幻想交じりの現代社会でTRPGの能力で生き抜いていく 作:一般通過きなこ餅
胸騒ぎを感じてダンジョンから撤収しようとした俺と静、だがしかし。
それよりも早く退路を塞ぐように天井から落ちてきたボススライムと、取り巻きであるスライムの群れを前に俺達は今窮地に陥っていた。
「……ダメだね、奥のボスは動こうとしないや」
真っ先に動いた静がスライムを誘引して逃げ道を作ろうとするも、ボススライムは入り口近辺から動こうとしない。
だがゆっくりとこちらに、取り巻きのスライムをさし向けてくるだけ……などと言う事もなく。
「っぬぅ……!」
「透?!」
「なんの、これしき……!」
ボススライムは体を大きく撓らせ、時折自身の体の欠片を俺達へ向かって投げつけてくる。
当初は俺と静それぞれランダムに狙っていたが、静には一発も当たらないことから俺を集中的に狙うようになってきた。
あれから既に何発も着弾しており、俺が身に着けているプレートアーマーは酸で焼かれる音を立てながらかなりボロボロにされてきている。
「まさか、このダンジョンで戦術を活用してくる初めての相手がスライムだとは、思いもしませんでしたな……!」
「……どうする? 透」
こちらににじり寄る取り巻きスライムを、すでに錆び塗れにされたグレートソードで追い散らすように弾き飛ばす。
一方で静は俺のように質量で薙ぎ払う事が武器特性上不可能な為、太刀を鞘に仕舞ったままボスに比べて知能が低い取り巻きスライムの誘因に徹している。
だが正直状況としてはジリ貧もいいところだ、俺にも静にもボスに対する決定打というものがない。
あるとするならば俺と静が2本ずつ持っている火炎瓶、それぐらいだ。
「……一つ、試してみますかな。静嬢、スライムが飛び散っても破片が当たらない位置へ!」
「了解!」
静が退避したのを確認するとともに、俺はボススライムへ左手を向け戦神へ祈りを捧げ。
「戦神の名の下に我力を行使せん……聖撃!」
左手に集中した力を、聖句と共に解放する。
放たれた力の本流はまっすぐボススライムへ向かって直進し、それは確かにボススライムの体を穿つ。
大打撃を与えられたらよかったが……どうやら多少みじろぎするぐらいで、必殺とは言い難い。
だが効果があると判っただけでも、十分と言えるだろう。
「静嬢、これを」
「火炎瓶……だよね、どうするつもり?」
「吾輩がボススライムの注意を引きつけます、静嬢はそれを奴に叩き込んでくだされ」
神聖魔法の数少ない攻撃魔法である聖撃が効果あった事、それによってこれから行う作戦のピースが揃った俺は静を呼ぶと彼女に手持ちの火炎瓶2本を手渡す。
俺の意図を察した様子を見せながら、あえて確認してきた静に俺はスライム達の様子から目を離さず作戦を伝えた。
俺の言葉に静は非常に何かを言いたそうに口をもにょもにょと動かすが、大きくため息を吐くと頷いて見せた。
「わかったよ、どちらにせよあのボスを倒さないと突破しようもないしね」
「核を壊せば魔物も消える仕様なら、緊急避難と言う事で核の破壊も考えましたがな……」
「そもそもボス倒さないと核のある部屋入れないもんね、タイミングはそっちに任せるよ!」
静が大きく距離を取るように動くのを見つつ、俺はさびたグレートソードを体の前に掲げるようにして構える。
回復のためにある程度精神力を残したいのが本音だが、今回ばかりはそうも言ってはいられない。
「戦神よ、吾輩に加護を!」
思わず神に縋るかのように俺は叫ぶと、静からボススライムの注意を離すため。
力の限り聖撃をボススライムめがけて放ち続ける。
一発、二発と着弾するごとにまるで銃弾を撃ち込まれた粘性物体のようにボススライムは体を歪め。
その攻撃を煩わしく感じたのか、射程範囲内にいる静を無視して俺に欠片投げによる集中攻撃を叩き込んでくる。
「ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺は気合の雄叫びをあげて着弾する衝撃と肌を焼く痛みを堪え。
大挙して押し寄せてくる取り巻きスライム達に対して、がむしゃらにグレートソードを振り回して近づけないよう耐え続ける。
1秒が10秒に感じられ、1分間が10分間に感じるほど体感時間が引き延ばされる極限状態の中。
やっと狙いすましていた瞬間が到来した。
「静嬢、今ですぞ!」
「まっかせてぇ!」
飛び掛かってきたスライムをグレートソードで振り散らし、その動きで留め具が腐食された事でプレートアーマーが外れるのに構う事なく。
俺は静に対して合図の叫びを送り、静もまた待ってましたと言わんばかりに左右の手で2本ずつ器用に指で挟んで持っていた火炎瓶を、ボススライムめがけて投擲する。
合計4本の火炎瓶は狙いたがわずボススライムの大きな体に着弾し、次の瞬間凄まじい業火がボススライムの体を包み込んだ。
