色違いタイプ統一縛りニキのポケ界転生日記   作:霜月ルイ

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chapter:10 カンムリ雪原、寒すぎワロタ。 

 全国のポケモントレーナーの皆様。

 突然ですが、一つ質問があります。

 

 皆様は、雪国というものをご存じでしょうか。

 

 真っ白な雪景色、幻想的な氷の世界。

 そして、普段はなかなか出会えない珍しいポケモンたち。

 

 実に素晴らしい。

 まさに冒険心をくすぐる夢のような場所である。

 

 ……だがしかし。

 俺は、一つだけ重大な事実を見落としていた。

 

 それは……雪国は、クッソ寒いということである。

 

 いや、知ってたよ?

 雪が降るんだから、寒いのは当然だよ?

 

 でもさぁ、ゲームの中ではどれだけ雪が降っていようが、主人公は平然と走り回っていたわけじゃん?

 吹雪の中でも自転車を爆走させられるし、凍った海にも普通に入れるし。

 だから俺も、なんとなく大丈夫な気がしていたんですよ。

 

 ……結論から申し上げますと。

 

 現実世界にそんな優しい仕様は存在しませんでした。

 

 運営さん。

 

 寒さ耐性の実装、忘れてません?

 

 アプデか修正パッチ早く当ててください。

 

 ♦

 

 さて。

 

 前回、おばあちゃんからカンムリ雪原へのお誘いを受けた俺。

 

 あれから数か月。

 

 無事に六歳の誕生日を迎えた俺は、ついに待ちに待った旅行当日を迎えていた。

 

「ママン! はやく! はやく!」

 

「リン、落ち着きなさい。まだ出発まで時間があるでしょう?」

 

「だってカンムリせつげんだよ!?」

 

「はいはい。わかってるわよ」

 

 ママンは苦笑しながら、俺の上着を整えてくれた。

 

 ちなみに今回の旅行は、家族三人とムーちゃんで向かう予定である。

 パパンも仕事の休みを取ってくれたらしい。

 

 ありがてぇ。

 家族旅行、最高。

 

 なお、今回の荷物については、出発前にちょっとした騒動があった。

 

「……リン?」

 

「はい!」

 

「この鞄の中身は何?」

 

「モンスターボール!」

 

「……何個?」

 

「……ひゃく?」

 

「置いていきなさい」

 

 ……即答である。

 

 いや、待ってママン。

 ちゃんと説明させてほしい。

 

 カンムリ雪原という場所は、前世の俺にとって非常に思い入れのある場所なのだ。

 

 伝説ポケモン。

 珍しい野生ポケモン。

 そして、色違い厳選。

 

 こんな場所にオシャボを持っていかないなんて、廃人の名折れでは?

 

「旅行なのよ?」

 

「うん!」

 

「おばあちゃんに会いに行くのよ?」

 

「うん!」

 

「……ポケモンを百匹も捕まえに行くわけじゃないでしょう?」

 

 ……なるほど、それは確かに。

 

 百匹も捕まえたところで、世話ができるわけではない。

 前回もママンから散々言われたことだ。

 

 よし、ここは素直に引き下がろう。

 

「……じゃあ、にじゅっこ!」

 

「……二十個?」

 

「うん!」

 

 …………しばしの沈黙。

 

「……それなら、まあ……」

 

 おっ、いける?

 

「ただし、新しいポケモンを迎えるときは必ずパパかママに相談すること!」

 

「はい!」

 

「危ないところには絶対に行かないこと!」

 

「はい!」

 

「それから、勝手に野生ポケモンを追いかけないこと!」

 

「はい!」

 

 よし、交渉成立!

 

 というわけで、今回は厳選した二十個のボールを持参することになった。

 

 もちろん、ハイドと一緒に作ったウルトラボールとマスターボールもその中に含まれている。

 

 この二つについては、専用のケースに入れて大切に保管。

 

 何しろ一品物だからな。

 なくしたら洒落にならない。

 

 ……まあ。

 

 使う機会があるかはわかりませんけどね!

