楽しもうね!」
と元気よく拳を握って意気込みながら、そう言葉を続けた。
その様子がもう可愛くて可愛くて。ただでさえ感動している僕の心にぶっ刺さって。
今のところの感想。
デート、最高である。
「ガハマ先輩」
「ん?」
「改めて、今日はデートよろしくお願いします」
幸せだと感じた分、彼女にもそれを感じてもらおう。今日を僕だけじゃなく、彼女にも楽しかったと思ってもらえるようにと意気込みながら、僕は頭を下げた。
「うん、こちらこそ!」
僕の言葉に、ガハマ先輩はそうニッコリと笑って返してくれて、それだけで胸がいっぱいになる。
「じゃあ行こっか、いなばん」
「はい、ガハマ先輩」
「せっかく早く集まったんだし……お店をブラブラしてからお昼にしようよ」
「いいですね、最高ですね」
あぁ、本当に最高だ。数年間夢見た、ガハマ先輩とのデートである。
軽い足取りの先輩の隣を歩きながら、その横顔にまた見惚れる。
いつか自然と彼女の手を握って、デートができます様にと願っていると、ふと、僕は一つ彼女に大事な事を言い忘れていたことを思い出す。
しまった、タイミングを逃してしまったが、今日出会ってからずっと思っていた事を伝えないといけない。
とても大切な事だ。
「あ、ガハマ先輩」
「ん? なぁに?」
「言い忘れてましたけど。服、似合ってます。凄く可愛いです」
「っ!? 今言う!?」
攻める手は緩めない、とても大事な事だった。
◇
ちゃんと彼に向き合うため、彼をもっと知るため、彼にもっとあたしの事を知ってもらうため、あたしの心を整理するため。
そんな思いで迎えた初デートだったけど、ちょっとだけあった不安もふっとばすくらい、あたしは彼とのデートをもの凄く楽しんでいた。
「ふふ、ふふふ……」
「ガハマ先輩、笑いすぎです」
「だって面白かったんだもん」
いなばんが予約してくれてたカフェで、お昼にパスタを食べながら、さっき立ち寄ったペットショップでの出来事を思い出してあたしは笑う。
──
────
『ほら、いなばんだよー』
『く、くぅん……』
『うーん、この子もやっぱり駄目みたい』
『やっぱりってどういう意味です?』
『人懐っこいコなのになぁ。ごめんねー、いなばん怖かったね』
『解せない……』
────
──
ペットショップにいる動物に軒並み怖がられたいなばんの、納得がいかないと言わんばかりの不貞腐れた顔が可笑しくて、あたしはさっきからずっと思い出しては我慢できずに笑ってしまう。
「昔っから、何故か動物に嫌われるんですよね……」
「何でだろう、サブレはそんな事無いのにね」
「最近ようやく慣れただけで、最初は滅茶苦茶吠えられましたよ」
たしかにそうだったけど、まさかのあんなに動物と相性が悪いとは思わなかったよね。いなばん自体は動物が好きそうなのが不憫だった。意外な彼の小さな弱点である。
「呪われてるんですかね、僕」
そんな事を、いなばんは少しションボリとした真剣な顔で呟く。
どうやら本気で悩んでいるらしい。
その姿がなんだか可笑しくて、あたしはまた吹き出してしまった。
「ガハマ先輩……」
「ふふ……ごめんごめん、真剣に悩んでるのが珍しくて。……あたし思うんだけどさ、いなばん、もう少し笑顔を作ったほうがいいんじゃない?」
「笑顔?」
「うん、いつも無表情だから、仔犬たちにも怖がれるんじゃないかな?」
慣れてるからこそ、あたしやヒッキーやゆきのん、あといろはちゃんは、この万年無表情の鉄仮面いなばんの表情を読み取れるけれど、初めて彼を見る、ましてや生まれたばかりの仔犬たちには威圧している様に見えるんじゃないかな?
