モブ中生の僕でも冒険者になればマンモーネから抜け出せますか? 作:タカリ
「冒険者登録に来ました!」
2016年4月。
中学に進学した僕は冒険者ギルドにやってきた。
ロビーには学生冒険者の姿が多かったけど、ほとんど高校生か大学生。僕のように中一で登録する人は見当たらなかった。
「冒険者登録ですね。登録料の10万円とランクD以上のカード、現住所の確認できる身分証、18歳未満の方は保護者の同意書が必要となります。本日はお持ちでしょうか?」
「大丈夫です」
受付の美人のお姉さんが丁寧に対応してくれる。
ちゃんと必要なものは全て調べて持ってきた。準備は万端だ。
「それでは確認させていただきます。カードはDランクのルーパですね。……あれ、これは」
【種族】ルーパ
【戦闘力】120
【先天技能】
・母なる狼:ロムルスとレムスに乳を与えた狼。一日に赤子十人分の乳を生み出すことが可能で、それを飲んだ者の心身を健康に保ち、健全な育成を促す。育児を内包する。
(育児:育児に対する一定の知識と技能を持っている。特定行動時、行動にプラス補正)
・集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正。
【後天技能】
・気配遮断:自身の気配を隠し気付かれにくくする。
・臆病:戦闘を極めて忌避する。戦闘時、ステータス半減。
「あの、他にカードはお持ちですか?」
「はい! ワイルドウルフとヘルハウンドがあります!」
ワイルドウルフとヘルハウンドはFランクとEランクの狼型モンスター。どちらルーパより戦闘力で劣っている。
「……少々お待ちください。他の担当の者を呼んできます」
僕の手持ちを聞いたお姉さんが困ったような笑みを浮かべると、どこかに連絡した。
そしてすぐにもっと年上のおじさんがやってきた。
「初めまして。高瀬と申します」
「初めまして! 天川(アマカワ)翔(ショウ)です!」
高瀬さんに案内されて個室に移った。そして、僕のルーパを見た高瀬さんが説明を開始した。
「まず確認ですが、カードの戦闘力とランクについてご存じですか?」
「はい! 戦闘力49以下がFランク、戦闘力50~99がEランク、戦闘力100~199がDランクです!」
「その通りです。天川さんはカードについてよく勉強しているみたいですね」
「はい!」
冒険者になるためにしっかりと勉強してきたんだから当然だ。それでも努力が褒められると嬉しい。
「では、このカードの【臆病】スキルについては?」
「そのスキルがあるカードは臆病な性格で、戦闘になると戦闘力が半減して、更に戦闘行動を忌避します。戦えと言っても拒否したり、敵から攻撃されても反撃できずに一方的に殴られ続けたりする強力なデメリットスキルです」
「……本当に、よく勉強していますね。天川さんの言う通りこのスキルがあるカードは戦闘では役に立たないと思った方がいいでしょう」
高瀬が驚いた顔をした。僕が【臆病】スキルのことを詳しく知らないで冒険者登録しに来たと思ったんだろう。
でも、自分のカードがどういうカードか、スキルがどういう性能なのかくらいダンジョンに入る前に調べておくのは当たり前じゃないかな?