 

 ♦

 

 そんなわけで。

 

 列車を乗り継ぎ、ようやく到着したカンムリ雪原。

 

 駅を出た瞬間、俺は思わず両手を広げた。

 

「うおおおおお!!」

 

 見渡す限りの雪景色。

 遠くにそびえる山々。

 真っ白に染まった大地。

 そして、冷たい風に揺れる木々。

 

 ついに……、カンムリ雪原キターーー!!!

 

 いやぁ!ついに来た!

 DLC第二弾!

 ピオニーそっちのけで何度も駆け回った、あのカンムリ雪原!

 

 それが今、目の前に広がっている!

 テンション爆上がりである。

 

「パパン! みて! ゆき!」

 

「おお、すごいな!」

 

「ぜんぶまっしろ!」

 

「そうだなぁ!」

 

 俺は興奮のあまり、その場でぴょんぴょん跳ね回った。

 

 ……が、その直後。

 

 びゅおおおおおっ!

 

「……ひょ?」

 

 冷たい風が、顔面を直撃した。

 

 ……あれ?

 

 なんか、めちゃくちゃ寒くない?

 

「……さむっ」

 

 ぶるり。

 

 身体が震えた。

 

 ……いやいや待て待て。

 

 まだ駅から出たばっかりだぞ?

 この程度の寒さでへこたれてどうする!

 

 俺は元世界一位のポケモン廃人。

 この程度の寒さなど、気合いで――

 

 びゅおおおおおっ!!

 

「さっむぅぅぅぅ!!」

 

 無理でした。

 

 いや、無理。普通に無理。

 

 気合いではどうにもならないタイプの寒さである。

 

「リン、上着の前を閉めなさい」

 

「ママン! まって! まずはけしきを!」

 

「閉めなさい」

 

「でもポケモンが!」

 

「閉めなさい」

 

「……はい」

 

 圧倒的敗北。

 ママンとの読み合い、今回も完敗である。

 

 この人、絶対に特性『プレッシャー』持ってるだろ。

 PPがゴリゴリ削られていくんですが?

 

「ほら、手袋もつけて」

 

「はーい……」

 

 もこもこの手袋。

 分厚い上着。

 首にはマフラー。

 帽子も完備。

 

 完全防寒装備、完成。

 

 ♦

 

「ムーちゃん! でておいで!」

 

 俺はモンスターボールを取り出した。

 白い光が弾け、中から現れたのは我が相棒。

 色違いグソクムシャ、ムーちゃんである。

 

「グソッ!」

 

 白い装甲。

 赤い触角。

 堂々たる体躯。

 

 ……うむ、やはり格好いい。

 

 雪景色に白い装甲が映えて、いつも以上に美しく見える。

 

 これぞ色違いの醍醐味。

 

 最高か?

 

「ムーちゃん! ゆきだよ!」

 

「グソ?」

 

 ムーちゃんが、きょろきょろと辺りを見回した。

 

 そして。

 

 びゅおおおおっ!

 

「グソッ!?」

 

 ムーちゃん、硬直。

 

 さらに冷たい風が吹く。

 

「……グソ」

 

 ムーちゃんは、そろりと俺の背後へ回り込んだ。

 

 ……いやさぁ、待って?

 君、水タイプでもあるよね?

 むし・みずタイプだよね?

 

 氷技は等倍で受けられるはずなんですけど?

 

 ……そうだわ。

 

 タイプ相性は、あくまで技を受けたときの話。

 寒いものは寒い、それは当然。

 また一つ、ゲームの常識が崩壊した。

 

「……ムーちゃん、さむい?」

 

「グソ……」

 

「そっかぁ……」

 

 俺はムーちゃんの前脚を、そっと撫でた。

 

「じゃあ、はやくおばあちゃんのところにいこう!」

 

「グソッ!」

 

 ……おっ、元気になった。

 どうやら、温かい場所へ行けると聞いて安心したらしい。

 

 うむ、かわいい。

 やっぱりムーちゃんは最高である。

 

 ♦

 

 フリーズ村へ向かう道中。

 俺は周囲の景色に釘付けになっていた。

 

 雪の上には、野生ポケモンたちの足跡が残っている。

 遠くではウリムーが雪を掘り返しており、木の陰にはユキハミらしき小さな姿も見えた。

 

 ……ああ、いい。

 すごくいい、これぞポケモン世界。

 

 前世では画面越しにしか見られなかった景色だ。

 

 今では、その中を自分の足で歩いている。

 ……まあ、六歳児の足なので、すぐ疲れるんですけどね。

 

「パパン! あそこ! ウリムー!」

 

「おお、本当だな!」

 

「そのとなり、ユキハミ!」

 

「……よく見つけたな」

 

「えへへ!」

 

 ふっ、当然である。

 前世では色違いを探すため、画面の端から端まで凝視し続けていた男だぞ?