マッチを同時に複数本付けたら凄まじい勢いで燃えるアレな現象ときっと同じだろう、知らんけど。
だが、今がチャンスだ。いや今しかないと言っても良いだろう。
俺は追いすがるように纏わりつこうとするスライムを踏み潰す勢いで、自身へのダメージを顧みる事無く踏み越えると静に合流。
「透!早く!」
静が俺に向かって振り返りながら呼びかけてくる。
俺もまた急いで彼女の下へ駆け寄り共に脱出しようとした時。
炎の中で蠢き、静を粘液の体で貫こうとするボススライムの姿が視えた。
「させ、る、かぁぁぁ!!」
俊敏とは言えないレオスの体、それも傷だらけで痛む体に鞭打ちながら踏み込む。
俺の手は辛うじてボススライムの触手によって貫かれる寸前の静の体を引き寄せる事に成功した。
だが、俺自身の体を逃がすには速度が足りず、プレートアーマーがはがされ守りがなくなった俺の胴体をボススライムの触手が刺し貫いた。
それと同時に俺の意識は暗転した。
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ゆっくりと消えていく俺の意識。
せめて静だけでも、何とか逃げ延びてほしい。
性癖とかどうであれ、俺の大事な幼馴染で友人なのは間違いないのだから。
「のじゃー、のじゃー!えらいこっちゃなのじゃー!」
「いやうるせえよ!」
そう考えてたのに意識の中でのじゃのじゃと慌てふためく声がうるさく、思わず起き上がり全力で突っ込みを入れる。
そこで気付く、いつも入眠した時にしか訪れることができない空間のTRPGルルブ部屋にいつのまにか俺が倒れていた事に。
「うるせえもクソもねーのじゃ! お主が死ぬ=妾もこの空間ごと消えるんじゃぞ!?」
「お、おう」
抗議の声をぶつけた俺に逆に詰めよってくる爆乳狐巫女の剣幕に、思わずたじろぐ俺。
欲見ると部屋の中のあちこちにヒビが入っている。
「お主は現実ではレオスの変身が解けて斃れておるが、あのスライムの攻撃で瀕死の状態じゃ!このままじゃと静という小娘もろともお陀仏じゃぞ!」
「マジかよおい、どうにかならないか?」
「あの娘が咄嗟に止血して呼びかけておるが、どうにかなるならとっくに……!」
爆乳狐巫女の言葉に事態は大分どころか割と最悪な状況にある事を知らされ、どうにかならないかと問いかけるも。
こいつにも状況を打破する術がないのか頭を抱えている、だがその時。
鎖が軋むような音が部屋の中に響き渡った。
「……なんの音だ?」
「これはもしや……ついてくるのじゃ!」
突然響いた音に困惑する俺に対し、爆乳狐巫女は何か思い当たる節があるのか俺の手を引っ張って音が聞こえた方へ向かって走り出す。
そして辿り着いたのは大量のルルブが納められた本棚の、その中でも鎖が自ら千切れそうなほど震えているルルブの前だった。
俺はそのルルブ……ダンジョンズ&ドレイクのルールブックへと手を伸ばす。
すると、脳裏に開放ポイント1万という数字が垣間見えるが、まるでルールブック自身が意思を持っているかのように震えそれと同時に必要ポイントの表示が砕け散る。
「これならいけるかもしれぬ……」
「……ああ、このキャラクターなら間違いなく状況を打破できる」
手付金と言わんばかりに溜めたポイントが消し飛ぶどころか、マイナスに突入したのを見ながらも脳裏に流れてくる情報に俺は確信する。
ディーヴァ・ドゥリュアレ、人の社会に溶け込んだ竜種ドラゴンボーンと人の間に生まれた女性であり秩序と正義と仲間を重んじるウィザード。
高い知恵と魔力を持ち、竜の精霊を召喚して前衛として運用しながら魔法によって広範囲を蹂躙する魔術火力のエキスパート。
今まさに求めていたキャラクターと言える。
「少しばかり特殊な運用じゃが変身すれば傷も消える、それで何とかするのじゃ!」
「ちょっと待て、俺の本体はその場合どうなる」
「多分大丈夫じゃ!」
「大雑把すぎる!けど今は何とかするしかねえ!」
解放された事で俺の眼前に浮かび光り輝くキャラクターシートへ手を伸ばす。
それと同時に俺の意識は光に包まれながら浮上していく。
そして意識を取り戻した俺の視界に飛び込んできたのは、目に涙を浮かべながら俺を見下ろしている静の顔だった。
「とお、る……?」
「是、妾なり」
倒れていた姿勢から俺は意識することなく、尻から生えている黄金の鱗に包まれた尻尾を使いつつ右手に宝石で飾られたスタッフを持って立ち上がる。
視界的にはレオスより視点が低く、それでも静を見下ろす形になる程度には視点が高い。
俺は賽目 透のものでも、レオス・クラインのものでもないほっそりとした手を見ると小さくため息を吐きながら、こちらを取り囲むようににじり寄ってくるスライム達を睨みつける。
俺の見通しが甘かったのが原因とはいえ、それもこれも全部お前らのせいだこの野郎……!