いざダンジョンに入って戦闘が始まってから「【臆病】スキルがこんなに役立たずだったなんて計算外だ!」とか言い出すマスターは勉強不足過ぎると思う。
「天川さんならばご理解いただけると思いますが、冒険者登録時にDランクカードを必須とするのは安全のためです。Dランクカードの戦闘力があれば一番最低ランクのFランク迷宮なら安全に攻略することができる。ギルドではそう考えています」
「はい」
「ですがこのカードは戦闘ができない。戦闘になればEランク並に戦闘力が半減し、さらに戦闘行動も取れません。他にワイルドウルフとヘルハウンドのカードをお持ちのようですが、それもEランクとFランク。迷宮攻略には不安があります」
高瀬さんが言っていることは正しい。ギルドの人たちは僕のことを心配して止めてくれている。
だけど、命を投げ捨てるつもりはないけど、こっちにも冒険者を辞められない理由があるんだ。
「危険なのは最初から分かってます。無理して迷宮の主に挑んだりもしません。しっかり準備してから挑戦します」
迷宮の最下層にいる主を倒して迷宮を踏破するとギルドから踏破報酬が支払われる。
Fランク迷宮だと階層×1万円。僕みたいな初心者冒険者にはかなりの大金だけど、無理して欲張って死んでしまったら元も子もない。
迷宮の主はワンランク上のモンスターが出現する上に、主補正で強化されるらしい。Fランク迷宮ならボスは強化Eランクモンスター。今の僕の手持ち、【臆病】ルーパやEFランクの狼たちでは絶対に勝てない相手というわけだ。
だから最初は普通のモブモンスターを倒して魔石を集めて売って、お金が集まったらちゃんとしたDランクカードを買うのが良いだろう。
あるいはルーパの【臆病】スキルを消すことができたら、かな。
「――という計画で、今後の迷宮攻略を考えています」
「そうですか、安心しました。そういうことでしたら登録を進めさせていただきますね」
「はい、よろしくお願いします!」
僕の計画を聞いてやっと高瀬さんも表情を柔らかくしてくれた。
何にも知らない無知な子供だと思っていたんだろうなぁ。でも【臆病】ルーパ一枚で迷宮に入るなんて自殺と変わらない。普通の良識ある大人なら止めるのが当然だよ。
このカードをくれたの、現役冒険者をしているおじさんなんだけどね。
*
その後、冒険者登録は無事に終わった。
貰ったばかりの冒険者ライセンスを片手に、僕は早速一番近いFランク迷宮へ向かった。
冒険者ギルドのHPにアクセスしてこの迷宮のデータを確認すると、既に他の冒険者に攻略されていて主はリポップ待ちみたいだ。明日になるまで主は不在だし、最下層に辿り着いても踏破報酬も貰えない。
現在迷宮の中にいる冒険者は0名。ちょうどいい。冒険者ライセンスをゲートにかざしての中に入ると、コンビニ――ダンジョンマートがあって、更に奥に迷宮への入り口が存在する。
買うものも特にないのでコンビニをスルーして、僕は迷宮へ入った。
「これが迷宮かぁ……」
一瞬の浮遊感の後、昼の草原に僕は立っていた。迷宮の内部は異空間になってて、洞窟になっていたり、この草原みたいになっていたり様々だ。頭上を見上げると青空が広がり太陽が輝いている。そんなに暑くないから季節は春かな?
入口周辺は安全地帯なのでモンスターも襲ってこない。他の冒険者もいないし、ゆっくりと準備ができる。
僕は早速Fランクのワイルドウルフを呼び出した。
【種族】ワイルドウルフ(マリー)
【戦闘力】30(初期15+15(成長MAX))
【先天技能】
・集団行動
【後天技能】
・従順→保護者:マスターを守るべき対象と定めた証。特定行動時、行動にプラス補正。育児を内包する。
(従順:マスターの命令に基本的に逆らわない。命令された行動に対する弱いプラス補正)
・気配察知:五感を強化し、隠密系スキルを見破りやすくする。
・庇う:仲間の元へ瞬時に駆け付け身代わりになることができる。使用中、防御力と生命力が大きく向上。
・生還の心得:瀕死級のダメージを負った時わずかな生命力を残してロストを逃れることができる。追撃や連続攻撃に注意。一日一回まで。
「マスター、ご無事のようですね。……どういう状況でしょうか?」
「久しぶりだね、マリー。あの日から――第二次アンゴルモアから、もう6年が経ったよ」
「6年も……」
『アンゴルモア』。迷宮から大量のモンスターが溢れ出す大規模迷宮災害のこと。
前回の『第二次アンゴルモア』が起きたのは2010年7月。僕が小学1年生だった時だ。
マリーは亡くなった父がくれたカードだった。
第二次アンゴルモアが起きた時、お守り代わりとして僕にくれた1枚。
