色違いタイプ統一縛りニキのポケ界転生日記   作:霜月ルイ

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chapter:24 色違いストライクってやっぱ格好いいよな!

 ストライク。

 

 むし・ひこうタイプ。

 

 両腕に鋭い鎌を持ち、目にも留まらぬ速さで獲物を仕留めるポケモン。

 

 無駄のない身体つきに、獲物を逃がさない機動力。そして何より、あの大きな鎌。

 

 格好いい。

 とにかく格好いい。

 

 進化後のハッサムも含め、俺が前世から愛してやまないポケモンの一匹である。色違いむしタイプ統一を目指す身としては、ぜひとも仲間に迎えたい存在だった。

 

 もちろん、野生のストライクが簡単に見つかるとは思っていない。

 

 ましてや色違いなんて、そう都合よく出会えるはずがない。

 

 ……と、思っていたんですけどね。

 まさか、こんな形で出会うことになるとは。

 

 いや、それにしたって。

 野生のストライクって、こんなに喧嘩っ早かったっけ!?

 

 ♦

 

「リンちゃーん! 今日は鍛錬平原まで行ってみるかのう!」

 

「いく!」

 

 マスタード師匠からのお誘いに、俺は即答した。

 

 今回の目的は、野生ポケモンの観察とムーちゃんたちの実戦練習。最近はサイトウちゃんとの鍛錬も始まり、俺自身も新しい発見が増えてきたところだ。

 

 もちろん、フェリヤにも声をかけた。

 彼女は少し考えるように俺を見たあと、自分から道場の門まで歩いてきた。

 どうやら、一緒に行くつもりらしい。

 

 俺はそれを確認し、出発の準備を整えた。

 フェリヤが何をしたいのか、まだ全部わかるわけじゃない。でも、同行することを自分で選んでくれたのなら、それで十分だ。

 

「ムーちゃん! しずく! ルージュ! いこう!」

 

「グソッ!」

 

「シズッ!」

 

「アブリッ!」

 

 三匹が元気よく返事をする。

 

 しずくはムーちゃんの前脚に乗り、ルージュは俺の頭上を飛び回っていた。

 

 ちなみに、そのルージュ。

 出発前、俺の髪へ花粉を振りかけようとして、サイトウちゃんに注意されていた。

 

『リンさんが困っています。やめてあげてください』

 

『アブリ……』

 

 すると、驚くほど素直に花粉を引っ込めたのである。

 

 ……あの。

 俺が同じことを言ったときは、頭の上で踊ってませんでした?

 

 どうやら我が家の序列について、一度真剣に話し合う必要がありそうだ。

 

 ♦

 

 鍛錬平原は、思っていた以上に広々とした草原だった。

 

 背の高い草が風に揺れ、ところどころに大きな岩が転がっている。遠くでは野生ポケモンたちが走り回り、空を見上げれば鳥ポケモンの姿もあった。

 

 ゲームで何度も訪れた場所だけど、実際に立ってみると印象がまるで違う。

 

 草の匂いも、足元の土の感触も、頬を撫でる風も。

 

 全部、本物なんだよなぁ。

 

「師匠、ここってむしポケモンもいる?」

 

「もちろんじゃ! いろんな子がおるぞい!」

 

「おおっ!」

 

 それは素晴らしい。

 せっかくだし、珍しいむしポケモンでも観察させてもらおう。

 

 そんなことを考えながら辺りを見回した、そのときだった。

 

 ザシュッ!

 

 岩場の方から、鋭い音が響いた。

 

「……ん?」

 

 続いて、もう一度。

 

 ザンッ!

 

 何か硬いものを切りつけるような音だ。

 俺が目を凝らすと、少し離れた岩場に一匹のポケモンがいた。

 細長い身体に、背中の羽。そして、両腕に備わった大きな鎌。

 

「……ストライク?」

 

 思わず声が漏れた。

 

 ストライクは俺たちに気づく様子もなく、岩へ向かって鎌を振るっている。

 

 一撃、二撃、三撃。

 

 岩肌に細い傷が刻まれ、削れた石の欠片が足元へ落ちた。

 

 ……おお。

 

 野生なのに、自主練習してる。

 サイトウちゃんと気が合いそうな子だな。

 

 そんなことを考えながら眺めていた俺は、ふと違和感を覚えた。

 

 あれ?

 あのストライク、何か色が違わない?

