瀞霊廷、十番隊隊舎。
黒崎一護との再会から、しばらく。
「……ふう」
日番谷冬華は、隊長室の机に広げられた資料を見つめていた。
銀白色の髪に、澄んだ翡翠色の瞳。
小柄な身体を包む死覇装の上には、十番隊の隊長羽織。
背中には、二本の氷輪丸が収められている。
「……やっぱり、おかしいですね」
机の上にあるのは、五番隊隊長・藍染惣右介の死亡事件に関する報告書だった。
発見時刻。
発見場所。
現場の状況。
そして、遺体を目撃した隊士たちの証言。
そのどれもが、藍染の死を前提として記されている。
しかし。
(……そもそも、遺体なんてありませんでしたからね)
冬華が見たのは、壁に突き刺さった一本の刀だけ。
他の隊士たちが見たという血まみれの藍染など、どこにも存在しなかった。
原因は分かっている。
鏡花水月。
五感を支配する完全催眠。
冬華は、かつて藍染が催した始解のお披露目で、その能力を回避していた。
だからこそ、偽装死体に騙されなかったのだ。
(……問題は、ここからです)
冬華は報告書を閉じた。
藍染が生きていることは分かっている。
しかし、それを証明する証拠がない。
周囲の死神たちは、すでに鏡花水月の完全催眠にかかっている。
仮に藍染が目の前に現れたとしても、彼らが正しく認識できるとは限らない。
そして何より。
(……藍染隊長は、私が完全催眠にかかっていないことを知っているんでしょうか)
市丸ギンは気づいていた。
第24話で、冬華が遺体を見えないと告げた時の反応。
あの男は、明らかに動揺していた。
ならば、すでに藍染へ報告している可能性もある。
「……困りましたねえ」
冬華は頬杖をついた。
正直なところ、今すぐ藍染を捕まえられるなら、そうしたかった。
しかし、相手はあの藍染惣右介だ。
原作知識があるからといって、何も考えずに動けばいいわけではない。
こちらの行動一つで、未来が大きく変わる可能性もある。
そして。
「……桃ちゃん」
冬華の表情が曇った。
藍染の死を信じ、市丸ギンへ斬りかかった幼馴染。
それを止めた自分を見る、あの悲しそうな瞳。
(……ちゃんと、お話しできるといいんですけど)
冬華は小さく息を吐いた。
◇◆◇
瀞霊廷、四番隊隊舎。
「……なるほど」
穏やかな声が響いた。
冬華の正面には、四番隊隊長・卯ノ花烈が座っている。
「つまり、日番谷隊長には、最初から遺体が見えていなかったのですね」
「はい」
冬華は頷いた。
「何度確認しても、壁に刀が刺さっているようにしか見えませんでした」
「……刀、ですか」
卯ノ花は静かに目を伏せた。
「興味深いお話です」
「……何か分かりましたか?」
「いいえ。現時点では、まだ何とも」
卯ノ花は穏やかに答えた。
「ただ、私が確認した遺体には、確かに不自然な点がありました」
「……!」
冬華の表情が引き締まる。
「それは……?」
「詳しいことは、もう少し調べてからお話ししましょう」
「……そうですか」
冬華は少し残念そうに頷いた。
しかし、卯ノ花は続けた。
「ですが、日番谷隊長」
「はい?」
「あなたの証言は、決して無意味ではありません」
「…………」
「皆が同じものを見ているからといって、それが真実とは限りませんから」
冬華は目を瞬かせた。
そして、ふわりと微笑む。
「……ありがとうございます、卯ノ花さん」
「ふふ。お礼を言われるほどのことではありませんよ」
卯ノ花は微笑み返した。
「ただし、十分にお気をつけください」
「……?」
「もし、あなたの見たものが正しいのであれば……この事件は、私たちが考えている以上に複雑なのかもしれません」
「……はい」
冬華は真剣な表情で頷いた。
それは、誰よりも理解しているつもりだった。
◇◆◇
それから、しばらくして。