そう思って解決策を提案してみたあたし。
するといなばんは、小首をかしげてから、
「 こうですか?」
そう不自然に口角を上げた。
「うわ、嘘っぽい」
「酷い」
その笑顔があまりにも不気味で、ついそんな感想が漏れてしまう。
本人は一生懸命笑っているんだろうけど、なんというか、明らかに笑顔を作っていますって感じがする。
表情筋に無理やり命令して動かしているみたいな、柔らかさが全然ない、カチコチの笑顔。
これはアレだ、彼と同じたぐいの笑顔だ。
「それ、ヒッキーの笑顔とどっこいどっこいだよ」
「それは流石に比企谷先輩に失礼では?」
「いなばんも大概だからね?」
「…………」
いなばんが微妙な顔をして目をそらす。どうやら自覚はあるらしい。
「もっと朗らかに、にこって笑ってみてよ」
と要求してみれば、より一層深いシワを眉間に刻んで悩みこむいなばん。
「……難しいですね」
深刻な様子だけれど、あたしにはいなばんがここまで悩む理由がよく分からない。
何故なら彼がたまに見せる笑顔は、さっきみたいに下手くそじゃなくて自然なものだから。
「そんなに悩むことかなぁ? いつもみたいに笑えばいいのに」
普段は恐ろしく鉄仮面ないなばんだけど、ふとした拍子に、彼はたまに凄く優しい笑顔をする。
「あの笑顔なら、動物たちもきっと怖がらないよ」
だってあたしもあの笑顔が好きだから。
だから絶対に動物たちにも好かれると確信を持って助言したのだが、当の本人は全然ピンときてない様子で、もっと悩みだす。
「全然心当たりないんですけど」
「無自覚だったんだ……今日はいなばん、けっこう良く笑ってたよ?」
「えぇ? 分からん。例えばいつです?」
いつと問われて思い返してみる。
たしか今日だと……
「待ち合わせ場所にあたしが到着して、いなばんがこっちに気がついた時とか、ふと振り返って目があった時とか?」
そう教えてあげれば、いなばんはようやく合点がいったとばかりに頷いた。
「あー、なるほど」
「伝わった?」
「はい、そういう事なら納得です。多分同じ事考えて笑ってるんで」
「そうなんだ、どんな事考えてるの?」
そう何となしに問いかけたあたし。
そのの問いかけに、いなばんは少し悩んだ素振りを見せて、けどすぐにあの凄く優しくて柔らかい笑顔でこう答えた。
「ガハマ先輩が可愛いなって思ってました」
まさかの答えに、思考が止まる。
またこの後輩は、タイミングというものを考えずにぶっ込んできやがった。いや、予想できた答えなのに、聞いたあたしも悪いけれど。
「…………あー」
ようやく絞り出したのはそんな情けのない声で、あたしから聞いた手前、いつもの様に勢いでごまかせない。
誤魔化せないから、笑顔の効果も相まって、いつもより深くいなばんの言葉が刺さる。あたしは何も言えなくなってしまって、顔は真っ赤で耳まで熱かった。
「あはは、そ、そうなんだ」
「はい」
「へ、へぇ……」
「…………」
「…………」
沈黙。
気まずい。気まずいというか恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
なのに当の本人は、なんてこと無い顔してパスタを食べ進めてる。
何故こんなに平然としているのだろう、全く本当に何なんだこの男は、あんな恥ずかしいことを言ったのにさらりとしすぎだ。
こっちは心臓がうるさいくらい鳴って、いなばんのせいで、パスタの味なんて分からなくなっているのに。
そんなあたしの様子に気づいたのか、いなばんがこちらを見る。目があった。また温度が上がった。
「照れすぎじゃないですか?」
「いなばんが可愛いとかいうからじゃん!?」
あんな言葉を正面から言われたら照れるに決まってる。と言うか、ここ数日ずっとこんな感じで振り回されっぱなしだ。
「まったく、いなばんは! そう言うの禁止! 照れるから!! 」