 

 通常より鮮やかな緑色の身体。関節部分には、見慣れた個体とは違う赤みがある。

 俺は何度か瞬きをして、もう一度確認した。

 

 いや、そんな。

 

 まさか。

 

「……色違い?」

 

 口にした瞬間、心臓が跳ねた。

 

 見間違いじゃない。

 

 あれは間違いなく――。

 

「色違いストライクじゃねぇかぁぁぁ!!」

 

「グソッ!?」

 

「シズッ!?」

 

 我慢できずに叫んだ。

 そして、次の瞬間。

 

 ギロッ。

 

 ストライクが、こちらを向いた。

 

 ……あ。やっべ。

 

 視線が合った途端、相手の鎌がゆっくりと持ち上がる。

 

「ストライ……!」

 

 低い鳴き声とともに、一歩前へ出てきた。

 

 ……えっと。

 

 これ、完全に喧嘩売ったと思われてない?

 

 俺はただ、色違いを見つけてテンションが上がっただけなんですが!?

 

 ♦

 

「ほっほっほ! 元気な子じゃのう!」

 

「師匠!? 笑ってる場合!?」

 

 マスタード師匠は楽しそうに笑っている。

 

 対するストライクは、俺たちから目を離さなかった。

 

 いや、正確には違う。

 あの子が見ているのは、俺じゃない。

 

 ムーちゃんだ。

 

「……ストライッ!」

 

 ストライクが鎌を構え、さらに一歩踏み込んできた。

 その姿を見て、師匠が目を細める。

 

「どうやら、腕試しがしたいみたいじゃのう」

 

「腕試し?」

 

「ちみのグソクムシャを見て、戦ってみたくなったんじゃろうな!」

 

 なるほど。

 つまり、野生の対戦ガチ勢というわけか。

 

 いいじゃないか。

 強い相手を見つけたら戦いたくなる。その気持ちは、俺だってよくわかる。

 

 ただし、相手は鋭い鎌を持った野生ポケモンだ。不用意に近づくわけにはいかない。

 

 俺は隣のムーちゃんへ視線を向けた。

 

「ムーちゃん、どうする? 戦ってみたい?」

 

「グソ……」

 

 ムーちゃんはストライクを見つめた。

 

 相手の鎌が陽光を反射し、鋭く光る。

 ほんの少し、ムーちゃんの身体が強張った。

 

 でも、それは怖くて動けないという様子ではない。相手の動きを警戒し、距離を測っているようだった。

 

 やがて、ムーちゃんはしずくを俺のそばへ降ろし、前へ出た。

 

「グソッ!」

 

 力強い返事。

 

 ……うん。

 どうやら、やる気らしい。

 

「師匠! バトルしてもいい?」

 

「ほっほっほ! 周りに気をつけて、無理せんようにな!」

 

「はい!」

 

 俺はムーちゃんの隣へ立った。

 

 ストライクも、こちらが構えるのを待っていたらしい。

 

 両腕の鎌を持ち上げ、地面へ足を踏ん張った。

 

 ……いいね。

 

 色違いストライクとの真剣勝負。

 

 開幕である!

 

 ♦

 

「ストライッ!」

 

 先に動いたのはストライクだった。

 

 地面を蹴り、低い姿勢で一直線に迫ってくる。

 

 速い!

 

「ムーちゃん、であいがしら!」

 

「グソォッ!」

 

 ムーちゃんが前へ踏み込み、強烈な先制攻撃を繰り出した。

 

 ストライクは咄嗟に鎌を交差させ、その一撃を受け止める。衝撃で身体が後方へ押し出されたが、すぐに羽を広げて姿勢を立て直した。

 

 むし・ひこうタイプのストライクに、むし技は通りにくい。

 

 とはいえ、ムーちゃんの一撃を受けてあれだけ素早く動けるとは。

 

 なかなか鍛えられているらしい。

 

「ストライッ!」

 

 ストライクが横へ回り込み、鎌を振り抜いた。

 

 つばめがえし。

 

 ひこう技は、むし・みずタイプのムーちゃんに効果抜群だ。

 

「ムーちゃん、装甲で受け流して!」

 

「グソッ!」

 

 ムーちゃんは身体を傾け、厚い装甲で斬撃を受け流した。

 

 金属を叩いたような音が響く。

 

 鋭い攻撃だったが、ムーちゃんの姿勢は崩れない。

 

 むしろ、間合いに入ったストライクの方が一瞬だけ動きを止めた。

 

「そのまま、シェルブレード!」

 

「グソォッ!」

 

 ムーちゃんが前脚を振り抜く。

 

 しかし、ストライクは素早く後方へ跳び、攻撃をかわした。

 

 ……おお。

 やるなぁ。

 