カードからモンスターを呼び出すとマスターはバリアで守られ、マスターへのダメージを全てカードが肩代わりしてくれるようになる。
それからずっと、アンゴルモアが終わり地上からモンスターが消えるまでマリーは僕の側に入れくれた。
「本当はもっと早くダンジョンに来たかったんだけど、年齢制限があって今日まで来れなかったんだよ」
「そうなのですか。マスターは随分と大きくなりましたね」
「6年前と比べたらね。大きくなってないと困るよ」
「そうですが……、少し残念です」
狼の顔なので表情が分かりにくいが寂しそうな顔をしていた。
「僕が大きくなっちゃったことが残念なの?」
「マスターの成長を見守ることができなかったことが、です。マスターが大きくなるのはもちろん嬉しいですよ」
「……そっか。ありがとう」
マリーにそう言われるとむずむずした気分になる。嬉しいような、恥ずかしいような。
父に貰ったばかりの頃はもっと【従順】だったような気がするけど、いつの間にか保護者目線になっていた記憶がある。
ほんの一週間くらいの出来事だったけど、マリーには本当にたくさん助けられた。
「それでマスター、ミカさんは?」
「……まだロスト中」
高瀬さんにも言わなかった、僕のもう一枚のDランクカードを取り出した。
色あせてくすんだ『ソウルカード』だ。
【種族】エンジェル(ミカ)
【戦闘力】77(初期120ー50(零落)+7(成長))
【先天技能】
・天使:人々を導き守る、最下級の天使。聖なる光でアンデッドの不死効果を無効化可能。庇うを内包する。
【後天技能】
・零落せし存在:本来の存在より零落している。戦闘力を常時50マイナス、スキルの欠落やランクダウン。
・無垢な心→乙女心:肉体の性別に関係なく女性としての心を持つ。このスキルを持つカードは、属性的に女性として扱われ、無性・両性等の特性や変身系スキルを持つ種族の場合、肉体が女性体に固定される。マスターへの好感度でステータス増減。
(無垢な心:まだ何にも染まっていない真っ白な心。精神異常耐性が低下し、スキルの習得率が向上する)
・育児
このカード、ミカは母がくれたカードだ。
ミカも第二次アンゴルモアで一緒に過ごして仲良くなったけど、アンゴルモアが終わる直前、避難所を襲った強力なモンスターとの戦闘で死んでしまった。
ミカはそれから6年間、ずっとソウルカードのまま。
新しいエンジェルのカードを手に入れてミカに使ってあげれば復活できるんだけど、エンジェルのカードは人気が高くて500万くらいする。今までの僕では手が届かなかった高額カードなんだ。
「マリー。迷宮攻略でお金を稼いでエンジェルのカードを買って、ミカを復活させてあげたいんだ。手伝ってくれる?」
「もちろんです。私も喜んで協力しますよ、マスター」
第二次アンゴルモアの時、僕もまだ小さかったから記憶が定かじゃないけど、マリーとミカの二人はとても仲良しだった気がする。
早くミカを復活させてマリーと再会させてあげたいな。
*
「――というわけで、迷宮を踏破して踏破報酬を稼ぐのが一番早いんだけど、その為にはEランクのボスを倒さないといけないんだ。でも、僕たちの手元にあるDランクカードはこのルーパだけ。ミカはロスト中だから使えない」
「このカードをそのまま使うのは……厳しそうですね」
「うん。ランク差があっても【臆病】のままじゃ絶対に勝てないよ」
安全地帯にレジャーシートとクッションを敷いて、マリーと今後の打ち合わせを行う。
やっぱりマリーもこのルーパは戦力にならないと判断した。
「それで、このカードをマリーのランクアップに使ったらどうかなって。どう?」
「私のランクアップにですか?」
ワイルドウルフのマリーもルーパも【狼】という共通点がある。同性で同属性、あるいは共通点のあるカードを使うことでカードはランクアップすることができる。
「私がランクアップしても【臆病】のスキルは消えないと思いますよ?」
マリーが言うように、ランクアップ先のカードが覚えているスキルは基本的に全てそのまま継承される。有利なスキルだけじゃなく、【臆病】のようなデメリットスキルまで全部引き継がれるのがランクアップだ。
ただ、【臆病】というのは性格、精神、心だよね。
ランクアップでこれらのスキルを獲得した場合、元の性格に近ければそのまま残り、逆に元の性格とかけ離れていると早めに消えるという実験報告があるんだ。
カードの心はスキル一つで簡単に操ったりできるものではないってことだね。
「僕は大丈夫だと思ってる。マリーは臆病な性格じゃないから、ランクアップしたらすぐに消えるんじゃないかな」
「そうなのでしょうか? 自分ではよく分かりませんが」
「マリーはとても勇敢だったよ」
