Resident Evil Requiem - Alternate Gun's History - 作:マートリツァ・ミーラ
原作:バイオハザード
タグ:残酷な描写 バイオハザードレクイエム IF歴史 架空銃器 独自設定
そのような運用が実際に作品世界内で可能であるとすれば、どのような銃と口径になっているのか? をゲーム中の描写から考察しました。
【ハンドガンの弾:101グレインの謎】
両開きの大きなドアを開け放った瞬間、むせ返るような臭気が襲いかかってきた。
豪勢な食堂──テーブルの上では、2体のゾンビが死肉を貪っている。
反射的に込み上げてくる嘔吐感を堪えつつ、姿勢を低めて駆け出したグレースは床に鈍い金属光沢を見つけ、素早くそれを拾った。
「なにこれ? 弾が入ってないし、よりによってこんな古いの……」
ベレッタM1934。
その型番どおりに1934年にイタリア軍の制式拳銃として採用され、アメリカにも輸入されていた。
しかしこの銃が開発された当時に普及していた弾薬は.380ACP弾であり、そのためにアメリカで主流の9mmパラベラム弾を発射できる強度は備えていない。
もし無理やり装填して撃とうとすれば、薬室が手の中で爆発してしまうだろう。
FBIに入局した際、携行武器をどうするかをしばらく検討していたことがあった。
最終的に自分の手の大きさも考慮し、かつ母アリッサが使っていたものと同じということでSIGザウエルP232を選んだのだが、その際には9mmパラベラム仕様のP226との比較にずいぶん時間をかけた。
「あっ、よく見たらアメリカ版のM934か……それで、この.355SIG弾を使えるんだ」
テーブルの下から這い出してきたゾンビに見つからないうちに食堂を素早く駆け抜け、割れた窓を乗り越えて物置に飛び込んだグレースは作業机の上に置かれていた弾薬箱を手に取る。
第二次世界大戦でイタリアが敗戦した後、ベレッタ社は残った資材をかき集めて輸出向けに製造した。
その際に大きな銃器市場を持つアメリカ向けに、設計に小改良を施してやや強力な.355SIG弾を発射できるようにしたものがこのM934である。
どうやら既に職員たちが使用するために持ち出した後のようで、紙箱の中には2発しか残っていなかった。
それでもこの101gr(グレイン)の弾丸ならば、.380ACPよりは若干ではあるがより強い打撃をゾンビに与えることができるだろう。
グレイン、とは──アメリカ人にとってはわざわざ解説するまでもないだろうが──銃弾の重さを示す単位であり、1グレインは正確に7000分の1常用ポンドである。
わが偉大なるアメリカのヤード・ポンド法ではなく、ヨーロッパの連中にわかりやすいメートル法に置き換えるならば101グレインはおよそ6.545グラムとなる。
弾丸の直径は0.355インチ(約9ミリ)となり、この値も紙箱に鷹の図案──レッドイーグルのブランド名とともに描かれている。
アメリカへの売り込みをしたいSIG社は、高威力を求めるアメリカ人ユーザーのために既存の.380ACPを凌駕し、かつ9mmパラベラム弾の強烈な薬室圧力に耐えられない既存の銃器にも対応できる弾薬としてこの中間的な威力の弾薬を開発した。
弾頭重量は.380ACPの90グレインからおよそ1割強の増量とし、9mmパラベラムの123グレインには及ばないものの、薬室圧力を低めに維持することで銃口初速を音速以下に抑え、サプレッサーとの相性も良いとSIG社は謳っている。
特にサプレッサーで定評のあるサイレンサーコー社の最新モデル「サイレンサー9」でこの弾薬を使用すれば、事実上の無音射撃が可能とも、FBI中西部支局のオフィスで銃器犯罪担当職員たちが話していたのを聞いたことがあった。
さらに同じドイツのメーカーであるヘッケラー&コッホ社も、同社の往年の名銃「マチルダ」に対し、かねてから扱いにくさが指摘されていた9mmパラベラム弾から、より精度を高めることのできるこの弾薬に対応したローテティングバレル式へのコンバージョンキットを発売していた。
もちろん銃自体が相当のマニア向けである上に、事実上フレーム以外のほぼすべてを換装することとなるため、今のグレースの給料ではとても手が出ない値段ではあったが。
【マシンガンの弾:ボトルネック薬莢の謎】
シダーブルック・アパートの地下駐車場管理室で2個目のバッテリーを見つけたレオンは、開け放たれていたアタッシェケースの中にまだ使える銃が残されているのを目に留めた。
無造作にグリップを握って持ち上げると、なんとも、古めかしいシルエットが天窓から差し込む淡い外の日光に浮かび上がる。
「驚いたな、こんなものがまだあったとは……中東で猛威を振るったという……」
イスラエルの伝説的な銃器設計者であるウジエル・ガルの名を冠した、現代のサブマシンガンの先駆けであり同時にPDW(個人防衛火器)の遠い祖先とも呼べる存在。