 野生ポケモンの発見など、お茶の子さいさい――

 

「リン、前を見なさい!」

 

「うわっ!?」

 

 ずぼっ。

 

 ……ん?

 

 あれ、足が……抜けない?

 

 どうやら雪の深い場所に足を取られてしまったらしい。

 

「……パパン」

 

「ん?」

 

「……たすけて」

 

 結局、パパンに抱き上げてもらった。

 

 ……くっ、屈辱。

 

 元世界一位の対戦廃人、雪に敗北。

 しかも相手はただの雪。

 タイプ相性以前の問題である。

 

「ははは! リンは本当にポケモンが好きだな!」

 

「だって、いっぱいいるんだもん!」

 

「そうだな。でも、歩くときはちゃんと前を見るんだぞ?」

 

「……はい」

 

 ……正論だ、ぐうの音も出ない。

 

 なお、ムーちゃんは少し離れた場所から、心配そうに俺を見つめていた。

 

「グソ……?」

 

「だいじょうぶだよ、ムーちゃん!」

 

「グソッ!」

 

 ……うむ。

 

 我が相棒は優しい。

 

 ただし……君が助けに来たら、二人まとめて雪に埋まる可能性があるので勘弁してほしい。

 

 体重差というものは残酷なのである。

 

 ♦

 

「おばあちゃーん!」

 

 ようやく到着した、フリーズ村近くの一軒家。

 

 パパンが扉を叩くと、中から足音が聞こえてきた。

 

「はいはい、今開けるよ」

 

 がちゃり、と扉が開く。

 

 そこには、優しそうなおばあちゃんが立っていた。

 

「あらまあ! リンちゃん!」

 

「おばあちゃん!」

 

 俺は思わず駆け寄った。

 おばあちゃんも、嬉しそうに両手を広げてくれる。

 

「よく来たねぇ! 寒かったでしょう?」

 

「さむかった!」

 

「ふふふ。そうだろうねぇ」

 

 ぎゅっと抱きしめられる。

 

 ……ああ、温かい。

 

 これが人のぬくもり。

 

 雪原を歩いてきた身体に染み渡るぜ。

 

「まあまあ、こんなに大きくなって!」

 

「えへへ!」

 

「六歳になったんだったねぇ」

 

「うん!」

 

「ヨロイ島で修行したんだって?」

 

「そうなの!」

 

 おばあちゃんは嬉しそうに俺の頭を撫でた。

 

 そして。

 

「……あら?」

 

 俺の後ろにいるムーちゃんへ視線を向ける。

 

「……リンちゃん」

 

「なに?」

 

「その、大きなポケモンは……?」

 

「ムーちゃん!」

 

「……ムーちゃん?」

 

「うん!」

 

 おばあちゃんは、ムーちゃんをじっと見つめた。

 

 重厚な装甲。

 鋭い前脚。

 真っ赤な触角。

 どこからどう見ても歴戦の武士。

 

 そんなポケモンの名前が。

 ムーちゃん。

 

 ……ふむ。改めて考えると、なかなかのギャップである。

 

「……ずいぶん可愛らしいお名前だこと」

 

「でしょ!」

 

「ふふっ。よろしくね、ムーちゃん」

 

「グソッ!」

 

 ムーちゃんも元気に挨拶した。

 

 ……うむ、礼儀正しい。

 

 さすが我が相棒。

 

 なお、その直後。

 

 びゅおおおおおっ!