「ええ、聞いたのガハマ先輩じゃないですか……」
「そうだけど! だけど駄目! なんか恥ずかしいので!」
彼からの真っすぐで温かい好意をずっとぶつけられ続けて、あたしばかりが照れて狼狽えて。
なのに当の本人はスンッとすまし顔で、なんだか負けた気がする。
そう思うと少しムカついてきた。少しくらいいなばんも照れろし。
「と言うか、いなばんさ」
「はい」
「あたしが照れるのみて、楽しんでるよね」
「はい」
「即答すんなし!」
「事実なので」
さらりと無表情で言ってのける小生意気な確信犯に、あたしは内心でこのやろとごちる。
なんとかして、いなばんがドギマギして狼狽える様な仕返しをしたいのだが、相手は真顔で好きとか言っちゃう様な鉄仮面男、ちょっとやそっとで照れる未来があたしには想像できない。
「むー……」
「どうしたんですか? ガハマ先輩、そんなに難しい顔して」
「……どうやったらいなばんに仕返しできるか考えてる」
「それ、僕に言っていいんですか?」
口直しにお冷を飲みながら、いなばんはそう言った。
良くはない、良くはないけど、この際仕方がない。何をしたらこの後輩が顔を真っ赤にして照れるのかが、あたしには分からなかった。
「……いなばんが照れる事って何?」
なのでもう聞いてやることにした。彼の赤面を見るためには背に腹は代えられない、ずっと振り回された事に対する意趣返しだった。
あたしのストレート過ぎる質問に、ふむといなばんは真面目に頭を悩ませる。
そして、数秒の後にいつも通りの真顔で、彼はこんな事を口にした。
「あ~ん、されるのが恥ずかしいです」
本当になんてこと無い様に、少し目を逸らしながらそう言ういなばん。
流石のあたしも、これには気がついた。
「…………ねぇ」
「はい?」
「あたしに恥ずかしいことさせて自爆させようとしてるでしょ」
「…………いえ、別にそんな事を思ってませんけど?」
「嘘だよね」
「…………」
「…………」
「……はぁ、流石に饅頭怖いには引っかかりませんでしたか」
「だと思った! 流れるように嘘つくなし!」
スキあらばからかおうとしてくる、いなばんに、あたしは抗議の声を上げる。
しれっとしてて、まったく油断も隙もない後輩だった。
◇
おしゃれなカフェで満足のいくランチを楽しんだ後、午後からはいなばんの提案で臨海水族館に行ってみることにした。
順路に沿って水族館を巡る。
鮫の水槽の前で、少しだけテンションが上がるいなばん。
ペンギンのえさやり体験で、また怖がられて孤立するいなばん。
綺麗なクラゲの水槽で、クラゲそっちのけであたしをがん見するいなばん。
一緒にいる時間はとても楽しくて、あっという間で気づけばもう夕方になっていた。
「今日は楽しかったね」
隣で歩く彼にそう言えば、彼はそうですねと相変わらずの無感情ボイスで同意した。
分かりにくいけれど、いなばんも楽しんでくれたみたいで少しホッとする。
「今日は人生で一番楽しい日でした」
「そんなに?」
「はい、念願かなっての初デートなので、歓喜感激雨あられ、有頂天外感無量です。今日のことは事細かく、日記に書き記しておきます」
「そんなに!? というか日記やってるんだ」
「いえ、今日から始めます」
「態々始め無くても良くない!?」
訂正、ものすごく楽しんでくれていた。普段のいなばんの三倍はハイテンションだった。
「なんだか今日は浮かれてるね、いなばん」
「そうですね、浮かれてます」
「そんなに楽しかったの?」
「はい。それに、今日で更にガハマ先輩の事が沢山知れましたから、浮かれもしますよ」
「あたしの事?」
例えばどういう所かと興味本位で尋ねてみたら、彼はつらつらと語りだした。
