色違いタイプ統一縛りニキのポケ界転生日記   作:霜月ルイ

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chapter:2 第二鉱山で、まさかの色違い。

――それから、およそ一年。

 

 俺は四歳になった。

 

 いやぁ、早いものですなぁ。

 

 ついこの間まで寝返りに四苦八苦していたというのに、今では自分で服を着替えられるし、歯も磨けるし、一人でトイレにも行ける。

 

 成長って素晴らしい。

 

 ちなみに最近のマイブームは、ママンとパパンにポケモンクイズを出すことである。

 

「パパン! もんだいです!」

 

「お、なんだ?」

 

「みずタイプに、でんきタイプのわざはこうかばつぐんです。では、ヌオーにはどうでしょう!」

 

「ええ? ヌオー?」

 

「せいかいは、こうかがない、でしたー!」

 

「いや、まだ答えてないんだが?」

 

「じめんタイプがあるからね!」

 

「……お前、ほんとにどこで覚えてくるんだ、そういうの」

 

 毎度のことである。

 今では両親も、俺がポケモンに妙に詳しいことを半ば諦めている節がある。

 

 そんなある日のこと。

 

「リン、今日は天気もいいし、少し遠くまで散歩に行くか?」

 

「いく!!」

 

 食い気味で即答した。

 だってパパンとのお出かけだぞ?

 つまり、野生ポケモンを見られる可能性があるわけだ。

 

「行きたい場所はあるか?」

 

「だいにこうざん!」

 

「……また随分と渋い場所を選んだな」

 

 ふっ、わかってないなパパン。

 

 第二鉱山といえば、バウタウンとエンジンシティはずれをつなぐ鉱山である。

 ゲームでは、カムカメやカメテテ、カラナクシなど、様々なポケモンが出現する場所だ。

 

 そして何よりコソクムシがいる。

 

 そう、むし・みずタイプの、あの臆病なポケモンである。

 

 進化先はグソクムシャ。

 

 特性『ききかいひ』で強制交代してしまう癖の強さはあるものの、高い攻撃と防御、そして何より先制技『であいがしら』のロマン!

 

 俺は前世から、グソクムシャが大好きだった。

 

 あの重厚な甲冑のような見た目。

 武士を思わせる佇まい。

 

 そして、名前。

 

 グソクムシャ。

 

 かっこよすぎん?

 

 何回声に出してもかっこいい。

 

 ちなみに俺は、色違いグソクムシャの配色も大好きである。

 

 白い装甲に赤い差し色。

 

 最高、実に素晴らしい。

 

 ぜひとも現物を拝みたい。

 

 まあ、そんな都合よく色違いがいるわけないんですけどね。

 

 うん、さすがの俺もそのくらいは理解している。

 

 ……していた。

 

 ♦

 

 第二鉱山の入口付近は、思っていた以上に賑やかだった。

 

 岩肌に囲まれた道。

 

 ところどころに溜まった水。

 

 湿った土と、潮の混じったような匂い。

 

 遠くからは、ポケモンの鳴き声が聞こえてくる。

 

「ほら、リン。あそこにカラナクシがいるぞ」

 

「ほんとだ!」

 

 パパンが指差した先には、青い身体のカラナクシがいた。

 

 おお。

 

 にしのうみではなく、ひがしのうみの姿ですな。

 

 ……あれ?

 

 逆だったっけ。

 

 いや、青はひがしのうみで合っている。

 

 危ない危ない。

 

 前世の知識が曖昧になっている部分もあるのかもしれない。

 

 さすがに転生して四年も経てば、忘れることだってあるだろう。

 

「リン、あんまり近づくなよ」

 

「はーい!」

 

「知らないポケモンには勝手に触るなよ?」

 

「はーい!」

 

「あと、勝手に走っていくなよ?」

 

「はーい!」

 

「……本当にわかってるか?」

 

「わかってる!」

 

 信用されていない……なぜだ。

 

 ……三歳の頃、勝手に家を出ようとしてママンに捕獲された前科があるからか。

 

 なるほど、納得。これが因果応報か。

 

 そんなことを考えながら、パパンと一緒に鉱山の外側を歩いていた。

 

 道の脇には小さな水路があり、その先は岩場へと続いている。

 

 そこに、何かが動いた。

 

「……ん?」

 

 灰色の、小さな影。

 

 細長い身体。

 

 何本もある脚。

 

 岩陰からそろそろと顔を出し、周囲を警戒している。

 

 ……コソクムシだ。

 

 やっぱりいた!

 

 俺は思わず足を止めた。

 小さなコソクムシが、濡れた石の上を歩いている。

 どうやら、流れ着いたものを漁っているらしい。

 

 おお……。

 生コソクムシ……。

 かわいい……。

 

 これが、あのグソクムシャになるんだよなぁ。

 感慨深い。

 

 しかし、次の瞬間俺はあることに気づいた。

 

 ……ん?