 

「グソッ!?」

 

 外から吹き込んできた冷たい風に驚き、ムーちゃんが慌てて家の中へ逃げ込んだ。

 

 おばあちゃんが目を丸くする。

 

「……あらあら」

 

「ムーちゃん、さむいのにがてなんだ!」

 

「ふふふ。そうなのねぇ」

 

 ……いやぁ。

 

 強そうな見た目とのギャップがすごい。

 

 もはやギャップ萌えの化身では?

 

 ♦

 

 おばあちゃんの家は、とても居心地がよかった。

 

 木の香りがする部屋。

 暖かな暖炉。

 窓の外には雪景色。

 そして、テーブルには温かい飲み物とお菓子。

 

 ……最高か?

 

 俺は両手でカップを持ち、温かいミルクを一口飲んだ。

 

「……ふぅぅ」

 

 生き返る。

 マジで生き返る。

 これぞ文明の利器。

 

 暖房を発明した人間には、ノーベル賞を三つくらいあげてもいい。

 

 ……いや、暖炉ですけど。

 

 ところで。

 

「……ムーちゃん?」

 

「グソ……」

 

 我が相棒は、暖炉の前で丸くなっていた。

 

 しかも、ものすごく幸せそう。

 

 ……あの、ムーちゃん?

 

 君、さっきまで外で震えてたよね?

 

「……あったかい?」

 

「グソッ!」

 

 即答。

 

 ……うん。まあ、いいか。

 

 ポケモンだって寒いものは寒いし、温かい場所が好きなのは当然だ。

 

 おばあちゃんも、その様子を見て笑っていた。

 

「ふふふ。ずいぶん寒がりな子だねぇ」

 

「そうなんだよねぇ」

 

「でも、いい子みたいだね」

 

「うん!」

 

 俺は胸を張った。

 

「ムーちゃん、すっごくつよいんだよ!」

 

「そうなのかい?」

 

「うん! でも、ちょっとこわがり!」

 

「……ふふっ。そういう子もいるさ」

 

 おばあちゃんは、ムーちゃんのほうを見た。

 

「ポケモンだって、それぞれ性格が違うんだからねぇ」

 

 なんだろう。

 その言葉、マスタード師匠からも聞いた気がする。

 

 知っていることと、わかってあげられることは違う。

 

 そういう話だった。

 

 ……やっぱり、大人ってすごいな。

 俺が前世でどれだけポケモンバトルをしていても、知らなかったことを当たり前みたいに知っている。

 

 ……まあ、今世の俺はまだ六歳児なんですけどね。

 

 そこは仕方ない。

 

 ♦

 

 その日の夕方。

 俺はおばあちゃんに、カンムリ雪原のポケモンについて色々と聞いていた。

 

「おばあちゃん! このへんって、どんなポケモンがいるの?」

 

「そうだねぇ。ウリムーやイノムーもいるし、ユキハミやモスノウもいるよ」

 

「うんうん!」

 

「山のほうには、もっと珍しいポケモンもいるけど……」

 

「……けど?」

 

「危ない場所も多いから、リンちゃんだけで行っちゃ駄目だよ?」

 

 先手を打たれた。

 まだ何も言ってないんですが!?

 

「……はーい」

 

「ふふっ。いい子だね」

 

 ……このおばあちゃん、なかなか侮れない。

 ママンと同じタイプの強者である。

 

 しかし、今の俺は昔とは違う。

 ヨロイ島で一年以上修行したのだ。

 

 危険な場所へ勝手に入らないことくらい、ちゃんと理解している。

 

 ……そのうえで安全な範囲で色違いを探すのは、問題ないはず。

 

 ふっふっふ。

 完璧な計画である。

 

「そういえばねぇ」

 

 おばあちゃんが、ふと思い出したように言った。

 

「最近、マックスダイ巣穴のほうが騒がしいんだよ」

 

 マックスダイ巣穴?

 

「……なにかあったの?」

 

「詳しいことはわからないんだけどねぇ」

 

 おばあちゃんは、少し困ったような顔をした。

 

「調査員さんたちが、毎日のように出入りしているんだよ」

 

 ……ほう、調査員?

