色違いタイプ統一縛りニキのポケ界転生日記   作:霜月ルイ

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chapter:13 素早さカンストのUBを追いかけるのは無理ゲー。

 カンムリ雪原で起きた、あの騒動から二日が経過した。

 

 マックスダイ巣穴で発生した異常なエネルギー反応は、現在のところ落ち着いているらしい。

 空を引き裂くような光も、地面を揺らす不気味な振動も、あれ以来確認されていないという。

 

 調査員たちも、ひとまず胸を撫で下ろしているそうだ。

 

 ……ただし。一つだけ、解決していない問題がある。

 

 そう、あのフェローチェである。

 

 あの日、巣穴から飛び出してきたウルトラビースト。

 圧倒的な素早さで雪原を駆け抜け、あっという間に姿を消してしまった、あのポケモン。

 調査員たちは周辺の捜索を続けているものの、いまだに発見できていないらしい。

 

 ……いやぁ、困りましたねぇ。

 

 前世であれば、あれだけ欲しかった色違いフェローチェ。

 画面に現れた瞬間、発狂しながらボールを投げていたことだろう。

 

 しかし、今回ばかりは事情が違う。

 あの子は、俺の知っているゲームのフェローチェではない。

 

 少なくとも、俺の指示を待ってくれる存在ではない。

 知らない世界に放り出され、何もわからないまま逃げ続けている、一匹のポケモンなのだ。

 

 ……そして。

 俺は、あの子が最後に見せた表情を忘れられずにいた。

 

 ♦

 

「……まだ見つかっていないのかい?」

 

 おばあちゃんが、通信端末を片手に呟いた。

 

 朝食を終えたばかりのリビング。

 暖炉では薪が静かに燃えており、その前ではムーちゃんが丸くなっている。

 

 ……お前、もう完全に定位置になってるな。

 たまには外の空気も吸おうぜ?

 

 いや、寒いけど。

 

「ええ……そうなんですか」

 

 おばあちゃんは、しばらく相手の話を聞いていた。

 

「わかりました。無理はしないでくださいね」

 

 通話が終わる。

 

「……おばあちゃん?」

 

「なんだい、リンちゃん」

 

「あのポケモン、まだみつからないの?」

 

 おばあちゃんは、少しだけ困ったような顔をした。

 

「そうみたいだねぇ」

 

「……そっか」

 

「調査員さんたちも探しているんだけど、あんまり足が速くて、なかなか見つけられないんだって」

 

 ……まあそりゃそうだろうな。

 

 何しろ、フェローチェの素早さ種族値は151。

 

 対する、我が相棒グソクムシャ。

 

 素早さ種族値40。

 

 ……差がえぐいんよ。

 

 いや、知ってたよ?

 対戦では何度も使ってたから、当然知ってた。

 でも、実際に目の前で動かれると話が違う。

 

 あの速さ。

 人間どころか、普通のポケモンですら目で追うのが難しい。

 

 仮にムーちゃんと追いかけっこをさせたとして。

 

 よーい、ドン!

 

 フェローチェ、瞬間移動みたいな加速。

 ムーちゃん、頑張って走る。

 俺、置いていかれる。

 

 無理ゲーにもほどがある。

 

 そもそも勝負にならない。

 開始三秒で敗北確定である。

 

 しかし。

 

「……おばあちゃん」

 

「うん?」

 

「はやくはしれるのに、どうしてつかまらないの?」

 

「……どういうことだい?」

 

「だって、ずっとはしってたら、つかれちゃうでしょ?」

 

 おばあちゃんは、少しだけ目を見開いた。

 

 ……そう、そこなのだ。

 あのフェローチェは、確かに速い。

 でも、無限に走り続けられるわけではない。

 疲れれば休むし、お腹だって空く。

 

 ましてや、ここはカンムリ雪原。

 雪と氷に覆われた、慣れない土地である。

 どれほど強いポケモンでも、休息なしに生きていけるはずがない。

 

「……どこかで、やすんでるんじゃないかな」

 

 俺がそう言うと、おばあちゃんは静かに頷いた。

 

「……そうかもしれないねぇ」

 