1950年代、中東の戦場で戦える武器を求めていたイスラエルは、ベルギーはファブリック・ナショナル社から多大な技術支援を受けていた。
自動小銃のFN FAL(フジ・オートマティック・レジェ)に続き、アルファベットを一文字進めた形のGALと、開発者であるガルの名を一致させることができたのは実に美しいネーミングであった。
ナチス・ドイツに対するレジスタンス活動を通じて、当時のイスラエル国内に多く残されていた7.92mmマウザー弾の製造設備を転用できるものとして、FN社は小口径ボトルネック弾のアイデアを提示した。
これに基づいてガルが開発したのが、この5.7x26mm弾を使用するサブマシンガンである。
当時比較検討されていた9mmパラベラム弾に対して、ボトルネック型薬莢を採用する5.7x26mm弾は製造の手間という点では若干不利ではあったが、小銃弾の製造設備からの転用が容易という点が評価された。
現代でこそ、FN社はFive-seveNなどこのクラスの小口径弾を使用する拳銃を発売しているが、1950年代当時としてはガルはまさにエポックメイキングな存在であった。
口径が小さいということはより多数の弾薬を持てることを意味し、戦場では継続戦闘能力という点で有利である。
また軽量の弾頭を高速で発射することで高い貫通力を発揮でき、当時はまだ未発達であったボディアーマーに対して無類の威力を発揮した。
「……っ! こいつが軍用弾じゃなかったのはかえって幸運だったな……!」
水が溜まった駐車場からのそのそと歩いてきていたゾンビにガルを向け、その両足に連射を叩き込んで怯ませたところを蹴り飛ばす。
ぶくぶくと肺の中の空気を吐き出すゾンビの挙動を油断なく見やりながら、レオンはアタッシェケースの中に入っていた予備マガジンに弾が込められていることを確かめてガルに装着し、今度は身体を起こしたゾンビの頭部に狙いを集中させる。
素早く指切りをしながら撃ち、数えて8発目でついにゾンビの頭蓋骨が砕け散った。
もしこれが当初のイスラエル軍仕様の軽量高速弾だった場合、弾丸は痛覚のないゾンビの身体に小さな穴を開けて突き抜けるだけになり、制圧力という点ではまったく不足していただろう。
イスラエル軍での制式採用を背景に商業的にも成功を収めたガルを、FN社は続いてアメリカへの売り込みを開始したが、ここで規制当局は軍用弾の貫通力の高さを問題視した。
口径が小さいとはいえ、超音速で発射された弾丸は当時のアメリカ警察が採用していたボディアーマーを容易に貫通した。
このような過剰な威力の銃は認可できない、という当局の指摘を受けて、FN社は思い切って弾頭重量を大幅に増やし、弾速を遅くして貫通力を落とした弾薬を開発。
薬室圧力が同等になるよう設計することでオープンボルトでの動作にも支障をなくしたこの弾薬を民間仕様として制定し、軍用弾の流通を厳しく制限することでようやくアメリカでの販売にこぎつけた。
その後、アメリカ国内の弾薬メーカーもこの仕様に準じた大重量亜音速弾を発売している。
机の引き出しの中にあったホーネットラッシュのブランドもそのひとつだ。
アメリカ国内での同クラスの弾薬となる.22ホーネット弾にあやかったホーネットラッシュは、サブマシンガン用弾薬として定評がある。
予備マガジンの全てに弾薬箱から装填をしておき、レオンはバッテリーを装着して駐車場のゲートを開けるために室内のハシゴを昇る。
地上へ出ると、そこには明らかに他のゾンビとは異なる死体が転がっていた。
ラクーンシティがこのような姿に変貌した1998年当時には存在していなかった装備を身に着けたそれは、間違いなくBSAA──対バイオテロ国際部隊の隊員たちであった。
彼らの持っているアサルトライフルも、よく見れば通常の5.56mmNATO弾ではない、このガルと同じ5.7x26mm弾を使用する特殊作戦用のバリエーションだ。
SIG MCX CLATTER、通称「Clatterカービン」。
SIG社のベストセラーであるモジュール式自動小銃MCX、その大重量亜音速弾仕様である。
弾速を抑えたことで、大型のサプレッサーとあわせて極めて静音性の高い隠密射撃が可能だ。
引き換えにボディアーマーに対する貫通力はほぼ無くなっているが、BSAAの主任務であるB.O.W.制圧にはそのような装備を相手が持っていることはないために問題ない。
少なくともゾンビ相手であれば、まったく気づかれずに背後から撃ち倒すことが可能なはずである。
それがこれほどまでに無惨にやられているとなれば──、あの大クモだけでなく、自然発生した強力なイレギュラーミュータントか、あるいはB.O.W.として設計された強力なモンスターがラクーンシティに既に投入されている可能性がある。
いったい何が彼らを殺害したのか?
訝しみながら隊員の一人が身に着けていたボディカメラを確認したレオンは、やがて驚くべき映像を目にすることになる。