瀞霊廷の通路を歩いていた冬華は、ふと足を止めた。
「……あれ?」
少し先から、聞き覚えのある霊圧を感じる。
五番隊副隊長。
雛森桃。
「……桃ちゃん?」
冬華は顔を上げた。
そして、通路の向こうに現れた人物を見て、ぱっと表情を明るくする。
「あっ! 桃ちゃん!」
「…………」
しかし。
雛森は、立ち止まったまま動かなかった。
「……桃ちゃん?」
冬華は首を傾げる。
いつもの桃ちゃんなら、笑顔で駆け寄ってきてくれるはずだった。
けれど、今は違う。
雛森の顔は青白く、その手には一通の手紙が握られていた。
「……冬華ちゃん」
「……はい?」
雛森が、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳には、涙が浮かんでいた。
「……教えて」
「……?」
「藍染隊長を殺したのは……冬華ちゃんなの?」
「…………え?」
冬華は固まった。
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「……桃ちゃん?」
「答えてよ……!」
雛森の声が震える。
「冬華ちゃんが……藍染隊長を殺したの!?」
「……違います!」
冬華は即座に否定した。
「私は藍染隊長を殺していません!」
「……嘘」
「嘘じゃありません!」
冬華は一歩踏み出した。
「桃ちゃん、落ち着いてください! 何があったんですか!?」
「……これ」
雛森は、手に持っていた手紙を握りしめた。
「藍染隊長が……私に残してくれた手紙……」
「…………!」
冬華の表情が変わった。
(……来ましたか)
藍染の手紙。
原作でも、雛森を日番谷へ向かわせる原因となったもの。
そして、この世界では。
(……私が、犯人にされているんですね)
冬華は唇を噛んだ。
「……桃ちゃん。その手紙を、少し見せてもらえませんか?」
「……嫌」
「……え?」
「冬華ちゃんには……見せたくない」
「…………」
雛森は、涙をこぼしながら続けた。
「藍染隊長は……全部知ってたんだよ……!」
「……桃ちゃん」
「冬華ちゃんが……危険なことを考えてるって……!」
冬華は息を呑んだ。
「……違います」
「じゃあ、どうして!?」
雛森が叫ぶ。
「どうして、藍染隊長の遺体が見えないなんて言ったの!?」
「……それは」
「どうして、市丸隊長を庇ったの!?」
「…………」
「藍染隊長が死んだのに……冬華ちゃんだけ、平気そうな顔をして……!」
冬華の胸が、ちくりと痛んだ。
平気だったわけではない。
ただ、藍染が死んでいないことを知っていただけだ。
しかし。
それを今、どう説明すればいいのだろう。
「……桃ちゃん」
冬華は、できるだけ優しい声で呼びかけた。
「私を信じてください」
「…………」
「私は、桃ちゃんを傷つけるようなことはしません」
「……っ!」
「だから、お願いです。少しだけ、お話を――」
「――嘘つき!!」
雛森の叫びが響いた。
次の瞬間。
――シャキン!!
斬魄刀が抜き放たれる。
「……桃ちゃん!?」
「――飛梅!!」
――ボオオッ!!
雛森の斬魄刀から、炎が噴き上がった。
そのまま、冬華へ向けて放たれる。
「……っ!」
冬華は即座に背中の氷輪丸を抜いた。
――ヒュン!
一閃。
鋭い剣風が炎を裂き、左右へ散らす。
通路の壁が熱を帯びた。
「桃ちゃん! やめてください!」
「嫌っ!!」
雛森が地面を蹴る。
――キィィン!!
飛梅と氷輪丸が激突した。
しかし、実力差はあまりにも大きい。
冬華は片手で攻撃を受け止めたまま、微動だにしなかった。
「……桃ちゃん」
「……っ!」
「お願いです。落ち着いてください」
「……うるさい!」
雛森は歯を食いしばる。
再び斬りかかる。
――キィン!
――カンッ!
