「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…!   作:白井ムク

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第14話 いちいちクリティカル

 水着を購入したあと、小晴が行きたがっていたキャラクターカフェへ向かった。

 店内は、動物をデフォルメした人気キャラクターで飾られている。椅子にはぬいぐるみが置かれ、注文したドリンクにはキャラクターの顔を描いたクリームが載っていた。

 

「見て、律くん! 可愛い!」

 

 小晴がスマホで何枚も写真を撮る。

 

「ねえ、律くんも一緒に写真撮ろ」

「俺はいいって」

「え〜? なんで? いいからいいから♪」

「ドリンク一杯で、よくそこまでテンション上がるな〜」

「だって可愛いでしょ?」

「まあな」

「私が」

「お前かよ。自意識過剰か」

 

 律にツッコまれ、小晴は満足そうに「ふふっ」と胸を張って笑った。

 冗談めかしてはいるが、ぐうの音も出ないのが悔しい。可愛いものを見てはしゃぐ姿を含めて、けっきょくのところ、目の前の小晴が一番可愛いのだから。

 

 そこにきて、以前クラスの男子が「女子の言う『可愛い』は信用できない」と力説していたのをふと思い出したが、今の小晴に限っては文句なしの真理だった。

 

「律くん。このあとどうする?」

「じゃあ、俺の行きたいところにも付き合ってほしい」

「どこ?」

「本屋。欲しい漫画の新刊が出てるから」

「もちろん行く♪」

 

 小晴は即答した。さっきより笑顔を弾ませながら律を見つめる。

 

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ?」

「だって、律くんが行きたいって言うから。ちょっと前の律くんなら、自分の希望を後回しにして、私の行きたいところだけ回ってたと思うし」

「小晴の買い物についてきたんだから、それが普通じゃないか?」

「私は律くんと一緒に出かけたいの。私だけ楽しんでも、デートじゃないでしょ?」

「だから、デートじゃないって……定義が雑なんだよ」

 

 なにを言われても、小晴は「ふふっ」と楽しそうに笑う。

 

「今日は律くんの行きたいところ、百軒でも付き合うよ」

「そんなにない」

「じゃあ二百軒」

「なんで増やすんだよ?」

「だって、嬉しいから。なんかね、今の律くんと出かけてる感じがする」

 

 その言葉に律は目を瞬いた。

 

「昨日、律くんに言われたでしょ? 私が知ってるのは昔の律くんだけだって。昔の律くんが好きだった食べ物や遊びは知ってるけど、今好きな漫画も、今行きたい場所も知らないから」

「まあ……昔とそんなに変わってないけどな」

 

 小晴はテーブルへ頬杖をつき、律をじっと見つめた。

 

「いっぱい教えてね。今の律くんのこと」

 

 律はドキッとしながら返す。

 

「まあ……一緒にいれば、わかってくるだろ」

「うん♪ じゃあ一緒にいる〜♪」

 

 律は急激に熱を帯びていく自分の顔をそっと隠した。

 

 ——いちいちクリティカルなんだよなぁ……。

 

 小晴本人は無自覚なのかもしれないが、その表情や言い方は、律の心拍数を上げるのに最も効果的だった。周りの顔色ばかり窺ってきたはずなのに、今はこの幼馴染に自分の顔色を変えさせられてばかりだ。

 

 誰もが思わず振り返るような、わかりやすい美少女ではないのかもしれない。

 

 けれど——小晴から放たれる無限の可愛げは、どんな理想像よりも強く、真っ直ぐに律の胸を撃ち抜いていた。

 

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