 

 これは、ちょっと気になる。

 

「どうして?」

 

「なんでも、普段とは違う光が見えるんだとか」

 

「……ひかり?」

 

「そう。巣穴の奥で、変わった色の光が見えたって話でねぇ」

 

 変わった色の光。

 

 ……ふむ、ダイマックスエネルギーの反応か?

 

 それとも、珍しいポケモンでも現れたのだろうか。

 

「それだけじゃなくてねぇ」

 

 おばあちゃんが続ける。

 

「聞いたことのない鳴き声が聞こえたり、調査用の機械が急に動かなくなったりするそうなんだよ」

 

 ……あれ、なんだろう。ちょっと様子がおかしくない?

 

「普通のポケモンじゃないのかもしれないねぇ」

 

 普通のポケモンじゃない。

 変わった色の光。

 異常なエネルギー反応。

 見たことのない何か。

 

 ……待てよ?カンムリ雪原。

 

 マックスダイ巣穴。

 そして、異常なエネルギー。

 

 …………。

 

 ……まさか。

 

 ウルトラホール?

 

 いやいや、待て待て待て。

 いくらなんでも、それは考えすぎだろう。

 

 確かに前世のゲームでは、結構軽いノリでカンムリ雪原でウルトラビーストと出会うことができた。

 

 でも、ここは現実。

 

 ゲームと同じように何もかもが起きるとは限らない。

 そもそも、ウルトラホールってアローラ地方の話じゃなかったっけ?

 

 ……いや、可能性がゼロとは言い切れない。

 だって、目の前の世界は、すでに俺の知っているゲームとは少しずつ違っているのだから。

 

「……リン?」

 

 パパンが声をかけてきた。

 

「どうした? 急に静かになって」

 

「……なんでもない!」

 

「そうか?」

 

「うん!」

 

 ふぅ、危ない危ない。

 変なことを口走るところだった。

 

 さすがに六歳児が、突然ウルトラホールの話を始めたら不審がられる。

 

 ……いや、今さらか?

 

 俺、これまでに相当やらかしてる気がするんですが?

 

 ……まあ、いい。

 

 とりあえず、今は様子見だ。

 何かあったとしても、調査員たちが対応してくれるだろう。

 

 俺はまだ六歳児。

 無茶をするつもりはない。

 

 ……ただ。

 

 少しだけ、気になるな。

 

 ♦

 

 その夜。

 夕食を終えた俺は、ムーちゃんと一緒に窓の外を眺めていた。

 

 雪が、静かに降っている。

 昼間とは違い、辺りはすっかり暗くなっていた。

 

 窓の向こうには、街灯に照らされた白い道。

 遠くに見える、雪に覆われた山々。

 

 ……綺麗だなぁ。

 

 前世でも雪景色は見たことがある。

 でも、こうしてポケモンのいる世界で眺めると、何もかもが特別に感じられる。

 

「ムーちゃん、きれいだね」

 

「グソ……」

 

 ムーちゃんも、窓の外を見つめている。

 

 ……いや、正確には暖炉のそばから窓の外を見つめている。

 

 寒いのは嫌だけど、雪景色は気になるらしい。

 実にかわいい。

 

「……あした、ちょっとおさんぽしような」

 

「グソ?」

 

「あったかいふく、ちゃんときて!」

 

「グソッ!」

 

 ……おっ。乗り気になった。

 

 よしよし。

 

 明日は、おばあちゃんに雪原のことをもっと教えてもらおう。

 それから、パパンと一緒に野生ポケモンを観察して。

 安全なところで、ちょっとだけ修行もして。

 

 ……もちろん色違いがいたら、全力で観察する。

 

 捕まえるかどうかは、そのあと相談。

 

 うむ。完璧なプランである。

 

 そんなことを考えていた、そのときだった。

 

 ――ピカッ。

 

 ……ん?

 

 窓の外。

 

 遠くの山の向こうが、一瞬だけ明るくなった。

 

 雷?

 

 いや、なんか色が違ったような……。

 

「……ムーちゃん?」

 

「グソ?」

 

「いま、なんかひかった?」

 

 ムーちゃんも、不思議そうに首を傾げる。

 

 俺は窓に近づいた。

 

 外は相変わらず雪が降っている。

 遠くの山々も、暗闇に包まれていた。

 

 ……気のせいか?

