色違いタイプ統一縛りニキのポケ界転生日記   作:霜月ルイ

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chapter:35 色違い統一パで、ガラルに挑みます!

 十五歳になった。

 この世界へ転生して十五年。四歳でムーちゃんと出会ってから、十一年。

 

 ……いやぁ、長かった。

 本当に長かった。

 

 小さなコソクムシ一匹から始まった俺の旅も、気づけば色違いむしタイプの仲間が六匹。しかも全員、とびきり個性的な連中である。

 

 そして今年、ついに。

 ガラル地方のジムチャレンジへ挑戦する!

 

「みんな! 一年間の特訓、お疲れさまでしたぁぁ!!」

 

 自宅の庭に、五匹の元気な鳴き声が響いた。

 

「グソッ!」「オニシズ~♪」「アブリィ!」「バサァッ!」「ウルガァ!」

 

 フェリヤは木陰からこちらを見ている。

 

 ……うん、いつもの光景だ。

 

 ♦

 

 十四歳からの一年間は、ジムチャレンジを意識した本格的な練習に費やした。

 

 対人戦での技の使い方、交代の判断、道具の扱い。もちろん、仲間たちの疲れ具合や気分にも気を配る。

 

 その結果、フェリヤ以外の五匹は全員レベル80以上。

 

 ……十五歳の手持ちにしては、ちょっとやりすぎたかもしれん。でも、理想のパーティーを育てずして何が色廃か!

 

 もっとも、強さだけで解決できないこともある。ムーちゃんは仲間を守ることを優先するし、モスは強敵を見ると熱くなる。俺が大きな声を出すより、一度落ち着いて目を合わせた方が上手くいく日も多かった。

 

 九歳の頃なら、こんな育成メニューは組まなかっただろうな。

 

 まずムーちゃん。

 胸元にはグソクムシャナイト。

 通常時はききかいひ、メガシンカすればむし・はがねタイプになり、特性はかたいツメへ変わる。

 きゅうけつ、ふいうち、つるぎのまい、アイアンヘッドを軸にした重装甲アタッカーだ。

 

 ちなみに本人は、今日も俺の頭を優しく撫でている。

 いやぁ、見た目と中身のギャップがすごい。

 

 モスはきれあじといのちのたまで火力を伸ばすバサギリ。

 相手の隙を待つことも覚えた。……強敵を見ると斧が疼くのは相変わらずです。

 

 かえではウルガモス。

 ちょうのまいで特攻・特防・素早さを上げ、ほのおのまいやギガドレインで戦う。

 あさのひざしも頼もしい。

 

 ルージュはこだわりスカーフとすりかえを使う変則型。

 ちょうのまいを積むなら、スカーフを手放してから。

 ……ロマンが半分くらい混ざっているのは認めますけどね!

 

 しずくはオニシズクモ。なみのりや、ねばねばネットを使った支援が得意。

 ムーちゃんに甘えっぱなしだけど、戦いになれば頼れる。

 

 そしてフェリヤ。強い力はあるけれど、今もバトルは望んでいない。

 俺から練習を求めることもしていない。

 

「フェリヤ」

「……フェロ?」

「今年、ガラルを旅しようと思うんだ。よかったら一緒に来ない?」

 

 彼女が木陰からこちらを向く。

 前にも一度話したけれど、実際に旅へ出る前に、もう一度聞きたかった。

 

「知らない街にも行くし、慣れない場所も多いと思う。もちろん戦わなくてもいいし、嫌になったら休める場所を探そう」

 

 しばらくの沈黙。

 フェリヤはムーちゃんたちを見渡し、最後に俺の顔へ視線を戻した。

 

「……フェロ」

 

 小さく頷く。

 

 ……おお。

 そっか。一緒に来てくれるんだな。

 

「ありがとな、フェリヤ!」

 

 俺はその場で笑った。距離を詰めたり、触ろうとしたりはしない。

 彼女が選んでくれた。それが嬉しかった。

 

 旅の途中で気持ちが変わるかもしれない。

 そのときは、また相談すればいい。

 

 今ここで頷いたからといって、何でも我慢してもらうつもりはなかった。

 

 ♦

 

 もうひとつ、重要な準備がある。

 推薦状だ。

 

 ガラルのジムチャレンジへ参加するには、推薦が必要になる。

 だが、俺には頼れる師匠がいる。

 

「師匠ぉぉぉ!!」

 

「ほっほっほ! 久しぶりじゃのう、リンちゃん!」

 

 久しぶりのマスター道場。師匠は嬉しそうに目を細めた。

 