「不敬な、焼却こそ貴様らに相応しい。小狐よ、妾の背に隠れておれ」
そして俺の苛立ちに満ちた発言と静を気遣う言葉は、見事なまでに高慢で傲岸な口調に変換されていた。
そう言うキャラに設定したのは俺だけど、俺だけどさぁ……!
「尽く灰燼に還るが良いわ、ファイアボール!」
体に染みついた所作と共に俺は詠唱を唱え、スタッフの先に現れた燃え盛る灼熱の業火をにっくきボススライム……の少し向こうを狙って投げつける。
放たれたファイアボールは着弾地点を中心にすさまじい爆発を巻き起こし、スライムもボススライムも全て等しく蒸発させ無へと還す。
ちなみに目の前のボススライムに直接ぶち込まなかった理由は、自分達も範囲に巻き込まれる故の作法である。
「ふん、小物を討ち漏らしたか。鬱陶しいわ」
運よく範囲から逃れていた取り巻きスライムも簡易詠唱で放った小呪文のファイアボルトで焼き殺していく。
変身前はあんなにも絶望的だったというのに、余りにもあっけない決着であった。
「ふむ、こんなものか。小狐よ、怪我はないかの?」
「え?う、うん大丈夫……透、だよね?」
「そうじゃ、透でもディーヴァでも好きに呼ぶがよい」
余りにも変貌が激しすぎたのか、狐耳をぺたんと倒して見上げながら不安そうに問いかけてくる静。
俺はその姿に対して肯定の意を返す、思った以上に鷹揚に返しているのは勘弁してほしい。
「……ぬ?」
そんな事を考えていると携えていた、宝石で飾られたスタッフがゆっくりと消えていく。
脳内に響く借金の影響なのじゃー、なのじゃー、のじゃー……という言葉に思わず俺は天を見上げた。
いや待ってくれ、杖はまだ良い……いや良くないけど待ってくれ!
俺のインサイフル・スクロール・ケース*1!エフィシエント・クィーバー*2!
俺を置いていくなぁぁぁぁぁぁっ!!
……最終的にローブは見逃してもらえたが、どうやらエンドコンテンツ状態の装備没収に限らず。
最高レベルの20ではなく、レベル10ウィザード状態として俺は解放されたらしい。
だけどそんな事はどうでもいい、いや良くないけどこれ以上にデカい問題がある。
ソレはダンジョンから出て、静と合流した時の事。
「アレ? 透……なんでその姿のままなの?」
「……戻れぬ」
「……へ?!」
悲報、賽目 透(15歳男子)……キャラ開放ポイント借金返済するまで、女体化継続の模様。
というわけでやってまいりました主人公女体化(半強制、借金ポイント返済まで戻れない)。
果たして彼と静と、ドスケベ女体に性癖を壊される男子たちの運命やいかに。
ちなみに今回透が変身したドラゴンボーン女ウィザードこと、ディーヴァ・ドゥリュアレさんの姿はこちらです。(AI画像生成ツール使用)
【挿絵表示】
AIのケツ引っ叩いて描かせるキャライメージ絵は必要ですか?
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どちらでもよい
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AI絵じゃないのが好ましいがないよりマシ
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AI絵ならいらない
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お前の財布を酷使しろ(断固たる決意)