「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…!   作:白井ムク

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第12話 一生のお願い

「律くん、一生のお願い!」

 

 夏休みに入って最初の朝。リビングのソファでスマホを眺めていた律の前へ、小晴が勢いよく現れた。かと思えば、急に両手を胸の前で合わせ、これ以上ないほど真剣な顔で見つめてくる。よほど切実なのだろう。

 

 が、律は騙されない。

 

「……それ、何回目だ?」

「え?」

「一生のお願い。小学生のころだけで、二十回以上は聞いたぞ」

「そんなに使ったっけ?」

「少なくとも、給食のプリンを譲ってほしいって三回は言われた」

「過去のことは忘れました」

「都合のいい記憶だな」

 

 人のことは言えないが。

 

「人間は未来へ進む生き物だからね」

「カッコよく誤魔化すな」

 

 小晴は悪びれる様子もなく、律の隣へ腰を下ろした。

 

「で、一生のお願いってなんだよ?」

「今日、一緒にショッピングモール行く約束したでしょ?」

「ああ。昨日行くって話したな」

「でね、水着を選んでほしいの」

 

 律は一瞬「うっ」と呻き、

 

「……誰の?」

 

 と、訊かなくてもわかる質問をあえて訊いた。

 

「私の」

「嫌だ」

 

 律が拒否するのも仕方がない。女子の水着なんて選んだことはない。仮に選んだとしても「こういうのが趣味なんだ?」とからかわれる未来が待っている。

 

「じゃあ、おばさんの」

「もっと嫌だっ!」

 

 なにが悲しくて、息子が四十過ぎの母親の水着を選ばなければならないのか。そんなところをクラスメイトに見られたら、マザコンか熟女好きと噂されてしまうだろう。

 

「一生のお願いを使う時点で、ロクな内容じゃないと思った……」

「なんで? 女の子の水着を選べるんだよ?」

「普通の男子高校生が、女の水着売り場に立てると思うか?」

 

 すると小晴は、親指を立ててビシッと見せつけた。

 

「律くんは一人じゃないよ。私がいる!」

「ヒーローみたいにカッコよく言うな」

 

 呆れながらツッコむと、小晴は不満そうに頬を膨らませた。

 

「プールで着る水着なのに〜」

「誰と行くんだ?」

「律くん♪」

「ん〜〜〜……聞いてない」

「今言ったからね♪」

 

 あまりにも当然のように言われ、律は一瞬反応が遅れた。

 

「そんなのいつ決まった?」

「おばさんがプールの割引券をもらったんだって。二枚あるから律くんと一緒に行ってきなさいって」

「母さんは、なんでいつも俺を通さずに予定を決めるんだよ……」

「行きたくないの?」

「いや、べつにプール行くのは嫌じゃないけど」

「じゃあ決まり! 律くんに可愛い水着を選んでもらいます♪」

「いや、だからそれは——」

「ねえねえ、私の水着姿、見たくない?」

 

 そう言って、小晴はわざとらしくグラビアアイドルのようなキメポーズをとってみせた。冗談のつもりなのだろうが、タチが悪いことに、彼女のスタイルは本物のグラビア顔負けの豊満さなのだ。

 

 胸元を強調するポーズが見事にハマりすぎていて、律は思わず目を逸らす。

 

「……そういう言い方はずるいだろ」

「あれ? ってことは、見たいんだ〜?」

 

 逃げ場を塞ぐように、ニヤニヤしながら至近距離まで顔を寄せて覗き込んでくる。

 

「ねえねえ、どうなの?」

「きょ、興味がないとは言ってない……!」

「正直でよろしい♪」

 

 小晴は満足そうに頷いた。

 

「じゃあ、一生のお願い!」

 

 こうして律は、何度聞いたのかも覚えていない小晴の「一生のお願い」を叶えることになったのだった。

 

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