日番谷に転生した   作:使い手なない

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第25話「再会」

 

 瀞霊廷、一番隊隊舎。

 

 五番隊隊長、藍染惣右介の死亡が報告されてから、間もなく。

 

 護廷十三隊の隊長たちに、緊急招集がかけられた。

 

「……また隊首会ですか」

 

 日番谷冬華は、小さく息を吐いた。

 

 背中には、二本の氷輪丸。

 

 銀白色の髪を揺らしながら、隊長たちが集まる広間へ足を踏み入れる。

 

 そこには、すでに多くの隊長が集まっていた。

 

「おや、冬華ちゃん」

 

「あっ、京楽さん!」

 

 八番隊隊長、京楽春水が声をかけてきた。

 

「大変なことになっちゃったねえ」

 

「……そうですね」

 

 冬華は頷いた。

 

 しかし、その表情はどこか複雑だった。

 

 藍染の遺体。

 

 いや、正確には遺体など存在しなかった。

 

 冬華の目に映っていたのは、壁に突き刺さった一本の刀だけ。

 

 周囲の隊士たちには、血まみれの藍染が見えていたという。

 

(……鏡花水月)

 

 完全催眠。

 

 その恐ろしさを、冬華は改めて実感していた。

 

 そして。

 

(……桃ちゃん、大丈夫でしょうか)

 

 昨日の雛森の姿が、頭から離れない。

 

 大切な友人を傷つけてしまった。

 

 その事実が、胸に重くのしかかっていた。

 

 ――ゴンッ!!

 

 杖が床を打つ音が響く。

 

「――静粛に」

 

 山本元柳斎重國の声に、広間が静まり返った。

 

「すでに承知しておろうが、五番隊隊長、藍染惣右介が遺体となって発見された」

 

 隊長たちの表情が引き締まる。

 

「現在、四番隊を中心に調査を進めておる。しかし、事件の全容は未だ明らかになっておらぬ」

 

「…………」

 

 冬華は静かに話を聞いていた。

 

 その時。

 

「……総隊長」

 

 穏やかな声が響いた。

 

 四番隊隊長、卯ノ花烈だった。

 

「現場に居合わせた日番谷隊長から、気になる証言があったと聞いております」

 

「……む?」

 

 山本の視線が冬華へ向けられる。

 

「日番谷冬華。何か申したか」

 

「……はい」

 

 冬華は一歩前へ出た。

 

「私には、藍染隊長の遺体が見えませんでした」

 

「…………」

 

 広間が静まり返った。

 

「……何?」

 

 山本の眉が動く。

 

「どういう意味じゃ」

 

「そのままの意味です」

 

 冬華は落ち着いて答えた。

 

「皆さんには藍染隊長の遺体が見えていたそうですが、私には壁に刀が刺さっているようにしか見えなかったんです」

 

「……刀?」

 

 京楽が首を傾げた。

 

「それはまた、妙な話だねえ」

 

「はい。私も驚きました」

 

 冬華は頷いた。

 

「ですが、何度見ても刀にしか見えませんでした」

 

「…………」

 

 卯ノ花は静かに冬華を見つめていた。

 

「……日番谷隊長」

 

「はい?」

 

「その刀について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?」

 

「……えっと」

 

 冬華は少し考える。

 

「壁に突き刺さっていました。少なくとも、私には人の姿には見えませんでした」

 

「……なるほど」

 

 卯ノ花は小さく頷いた。

 

 その表情は穏やかなままだったが、何かを考えているようにも見えた。

 

「……興味深いお話ですね」

 

「…………」

 

 冬華は、そっと息を吐いた。

 

(……卯ノ花さんなら)

 

 原作でも、藍染の偽装死に違和感を覚えた人物。

 

 彼女なら、この証言を無視することはないだろう。

 

「――よい」

 

 山本が口を開いた。

 

「日番谷の証言についても、調査を進めよ」

 

「承知いたしました」

 

 卯ノ花が頭を下げる。

 

「各隊は旅禍への警戒を継続するとともに、藍染の事件についても情報を集めるのじゃ」

 

「「「はっ!」」」

 

「――解散!」

 

 こうして、隊首会は終了した。

 

     ◇◆◇

 

 瀞霊廷。

 

「……ふう」

 

 隊首会を終えた冬華は、屋根の上へ降り立った。

 