 そして、窓の外へ視線を向ける。

 

「それなら、あの子が安心して休める場所を探してあげないといけないね」

 

 ……そうか、追いかけるんじゃない。

 隠れていそうな場所を探せばいいのか。

 

 ♦

 

 その日の昼。

 おばあちゃんは、以前お世話になった調査員のお姉さんに連絡を取ってくれた。

 

 フェローチェの捜索について、何か協力できることはないか。

 そう相談してくれたのである。

 

 もちろん、俺が危険な場所へ入ることは許されない。

 そこは絶対条件。

 ママンからも、パパンからも、何度も念を押されている。

 

 ……ちなみに。

 

「リン、本当に危ないことはしないんだな?」

 

「しない!」

 

「勝手にポケモンを追いかけたりしないな?」

 

「しない!」

 

「調査員さんの指示には従うな?」

 

「うん!」

 

 パパンが真剣な表情で確認してくる。

 

 ……いや信用なさすぎません?

 俺、そんなに危険人物扱いされてる?

 

 

 ……ヨロイ島でのウッウロボ騒動。

 バウタウンでの草むらレベリング。

 数々の色違い厳選未遂。

 

 

 …………残当、反論の余地なし。

 これは完全に自業自得である。

 

「……約束できるか?」

 

「できる!」

 

「……よし」

 

 パパンは俺の頭を撫でた。

 

「じゃあ、父さんも一緒に行こう」

 

 ……おお、ありがたい。

 やはり持つべきものは理解のあるパパンである。

 

 ♦

 

 調査員たちが設けた臨時詰め所。

 

 そこでは、数人の大人たちが地図を囲んで話し合っていた。

 

「あら、リン君」

 

「こんにちは!」

 

「ふふっ。今日も元気ね」

 

 以前、ウルトラホールについて話したお姉さんが出迎えてくれた。

 

 ……うむ、どうやら覚えていてくれたらしい。

 

「それで、今日はどうしたの?」

 

「フェローチェ……じゃなくて、あのポケモン!」

 

「……フェローチェ?」

 

 ……おっと、しまった。

 普通に名前言っちゃった。

 

 いや、待て。

 俺が名前を知っていること自体は、別におかしくない。

 アローラ地方の研究資料に載っているポケモンだし。

 たぶん……うん、きっと大丈夫。

 

「そのポケモン、まだみつかってないんでしょ?」

 

「……ええ。残念だけど」

 

「だったら、かくれそうなところをさがしたらどうかなって!」

 

 女性は、少し考えるように顎へ手を当てた。

 

「隠れそうな場所?」

 

「うん!」

 

 俺は机の上に広げられた地図を見た。

 

 カンムリ雪原。

 

 広大な雪原と岩山。

 凍った湖。

 そして、いくつもの入り組んだ地形。

 

 ……ふむ。あのフェローチェが、今どこにいるのか正直見当もつかない。

 ただ。もし俺が、突然知らない世界へ放り出されたら。

 何もわからない場所で、知らない人間たちに追いかけられたら。

 

 ……どこへ逃げるだろう。

 

「……ひとが、あんまりこないところ」

 

「……うん?」

 

「それで、かぜがあたらなくて、あったかいところ!」

 

 女性が、地図へ視線を落とす。

 

「……なるほど」

 

 隣にいた調査員も、頷いた。

 

「確かに、あのポケモンが寒さに慣れていないなら、風を避けられる場所を選ぶ可能性はありますね」

 

「巣穴の周辺には、岩陰や洞窟も多いですし……」

 

 ……おっ、採用された。

 俺の提案、採用されたぞ!

