「顔60点、体100点」と評価されている幼馴染と同棲することになった俺。彼女は無防備なうえに甘やかしてくるので、毎日が刺激的すぎるんだが…! 作:白井ムク
一学期の終業式を迎えた教室は、明日から始まる夏休みの話題で浮き足立っていた。
「なあ律、このあとカラオケ行くだろ?」
帰りのホームルームが終わるなり、松丸一輝が律の肩へ腕を回してきた。一輝は高身長で運動神経もよく、誰とでも気軽に話せるクラスの男子の中心人物。高校へ入ってから知り合った友人の中では、律と最も付き合いが長い。
「一学期の打ち上げ。駅前の店、もう予約してるからさ」
「今日?」
「陽依たちも来るって」
その名前を聞いた瞬間、胸の奥が痛んだ。
律は教室の反対側を見る。上原陽依は、いつも一緒にいる吉川さくらや黒木萌香となにかを話していた。昨日の別れ話などなかったかのように、普段と変わらない笑顔を浮かべている。
——本当に、なんとも思ってないのかな。
そう考えた直後、自分も一輝の前ではいつも通りに振る舞っていることに気づいた。
——もしかして、陽依も同じ?
一瞬そう思ったが、今は彼女の内面まで想像する余裕はない。ひとまずこのあとの予定を考えてみたものの、別れた翌日に元カノと同じ部屋で何時間も過ごすなど耐えられそうにない。それに、今日は予定があった。
「悪い。今日は無理」
「え?」
一輝が意外そうに目を瞬く。誘いを断られるとは思っていなかったらしい。
「珍しいな。なんかあんの?」
「家の用事。引っ越しを手伝わないといけないんだ」
「引っ越すの?」
「じゃなくて、知り合いがうちに引っ越してきて、その手伝い」
律は苦笑しながら、肩に回された腕を外した。
「悪いな。また今度で」
「おう。じゃあ夏休み中にもう一回やろうぜ」
一輝は気にした様子もなく、陽依たちのもとへ戻っていった。
「律、用事あって無理だって」
「えー、珍しい」
「いつも誘ったら来るのにね」
さくらと萌香の声が聞こえた。けれど、陽依は最後まで律のほうを見なかった。今、陽依はなにを考えているのだろう。
——いや、気にしすぎだよな……いい人やめるって決めたのに。
律はそう思い直し、机の中身を鞄へ詰め込んで、逃げるように教室を出た。
* * *
「律くん、その箱はベッドの横にお願い!」
「これ、なに入ってるんだ? やたら重いんだけど」
「ん? 下着」
小晴は真顔で言った——いや、明らかに嘘だ。
「おいおい嘘だろ?」
「ほんとだよ。ほら、アニメとかでもあるでしょ? 本気になったら外して、ガシャンって地面にめり込むやつ」
「……女子は普段からそんなもんを身に着けてるのか?」
「そう。女の子はね、本気になったら下着を外すんだよ」
「そのネタ、あんま広げたくないわ、今は……」
なんのバトル展開だよ、と頭の中だけでツッコミを入れる。
「なんていうのは嘘で、その箱は本」
「本か。つーか、箱いっぱいに詰めるなよ。重すぎるって」
「律くん、己の筋肉を信じて!」
「帰宅部の筋肉に過度な期待をするなよ。鍛えてないんだから……」
——と、そんな風に。
帰宅した律は、制服からTシャツとハーフパンツへ着替えると、すぐに小晴の引っ越し作業へ駆り出された。業者が運び込んだ段ボール箱を、一階から二階へ運ぶ。
小晴の部屋には、すでにベッドや机などの大きな家具が設置されていた。その周囲に、衣類や本、雑貨が入った箱が積み上がっている。