冬華は、そのすべてを受け流した。
反撃することなど、簡単だった。
斬魄刀を弾き飛ばすことも。
鬼道で拘束することも。
霊圧だけで動きを封じることさえ、不可能ではない。
けれど。
(……桃ちゃん)
冬華は、目の前の幼馴染を見つめた。
涙を流しながら、必死に刀を振るう雛森。
かつて、潤林安で一緒に笑い合った少女。
霊術院へ進学する日、笑顔で送り出した大切な友達。
その桃ちゃんが、今、自分へ本気で刃を向けている。
「……っ」
冬華の胸が締めつけられた。
その時だった。
「……おやおや」
聞き覚えのある声が響いた。
「えらい騒ぎになってますなあ」
「……!」
冬華が視線を向ける。
通路の先。
そこには、三番隊隊長・市丸ギンが立っていた。
いつものように、細い目をさらに細めて笑っている。
「……市丸隊長」
「日番谷隊長。何してはるん?」
「…………」
冬華は答えなかった。
ギンの視線が、雛森へ向けられる。
「……雛森副隊長も、随分と熱心やねえ」
「……っ!」
雛森の表情が歪んだ。
「市丸……隊長……!」
藍染を殺した犯人だと疑っていた男。
そして、その男を庇った幼馴染。
雛森の混乱は、さらに深まっていく。
「……桃ちゃん!」
冬華が呼びかける。
しかし、雛森は冬華を睨みつけた。
「……どうして」
「……?」
「どうして、また……!」
雛森の声が震える。
「どうして冬華ちゃんは……市丸隊長を庇うの!?」
「……違います!」
「何が違うの!?」
冬華は言葉に詰まった。
雛森を守りたい。
藍染の嘘を暴きたい。
そして、市丸ギンも救いたい。
けれど、そのすべてを今ここで説明することはできなかった。
「……桃ちゃん」
冬華は、ゆっくりと氷輪丸を下ろした。
「私は、桃ちゃんの敵じゃありません」
「…………」
「昔から、ずっと……」
冬華は、悲しそうに微笑んだ。
「……お友達でしょう?」
「……っ!」
雛森の瞳が揺れた。
一瞬。
本当に、一瞬だけ。
かつての優しい表情が戻りかけた。
しかし。
「……だったら」
雛森は、震える声で呟いた。
「だったら……どうして、藍染隊長が……!」
「…………」
「どうして……冬華ちゃんの名前が、手紙に……!」
涙が頬を伝う。
そして。
「……もう、分かんないよ……!」
雛森は、飛梅を握りしめた。
冬華は静かに見つめる。
「……桃ちゃん」
もう一度、手を伸ばそうとした。
けれど。
「――来ないで!!」
「……っ!」
冬華の足が止まった。
雛森は、涙で濡れた瞳を向けた。
そして。
「……冬華ちゃんなんて」
震える唇が、言葉を紡ぐ。
「……大嫌い」
「…………え?」
冬華は、呆然とした。
まるで、時間が止まったようだった。
大嫌い。
その言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
「…………」
冬華の手が、ゆっくりと下がった。
「……そっか」
小さな声が漏れる。
「……嫌われちゃいましたか」
雛森は何も答えなかった。
ただ、涙を流していた。
冬華は俯く。
「……ごめんなさい」
何に対する謝罪なのか、自分でも分からなかった。
ただ。
今は、それしか言えなかった。
その場に、重い沈黙が落ちる。
やがて、騒ぎを聞きつけた隊士たちが駆けつけた。
冬華は、静かに氷輪丸を鞘へ収める。
「……雛森副隊長を、お願いします」
隊士たちが戸惑いながらも頷いた。
雛森は抵抗することなく、彼らに付き添われて歩き出す。
その背中を、冬華は見送った。
「…………」
ギンは、少し離れた場所からその様子を眺めていた。
いつもの笑みは浮かべたまま。
しかし、何も言わない。
冬華もまた、ギンへ声をかけることはなかった。