「推薦の件、覚えておるぞい。ただし、その前にひとつ」

 

「……何?」

 

「久しぶりに、ワシちゃんと勝負してみんか?」

 

 ……お。

 そう来ましたか。

 

「望むところ!」

 

 特別な三本勝負。

 一対一、途中交代なし、制限時間あり。

 師匠の全戦力をぶつける公式戦ではなく、俺たちの成長を見る試験だ。

 

 とはいえ、元チャンピオンが相手。簡単には勝てない。

 

 ♦

 

 一戦目。

「コジョンド!」

 

「ジョンドッ!」

 

「ルージュ、お願い!」

 

「アブリィ!」

 

 師匠のコジョンドが一気に距離を詰める。

 

「ねこだまし!」

 

 乾いた音が響き、ルージュが弾かれた。

 だが、特性りんぷんのおかげで怯まない。

 

「ルージュ、すりかえ!」

 

「アブリィ!」

 

 ルージュが相手の脇をすり抜け、こだわりスカーフを渡す。

 代わりに相手の持ち物を受け取った。

 

 ……よし。ここからが本番だ。

 

「コジョンド、とびひざげり!」

 

「ジョンドッ!」

 

 コジョンドが踏み込むが、かくとう技はルージュには通りにくい。

 

「ルージュ、身体をひねって受け流して!」

 

 小さな身体が衝撃で揺れる。それでも持ちこたえた。

 スカーフで固定されるのは、受け取ったあとに使った技。

 つまり今は、とびひざげりしか選べない。

 

「ルージュ、ちょうのまい!」

 

「アブリィ!」

 

 鱗粉が舞う。

 ルージュはもうスカーフを持っていないから、技を自由に使える。

 

 コジョンドが再び踏み込む。師匠の技量なら正面から防ぎ続けるのは無理だ。けれど、ルージュは練習で覚えた軌道変更で、攻撃をかすめて距離を取った。

 

「ムーンフォース!」

 

「アブリィィ!」

 

 月光のような輝きがコジョンドを捉えた。

 相性抜群の一撃に、コジョンドが膝をつく。

 

「そこまでじゃ!」

 

 ……よし!

 

 得意げに戻ってきたルージュを褒めると、師匠が笑った。

 

「ほっほっほ。道具の使い方も、ずいぶん工夫したのう」

 

「ありがとうございます!」

 

 ♦

 

 二戦目は、師匠のレントラーとモス。

 

「レントラー、サンダーダイブ!」

 

「レントラァッ!」

 

 電気をまとった身体が迫る。

 

「モス、がんせきアックス!」

 

「バサァッ!」

 

 斧と電撃がぶつかり、モスが一歩後退した。

 いのちのたまの反動もある。

 

 真正面からのぶつかり合いを続ければ、こちらが先に削られる。

 

 昔のモスなら、それでも力任せに突っ込んだだろう。

 でも今は違う。

 

「モス、一度引いて!」

 

「バサッ!」

 

 岩斧を下げ、間合いを空ける。

 レントラーの足元を見て、俺は次の動きを待った。

 

「レントラー、ばかぢから!」

 

「レントラァ!」

 

 踏み込んだ瞬間、レントラーの重心が前へかかった。

 

「今だ、横からつじぎり!」

 

 モスが体をひねり、斧の刃を振り抜く。

 斬撃に特性きれあじが乗り、レントラーの体勢が大きく崩れた。

 こちらも反動で息が荒い。あと一撃が限界かもしれない。

 

「モス、無理なら下がっていい!」

 

「バサァッ!」

 

 返事とともに、モスが俺を見た。

 まだ戦いたい。そう伝えているようだった。

 

「……わかった。最後は一緒に決めよう!」

 

 レントラーが踏み込む。

 

「がんせきアックス!」

 

「バサギィッ!」

 

 大きな斧が地面を削り、相手の進路を遮る。

 レントラーが動きを止めた一瞬を逃さず、モスが振り下ろした一撃が決まった。

 

「そこまでじゃ!」

 

 ……勝った。

 でも、ぎりぎりだ。

 

 モスは斧を掲げたあと、ふらりと身体を揺らした。

 

「お疲れ! よく頑張った!」

 

 俺が駆け寄ると、モスは満足そうに頷いた。

 相手の隙を待ち、自分から引けるようになった。

 

 そこが、何より嬉しかった。

 

 ♦

 

「さて、最後じゃのう」

 

 師匠の声音が、少し引き締まった。

 

「この三本勝負の条件の中で、ワシちゃんもできる限り本気でいくぞい」

 

 繰り出されたのは、ウーラオス。一撃の型。

 

 あく・かくとうタイプの、師匠の切り札だ。

 

 ……うっわ。本物だ。本気の師匠のウーラオス。

 相手に不足なし!