「色んなガハマ先輩が知れました。仔犬は平気なのに子猫にはおっかなびっくりだったり、パスタ食べる時はフォークで丁寧に巻いてから少しずつ食べたり、デートでも絶対に奢らせてくれなかったり、何度も振り返って此方の様子を伺ってくれたり、鮫はちょっと怖そうだったり、綺麗なクラゲは写真を撮ったりせずに見惚れてたり……とても有意義な時間でした」
どんどん出てくる、いなばんの見ていたあたしの話に、あたしは呆気にとられつつ、なんだか面映ゆい気持ちになる。
「いなばん、見すぎだし」
照れ隠しでそう言えば、いなばんは「好きですからね、見ますよね」とさらりと言ってのけた。
そんな攻めの加減を知らない彼と、初めての視点で今日一日デートしてみて、あたしは彼の色んな一面を知ることが出来た
ずっとあたし第一に動いてくれていること、スキあらばお金を出そうとするところ、意外と子供っぽくて浮かれてしまうとこ、本当に念入りに色んなプランを考えてくれていた事、
そして、何度も言ってくれている様に、あたしの事が本当に大好きだって事。
元から疑ってた訳じゃないし、理解していたつもりだけど、今日で彼の胸の中にある熱いくらいに真剣な思いは、改めてあたしにしっかりと伝わっていた。
いなばんは『好き』をさらりと言葉にするけれど、彼のその気持ちは真剣そのもので、とても重たい。
あたしにはその重みが凄く嬉しくて、何処か心地よかった。
「……あのさ、いなばん」
だからあたしは、自分から聞いてみる。
「何であたしが好きなの?」
今まで気がつくことも出来なかった、彼の気持ちの起源を知る為に。
あたしの問いかけに、彼は少し懐かしむような顔をして笑う。
「ガハマ先輩、覚えてます? 僕と初めてあった時のこと」
「うん、覚えてるよ」
たまたま通りかかった校舎裏で、彼が女子生徒から浮気を告げられて、その上こっぴどくフラれていた一部始終を見てしまったあたし。
真っ青の死んだ顔でうずくまる彼が見てられなくて、つい声をかけたのがあたし達の始まり。
「見知らぬ後輩何だからほっとけばいいのに、それでもガハマ先輩はハンカチを貸してくれて、泣き止むまでずっと隣にいてくれましたよね」
「だって、ほっとけないでしょ」
「だとしても、その後の恋愛相談にまで真剣に付き合ってくれるのは過剰サービスだと思いますよ」
──
───
『なにそれ! キミ全然悪くないじゃん!』
『けど、僕が重いってのは一理有るなって思っちゃったんですよね。どんなに尽くしても、結局受け取るの相手がどう思うかが全てで、それが不快に思ってたら自己満足でしかないじゃないですか』
『だからって! 浮気するとかありえないし!』
『……それは、そうですけど』
『それにさ、重いってキミは言ったけど、別に重くてもいいんじゃないかな? 』
『……え?』
『一方通行の押し付けは確かに駄目だけど、キミのそれは違うよ。本当に相手の事を真剣に考えて、大切にしようって思ったんでしょ? だったらそれが悪いことだって、あたしは思えない』
『…………』
『きっといつか出会えるよ。キミに大切にされるだけじゃなくて、キミの事も大切にしてくれる、素敵な子にさ』
『…………そう、思いますかね?』
『うん! キミの良いところを理解してくれる人は絶対にいる、あたしが保証する!』
『……僕、このままで良いんですかね』
『もちろん!』
────
──
「僕は僕の愛し方をしていい、そう貴方に肯定してもらった事が嬉しくて、僕は貴方にまた会いたいなって思うようになりました」
「休み時間、何処かで会えないかなってウロウロしてみたり、放課後校門で待ってみたり、お礼をしたいって言えばまた話せるかなって思ったり」
「そんな感じの事を思っていたら、運よく仲良くなれて、いなばんってあだ名までつけてくれて」
「そして仲良くなっていく内に、貴方の色んな素敵な所を知って、僕は初めて自分から人を好きになりました」
ぽつりぽつりと、まるで大切な物を扱う様に彼は思い出を語る。