ただ、小さく頭を下げる。
「……失礼します」
そして。
――ヒュン。
瞬歩で、その場を後にした。
ギンは、冬華が消えた方向を静かに見つめた。
「…………」
やがて、細い目をわずかに開く。
「……難儀な子やなあ」
その呟きは、誰にも聞こえなかった。
◇◆◇
瀞霊廷、十番隊隊舎。
「……ただいま、戻りました」
隊長室の扉が開いた。
しかし、その声には、いつもの元気がなかった。
「……あら?」
書類を整理していた松本乱菊が顔を上げる。
「冬華ちゃん? おかえりなさ……」
そこで、言葉が止まった。
冬華の様子が、明らかにおかしかった。
俯いた顔。
力なく垂れた肩。
いつもなら真っ先に浮かべる笑顔もない。
「……冬華ちゃん?」
「……はい」
「どうしたの?」
「…………」
冬華は答えなかった。
ただ、自分の椅子へ向かい、静かに腰を下ろす。
「……ふう」
小さなため息。
乱菊は、しばらくその様子を見つめていた。
そして、手に持っていた書類を机へ置く。
「……何かあったのね」
「……いえ」
冬華は首を横に振った。
「大丈夫です」
「…………」
「ちょっと……疲れちゃっただけですから」
無理に笑おうとする。
けれど、その笑顔はひどくぎこちなかった。
乱菊は静かに歩み寄る。
「……冬華ちゃん」
「……はい?」
「こっち向いて?」
「……?」
冬華が顔を上げた。
その瞬間。
――ぎゅっ。
「……わっ!?」
乱菊が、冬華を優しく抱きしめた。
「ま、松本さん!?」
「……もう」
乱菊は、小さく息を吐いた。
「そんな顔して、大丈夫なわけないでしょう?」
「…………」
冬華は、目を瞬かせた。
乱菊の腕は温かかった。
昔から、ずっとそうだった。
十番隊へ入隊したばかりの頃も。
失敗して落ち込んだ時も。
何か嬉しいことがあった時も。
乱菊は、いつも自分を見守ってくれていた。
「……松本さん」
「うん?」
「……私」
冬華の声が震えた。
「……桃ちゃんに」
「…………」
「……嫌いって、言われちゃいました」
乱菊の表情が変わった。
「……雛森に?」
「……はい」
冬華は、小さく頷いた。
「……大嫌いって」
「…………」
「私……桃ちゃんに、嫌われちゃいました」
その声は、今にも消えてしまいそうだった。
乱菊は、そっと冬華の頭を撫でる。
「……そう」
「…………」
「……辛かったわね」
「……っ」
その一言で。
冬華の中にあった何かが、ぷつりと切れた。
「……うっ」
翡翠色の瞳から、涙がこぼれる。
「……私、何もしてないのに……」
「……うん」
「桃ちゃんを……傷つけたくなかっただけなのに……」
「……うん」
「……どうして……」
冬華は、乱菊の死覇装をぎゅっと握った。
「……どうして、あんなことに……!」
ぽろぽろと涙が落ちる。
乱菊は、何も言わずに抱きしめ続けた。
冬華は強い。
それこそ、護廷十三隊の中でも指折りの実力者だ。
山本総隊長とさえ渡り合い、隊長たちからも一目置かれている。
けれど。
どれほど強くなっても。
どれほど優れた斬魄刀を持っていても。
大切な人から向けられた言葉までは、防げない。
「……冬華ちゃん」
乱菊が、優しく呼びかけた。
「……はい」
「雛森のこと、大好きなんでしょう?」
「……はい」
冬華は、涙を拭いながら頷いた。
「……大好きです」
「……そう」
「……ずっと、一緒だったんです」
潤林安で過ごした日々。
一緒に笑って。
一緒に遊んで。
桃が霊術院へ進学する時には、少し寂しくて。
それでも、また会えることが嬉しくて。
「……大切な、お友達なんです」
「……うん」
乱菊は、優しく微笑んだ。
「だったら、今は無理に答えを出さなくてもいいんじゃない?」