 周囲では、旅禍の捜索が続いている。

 

 遠くからは、時折戦闘の音が聞こえてきた。

 

(……一護さん、どこにいるんでしょう)

 

 冬華は辺りを見渡した。

 

 前世の記憶が正しければ、黒崎一護はすでに阿散井恋次と戦っているはずだ。

 

 そして、この後には更木剣八との戦いが待っている。

 

(……その前に、会えるといいんですけど)

 

 そう考えた、その時だった。

 

「……ん?」

 

 冬華は足を止めた。

 

 少し離れた場所から、強い霊圧を感じる。

 

 隊長格には届かないものの、普通の隊士とは比較にならないほど大きな霊圧。

 

 しかも、どこか荒削りだ。

 

(……もしかして)

 

 冬華は小さく笑った。

 

「……見つけました!」

 

 次の瞬間。

 

 ――ヒュン!

 

 瞬歩で、その場から姿を消した。

 

     ◇◆◇

 

 瀞霊廷の路地裏。

 

「……くそっ」

 

 黒崎一護は、斬月を肩に担ぎながら歩いていた。

 

 先ほどの阿散井恋次との戦闘。

 

 勝ちはしたものの、決して楽な相手ではなかった。

 

 身体には、まだ痛みが残っている。

 

「……急がねえと」

 

 ルキアを助ける。

 

 そのために、こんなところで立ち止まっている暇はない。

 

 そう考えた、その時だった。

 

「――一護さん!」

 

「……あ?」

 

 突然、聞き覚えのある声がした。

 

 一護が顔を上げる。

 

 そして。

 

「……え?」

 

 目を見開いた。

 

 路地の先。

 

 そこに、一人の少女が立っていた。

 

 肩にかかる銀白色の髪。

 

 澄んだ翡翠色の瞳。

 

 小柄で華奢な身体に、整った可憐な顔立ち。

 

 そして、背中には二本の刀。

 

「……まさか」

 

 一護は呆然と呟いた。

 

「……冬華、姉ちゃん?」

 

「あっ!」

 

 少女が嬉しそうに笑う。

 

「覚えていてくれたんですね!」

 

「……っ!」

 

 一護は思わず声を上げた。

 

「――冬華姉ちゃん!?」

 

「はい! お久しぶりです、一護さん!」

 

 冬華は満面の笑みを浮かべた。

 

「大きくなりましたねえ!」

 

「いや、待て待て待て!」

 

 一護は慌てて手を振った。

 

「何で冬華姉ちゃんが、こんなところにいるんだよ!?」

 

「えっと……お仕事です!」

 

「仕事!?」

 

「はい!」

 

 冬華は元気よく頷いた。

 

 その時。

 

「……ん?」

 

 一護の視線が、冬華の羽織へ向けられた。

 

 白い羽織。

 

 背中には、十番隊を示す紋章。

 

「…………」

 

 一護は、しばらく固まった。

 

「……おい」

 

「はい?」

 

「その羽織……」

 

「……?」

 

「まさか、冬華姉ちゃん……」

 

 冬華は首を傾げる。

 

 そして、何でもないことのように答えた。

 

「はい! 十番隊の隊長をしています!」

 

「…………」

 

 数秒の沈黙。

 

 そして。

 

「――隊長ォ!?」

 

 一護の叫びが、路地裏に響き渡った。

 

「ちょっと待て! 冬華姉ちゃん、隊長だったのかよ!?」

 

「えへへ。実はそうなんです!」

 

「実はそうなんです、じゃねえだろ!!」

 

 冬華は楽しそうに笑った。

 

「ふふっ。一護さん、昔よりずっと元気ですね!」

 

「そういう問題じゃねえって……!」

 

 一護は頭を抱えた。

 

 かつて、雨の日に自分を助けてくれた少女。

 

 あの時も、とんでもなく強かった。

 

 しかし、まさか護廷十三隊の隊長だったとは。

 

「……マジかよ」

 

 一護は呆然と呟いた。

 

 冬華は、そんな一護を微笑ましそうに眺めていた。

 

「……そういえば」

 

「……ん?」

 

「お母さんは、お元気ですか?」

 

「…………」

 

 一護の表情が、ぴたりと止まった。

 

「……母さん、か」

 

「……?」

 

 冬華は首を傾げる。

 

 その反応に、胸の奥がざわついた。

 

