「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…! 作:白井ムク
昼前、二人は近所の大型ショッピングモールを訪れた。夏休み最初の休日ということもあり、館内は家族連れや学生で混雑している。
「ねえ律くん、手繋ぐ?」
「繋がない」
「迷子になるかも」
「高校生だろ」
「じゃあ腕組む?」
「組まない」
小晴は諦めたように見せかけ、律のシャツの裾を摑んだ。
「これならいい?」
「……まあ、それくらいなら」
「やった♪」
——まったく……。
自分が好きになるタイプの女の子とは違う。それなのに、この小晴の可愛げは、いったいどこからくるのだろうか。律がそんなことを考えていると、
「着いた!」
小晴が足を止めたのは、女性用の水着が並ぶ店だった。入口には色鮮やかなビキニを着たマネキンが立っていて、いかにも男は入ってはいけない領域のように感じられた。
「やっぱ俺、外で待ってるから」
「ダーメ。選んでくれる約束でしょ?」
「やっぱ嫌になった」
「まあまあ、ちょっとだけでいいから〜♪」
律は小晴に押し込められるように、渋々入店した。女性用の水着に囲まれると一気に落ち着かなくなる。周囲の目がどうしても気になってしまうからだろう。
そんな律をよそに、小晴は楽しそうに水着を選び始めた。
「ん〜……ねえ、律くん。こっちとこっち、どっちがいいと思う?」
小晴が二着の水着を交互に身体へ当てる。白いフリルのついたビキニと、胸元が大きく開いた黒いセパレートタイプ。
「黒はやめとけ」
「即答だね」
「小晴には大人っぽすぎる」
「私だって大人の女だよ?」
「中身が追いついてないだろ」
「ひっど〜……じゃあ白?」
「そっちのほうが似合いそうだ」
答えると、小晴が嬉しそうに目を細めた。
「それじゃ、試着してみるから待ってて」
「え……俺に見せるの?」
「そのために連れてきたんだよ? ——じゃ、ちょっと待っててね〜♪」
小晴は白いビキニを持ち、試着室へ入っていった。カーテンが閉まる。衣類が擦れる音が聞こえ、律はどこを見て待てばいいのかわからなくなった。
そして数分後——。
「律くん、ちょっと来て」
カーテンの隙間から小晴に手招きされ、律は試着室の前へ立った。
「じゃーん!」
カーテンが開いた瞬間、律は息を呑んだ。
白を基調としたフリル付きのビキニ。可愛らしいデザインのはずなのに、小晴が着ると、最初に目へ飛び込んでくるのはその豊かすぎる胸だった。小さなフリルが胸元のボリュームによって持ち上げられ、その下には深い谷間ができている。
そこから視線を下ろせば、驚くほど細いウエストと丸みを帯びた腰のライン。健康的な太腿まで、ほとんど隠すものがない。
——いや、ウエストッ……!?
律は思わず二度見した。北海道で全体的にむっちり成長したと思っていたのだが、そのウエストはしっかりと引き締まっている。だからこそ、大きい胸とお尻が余計に強調して見えるのだった。
「どう? 似合ってる?」
小晴が少し照れ臭そうに訊く。
「可愛い? それとも〜、エロい?」
「ま、まあ……両方」
律が正直に答えると、小晴の頬がわずかに赤くなった。いつものように律をからかうつもりだったのだろう。予想以上に真っ直ぐ答えられ、逆に照れたらしい。
「そ、そっか」
「似合ってるよ。もうその白でいいんじゃないか?」
律は恥ずかしさを誤魔化すように、やっつけで言った。
「……うん。なら、白がいいかな」
小晴は胸元のフリルを指先で摘みながら、嬉しそうに笑った。
その表情を見て、律は少し不思議な気持ちになった。小晴の顔立ちは、律がこれまで理想としてきた華やかな美少女とは違う。少し垂れた目も、笑うと形が崩れる口元も、どちらかといえば親しみやすい。それなのに、今の小晴を素直に可愛いと思った。
「じゃあ、これにしようかな」
小晴が決めかけると、律は急に不安になった。
「ほかは試さなくていいのか?」
「もう決めた。律くんが似合うって言ってくれたから」
「いや、自分で気に入ったものを選べよ」
「私もこれが好きだよ」
そう言って、小晴は水着の胸元へ手を当てた。
「その上で、律くんにも可愛いって思ってもらえたから、これにするの」
「……そう」
「ついでにエロいって言われたから♪」
「お、おいっ!」
「じゃ、脱ぐから待ってて〜」
再びカーテンが閉まると、律は大きなため息を吐いた。
再会してからずっと小晴に感情をぐらんぐらんと揺らされる。振り回されてばかりだというのに、なぜだか懐かしいと思ってしまった。