「……え?」
「雛森は今、大切な人を失ったと思い込んで、混乱してるのよ」
「…………」
「だからって、あんたにあんなことを言っていいわけじゃないけどね」
乱菊は、少しだけ眉を下げた。
「でも、あの子が今まで冬華ちゃんを大切に思ってきたことまで、嘘になるわけじゃないでしょう?」
「……っ」
冬華の瞳が揺れた。
「……はい」
「だったら、少し時間をあげましょう」
「……時間、ですか?」
「そう」
乱菊は頷いた。
「今すぐ仲直りしようとしたって、きっと難しいわ」
「…………」
「だから、まずは落ち着いて。それから、もう一度ちゃんと話してみなさい」
冬華は、しばらく黙っていた。
そして。
「……私」
「うん?」
「……桃ちゃんと、仲直りしたいです」
乱菊は微笑んだ。
「ええ」
「……また、一緒に笑いたいです」
「……うん」
「……昔みたいに」
冬華の声が震える。
乱菊は、もう一度ぎゅっと抱きしめた。
「……大丈夫よ」
「……松本さん」
「少なくとも、私は冬華ちゃんの味方だから」
「……っ」
「何かあったら、いつでも頼りなさい」
乱菊は、優しく頭を撫でた。
「隊長だからって、全部一人で抱え込まなくていいんだからね」
「…………」
冬華は、しばらく何も言えなかった。
そして。
「……はい」
小さく頷いた。
「……ありがとうございます、松本さん」
「どういたしまして!」
乱菊は、いつもの明るい笑顔を浮かべた。
「ほら! うちの可愛い隊長さん!」
「……?」
「そんなに泣いてたら、せっかくの可愛いお顔が台無しよ?」
「……もう」
冬華は、涙を拭いながら頬を膨らませた。
「……松本さんったら」
「あら、やっといつもの顔に戻った!」
「……ふふっ」
冬華の口元に、小さな笑みが浮かぶ。
乱菊は満足そうに頷いた。
「そうそう! 冬華ちゃんは、やっぱり笑ってる方が可愛いわ!」
「……えへへ」
冬華は、少し照れくさそうに笑った。
「……ありがとうございます」
そして、ゆっくりと乱菊から離れる。
目元には、まだ少し涙の跡が残っていた。
けれど。
その翡翠色の瞳には、先ほどまでとは違う光が宿っていた。
「……松本さん」
「なあに?」
「私、もう少し頑張ってみます」
「……ええ」
「藍染隊長の事件も、桃ちゃんのことも……」
冬華は、そっと拳を握った。
「……ちゃんと、向き合いたいです」
乱菊は優しく微笑む。
「うん。冬華ちゃんなら、きっとできるわ」
「……はい!」
冬華は、ようやくいつもの笑顔を浮かべた。
窓の外では、瀞霊廷の空が夕焼けに染まり始めていた。
藍染惣右介。
鏡花水月。
そして、幼馴染との決裂。
解決しなければならない問題は、まだ山ほどある。
それでも。
(……桃ちゃん)
冬華は、静かに目を閉じた。
(……私は、諦めませんからね)
どれほど強い力を手に入れても、守れないものがある。
けれど。
だからといって、諦める理由にはならない。
「……よし!」
冬華は、小さく気合を入れた。
その様子を見て、乱菊がくすりと笑う。
「……もう大丈夫そうね」
「はい!」
冬華は元気よく頷いた。
「ご心配をおかけしました!」
「ふふっ。いいのよ」
乱菊は、もう一度冬華の頭を撫でた。
冬華は、嬉しそうに目を細める。
そして。
再び机の上に置かれた報告書へ視線を向けた。
藍染の偽装死。
その裏に隠された真実を暴くために。
そして、もう一度、大切な幼馴染と笑い合うために。
日番谷冬華は、再び前を向いた。
――第26話『疑惑』・完。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
引き続きよろしくお願いします!