 ムーちゃんの方が力も防御力も上だろうけど、素早さでは相手に分がある。

 

 しかも、ただ速いだけじゃない。

 攻撃が届く直前まで引きつけ、最小限の動きでかわしている。

 

 なかなか戦い慣れた個体らしい。

 

 ただし、ムーちゃんだって伊達に修行を続けてきたわけじゃない。

 相手を無理に追いかけず、攻撃を受け流しながら反撃の機会をうかがっている。

 

 俺は二匹の動きを見比べた。

 

 ストライクが速さを生かして攻め、ムーちゃんが経験と頑丈さで受け止める。

 そんな攻防が何度か続いた。

 

 そして、俺は一つ気づいた。

 ストライクは斬り込む直前、右脚へ体重を乗せることが多い。

 

 鎌を振るう角度にも、わずかな癖がある。

 

 ……なるほど。

 サイトウちゃんとの模擬戦で学んだことが、ここでも役に立ちそうだ。

 

「ムーちゃん、次は少し待って!」

 

「グソッ!」

 

 俺の声に、ムーちゃんが頷いた。

 

 ストライクは再び鎌を構え、勢いよく踏み込んでくる。

 

 速い。

 

 けれど、今度は動きが見えた。

 

「今! 右から来る!」

 

 ムーちゃんが身体を傾ける。

 

 直後、ストライクの鎌が装甲の横をかすめた。

 

「グソッ!」

 

 ムーちゃんはそのまま前脚を伸ばし、相手の鎌を押し返す。

 

 ストライクが大きく跳び退いた。

 

 ……よし!

 狙いどおりだ。

 

 しかし、相手は怒るどころか、再び鎌を構えた。

 その姿には、さっきまで以上の気迫がある。

 

 ……もしかして。

 この子、強い相手と戦えるのが嬉しいのかな。

 

 もちろん、表情だけで断定はできない。

 でも、逃げようとする様子はないし、こちらの攻撃を受けるたびに、もう一度勝負を挑んでくる。

 

 少なくとも、今の戦いを嫌がっているようには見えなかった。

 

「ムーちゃん、もう少し付き合ってあげようか!」

 

「グソッ!」

 

 ムーちゃんが嬉しそうに応える。

 お互い、戦うことが好きらしい。

 

 まったく、いい勝負になりそうだ。

 

 ♦

 

 それから、二匹は何度も技を交わした。

 

 ストライクは持ち前の速さを生かして左右から斬り込み、ムーちゃんは無理に追いかけず、厚い装甲で受け止めながら反撃する。

 

 時間が経つにつれ、ストライクの動きには疲労が見え始めた。

 

 ムーちゃんにも多少の疲れはあるけれど、まだ余裕が残っている。

 

 実力差は、確かにあった。

 それでも、ストライクは戦うことをやめようとしない。

 

「ストライッ!」

 

 もう一度、鎌を構える。

 

 俺はムーちゃんへ声をかけた。

 

「ムーちゃん、最後の一撃、受け止めよう!」

 

「グソッ!」

 

 ムーちゃんが両脚を踏ん張る。

 ストライクも、一度だけ大きく息を吸った。

 

 そして。

 

「ストライィッ!!」

 

 渾身の斬撃が、正面から迫った。

 

「ムーちゃん!」

 

「グソォッ!」

 

 ガキィンッ!

 

 装甲と鎌がぶつかり、鋭い音が響いた。

 ムーちゃんはその一撃をしっかりと受け止め、反撃せずに踏みとどまった。

 

 ストライクも、最後まで力を込めている。

 数秒間、二匹はその姿勢を保っていた。

 

 やがて。

 

「……ストライ」

 

 ストライクが、ゆっくりと鎌を下ろした。

 

 ムーちゃんも構えを解く。

 

 ……終わり、かな。

 

「ムーちゃん、お疲れさま!」

 

「グソッ!」

 

 俺が声をかけると、ムーちゃんが嬉しそうに頷いた。

 

 ストライクも、肩で息をしながら身体を起こしている。

 

 勝敗はつかなかった。

 ただ、最後までムーちゃんの守りを崩せなかったことは、ストライク自身にも伝わっているだろう。

 

「ほっほっほ! 見事じゃったぞ、二匹とも!」

 

 師匠が笑いながら拍手する。

 

 その声に、ストライクが振り返った。

 

 そして、少し考えるようにムーちゃんを見つめると、ゆっくり俺たちの方へ歩いてきた。

 

 ♦

 

「……ストライ」

 

「ん?」

 

 ストライクが、俺の目の前で立ち止まった。

 

