「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…! 作:白井ムク
水着を購入したあと、小晴が行きたがっていたキャラクターカフェへ向かった。
店内は、動物をデフォルメした人気キャラクターで飾られている。椅子にはぬいぐるみが置かれ、注文したドリンクにはキャラクターの顔を描いたクリームが載っていた。
「見て、律くん! 可愛い!」
小晴がスマホで何枚も写真を撮る。
「ねえ、律くんも一緒に写真撮ろ」
「俺はいいって」
「え〜? なんで? いいからいいから♪」
「ドリンク一杯で、よくそこまでテンション上がるな〜」
「だって可愛いでしょ?」
「まあな」
「私が」
「お前かよ。自意識過剰か」
律にツッコまれ、小晴は満足そうに「ふふっ」と胸を張って笑った。
冗談めかしてはいるが、ぐうの音も出ないのが悔しい。可愛いものを見てはしゃぐ姿を含めて、けっきょくのところ、目の前の小晴が一番可愛いのだから。
そこにきて、以前クラスの男子が「女子の言う『可愛い』は信用できない」と力説していたのをふと思い出したが、今の小晴に限っては文句なしの真理だった。
「律くん。このあとどうする?」
「じゃあ、俺の行きたいところにも付き合ってほしい」
「どこ?」
「本屋。欲しい漫画の新刊が出てるから」
「もちろん行く♪」
小晴は即答した。さっきより笑顔を弾ませながら律を見つめる。
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ?」
「だって、律くんが行きたいって言うから。ちょっと前の律くんなら、自分の希望を後回しにして、私の行きたいところだけ回ってたと思うし」
「小晴の買い物についてきたんだから、それが普通じゃないか?」
「私は律くんと一緒に出かけたいの。私だけ楽しんでも、デートじゃないでしょ?」
「だから、デートじゃないって……定義が雑なんだよ」
なにを言われても、小晴は「ふふっ」と楽しそうに笑う。
「今日は律くんの行きたいところ、百軒でも付き合うよ」
「そんなにない」
「じゃあ二百軒」
「なんで増やすんだよ?」
「だって、嬉しいから。なんかね、今の律くんと出かけてる感じがする」
その言葉に律は目を瞬いた。
「昨日、律くんに言われたでしょ? 私が知ってるのは昔の律くんだけだって。昔の律くんが好きだった食べ物や遊びは知ってるけど、今好きな漫画も、今行きたい場所も知らないから」
「まあ……昔とそんなに変わってないけどな」
小晴はテーブルへ頬杖をつき、律をじっと見つめた。
「いっぱい教えてね。今の律くんのこと」
律はドキッとしながら返す。
「まあ……一緒にいれば、わかってくるだろ」
「うん♪ じゃあ一緒にいる〜♪」
律は急激に熱を帯びていく自分の顔をそっと隠した。
——いちいちクリティカルなんだよなぁ……。
小晴本人は無自覚なのかもしれないが、その表情や言い方は、律の心拍数を上げるのに最も効果的だった。周りの顔色ばかり窺ってきたはずなのに、今はこの幼馴染に自分の顔色を変えさせられてばかりだ。
誰もが思わず振り返るような、わかりやすい美少女ではないのかもしれない。
けれど——小晴から放たれる無限の可愛げは、どんな理想像よりも強く、真っ直ぐに律の胸を撃ち抜いていた。