意外だった、そんなに昔からあたしの事を想っててくれたとは知らなかった。あの時のあたしは、ただ泣いている後輩がほっとけなくて、手を差し伸べただけで。
それが彼の中で、そんなに大切な思い出になってるとは知らなくて、あたしはじんわりと胸の奥が熱くなるのを感じた。
「そう、だったんだ」
「はい、今思えば一目惚れだったのかも知れません。あの時僕、ガハマ先輩が女神に見えてたんで」
「……大袈裟だよ」
「いえ、今でも女神に見えてますので。目の錯覚ではないかと」
「どんだけだし」
本当にどんだけ好きなんだし、多分半分以上は本気の彼の冗談に少しだけ笑った。
あと少し歩けば出口と言うところで、自然と、あたし達の歩みは止まり、互いに向き合う。
夕日が二人を照らして、春風が吹いた。
「改めて、ちゃんと言わせてください」
「うん……」
彼の顔は、初めて見るくらい真っ赤で、真剣で、優しくて。
そわそわと落ちつかなそうなのに、その視線だけは真っすぐにあたしを見つめていて。
少しの沈黙と何度かの深呼吸の後に、意を決した顔をした彼はゆっくりと口を開いた。
「貴方の、底抜けに優しい所が好きです」
「貴方の、明るく心まで照らしてくれる笑顔が好きです」
「貴方の、真っすぐで芯のある心が好きです」
「貴方が、由比ヶ浜結衣先輩が……」
「……僕は、大好きです」
彼は今まで貯めたすべてを吐き出すように、彼にできる最大限の表現で、真っすぐにとても大きな愛を伝えてくれた。
鼓動がうるさい。
身体が熱い。
思わず泣きそうになる。いや、もう泣いてるかもしれない。
あぁ、嬉しい。すごく嬉しいなぁ。
「ありがとう、いなばん……」
いなばんはあたしの一番の後輩、いつもあたしを助けてくれる、背中を押してくれる大切な人。
ずっとあたしの恋を応援してくれて、絶対に隣にいてくれて、そしてこんなにも大きな愛をくれる人。
すごく良い子で、すごく優しくて、すごく真面目で。
すごくカッコいい男の子。
そんな彼だから、今からあたしは、ちゃんと彼をフるんだ。
「ごめんね……やっぱりまだ付き合えないよ」
ズンッと重くなる気持ちを堪えて、あたしはしっかりと答えを伝える。
「……」
「今、いなばんと付き合ったら、あたしはあたしを許せない」
だって、まだあたしは失恋中だから。
「あの恋を引きずったまま付き合うのは、やっぱり失礼だと思うから」
新しい恋を始める為、優しい後輩にころっと靡いてしまって、付き合ってしまえばいいのかもしれない。付き合ったら幸せになれる確信だってある。
だけど今のあたしは、彼に彼を重ねてしまう。
それだけは絶対にしてはいけない。
ちゃんと、胸を張って恋を終わらせて、初めてあたしは次に行けるんだ。
だから今は、駄目なんだ。
「だから、ごめんね。いなばん」
頭を下げて、しっかりと断る。ちゃんと傷つける。
本当は待ってて欲しいけど、待っててなんて口が裂けても言えなかった。
気まずくなって彼があたしから離れるとしても、これで彼が諦めて次の恋に行ってもいいように、ずっと待つのは辛いから、期待だけさせてキープするなんて絶対に嫌だった。
それがあたしなりに誠心誠意、彼に対して真摯に向き合った結果だ。
「…………まぁ、そうですよね」
長い沈黙のあと、彼は少し震えた声でそう呟く。
「ありがとうございますガハマ先輩、ちゃんと考えてくれて嬉しかったです」
「いなばん……」
「傷心の所を狙うとか、ほぼ反則の手を使ってしまってすみません。けど、そうでもしないと、すぐにあの人を上書きするのは僕には無理ですから……」
そう言って俯く彼に、あたしは何も言えない。言う資格がない。
長い沈黙が流れる。
自分が傷つけた大切な後輩に、あたしが掛ける言葉は存在しないから、だからあたしは黙って、彼の次の言葉を待っていた。
後になって思えば、あたしはこの時、未だに彼の事を甘く見ていたのだろう。
パァンッ!!