「……一護さん?」

 

「……死んだよ」

 

「…………え?」

 

 一護は静かに告げた。

 

「母さんは、もういねえ」

 

「…………」

 

 冬華の笑顔が消えた。

 

「……そんな」

 

 思わず、声が漏れる。

 

「……だって、あの時……」

 

 あの雨の日。

 

 グランドフィッシャー。

 

 冬華は、一護を助けた。

 

 そして、真咲が死ぬ未来も変えられたはずだった。

 

 そう思っていた。

 

 しかし。

 

「……そう、だったんですね」

 

 冬華は俯いた。

 

 一護は、そんな冬華を見つめる。

 

「……冬華姉ちゃん」

 

「……はい」

 

「あの時は、ありがとな」

 

「……え?」

 

「俺を助けてくれただろ」

 

 冬華が顔を上げる。

 

 一護は、少しだけ照れくさそうに視線を逸らした。

 

「……ちゃんと覚えてるからさ」

 

「…………」

 

 冬華は、しばらく何も言えなかった。

 

 そして。

 

「……ありがとうございます」

 

 小さく微笑んだ。

 

 だが、その胸には複雑な思いが残っていた。

 

(……真咲さん)

 

 未来を変えたつもりだった。

 

 けれど、すべてを救えたわけではない。

 

 その事実を、冬華は静かに受け止めた。

 

     ◇◆◇

 

「……さて!」

 

 冬華は、ぱんっと両手を合わせた。

 

「一護さん!」

 

「……ん?」

 

「ここから先へ進むつもりなんですよね?」

 

「……ああ」

 

 一護の表情が引き締まる。

 

「ルキアを助けに行く」

 

「……そうですか」

 

 冬華は静かに頷いた。

 

 そして。

 

「では、少しだけ手合わせしましょう!」

 

「…………は?」

 

 一護が固まった。

 

「……何でだよ!?」

 

「だって、私は十番隊の隊長ですから!」

 

 冬華は笑顔で答えた。

 

「旅禍を見つけたのに、何もしないわけにはいきません!」

 

「……いや、それはそうだけどよ……」

 

「安心してください! 本気で倒したりしませんから!」

 

「それ、全然安心できねえんだけど!?」

 

 冬華はくすくす笑った。

 

 そして、背中の氷輪丸を一本抜き放つ。

 

 ――シャキン。

 

「……さあ、一護さん」

 

 翡翠色の瞳が、まっすぐに一護を見つめた。

 

「私を突破してみてください!」

 

「…………」

 

 一護は、しばらく冬華を見つめていた。

 

 しかし、やがて大きく息を吐く。

 

「……分かったよ」

 

 斬月を構える。

 

「後悔すんなよ、冬華姉ちゃん!」

 

「はい!」

 

 冬華は嬉しそうに微笑んだ。

 

「いつでもどうぞ!」

 

 次の瞬間。

 

「――うおおおおっ!!」

 

 一護が地面を蹴った。

 

 ――ドンッ!!

 

 凄まじい勢いで距離を詰め、斬月を振り下ろす。

 

 しかし。

 

 ――キィン!!

 

「……っ!?」

 

 冬華は片手の氷輪丸で、あっさりと受け止めた。

 

「……いい踏み込みですね!」

 

「……くっ!」

 

 一護は即座に斬月を引き、横薙ぎに振るう。

 

 ――ヒュン!

 

 だが、冬華の姿が消えた。

 

「……なっ!?」

 

「こちらですよ!」

 

「……っ!」

 

 背後から声がした。

 

 一護が慌てて振り返る。

 

 しかし、そこにはすでに冬華の姿がない。

 

「……くそっ!」

 

「ふふっ。まだまだですね!」

 

 冬華は少し離れた場所に立っていた。

 

 その表情には、余裕がある。

 

 一護は歯を食いしばった。

 

(……速え!)

 

 恋次との戦いでも、これほどの速さは感じなかった。

 

 いや。

 

 そもそも、動きが見えない。

 

「……だったら!」

 

 一護は再び踏み込んだ。

 

 斬月を大きく振りかぶる。

 

 ――ブオン!!

 

 強烈な斬撃。

 

 しかし。

 

 ――キィン!!