 

 ……んん?

 

 ちょっと待て。

 

 コソクムシって、こんな色だったか?

 

 通常のコソクムシは、灰色っぽい装甲に紫がかった身体。

 

 だが、目の前にいる個体は違う。

 

 白っぽい装甲に、鮮やかな赤色の身体。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………は?

 

 いやいやいや……すてーいすてーい。

 

 落ち着け俺。

 落ち着いて確認しろ。

 見間違いという可能性もある。

 

 光の当たり方とか、そういうやつだ。

 そうに違いない。

 

 だって、そんな。

 そんな都合のいい話が――

 

 コソクムシが、こちらを向いた。

 

 赤い。

 

 どう見ても赤い。

 

 …………。

 

 色違いじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

「うわっ!? どうしたリン!?」

 

「いろちがいぃぃぃぃ!!」

 

 やってしまった。

 完全にやってしまった。

 脳内の冷静な俺が、声を上げるなと警告していた。

 

 わかっていた。

 わかっていたとも。

 だが無理だった。

 

 だって色違いだぞ!?

 それも、よりにもよってコソクムシ!!

 俺の大好きなグソクムシャの進化前!!

 これを見て叫ぶなというほうが無理だろう!

 色違い廃人を舐めてもらっては困る!!

 

 しかし、そんな俺の興奮とは裏腹に。

 

「コソッ!?」

 

 コソクムシが、びくんと身体を跳ねさせた。

 

 そして。

 

 くるり。

 

 ダダダダダダダダッ!!

 

「あっ」

 

 逃げた。

 

 全力で逃げた。

 

 すごい速度だった。

 

 なんだあれ。

 

 速すぎるだろ。

 

 あの短い脚のどこにそんな出力があるんだよ。

 

「待てやごらぁぁぁぁああ!!」

 

「リン!?」

 

 俺も走った。

 

 当然である。

 

 目の前に色違いコソクムシがいるんだぞ?

 

 逃がしてたまるか!!

 

「ちょっ、リン! 危ないって!」

 

「待たんかいぃぃぃいい!」

 

 ダダダダッ!

 

 コソクムシが走る。

 

 たたたたっ!

 

 俺が走る。

 

 …………。

 

 うん。

 

 追いつけるわけがなかった。

 

 当たり前だ、こちらは四歳児。

 

 相手は生粋の逃走特化型ポケモン。

 

 そもそも勝負にならない。

 

 数秒後には、赤い小さな影は岩の隙間へと消えてしまっていた。

 

「…………」

 

 俺は立ち尽くした。

 

 そして、その場にゆっくりと膝をつく。

 

 ……嘘だろ。

 

 逃げられた。

 

 初めて見つけた色違いに。

 

 逃げられた。

 

 前世では何百時間も厳選を繰り返し、色違いを捕まえてきたというのに。

 

 俺の、ポケモン世界初の色違いが。

 

 目の前から消えた。

 

「……リン?」

 

 パパンが心配そうに近づいてくる。

 

「どうした? 転んだのか?」

 

「…………」

 

「どこか痛いのか?」

 

「…………こころが」

 

「心!?」

 

 痛い。

 

 心が痛い。

 

 深刻なダメージである。

 

「だいじょうぶか!? リン!」

 

「……パパン」

 

「お、おう」

 

「おれ……」

 

「うん?」

 

「いろちがいに……にげられた……」

 

「…………」

 

 パパンは何とも言えない顔をした。

 

 そりゃそうだ。

 

 四歳の息子が、岩場で膝をついて人生の終わりみたいな顔をしているんだから。

 

 しかも原因が、珍しい色のポケモンに逃げられたこと。

 

 我ながら面倒くさい息子である。

 

「……また来ればいいじゃないか」

 

 パパンが、ぽんと俺の頭に手を置いた。

 

「え?」

 

「そのポケモン、ここで暮らしてるんだろ? だったらまた会えるかもしれないぞ」

 

 ……なるほど?

 

 たぁしかに?一理どころか千理ある。

 

 ゲームだったらシンボルが消えたら終わりだが、ここは現実。

 

 野生のポケモンには、それぞれ生活がある。

 

 縄張りも、寝床も、餌場も。

 

 だったらまた会える可能性は十分にある。

 

 俺は顔を上げた。

 

「パパン!」

 

「なんだ?」

 

「また、ここにきたい!」

 

「……ああ。ちゃんと約束を守れるならな」

 

 よし、決まった。

 

 この瞬間、俺の中で新たな目標が生まれた。

 

 色違いコソクムシ、絶対にゲットする。

 

 こうして俺の、人生二度目にして初めての色違い厳選が始まったのである。

 

 ……なお、リセット機能は存在しない。

 

 ハードモードにも程があるだろ……。

 




今日は書き溜めから何話か投稿します。
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