「よし! 切り替えた!」
「いなばん!?」
突如いなばんが、自身の顔を思いっきり平手でぶっ叩いた。
突然の事に驚くあたしをよそに、いつも通りの能面にいつもとは違う紅葉を浮かべながら、いなばんは言葉を続ける。
「プランを変えます。すぐ上書きできないなら、時間をかけていけばいいだけです」
「!??」
「一度フラれたくらいなんですか、諦めませんよ僕は」
「いなばん……」
「そもそも前も言いましたけど、負け確して一年間粘った大好きな先輩の背中を見てますので、その後輩の僕が特定の相手もいないのに諦める道理はないかと」
「そうだけど!? 切り替え早くない!?」
本当に甘く見ていたとしか言えない。
そうだった、この子はあたしの恋を全力で応援してて、それでもずっと好きでいてくれた子だった。
とても重たくて、一途な子が、たった一度フラれた位で諦めるわけが無かったのだ。
「ダラダラ引きずってガハマ先輩が落とせるならしますよ。けど、そんなの無駄でしょ?」
その証拠に、こんな事をさらりと言ってのける。本当にメンタルが恐ろしく強い。
あぁ、困った。本当に困った後輩だ。
関係が終わるかもしれない覚悟でフッたと言うのに、それでも彼は変わらずあたしの隣にいてくれるのだろう。
それはもう、本当に困った。
「……あたし、面倒くさいからさ。待たせるよ?」
「知ってますし、いくらでも待ちますよ。四年片想いしてた人間の忍耐力をナメないでください」
そう言っていなばんは、ニヤリと笑ってあたしを見た。
だからあたしも、こんどは笑ってこう答えたのだ。
「ちゃんと考える、だから……待ってて、いなばん」
「何年でも待ちますよ、ガハマ先輩」
◇
あのデートから大体一年がたった。
つまり僕も大学生となった。
通う大学は、もちろん彼女と同じ所。適当に入学式やら何やらを終わらせて、僕は真っ先に彼女の元へと足を運んだ。
「ガハマ先輩」
校内に設営されたカフェで僕を待つその姿に、駆け足で近寄り慣れ親しんだ名前を呼ぶ。
大学生になったガハマ先輩は、少し髪を伸ばしつつトレードマークのお団子はそのまま。少しだけ大人っぽく、それでも笑顔はあどけなく。更に素敵な女性になっていて、僕の胸はもうドキドキだった。
僕の呼びかけに振り向いて、ニコッと笑顔を返してくれるガハマ先輩。
あぁ、入学してよかった。そう心から思えた。
「いなばん! 入学おめでとう!」
「ありがとうございます。お久しぶりですね」
「いやいや、月1で会ってたよね?」
「先輩としてのガハマ先輩は久々ですので」
「どんな理屈だし!」
もはや定番となったコントのやりとりも、晴れてまた後輩となれた今、とても感慨深い。
あぁ、入学してよかった。(2回目)
「これでガハマ先輩の後輩となるのも三度目、となればもはや後輩のプロです。なのでコレからよりいっそうガハマ先輩に仕えたいと思う所存ですのでよろしくお願いします」
「仕えるなし! あたしが新入生イビってるって噂になるでしょ!」
「そんなヘマはしませんよ、忍びのように隠密行動しますので」
「なんか今日テンション高くない!?」
また同じ学校に通えるのだ、テンションなんて高くて当然。歓喜感激雨あられ。僕は今確実に浮かれまくっていた。
「まったく、相変わらずだね、いなばんは」
「そういうガハマ先輩も、相変わらず可愛いですね」
「はいはい、ありがとね。流れるように口説くなし」