 

 冬華は氷輪丸をわずかに傾け、斬月の軌道を逸らした。

 

「……っ!」

 

「力任せでは駄目ですよ、一護さん!」

 

 そのまま冬華が一歩踏み込む。

 

 ――トン。

 

「……え?」

 

 氷輪丸の峰が、一護の肩へ軽く触れた。

 

「……一本です!」

 

「……は!?」

 

 一護は目を見開いた。

 

 冬華は、にこにこと笑っている。

 

「……くそっ!」

 

 一護は再び斬月を構えた。

 

 それから、何度も斬りかかった。

 

 上段。

 

 横薙ぎ。

 

 踏み込みからの連撃。

 

 しかし。

 

 ――キィン!

 

 ――カンッ!

 

 ――ヒュン!

 

 そのすべてが、冬華に受け流される。

 

 そして、冬華の氷輪丸は何度も一護の身体へ届いた。

 

 もちろん、刃を立ててはいない。

 

 だが、実戦なら何度斬られていたか分からなかった。

 

「……はあっ、はあっ……!」

 

 一護は肩で息をした。

 

「……何なんだよ、その強さ……!」

 

「えへへ。これでも、たくさん修行しましたから!」

 

「……修行ってレベルじゃねえだろ……!」

 

 冬華は楽しそうに笑った。

 

 しかし、やがてその表情が少しだけ真剣になる。

 

「……一護さん」

 

「……あ?」

 

「最後に、一つだけ確かめさせてください」

 

「……何だよ?」

 

 冬華は、ゆっくりと氷輪丸を下ろした。

 

 そして、鞘へ収める。

 

 ――チン。

 

「……え?」

 

 一護が目を瞬かせる。

 

 冬華は、両手を身体の横へ下ろした。

 

 完全に無防備な姿勢。

 

「……私を、本気で斬ってください」

 

「…………は?」

 

 一護は固まった。

 

「……いや、待てよ!」

 

「はい?」

 

「何言ってんだよ!?」

 

「大丈夫ですよ。遠慮はいりません」

 

「そういう問題じゃねえだろ!!」

 

 一護は思わず声を荒らげた。

 

「冬華姉ちゃんは、俺を助けてくれた人だぞ!?」

 

「…………」

 

「そんな相手を、本気で斬れるわけねえだろ!!」

 

 冬華は、少しだけ目を見開いた。

 

 そして。

 

「……ふふっ」

 

 嬉しそうに微笑んだ。

 

「ありがとうございます、一護さん」

 

「……あ?」

 

「そう言ってもらえて、嬉しいです」

 

「…………」

 

 冬華は、一護をまっすぐに見つめた。

 

「でも、私は今、あなたの前に立ちはだかる死神の隊長です」

 

「……っ!」

 

「もし、私を倒さなければルキアさんを助けに行けないとしたら……どうしますか?」

 

「…………」

 

 一護は、言葉を失った。

 

 冬華を傷つけたくない。

 

 それは本心だ。

 

 しかし。

 

 ルキアを助ける。

 

 そのために、ここまで来た。

 

 今さら引き返すことなど、できない。

 

「……くそっ」

 

 一護は、斬月を握り直した。

 

「……本当に、いいんだな?」

 

「はい!」

 

 冬華は笑顔で頷いた。

 

「遠慮なく、どうぞ!」

 

「…………」

 

 一護は歯を食いしばった。

 

 そして。

 

「――後で文句言うなよ!!」

 

 ――ドンッ!!

 

 地面を蹴った。

 

 全力の踏み込み。

 

 渾身の一撃。

 

 斬月が、冬華の肩へ振り下ろされる。

 

 しかし。

 

 ――ガキィィィン!!

 

「…………は?」

 

 一護の動きが止まった。

 

 斬月の刃は、確かに冬華へ届いている。

 

 だが。

 

 斬れない。

 

 まるで、分厚い鋼鉄の塊に叩きつけたかのように。

 

 刃が、完全に止まっていた。

 

「……な、何だよ……これ……!?」

 

 一護は呆然と呟いた。

 

 冬華の肩には、傷一つない。

 

 死覇装すら破れていなかった。

 

「……ふふっ」

 

 冬華は穏やかに微笑んだ。

 

「驚きましたか?」

 

「……驚くに決まってんだろ!!」

 

 一護が叫ぶ。

 

「何で斬れねえんだよ!?」

 

「霊圧操作ですよ!」

 

「……霊圧、操作?」

 

「はい!」

 

 冬華は自分の肩へ軽く触れた。

 

「霊圧を何層にも重ねて、身体を守っているんです」

 

「…………」

 

 一護は言葉を失った。

 

 斬月を全力で振り下ろした。

 

 それなのに、傷一つつけられなかった。

 

(……これが、隊長……!)