 

 そう思った、次の瞬間。

 

 ――ピカァァッ!

 

「……っ!?」

 

 今度は、はっきりと見えた。

 

 遠くの雪原。

 その上空に、細長い光の柱が立ち上がっている。

 

 紫色とも、青色ともつかない、不思議な輝き。

 雪雲を突き抜けるように伸びた光は、数秒ほど揺らめいたあと、ふっと消えた。

 

 ……は?

 

 あれ絶対に普通の雷じゃないよな?

 少なくとも、俺の知っているダイマックスの光とは違う気がする。

 

 ……まさか、本当に?

 

「……ウルトラホール?」

 

 思わず呟いた。

 

 すると。

 

「グソ……」

 

 隣にいたムーちゃんが、低く鳴いた。

 

 その身体が、ほんの少しだけ強張っている。

 

 ムーちゃんも、何かを感じたのか?

 

 俺はそっと、その大きな前脚に触れた。

 

「……だいじょうぶだよ、ムーちゃん」

 

「グソ……?」

 

「まだ、なんにもわかんないし」

 

 そう、何もわからない。

 

 ただ、遠くで妙な光が見えただけだ。

 

 それが本当にウルトラホールなのか。

 それとも、まったく別の現象なのか。

 今の俺には判断できない。

 

 ……でも。胸の奥が、妙にざわついていた。

 

 前世で何度も見た、あの異次元へとつながる光。

 

 もし、あれが本当にウルトラホールだったとしたら。

 この雪原には、俺の想像を超える何かがいるのかもしれない。

 

「……ムーちゃん」

 

「グソ?」

 

「……なんか、すごいことになりそうだな」

 

「グソ……」

 

 ムーちゃんが、俺の身体をそっと抱き寄せた。

 

 ……うん、ありがとう。

 

 でもね、今は別に怖がってないから。

 

 むしろ、ちょっとワクワクしてるくらいで――

 

 びゅおおおおおっ!

 

 窓の外で、強い風が吹いた。

 

「……さっむ!」

 

「グソッ!?」

 

 …………いや、待て。

 

 やっぱり寒いわ。

 

 何がワクワクだ。

 

 まずは暖炉だ、暖炉!

 

「ムーちゃん! あったまりにいこう!」

 

「グソッ!」

 

 俺たちは揃って暖炉の前へ移動した。

 

 ……うむ。

 

 やはり文明は偉大である。

 

 さて。

 

 明日も早いし、そろそろ寝るとしよう。

 何が起きるにせよ、まずは体調管理が第一。

 ママンにも、師匠にも、散々教えられたことだ。

 

 ……それにしても。

 

 あの光、本当に何だったんだろうな……。

 

 俺は、もう一度だけ窓の外を見た。

 雪は静かに降り続けている。

 先ほどの光は、もうどこにも見えなかった。

 

 ……まあ、いいか。

 明日、おばあちゃんに聞いてみよう。

 きっと何か知っているはずだ。

 

 そう考えながら、俺はムーちゃんの隣に腰を下ろした。

 

 ……なお。このときの俺は、まだ知らなかった。

 

 この雪原で、今まさに。

 とんでもなく面倒な出会いが、俺を待ち受けているということを。

 

 ……。

 

 …………。

 

 いや、ほんと。

 

 後から思えば、あの光を見た時点で察しておくべきだった。

 

 なんたって、ここはポケモンの世界。

 

 しかもカンムリ雪原。

 

 何が起きてもおかしくない場所なのである。

 

 ……まあ。

 

 ひとまず今は。

 

 寒すぎるので、お布団に避難します。

 

 おやすみなさい。




今日は書き溜めから何話か投稿します。
よかったら、お気に入り、★、感想お願いします。

投稿三日くらいで思ったより反響があってうれしく思います。
今後ともお付き合いいただけますと幸いです。

感想も一つ一つ大切に読ませていただいております。
また、まとまった機会に返していこうと思いますので、たくさんのご感想お待ちしております。

※ムーちゃんの地面等倍は私の勘違いでした。
 現在は修正しております。
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