この一年でこのくらいの褒めならば慣れてしまわれたガハマ先輩から軽くあしらわれ、僕は誤魔化すように咳払いをして、ガハマ先輩の向かいの席に座り、本題に入る。
「ところで、話ってなんですか?」
僕とあと癪だが一色の入学おめでとうパーティを、この後雪ノ下先輩と比企谷先輩のカップルも加えて行う予定なのだが、その前にガハマ先輩は僕に話があるらしい。
なんの話だろうかと小首をかしげていると、ガハマ先輩は少し落ち着かない様子で少しそわそわとしながら口を開いた。
「あのさ、いなばん……」
「はい、なんでしょうか」
「……れ、恋愛相談していい?」
顔を赤くさせながら、少し俯きがちにそう呟いたガハマ先輩の顔は、以前にも見たことそれは、恋をしてる時の僕が一番好きな彼女の顔だった。
「今ね、気になる人がいるんだ」
奥歯を食いしばり、胸の痛みを誤魔化す。その悲しみを顔には絶対に出さない。
素晴らしいことじゃないか、あの大失恋をしたガハマ先輩が前を向いて新しい恋を始められたんだから。嬉しいことじゃないか。
話があるってのは、つまりはそういう事だろう……。
「っ……それはそれはおめでとうございます」
絞り出すように、だけどポーカーフェイスに努めて僕は祝辞を述べた。
すると、ガハマ先輩は先程の乙女チックな顔を引っ込めて、スッと真顔に、ジトッとした目つきで僕を睨む。
なんだ、その反応は予想外なんですけど。
「ふーん、おめでとうなんだ」
「え? あ、はい。僕はガハマ先輩の幸せが第一なので、もちろん応援させてもらいますよ」
それだけは絶対だ、ここで我を押し通すのは僕の本意じゃない。僕は何よりこの人に笑っていて欲しいのだから。
そんな気持ちでそう答えたら、またガハマ先輩は「ふーん」と意味ありげな視線を向ける。
「……一年前、あたしに告白して来たのに?」
そして、こてんっと首を傾げ、僕をしたから覗き込むように視線を合わせてそう呟いた。
「今でも、ずっとあたしに告白してきてくれるのに、まだ応援するの?」
「……はい、正直クソ悔しいですけど、それでも、やっぱり好きな人には幸せになって欲しいですから」
僕のその言葉に、ガハマ先輩は呆れたように「そっか」と言って笑う。
「いなばんは優しいね」
「別に優しくないですよ、実際今現在その気になる人とやらに怨念を送ってますから、毎日小指の角をタンスにぶつけろ、大事なデート中に腹痛で悶えろと呪を送ってますから」
本当にどこのどいつだその羨ましい馬の骨は、大学か? この大学にいるのか? 判明したら僕と比企谷先輩と雪ノ下先輩と一色と比企谷でちゃんと相応しい男かどうかチェックしてやる。
そしてガハマ先輩が悲しまない程度に不幸になれ。合格基準を満たしていたら何が何としても今度こそ僕が彼女の恋は成就させるけど、男は本当にちょっとだけ苦しめ、そしてもちろん彼女を裏切ったら殺す。
そんな呪怨を脳内でつらつらと並べていると、ピシッと優しくガハマ先輩からデコピンをされて、意識が現世へ帰ってくる。
「何か変なこと考えてるのでしょ?」
「いえ、別に。ただ、どうやって件の男を呪ってやるか考えてだけですよ」
「十分変だし……それに、そんな事する意味無いし」
「意味がなくとも呪わずにはいられませんから、これは止めないでください」
「うーん、そういうことじゃ無いんだけどな。だって……」
「いなばんが呪ってる人、あたしが好きな人はいなばんだよ?」
……………………は?