 

 しかし、ここで一つ問題がある。

 

 隠れられる場所なんて、いくらでもあるのだ。

 一つずつ探していたら、何日かかるかわからない。

 

 ……そこで。

 

「……ムーちゃん!」

 

「グソ?」

 

 俺は、隣にいる相棒を見た。

 

「ムーちゃんだったら、どこにかくれる?」

 

 …………。

 

 ムーちゃんが、首を傾げた。

 そして、少しだけ考えるような仕草を見せる。

 

「グソ……」

 

 ……うん、わからないよね。

 そりゃそうだ。

 突然そんなことを聞かれても困るだろう。

 

 ……でも。

 ムーちゃんは、もともと怖がりなポケモンである。

 

 小さなコソクムシだった頃から、危険を感じると岩陰や草むらへ逃げ込んでいた。

 その習性は、グソクムシャへ進化した今でも残っている。

 

 だからこそ。怖がっている相手が、どんな場所を好むのか。

 それを考える手がかりになるかもしれない。

 

「……リン君」

 

 調査員のお姉さんが、少し驚いたように言った。

 

「そのグソクムシャ、怖がりなの?」

 

「うん!」

 

「……そうなのね」

 

 女性は、ムーちゃんを見つめた。

 

「だったら、この子の行動を参考にするのもいいかもしれないわね」

 

 まさに、それである。

 

 ムーちゃんの怖がりな性格。

 以前の俺なら、弱点だと思っていたかもしれない。

 

 でも今は違う。

 危険を察知する能力も、逃げ道を探す能力も。

 全部、立派な強さなのだ。

 

 ……師匠。

 俺、ちゃんと教えを活かしてるよ。

 

 ♦

 

 それから、しばらくの時間が経過した。

 

 調査員たちは地図を確認し、過去の観測情報を整理していた。

 

 フェローチェが最後に確認された場所。

 そこから続く岩場。

 風の流れ。

 人や野生ポケモンが少ない地域。

 そして、寒さを凌げそうな場所。

 

 いくつかの候補が挙げられる。

 

 その中に、一か所だけ気になる場所があった。

 

「……ここ」

 

 俺は、地図の端にある小さな印を指差した。

 

「ここ、なに?」

 

「ああ。そこは昔使われていた作業小屋の近くね」

 

 ……作業小屋?

 

「今はほとんど使われていないんだけど、近くに地熱で温められた水が流れる場所があるのよ」

 

 ……ほう。

 

 人が少ない、風を避けられる。

 しかも、近くに温かい水。

 怪しくない?

 

 いや、怪しいというか。

 もし俺が寒さに弱かったら、そこへ行きたいと思う。

 

 ……まあ。

 俺ならおばあちゃんの暖炉の前に直行しますけどね。

 

 ムーちゃんと一緒に。

 

「……そこ、あやしくない?」

 

 俺がそう言うと、女性は頷いた。

 

「そうね。候補には入れておきましょう」

 

 そして、別の調査員に声をかける。

 

「周辺の安全を確認してから、遠隔カメラを回せますか?」

 

「わかりました。確認してみます」

 

 ……よし、あとは大人たちに任せよう。

 俺が現場へ行ったところで、できることは限られている。

 

 それに。

 あのフェローチェが、本当にそこにいるかどうかもわからないのだから。

 

 ♦

 

 ――それから、およそ一時間後。

 

「……反応がありました!」

 

 詰め所の奥から声が響いた。

 

 ……ん?

 

「作業小屋付近のカメラに、何か映っています!」

 

 ……え、マジ?

 

 俺は思わず顔を上げた。

 

 調査員のお姉さんが、端末の画面を覗き込む。

 そこには、雪に覆われた岩場が映っていた。

 

 大きな岩。

 風を遮る地形。

 そして、その奥にある古びた小屋。

 

 ……あ、いた。

 

 岩陰に、小さな影が見える。

 

 細長い四肢。

 特徴的な頭部。

 そして、通常個体とは違う色彩。

 

 フェローチェだ。

 

「……見つかった……!」

 

 思わず呟いた。

 調査員たちも、安堵したように息を吐く。

 

 だが、次の瞬間。

 

「……これは」

 

 女性の表情が曇った。

 

 ……ん?どうしたんだ?

 

「……あまり動いていませんね」

 

 別の調査員が言った。

 

「外傷は確認できませんが、かなり消耗しているように見えます」

 

 ……消耗?