 ……おお。

 近くで見ると、ますます格好いいな。

 

 鮮やかな色彩に、鋭い鎌。

 さっきまで何度も攻撃を繰り出していたというのに、その刃には大きな傷も見当たらない。

 

 やっぱり、いいポケモンだ。

 

「ストライク、いいバトルだったね!」

 

「ストライッ!」

 

 ストライクは力強く頷くと、ムーちゃんへ視線を向けた。

 

「グソッ!」

 

「ストライ!」

 

 二匹が鳴き声を交わす。

 何を話しているのかはわからないけれど、ストライクは再び鎌を掲げてみせた。

 

 まるで、もう一度戦おうと誘っているようだった。

 そして今度は、俺の腰についているボールへ目を向ける。

 

 ……ん?

 もしかして。

 

「ストライク。俺たちと、いっしょに来たいの?」

 

「ストライッ!」

 

 ストライクは大きく頷いた。

 

 俺は思わず目を丸くする。

 

 ……マジ?

 

 野生のストライクが、自分から仲間になりたいって?

 

 いや、でも。

 この子は、強い相手との勝負を求めているように見えた。

 

 ムーちゃんとまた戦いたいのかもしれないし、俺たちと一緒に強くなりたいのかもしれない。

 

 もちろん、本当の理由まではわからない。

 

「これからもムーちゃんと練習したり、いろんな相手と戦ったりしたい?」

 

「ストライッ!」

 

 ストライクは嬉しそうに鎌を振り上げ、ムーちゃんへ向き直った。

 

 ……なるほど。

 どうやら、その気持ちは本物らしい。

 

「師匠! この子、仲間にしてもいいかな!?」

 

「ほっほっほ! 本人もその気みたいじゃのう!」

 

 師匠は頷いたあと、楽しそうに付け加えた。

 

「じゃが、家族への相談は忘れんようにな!」

 

「もちろん!」

 

 我が家の鉄則。

 

 新しいポケモンを迎えるときは、必ずママンとパパンへ相談する。

 

 俺は二人へ連絡し、ストライクと出会った経緯を説明した。

 

 道場での生活中は師匠たちにも協力してもらえること、世話や安全面についても問題ないことを確認したうえで、無事に許可をもらえた。

 

 ……よし!

 

 準備万端!

 

 ♦

 

「さて、と」

 

 俺は鞄から、一つのボールを取り出した。

 

 迷彩柄を基調にした、特徴的な模様。

 ハイドと一緒にウッウロボを使って用意した、特別なボールである。

 

 そう。サファリボール!

 

 野生のストライクを迎えるのに、これほど似合うボールがあるだろうか。

 

 いや、ない。

 少なくとも俺の中では満点である。

 

「ストライク、このボールでいっしょに行こう!」

 

「ストライ?」

 

 ストライクは興味深そうにボールを覗き込んだ。

 俺が手のひらへ乗せて見せると、その模様を確かめるように顔を近づける。

 

 そして、もう一度力強く頷いた。

 

「ストライッ!」

 

「……よし!」

 

 俺は少し距離を取り、ボールを構えた。

 

「いくよ!」

 

 そっと投げたサファリボールが、ストライクの身体へ触れる。

 

 光が弾け、その姿がボールの中へ吸い込まれた。

 草の上へ落ちたボールが、一度だけ揺れる。

 

 そして。

 

 カチッ。

 

「……やった」

 

 俺はボールを拾い上げた。

 

 その小さな重みを感じた瞬間、胸の奥から喜びが込み上げてくる。

 

「うおおおおお!! 色違いストライク、ゲットだぜぇぇぇ!!」

 

「グソォッ!」

 

「シズッ!」

 

「アブリッ!」

 

 ムーちゃんたちも、元気な声で祝福してくれた。

 

 いやぁ、最高!

 本当に最高だ!

 これで五匹目!

 

 色違いむし統一パーティー、六匹まであと一匹である!

 

 ……もっとも、フェリヤはまだバトルに参加していない。

 

 手持ちの数が揃うことと、みんなで戦えることは別の話だ。

 

 そこは、忘れないようにしないとな。

 

 ♦

 

「ストライク、出ておいで!」

 

「ストライッ!」

 

 俺は新しい仲間をボールから出した。

 ストライクは元気よく鎌を掲げ、周囲を見渡している。

 何度見ても格好いい。

 

 しかも色違い。

 うーん、たまらん。

 

「これからよろしくね!」

 

「ストライッ!」

 

 元気な返事に、俺も嬉しくなった。

 

 そういえば、この子の進化先はまだ決まっていない。

 

 ハッサム。

 

 むし・はがねタイプで、優秀な耐性と高い攻撃性能を持つポケモン。

 前世でも何度お世話になったことか。

 

「しょうらいは、ハッサムかなぁ」

 

「ストライ?」

 

「ハッサムも、すっごくかっこいいんだよ!」

 

 俺が説明すると、ストライクは自分の鎌を眺めた。

 

 それから、近くに転がっていた小さな岩へ向き直る。

 

 ザンッ!

