「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…!   作:白井ムク

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第10話 フられたという告白

 小晴はスーパーの入口にいた。買い物かごを手にしたまま、店内へ入らずにスマホを眺めている。

 

「小晴」

 

 声をかけると、小晴はゆっくりと顔を上げた。

 

「律くん……帰らなかったの?」

「悪かった」

「え?」

「さっきの。虫の居所が悪くて」

「……べつに、気にしてないよ。ぜんぜん平気」

 

 予想した通りの答えだった。

 

「嘘つけ」

「嘘じゃないって」

「俺の『なんでもない』は、なんでもなくないんだろ?」

 

 小晴が目を瞬く。

 

「だったら、小晴の『ぜんぜん平気』だって、本当はぜんぜん平気じゃないってわかる」

 

 小晴は視線を逸らした。

 

「でも、なにも知らないくせに、私がわかったふりをしたのが悪いから」

「それでも、俺があんな言い方する必要はなかった。小晴がなにも知らないのは当たり前だ。俺がなにも話してないんだから」

「……うん」

「だから、ごめん。本当に悪いと思ってるよ」

 

 律が頭を下げると、小晴はしばらく黙っていた。やがて小さな声で言う。

 

「……傷ついた。律くんに関係ないって言われたの、ちょっと嫌だった」

「うん」

「何年も会ってなかったのは本当だけど、私はずっと律くんのこと、大事な幼馴染だと思ってたから」

「……うん」

「今の律くんを知らないって言われたのも、寂しかった」

 

 胸が痛んだ。だが律は、誤魔化さずに小晴の言葉を聞き続けた。

 

 ——と。

 

 小晴は少しだけ、困ったように笑った。

 

「でも……怒ってくれたのは、ちょっと嬉しかったよ」

「え? なんで?」

「だって、昨日からずっと私に遠慮してたでしょ?」

「いや、遠慮なんて……」

「してたよ。私が急に家に住むことになっちゃったから、困ってても嫌だって言えなかったんでしょ?」

 

 否定できなかった。小晴の同居を嫌だとは思っていない。それでも突然すぎて戸惑ってはいた。だが、その気持ちを小晴や紀子へ素直に言えなかった。

 

「でも、さっきは……あんな言い方は嫌だったけど、律くんが感情をぶつけてくれたことは嬉しかったんだ」

「ただの八つ当たりだけど」

「うん。それはちゃんと反省してください」

「……はい」

 

 律が素直に謝ると、小晴は少しだけ笑った。

 

「それで、なにがあったの?」

 

 律は迷った。だが、ここで話さなければまた同じことになる。

 

「……ここ、暑いし。中に入るか」

 

 二人はスーパーの中へ入り、日用品売り場へ向かった。シャンプーなどが並ぶ棚に着くと、律は棚を見ながら言う。

 

「一昨日、カノジョにフラれた」

「……え?」

「小晴がうちに来た日」

「じゃあ、玄関で泣きそうな顔してたのって……」

「再会に感動したわけじゃない」

「ほんとに違ったんだ……ショックー……」

「そこで残念そうにするなよ。いや、再会には感動したって。ちょっとは」

 

 そこで若干空気がほぐれ、小晴に笑みが戻る。

 

「それで、元カノさんはどんな子だったの?」

「学校で一番ってくらい可愛い子」

「それ……盛ってない?」

「残念なことに、ぜんぜん盛ってないんだ、これが」

 

 律はスマホを取り出し、陽依のインストのプロフィール画面を見せた。途端に小晴の目が大きく見開かれる。

 

「えっ、モデルさん!? フォロワー十万人!?」

「まあ……モデルはやってないけど、スカウトならされたことあるって」

「この子と付き合ってたの!?」

「一ヶ月だけな」

「嘘……」

「いや、ちゃんと二人で撮った写真もあるぞ」

「AIでつくったやつ?」

「さっきから俺への信用スコアが低すぎるだろ……」

 

 今度はツーショットの写真を見せると、小晴は何度も画面と律を見比べた。

 

「……律くん、やるじゃん」

「どういう意味だよ?」

「だって、すっごく可愛いから。でも、どうして別れちゃったの?」

「まあ……いい人なんだけど、なんか違うって」

 

 言葉にすると胸がまた痛んだ。

 

「恋人っていうより、友達の延長みたいだって。俺がずっと陽依に合わせてるだけに見えたらしい」

「……そっか」

「だから、小晴にいい人って言われたとき、思い出した。勝手に腹が立って、つい八つ当たりしたんだ」

「そうだったんだ」

「ほんとに、ごめん」

「ううん。理由、話してくれてありがと」

 

 そう言って、小晴は目当てのシャンプーとコンディショナーをカゴへ入れた。

 

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