 

 俺は、もう一度画面を見た。

 

 フェローチェは岩陰に身を寄せていた。

 時折、周囲を警戒するように顔を上げる。

 しかし、すぐに身体を丸めてしまう。

 

 あの日の、目にも留まらぬ速さはどこにもなかった。

 

 ……ああ、そうか。

 ずっと逃げていたんだ。

 

 知らない場所で、知らないポケモンたちに囲まれて。

 誰も信用できないまま。

 寒さに震えながら。

 

 胸が、少しだけ苦しくなった。

 

 ♦

 

 その後、調査員たちは慎重に保護の準備を進めた。

 

 フェローチェの近くには、無理に近づかない。

 まずは周辺の安全確認。

 そして、食べ物と水を用意する。

 刺激しないよう、遠くから様子を見る。

 

 そういう方針になった。

 

 俺も、おばあちゃんとパパンに付き添われ、安全な観察場所からその様子を見せてもらうことになった。

 

 もちろん、フェローチェへ直接近づくわけではない。

 間には十分な距離があり、何かあればすぐに避難できるようにしてある。

 

 ……それでも。

 実際に目の前で見ると、胸が締めつけられた。

 

「……フェロ」

 

 小さな鳴き声。

 岩陰に身を寄せる、色違いフェローチェ。

 

 その身体は、微かに震えていた。

 

 ……ああ。

 

 やっぱり、寒いんだな。

 ……怖いんだな。

 

「……リン」

 

 パパンが、俺の肩に手を置いた。

 

「大丈夫か?」

 

「……うん」

 

 俺は、小さく頷いた。

 

 そして、ムーちゃんを見た。

 

「……ムーちゃん」

 

「グソ?」

 

「……あのこ、こわいんだって」

 

 ムーちゃんは、しばらくフェローチェを見つめていた。

 

 そして。

 

「……グソ」

 

 静かに頷いた。

 

 ……うん、そうだよな。

 

 ムーちゃんには、少しだけわかるのかもしれない。

 

 怖くて。

 逃げたくて。

 でも、どこへ行けばいいのかわからない。

 

 そんな気持ちが。

 

 ♦

 

 調査員たちは、あらかじめ用意したきのみと水を、フェローチェから離れた場所へ置いた。

 

 そして、ゆっくりと後退する。

 

 ……しばらくの沈黙。

 

 フェローチェは動かない。

 ただ、警戒するように周囲を見回している。

 

 ……食べないのか?

 

 無理もない。

 

 突然現れた知らない人間たち。

 そこに置かれた、見知らぬ食べ物。

 簡単に信用できるはずがない。

 

 俺は、そっとムーちゃんの装甲に触れた。

 

「……ムーちゃん」

 

「グソ?」

 

「……まってようね」

 

「グソッ」

 

 俺たちは、静かに待った。

 

 一分……二分……五分。

 

 ……やがて。

 

「……フェロ?」

 

 フェローチェが、ゆっくりと顔を上げた。

 

 その視線が、置かれたきのみへ向く。

 

 少しだけ身体を動かす。

 そして、また止まる。

 

 ……うん、怖いよな。

 でも、お腹も空いているんだろうな。

 

 フェローチェは、長い時間をかけて、きのみの近くへ移動した。

 そして……そっと、一つだけ手に取った。

 

「……!」

 

 俺は、思わず息を呑んだ。

 

 フェローチェは、きのみをじっと見つめていた。

 それから、小さく口をつける。

 

 ……食べた。

 

 たった一口、それだけだった。

 でも、俺にはそれがとても大きな出来事に思えた。

 

「……よかった」

 

 自然と、そんな言葉が漏れた。

 

 ……ああ、本当に。

 

 よかった。

 

 ♦

 

 それから、調査員たちはフェローチェの様子を慎重に見守り続けた。

 食べ物を少し口にしたことで、多少は落ち着いたように見える。

 

 だが、警戒心はまったく解けていない。

 人の気配がすると、すぐに顔を上げる。

 ポケモンが動けば、身を強張らせる。

 

 ……それでも。

 

 もう、あの日のように走り回ってはいなかった。

 

 逃げる力が残っていないのかもしれない。

 あるいは、この場所が少しだけ安全だと思えたのかもしれない。

 

 ……それは、わからない。

 

 ただ一つ、確かなことがある。

 このまま雪原に放っておくわけにはいかない。

 

 …………。

 

 俺は、しばらくフェローチェを見つめていた。

 

 あの子は、ウルトラビースト。

 異世界から現れた、特殊なポケモン。

 普通のポケモンとは違う生態を持っている可能性もある。

 それに、今のカンムリ雪原の環境が、あの子に合っているとは思えない。

 

 ……だったら。

 安全な場所へ連れていく必要がある。

 

 でも、どうやって?