モンスターが家を破壊して、避難所へ移動することになった時、気配察知持ちのマリーに何度も危ない所を助けられた。
モンスターとの接敵を避けられそうになかった時、マリーが囮になって敵を遠くまで引き連れていったこともある。結局マリーはそのまま殺されてしまって、ソウルカードから蘇生したけど最後まで弱音をはかなかった。
そんなマリーなら【臆病】スキルもきっと克服できるはずだ。
「それと、実はもう一つ作戦があるんだ。このカードを見て」
「これはヘルハウンドのカードですね。後天スキル、【能天気】……?」
【種族】ヘルハウンド
【戦闘力】70
【先天技能】
・黒妖犬:ブラックドッグ。妖精の一種で人を不幸にする妖精犬の総称。敵の状態異常耐性を下げる魔法が使える。追跡を内包するが、川を渡って追跡することはできない。
・透明化:透明になって姿を隠すことができる。
【後天技能】
・能天気:精神状態異常に耐性。気配察知などの特定のスキルにマイナス補正。
「見ての通り【能天気】は気配察知などのスキルにマイナス補正を加えるデメリットスキルなんだ。でも、初心者はウルフ系のカードを索敵に使うことが多いから、このスキルとは非常に相性が悪い。つまり買い手がいないし価値がつかない」
Eランクのヘルハウンド。普通なら10万円が相場になるカードで、Fランクのワイルドウルフを使う冒険者がランクアップ先に選ぶ定番カードだ。
需要も供給も多く、値段が大きく上がることもないし、崩れることもない。そんなカードだけど、この【能天気】ヘルハウンドは不人気だったのでなんと3万円で買えた。お正月に貰ったお年玉予算で買えたのは凄く幸運だった。
とってもお買い得なカードだったけど、この【能天気】が今回のカギだ。
「ヘルハウンドの【能天気】スキルと、ルーパの【臆病】スキルを一緒につけたらどうなると思う?」
「それは……能天気な臆病者になる、のでしょうか?」
「でも能天気と臆病って真逆だよね? 僕はこの二つを同時につけたらスキル同士がぶつかって消えるんじゃないかって考えてるんだ」
「スキルの、対消滅……ですか」
デメリットスキルの解消の仕方を研究している本やHPがたくさんあったけど、そこではデメリットスキルの正反対の行動をさせるのが効果的だって書いてあった。
【音痴】なら正しい音程でひたすら歌わせる。
【ドジ】なら一つ一つの作業を丁寧に行い、成功させ続ける。
こうすることでデメリットスキルは消滅する、というのが一般論になっている。
そして【臆病】と【能天気】はほぼ真逆の性質だろう。
【臆病】のせいで不安や恐怖を抱いても、【能天気】のスキルが緩和させる。
【能天気】が油断させようとしても、【臆病】のスキルがそれを阻止する。
そうやって真逆の行動を続けることで、二つとも消えんじゃないかと僕は考えている。
ただ、そうは言ってもスキルを覚えさせられるのはマリーだ。マリーの負担が大きすぎるようなら止めるつもりだ。
「ランクアップするのはマリーだから、マリーが嫌なら断っていいよ。他の種族のカードや、もっと優秀なスキルのついたカードが良いって言うならがんばってお金貯めるから」
「……いえ、このカードでランクアップをお願いします」
「いいの?」
「はい! ミカさんが待っていますから、早く復活させてあげましょう!」
「わかった。それじゃあ、まずヘルハウンドを使うよ」
マリーのカードの上に【能天気】ヘルハウンドのカードを重ねた。
その瞬間、マリーの毛並みが黒に染まった。
【種族】ヘルハウンド(マリー)
【戦闘力】70(15UP!)
【先天技能】
・黒妖犬:ブラックドッグ。妖精の一種で人を不幸にする妖精犬の総称。敵の状態異常耐性を下げる魔法が使える。追跡を内包するが、川を渡ることはできない。
・透明化:透明になって姿を隠すことができる。
【後天技能】
・保護者
・気配察知
・庇う
・生還の心得
・集団行動(NEW!)
・能天気(NEW!)
「マリー。ヘルハウンドに変更して【能天気】がついたけどどう?」
「んー……。大丈夫です、問題ありません」
「本当に?」
「はい、このままもう一回ランクアップしても大丈夫だと思います! やりましょう、マスター!」
「そ、そう……」
確かにマリーなんだけどちょっと受け答えが軽い気がする。これってやっぱり【能天気】の影響?
でも本人はランクアップする気だし、少し違和感があるけどすぐにスキルが消えれば問題ないかな?
「それじゃあ、ルーパにランクアップさせるよ」
「はい!」
今ランクアップさせたばかりのマリーのカードの上に、【臆病】ルーパを重ねた。
黒く染まった毛並みが明るい茶色へと変わった。
【種族】ルーパ(マリー)
【戦闘力】120(15UP!)