 

「ムーちゃん、いこう!」

 

「グソクシャァッ!」

 

「師匠、メガシンカしてもいい?」

 

「もちろんじゃ!」

 

 右耳のキーストーンへ触れる。

 

 虹色の光がムーちゃんの胸元と結ばれ、重厚な銀白色の鎧が現れた。

 

 四本腕のメガグソクムシャ。

 

 十一年の付き合いになる、俺の相棒だ。

 

「ウーラオス、インファイト!」

 

「ウーラァ!」

 

「ムーちゃん、受け流して!」

 

 連続する拳が装甲を叩き、ムーちゃんの身体が少しずつ押される。

 メガシンカしていても、師匠の攻撃は重い。全部受ければ危険だ。

 

「距離を取ろう!」

 

 ムーちゃんが跳び退く。ウーラオスは追いかけるように構えを変えた。

 

「今じゃ、ふいうち!」

 

 鋭い一撃が、反撃を狙ったムーちゃんの懐へ飛ぶ。

 

「グソッ!」

 

 ……速い。

 けれど、ムーちゃんは踏ん張っている。

 

「きゅうけつ!」

 

「グソクシャァッ!」

 

 四本の腕が相手を捉え、体力を取り戻す。つるぎのまいを使う余裕はまだない。ここで無理に積めば、次の攻撃に耐えられないだろう。

 

 師匠は笑った。

 

「ほっほっほ! 判断が早くなったのう!」

 

 それから何度も攻防を繰り返した。

 ムーちゃんは装甲で受け流し、回復の機会を探す。ウーラオスはわずかな隙を見逃さない。

 

 師匠の読みは、俺よりずっと深かった。あと一歩踏み込めば勝てる、と思ったところで、いつも先に動かれてしまう。

 

 ……参ったな。

 でも、面白い。やっぱりこの人は強い!

 

 そして、最後の攻防。

 

「ウーラオス、あんこくきょうだ!」

 

 黒い闘気をまとった拳が迫る。急所を捉える、危険な技。

 真正面からぶつかれば、こちらが倒れるかもしれない。

 

「ムーちゃん、半歩左へ!」

「グソッ!」

 ムーちゃんが装甲の厚い側を向け、拳の軌道をずらした。それでも衝撃は大きく、膝が沈む。

 

 でも、完全には崩れていない。

 

「……今だ、アイアンヘッド!」

 

「グソクシャァァッ!」

 

 四本の腕がウーラオスを捉え、踏み込んだ勢いを利用して体勢を崩す。最後の一撃が決まると、二匹は同時に膝をついた。

 

 俺は息を止めた。

 

 先に立ち上がったのは、ムーちゃんだった。

 

「グソッ……!」

 

 ウーラオスは立とうとして、師匠の合図で動きを止めた。

 

「……そこまでじゃ。今回はリンちゃんの勝ちじゃのう」

 

 …………。

 

「……勝った?」

 

 信じられない。師匠のウーラオスに?

 でも、ムーちゃんは肩で息をしている。あと一撃でも受けていたら、結果は逆だっただろう。

 

「うおおおお!! やったぁぁぁ!!」

 

「グソクシャァッ!」

 

 俺は思わず拳を突き上げた。

 嬉しい。でも、簡単な勝利じゃなかった。

 師匠はウーラオスを労い、こちらへ歩いてきた。

 

「ほっほっほ! 強くなったのう。ただし、今日はワシちゃんが決めた条件での三本勝負じゃ。これで全部を超えたと思うでないぞい」

 

「わかってる。次はもっと強くなって挑むよ!」

 

「うむ。それでこそワシちゃんの弟子じゃ!」

 

 師匠は一枚の書類を取り出した。

 

「ジムチャレンジへの推薦、喜んで引き受けよう!」

 

 ……よし。

 本当に、始まるんだ。

 

 ♦

 

 道場を出る前、ハイドが箱いっぱいのガンテツボールを持ってきてくれた。

 

「旅に出るんでしょ? 足りなくなったら連絡してね!」

 

「ハイドぉぉ! 神か!?」

 

「珍しい素材が必要なものは時間がかかるけどね」

 

 もちろん、それでもありがたい。オシャボ厨にとっては宝の山ですよ!?

 ミツバさんには「また無茶な研究をしないように」と釘を刺され、俺とハイドは揃って返事をした。

 

「「してません!」」

 

 ……息ぴったり。いや、本当にしてないからね?