 

 無理やり捕まえたところで、きっと余計に怖がらせてしまう。

 

 そのとき。

 ふと、あるものを思い出した。

 

 ヨロイ島。

 マスター道場。

 そして、ハイドと一緒に作った、あの特別なボール。

 

 ……あ、そうか。

 

 ……あれが、あるじゃないか。

 

 ♦

 

「……パパン」

 

「ん?」

 

「……ちょっと、きいてもいい?」

 

「どうした?」

 

 俺は、鞄の中へ手を伸ばした。

 

 大切にしまっていた、小さなケース。

 その中には、二つの特別なボールが入っている。

 

 一つはマスターボール。

 そして、もう一つは。

 ……ウルトラボール。

 

 青と白を基調にした、不思議な模様。

 

 ハイドが研究資料をもとに改良を重ね、ようやく完成させた試作品。

 ウルトラビーストと呼ばれる、特殊なポケモンを捕獲するためのボール。

 

 ……まさか。こんなところで、出番が来るとはな。

 

「……リン?」

 

 パパンが、俺の手元を見つめていた。

 

「それは……?」

 

「……ウルトラボール」

 

「……ああ。ヨロイ島で作ったっていう、あれか」

 

「うん」

 

 俺は、手の中のボールを見つめた。

 

 ……正直に言おう。

 最初は、単純に欲しかっただけだ。

 

 珍しいボール。

 独特なデザイン。

 そして、ウルトラビースト専用という特別感。

 

 オシャボ厨として、持っておきたかった。

 それだけだった。

 

 ……でも。

 今は、少し違う。

 

 このボールがあれば。

 あの子を、寒い雪原から連れ出せるかもしれない。

 安全な場所へ、連れていけるかもしれない。

 

 ……もちろん。

 捕まえたからといって、仲良くなれるとは限らない。

 

 それは、もう知っている。

 ムーちゃんと一緒に過ごした時間が、教えてくれたことだ。

 

 俺は、フェローチェへ視線を向けた。

 岩陰で、小さく身体を丸める色違いのウルトラビースト。

 

 あの子は、まだ俺たちを信用していない。

 それどころか、誰も信用できていないのかもしれない。

 

 ……だけど、だからこそ。

 まずは、安心できる場所を用意してあげたい。

 

 俺は、ウルトラボールをそっと握りしめた。

 

「……パパン」

 

「……ん?」

 

「……あのこ、たすけたい」

 

 パパンは、しばらく俺を見つめていた。

 

 そして。

 

「……そうか」

 

 静かに頷いた。

 

 俺は、もう一度フェローチェを見る。

 

 まだ、何もわからない。

 

 どうすれば信用してもらえるのか。

 どうすれば安心してくれるのか。

 そもそも、俺たちと一緒に来てくれるのか。

 

 ……全部、わからない。

 

 でも……それでも。

 何か、できることがあるなら……やってみたい。

 

「……ハイド」

 

 俺は、小さく呟いた。

 

「……まさか、こんなに早く出番が来るとはな」

 

 手の中で、ウルトラボールが静かに光を反射していた。

 

 ♦

 

 ……ただ。俺はまだ、知らなかった。

 

 このボールが、俺とフェローチェの長い付き合いの始まりになることを。

 

 そして。

 

 捕まえることと、仲間になることは、まったく違うのだということを。

 




今日は書き溜めから何話か投稿します。
よかったら、お気に入り、★、感想お願いします。

投稿三日くらいで思ったより反響があってうれしく思います。
今後ともお付き合いいただけますと幸いです。

感想も一つ一つ大切に読ませていただいております。
また、まとまった機会に返していこうと思いますので、たくさんのご感想お待ちしております。
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