【先天技能】
・母なる狼:ロムルスとレムスに乳を与えた狼。一日に赤子十人分の乳を生み出すことが可能で、それを飲んだ者の心身を健康に保ち、健全な育成を促す。育児を内包する。
(育児:育児に対する一定の知識と技能を持っている。特定行動時、行動にプラス補正)
・集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正。
【後天技能】
・保護者
・気配察知
・庇う
・生還の心得
・集団行動→先天技能に統合
・能天気(NEW!)
・透明化+気配遮断→かくれんぼ(NEW!)
・臆病(NEW!)
「マリー……? どう?」
「……」
【能天気】と【臆病】という二つのスキルをつけた結果、今のマリーの心の中はどうなっているのか。恐る恐る尋ねると、マリーは自分の心の内を確かめるように、目を瞑ったまま言った。
「マスター。私の心の中がざわざわとして、なんとなく落ち着かない感じです」
「そうなんだ。やっぱり精神に影響が出ているのかも。落ち着くまで奥に行くのは止めて、安全地帯で休もうか」
「はい。それとマスター。お願いがあります」
「お願い?」
「私のお乳を飲んでください」
「え?」
マリーのお腹から大きな乳首が垂れているのが見える。子供を産んだ母狼のおっぱいってあんな感じなんだ。
「今の私は【母なる狼】のスキルでミルクを出すことができます。マスターに飲んでほしいんです。とっても体いいですよ」
「えーと」
確かにそういうスキルがあるのは知っていた。
でも、あれは乳離れできていない赤ちゃん用のミルクであって、中一の僕が飲むようなものじゃないなと思うんだけど。
「さあ、マスター。わがまま言わずに飲んでください。ほら、ここに来て横になってください」
「……はい」
結局マリーの押しに負けて、レジャーシートに上向きに横たわった。するとすぐにマリーが移動して乳房を僕の顔の前に差し出した。
もう中学生なのに、僕はなんでこんなことをしているんだろう……。
そこで考えるのを止めて、僕は無心でマリーの乳を飲み始めた。
悔しいけど、とても甘くて飲みやすかった。
*
【種族】ルーパ(マリー)
【戦闘力】120(15UP!)
【先天技能】
・母なる狼:ロムルスとレムスに乳を与えた狼。一日に赤子十人分の乳を生み出すことが可能で、それを飲んだ者の心身を健康に保ち、健全な育成を促す。育児を内包する。
(育児:育児に対する一定の知識と技能を持っている。特定行動時、行動にプラス補正)
・集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正。
【後天技能】
・保護者→母性:我が子を守る母の愛。我が子に対する行動にプラス補正。守護者、献身の盾、良妻賢母を内包する。
(守護者:状態異常に対する耐性が上昇。特定の行動時に大きなプラス補正)
(献身の盾:周囲の味方のダメージを肩代わりすることができる。使用中、防御力と生命力が極めて大きく向上)
(良妻賢母:妻や母として理想的な技能をすべて備えている。対象への愛情の深さにより、行動にプラス補正。料理、清掃、育児、性技を内包する。)
・気配察知
・庇う→母性に統合。
・生還の心得
・能天気(LOST!)
・かくれんぼ
・臆病(LOST!)
「マスターはたっぷりミルクを飲んでいい子ですね~」
狙い通り、マリーについた【臆病】も【能天気】も消すことができた。心の中のざわつきもなくなったようで落ち着いている。
だけど、僕はその代わりに何か大切なものを失った気がした。
【Tips】マリー
元々は雌のワイルドウルフ。明るい茶色の毛並みをしている雌狼。人型ではない。
【従順】と【気配察知】という使い勝手のいいスキルがあったのでショウの父親が確保しておいた。
第二次アンゴルモアでショウに呼び出され、最初は従順に静かにショウの側についていたが、子供特有のハラハラする行動を見守っているうちに【従順】から【保護者】へ変化した。
現在はDランクのルーパへランクアップ。【保護者】も【母性】へランクアップ。
子狼に餌を運ぶ母狼のように、せっせと迷宮の主を倒して踏破迷宮を稼いでいる。マスター(我が子)のために戦っているので戦闘力の数値以上に強い。
ミカの復活も近いだろう。
ダンジョンに入る時に必ずショウに母乳を飲ませようとするので、仕方がないので専用の小さなテントを買った。母乳のお陰で心身ともに健康で過ごしている。
※ルーパはこの作品のオリジナルカードです。原作では未登場。
※エンジェルとヘルハウンドもデータが分からなかったので適当にでっち上げました。
【次のお話】
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