「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…! 作:白井ムク
「律くん、一生のお願い!」
夏休みに入って最初の朝。リビングのソファでスマホを眺めていた律の前へ、小晴が勢いよく現れた。かと思えば、急に両手を胸の前で合わせ、これ以上ないほど真剣な顔で見つめてくる。よほど切実なのだろう。
が、律は騙されない。
「……それ、何回目だ?」
「え?」
「一生のお願い。小学生のころだけで、二十回以上は聞いたぞ」
「そんなに使ったっけ?」
「少なくとも、給食のプリンを譲ってほしいって三回は言われた」
「過去のことは忘れました」
「都合のいい記憶だな」
人のことは言えないが。
「人間は未来へ進む生き物だからね」
「カッコよく誤魔化すな」
小晴は悪びれる様子もなく、律の隣へ腰を下ろした。
「で、一生のお願いってなんだよ?」
「今日、一緒にショッピングモール行く約束したでしょ?」
「ああ。昨日行くって話したな」
「でね、水着を選んでほしいの」
律は一瞬「うっ」と呻き、
「……誰の?」
と、訊かなくてもわかる質問をあえて訊いた。
「私の」
「嫌だ」
律が拒否するのも仕方がない。女子の水着なんて選んだことはない。仮に選んだとしても「こういうのが趣味なんだ?」とからかわれる未来が待っている。
「じゃあ、おばさんの」
「もっと嫌だっ!」
なにが悲しくて、息子が四十過ぎの母親の水着を選ばなければならないのか。そんなところをクラスメイトに見られたら、マザコンか熟女好きと噂されてしまうだろう。
「一生のお願いを使う時点で、ロクな内容じゃないと思った……」
「なんで? 女の子の水着を選べるんだよ?」
「普通の男子高校生が、女の水着売り場に立てると思うか?」
すると小晴は、親指を立ててビシッと見せつけた。
「律くんは一人じゃないよ。私がいる!」
「ヒーローみたいにカッコよく言うな」
呆れながらツッコむと、小晴は不満そうに頬を膨らませた。
「プールで着る水着なのに〜」
「誰と行くんだ?」
「律くん♪」
「ん〜〜〜……聞いてない」
「今言ったからね♪」
あまりにも当然のように言われ、律は一瞬反応が遅れた。
「そんなのいつ決まった?」
「おばさんがプールの割引券をもらったんだって。二枚あるから律くんと一緒に行ってきなさいって」
「母さんは、なんでいつも俺を通さずに予定を決めるんだよ……」
「行きたくないの?」
「いや、べつにプール行くのは嫌じゃないけど」
「じゃあ決まり! 律くんに可愛い水着を選んでもらいます♪」
「いや、だからそれは——」
「ねえねえ、私の水着姿、見たくない?」
そう言って、小晴はわざとらしくグラビアアイドルのようなキメポーズをとってみせた。冗談のつもりなのだろうが、タチが悪いことに、彼女のスタイルは本物のグラビア顔負けの豊満さなのだ。
胸元を強調するポーズが見事にハマりすぎていて、律は思わず目を逸らす。
「……そういう言い方はずるいだろ」
「あれ? ってことは、見たいんだ〜?」
逃げ場を塞ぐように、ニヤニヤしながら至近距離まで顔を寄せて覗き込んでくる。
「ねえねえ、どうなの?」
「きょ、興味がないとは言ってない……!」
「正直でよろしい♪」
小晴は満足そうに頷いた。
「じゃあ、一生のお願い!」
こうして律は、何度聞いたのかも覚えていない小晴の「一生のお願い」を叶えることになったのだった。