 

 冬華は、そんな一護を見つめていた。

 

 そして。

 

「……合格です、一護さん!」

 

「…………は?」

 

 一護が目を瞬かせる。

 

「……合格?」

 

「はい!」

 

 冬華は嬉しそうに頷いた。

 

「あなたの覚悟、ちゃんと見せてもらいました!」

 

「……いや、待てよ」

 

 一護は困惑した。

 

「俺、お前に一撃も入れられてねえぞ!?」

 

「ふふっ。最初から私に勝つ必要なんてありませんよ?」

 

「……はあ!?」

 

 冬華は、ゆっくりと微笑んだ。

 

「……強くなりましたね、一護さん」

 

「…………」

 

「昔は、私が助けた小さな男の子だったのに」

 

 銀白色の髪が、柔らかな風に揺れる。

 

「今は、誰かを助けるために、こんなところまで来ているんですね」

 

「……っ」

 

 一護は、思わず言葉に詰まった。

 

 冬華は優しく微笑む。

 

「……それに」

 

「……ん?」

 

「私を斬りたくないって言ってくれたのも、嬉しかったですよ?」

 

「…………っ!」

 

 一護の頬が、かあっと赤くなった。

 

 目の前には、翡翠色の瞳を細めて微笑む冬華。

 

 銀白色の髪。

 

 可憐な顔立ち。

 

 先ほどまで圧倒的な強さを見せていた少女とは思えないほど、柔らかな笑顔だった。

 

「……な、何だよ急に……!」

 

「……?」

 

 冬華は首を傾げる。

 

「どうかしました?」

 

「何でもねえよ!」

 

「……ふふっ」

 

 冬華は楽しそうに笑った。

 

「変な一護さんですね!」

 

「うるせえ!」

 

 一護は顔を逸らした。

 

 そんな様子を見て、冬華はさらに嬉しそうに微笑んだ。

 

「……さて!」

 

 冬華は一歩横へ移動した。

 

 道を開ける。

 

「行ってください、一護さん!」

 

「……え?」

 

「ルキアさんを、助けに行くんでしょう?」

 

「…………」

 

 一護は、冬華を見つめた。

 

「……いいのかよ?」

 

「はい!」

 

 冬華は頷いた。

 

「ただし、気をつけてくださいね」

 

「……?」

 

「瀞霊廷には、私よりもずっと怖い人がいますから!」

 

「……マジかよ」

 

 一護は顔を引きつらせた。

 

 冬華はくすくす笑う。

 

「ふふっ。頑張ってください!」

 

「…………」

 

 一護は、しばらく冬華を見つめていた。

 

 そして。

 

「……ありがとな、冬華姉ちゃん」

 

「……はい!」

 

「俺、絶対にルキアを助けるから!」

 

「……ええ!」

 

 冬華は満面の笑みを浮かべた。

 

「応援しています!」

 

 一護は大きく頷いた。

 

 そして、斬月を肩へ担ぎ直す。

 

「……じゃあな!」

 

「はい! また会いましょう!」

 

 次の瞬間。

 

 ――タッ!

 

 一護は走り出した。

 

 その背中を、冬華は静かに見送る。

 

「…………」

 

 かつて、雨の日に出会った少年。

 

 あの時は、守られる側だった。

 

 しかし、今は違う。

 

 誰かを守るために、自分よりも強い相手へ立ち向かえる。

 

 そんな少年へと、成長していた。

 

「……ふふっ」

 

 冬華は小さく微笑んだ。

 

「……頑張ってくださいね、一護さん」

 

 そして、空を見上げる。

 

 瀞霊廷には、まだ多くの騒動が待っている。

 

 藍染惣右介。

 

 鏡花水月。

 

 そして、これから訪れる戦い。

 

「……さて!」

 

 冬華は、気持ちを切り替えた。

 

「私も、お仕事に戻りましょう!」

 

 銀白色の髪を揺らしながら、冬華は瞬歩でその場を後にした。

 

 ――第25話『再会』・完。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
引き続きよろしくお願いします!
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