「は?」
「ちょっと遠回りに言っちゃった私も悪いかもだけどさ、普通にね、普通に考えてさ」
「ちゃんと考えるって伝えた相手と、その気が無いのに月イチでデートする訳なくない?」
……………………はへ?
「……はへ?」
「あれ!? 聞こえてない!? どうしよういなばんがバカになっちゃった!?」
「いや、聞こえてますけど脳が理解を拒んでまして。それとやけに心音が煩くて」
だって今この人なんて言った!? 好き!? 誰が? 誰を!? 聞き間違いか? 幻聴か? 直前まで振られるって覚悟してた落差で耳が馬鹿になったのか? そう思ってしまうのも無理はないだろう。
かれこれもう、5年は片思いしてたのだ。これが現実だなんて信じられない。
「え、っとつまり……その……ガハマ先輩が気になる人ってその……」
だから、絶対的な確証が欲しくて。そう尋ねれば、ガハマ先輩は頬を染めて、上目遣いでこう言った。
「……2回も、言わなきゃ駄目?」
え、可愛い。すごく可愛い。いやガハマ先輩はいつも可愛いけれど、たぶん今過去一番可愛い。可愛いのゲシュタルト崩壊。
理解した、理解させられた。つまり、つまりはそういうことなのだ。
僕の青春ラブコメは、今まさに始まった。
「僕、生きててよかったです……」
本気で、ずっと好きなままでよかった。
「大袈裟だし」
「だって……話の内容的に絶対振られると思いましたし」
「その気が無いのに、告白してくれた男の子に真っ先に会いに行くるなんて、あたしそんなに悪女じゃないもん」
「知ってますけど、僕的には凄く夢みたいな事なんですよ!」
幸せだ、幸せすぎる。
きっと今の僕は顔が真っ赤、感動のせいで涙目でいつもの感じとは懸け離れてる。
そんな狼狽えてる僕の様子に、ガハマ先輩は満足げに「一年間、盛大に振り回してくれたお返しだし」と笑った。
あぁ、その笑顔も好きぃ……。
「いなばんはずっと優しくて、あたしの味方で、隣にいてくれて、良い子で優しくて、あたしがちゃんと吹っ切れるまで待ってくれて……」
「ずーっと一途に想いを伝えてくれて」
「……そんな事されたらさ、好きになっちゃうじゃん」
ガハマ先輩は、そう言いながらキュッと優しく僕の手を握る。もう限界だった。
もう、僕の許容量は既に超えていた。これ以上の過剰摂取は多分本当に頭がパァになる。
しかし、しかしだ……男として、これから彼女の事をより一層幸せにする覚悟を示すため。僕には言わねばならぬ言葉があった。
最後の力を振り絞り、ギュッと彼女の手を握り返して、僕はこう言った。
「絶対に幸せにします! 結婚を前提に付き合ってください」
「……うん。責任、とってね。いなばん」
僕のクソ重告白を、柔らかな優しい、僕が一番好きな彼女の笑顔で受け入れてくれたガハマ先輩。
もう、これ以上語ることは無いだろう。
四月。始まりの季節。
この日、僕こと稲葉一朗太は、晴れて大好きな由比ヶ浜結衣先輩の彼氏になることができたのだった。
◇
「あ、けど、そのセリフは一色の奴を彷彿とさせるので、リテイクを要求します」
「台無しだよ! あほ! 唐変木!女たらし!」
「あと大好きですガハマ先輩」
「私もだよ! ばーか!!」
これにて完結です。
数年間考えてきた由比ヶ浜ヒロインの小説がようやくカタチになり、皆様が少しでも楽しんでもらえたのなら幸いです。
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