 

 鎌が岩肌を打ち、乾いた音が響いた。

 

 ……おお。

 

 また練習?

 

 どうやら、この子はよほど自分の鎌が好きらしい。

 

 そういえば、ストライクにはもう一つの進化先がある。

 

 バサギリ。

 

 むし・いわタイプ。

 

 斧のような両腕が特徴的な、武骨で力強いポケモンだ。

 

 ……うーむ。

 ハッサムもいいけど、バサギリも捨てがたい。

 

 いや、待て。

 俺が勝手に決めることじゃないか。

 

「ストライク、これからどんなふうにつよくなりたい?」

 

「ストライッ!」

 

 ストライクは鎌を大きく掲げた。

 

 ……うん。

 今の返事だけじゃ、何を目指しているのかはわからん!

 

 ただ、強くなりたい気持ちだけは伝わってきた。

 進化については、これから一緒に考えていけばいい。

 

「よし! これから、いっしょにつよくなろうな!」

 

「ストライッ!」

 

 ストライクが嬉しそうに鳴いた。

 

 ♦

 

 その日の夕方。

 俺は道場の縁側で、新しい仲間たちを眺めていた。

 

 ムーちゃんはいつものようにしずくを前脚へ乗せ、ルージュは花壇の周りを飛び回っている。

 

 そしてストライクは、そんなルージュに振り回されていた。

 

「アブリッ!」

 

「ストライッ!?」

 

 ルージュがストライクの頭へ着地しようとするたびに、本人が慌てて身を引いている。

 

 ……おい、ルージュさん。

 初対面の相手にも遠慮なしですか。

 そのうち本気で怒られますよ?

 

 そんな光景を眺めていると、庭の端にいるフェリヤと目が合った。

 

 彼女は、いつもの清潔な場所からこちらを見ていた。

 新しい仲間が気になっているのかもしれない。

 あるいは、ルージュの騒ぎを眺めているだけかもしれない。

 

 俺は軽く手を振り、それ以上は呼びかけなかった。

 フェリヤは少しだけ触角を動かすと、再び庭へ視線を戻した。

 

 うん。

 今日も、いつもどおりだ。

 

 俺は隣にいるストライクを見た。

 この子は出会ったその日に、自分から俺たちの仲間になることを選んでくれた。

 

 一方、フェリヤとは、まだゆっくり距離を縮めている途中だ。

 同じむしポケモンでも、性格も望むことも違う。

 

 それが当たり前なんだろう。

 

 俺は立ち上がると、四匹の方へ顔を向けた。

 

「ムーちゃん! しずく! ルージュ! ストライク!」

 

「グソッ!」

 

「シズッ!」

 

「アブリッ!」

 

「ストライッ!」

 

「みんな、これからもよろしくね!」

 

 四匹が元気よく返事をする。

 

 うむ。

 実にいい光景だ。

 

 六匹揃うまであと一匹。

 

 俺の色違いむしタイプ統一パーティーも、少しずつ形になってきた。

 

 まあ、トレーナーとしてはまだまだ学ぶことが多そうだけどね。

 それでも今日は、素直に喜ばせていただこう。

 

 ……なお、その直後。

 

「リンちゃーん!」

 

 道場の中から、ミツバさんの声が響いた。

 

「新しいポケモンを迎えたんですって?」

 

「はい!」

 

「じゃあ、お世話の当番表も作り直さないとね!」

 

 ……あ。

 そうだった。

 

 ポケモンが増えるということは、当然ながら世話も増えるわけで。

 

「……ミツバさん」

 

「なあに?」

 

「ウッウロボのけんきゅうじかんは……?」

 

「減るわね」

 

 にっこり。

 

 ……ですよねぇ!

 

 新メンバー加入の代償、重すぎません!?

 

 いや、もちろんわかってますよ。

 

 これもトレーナーの責任ですからね!

 

 ……それにしても。

 

 ミツバさん、もうちょっと手加減してくれませんか。

 

 せめて今日くらいは、色違いゲットの余韻に浸らせてほしかったんですが!

 

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