 

 バウタウンへ戻り、ルリナ姉さんにも推薦が決まったことを報告した。

 

「ついに挑戦するのね」

 

「うん!」

 

「私のジムでは、手加減しないからね」

 

「望むところ!」

 

 拳を軽く合わせた。姉さんと本気で戦う日が、今から楽しみだ。

 

 ♦

 

 旅立ちの前夜。

 

 部屋には大きな旅行鞄。着替え、傷薬、ポケモンたちの道具、予備のバッテリー、応急処置の用品。パパンが何度も確認してくれた。

 

「リン、財布は分けて持てよ。それから連絡を――」

 

「パパン、心配しすぎ!」

 

「……そうかもな。でも、父さんにとってはずっと息子だから」

 

 その言葉に、胸の奥が少し熱くなった。

 

「……ありがと、パパン」

 

「ああ。楽しんでこい」

 

 続いてママンが入ってきた。

 

「リン。準備は終わった?」

 

「ばっちり!」

 

「十五歳かぁ。あっという間ね」

 

 ママンは俺の荷物を眺め、懐かしそうに笑った。

 

「最初は小さなコソクムシを連れて帰ってきたと思ったら、いつの間にか六匹も……しかも全員むしタイプなんだもの」

 

「そこは譲れないので!」

 

「ふふ。知ってるわ」

 

 そして、少しだけ声を落とした。

 

「リン。つらくなったら、帰ってきていいのよ」

 

 俺は顔を上げた。

 

「勝てなくてもいいし、途中で休んでもいい。元気に帰ってきてくれたら、それでいいから」

 

 ……ああ。

 この人は昔からそうだった。

 

 無茶をすれば叱るし、危ないことには本気で怒る。でも最後には、俺のやりたいことを応援してくれる。

 

「……ママン、ありがとう。絶対元気に帰るよ」

 

「ええ。約束ね」

 

 ♦

 

 翌朝、バウタウンの駅。

 パパンとママンが見送りに来てくれていた。

 

「忘れ物は?」

 

「ない!」

 

「食事はちゃんと取るのよ?」

 

「わかってる!」

 

「毎日とは言わないから、連絡してくれよ」

 

「うん!」

 

 俺は腰の六つのボールへ手を伸ばした。

 全員色違い、全員むしタイプ。

 

 でも、性格も望むことも違う仲間たち。

 

 この六匹と一緒に行きたい。

 

「行ってくる!」

 

「行ってこい!」

 

「気をつけてね、リン!」

 

 列車が動き出す。ホームの二人が小さくなるまで、俺は手を振り続けた。

 窓の向こうには、緑の丘と遠くの山々。

 そして、これから挑むガラルの街が続いている。

 

 最初の目的地は開会式の街、エンジンシティ。

 

 ……ついに来たか。

 前世では画面の中で戦った。今度は仲間と一緒に、自分の足でガラルを歩く。

 強い相手とのバトルも、新しい出会いも、全部楽しみでしょうがない。

 

『まもなく、エンジンシティに到着いたします』

 

 車内放送が流れる。

 窓の外に赤茶色の建物と大きな煙突が見えた。

 

「……よし!」

 

 俺は腰のボールを軽く叩いた。

 

「みんな、行こうぜ!」

 

 さあ、始めよう。

 色違いだけ。むしタイプだけ。そして最高の仲間たちと挑む、俺たちのガラルジムチャレンジ!

 

 ……その前に。

 受付って、どこでしたっけ?

 

 前世世界一位、現実のマップ確認を忘れる痛恨のミス。

 ……まあ、スマホロトムがあるから何とかなるか!




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
第35話をもちまして、幼少期編は閉幕となります。

四歳でムーちゃんと出会ったリンも、ついに十五歳。
長かった準備期間を終え、いよいよ本格的なジムチャレンジが始まります。

そして次回からは、青年期編……と呼ぶにはまだ少し若い気もしますが、新たな章へ突入します。

リンもそれなりに大人になったということで、これまでの賑やかな雰囲気や軽いノリは残しつつ、文章のテイストも少し変えていきたいと思っています。

バトルはより熱く、日常や人間関係はもう少し丁寧に。
リン自身の成長も感じていただけるように書いていけたらと思います。

ここまで幼少期編にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

次回からは、いよいよ青年期:ガラルジムチャレンジ編。

引き続き、リンと六匹の仲間たちの冒険を楽しんでいただけたら嬉しいです。

感想、評価、お気に入り。
引き続きお待ちしております。

これからも、色タイプ統一ニキの応援、よろしくお願いいたします。
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