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グリムジョーがゴリラ型破面に襲われ、霊王の右足の一部を取り込んで破面へと進化してから、更に年月が過ぎた。
破面に進化してからまず最初にグリムジョーがしたのは、衣服の調達だ。前までは、虚としての装甲に覆われていた為気にしていなかったが、破面となった今は人間の体なのだ。前世の記憶もある身としては、いつまでも襤褸布ですませるわけにはいかない。とはいえ、虚圏にそれ以上の物がある訳もなく、大人しくザエルアポロに依頼した。
最初は渋っていたザエルアポロだが、グリムジョーが自分の切った髪や爪、皮を差し出す事で要望通りの衣服を造らせた。因みに、霊王の右足を取り込んだ事を話したら、狂喜乱舞して快諾していた。
そんな訳で今のグリムジョーの格好は、上に胸元を開いた上着に袖を通し、腹を堂々と見せて腰には黒い帯、足には白い袴に全体が黒色で白のラインが入った靴を履いている。
そして腰には斬魄刀を差し、両手をポケットに突っ込んで、砂漠の上を歩いている。
「……チッ。骨のある奴がいねェな…」
そんなグリムジョーは今、刀の扱い方を学ぶべく相手を探している。大虚だった時は野性的な戦い方で良かったが、斬魄刀を手に入れた以上、それを使うための技を磨くべきだと考えたのだ。
しかし蓋を開けてみれば、大抵の大虚が一撃二撃で死んでしまう為、鍛錬しようがない事が最近の悩みなのだ。
──いっその事【メノスの森】にでも行って、狩能雅忘人と刃を交えるか。
アニメ版で出てきた虚圏に居る死神である、狩能雅忘人。だが、原作でも出てくる予定だった男で、小説でも動向が描かれているなら居るはずだ。
そう思って検討しているグリムジョーに、隣から燕型中級大虚が話し掛ける。
「いやいや!あんたが強過ぎるんだから仕方ないでしょ!?あんた相手に遣り合える奴なんてそうそう居ないわよ!!」
「……そうは言ってもな、チルッチ。雑魚ばっかだと退屈なんだよ」
──燕型中級大虚。その名はチルッチ・サンダーウィッチ。雌の中級大虚で、今はグリムジョーと一緒に行動している。
チルッチとグリムジョーの出会いは在り来りな物で、刀の修行の為にそこら中に喧嘩を吹っかけていたグリムジョーが、襲われているチルッチを助けたのがキッカケだ。普段なら進んで人助けなどしないグリムジョーだが、チルッチに襲い掛かる猿の中級大虚が文字通り盛りのついた猿そのものだった。
それが、同じ男として気持ち悪過ぎた。それからは、怒りのまま刀を振るって頭から真っ二つにした。その結果助けた形になり、チルッチの方から従者として動向を願い出た為、共に行動している。
──あ、あんた一人みたいだし、あたしが、い、いい一緒に、行ってあげても…いいけど////
と、いうのが彼女の言だ。好意を隠しきれていないツンデレの様になっており、グリムジョーは鈍感ではない為気付いているが、自分から切り出さずに様子を見ている。焦らずとも、グリムジョー達には長い時間があるのだから。
「それはそうかもしんないけどさ。あんたがまともに戦ってるところ見たことないわよ?あたしから見て強そうな奴相手でも、すぐ終わるじゃない」
チルッチから見たら充分強い中級大虚も、殆どを一撃で沈めてきた。それを見てきたチルッチからすると、グリムジョーが退屈しない相手というのがそこらに居るとは思えなかった。
「……確かにそうだが、少しぐらいは粘ってくれねェとつまらねェんだよ。それに、同胞にするにしても精神か肉体が強くねェとな」
グリムジョーがチルッチを連れているのも、同胞探しの一環。これに尽きる。配下─或いは臣下や民、という所謂同胞がいなければ、王とは言えない。その為、王としての最低限の力と格好を整えた後、そう呼べる存在を探してもいた。
その点でチルッチは、グリムジョーの判断基準を満たしていた。よって、動向を許したのだ。
そうして虚圏を旅していた、ある日──。
「何だァ?随分小せえ奴に、雌のアジューカスだな……や、そっちのテメェはホントに虚か?」
グリムジョー達の前にとある中級大虚の集団が現れた。巨大なヘビのような大虚を先頭に、二足歩行の骨のような手足の虚。猛牛のような仮面を持つ虚やゴツい両手を持つ大虚など、複数の中級大虚のいる珍しい群れだった。
「まァいい。悪りィな、てめえらを喰うぜ」
「──ハァ?テメェ如きが誰を喰うって……?調子に乗ってんじゃないわよ!!」
先頭に立つヘビは好戦的な様子を隠すこともなく前に進み出る。今はグリムジョーが霊圧を抑えているので、単純に大きさと性別で格下だと判断したのだろう。
元々怒りやすい性格な上、自分の大好きなグリムジョーまで見下された事にキレたチルッチも相手を睨みつけた。
そんな緊張状態の中、グリムジョーがゆっくりと前に歩み出て、チルッチに声を掛ける。
「待てチルッチ。俺がやる」
チルッチを下がらせ、右手をポケットから出して刀を抜いたグリムジョーが大虚達の目の前から消える。そして次の瞬間、ヘビに刀を突き立てた。
「グッ……アァ…!!」
「っ!!何だ?ディ・ロイが一瞬で──」
「──強いな」
一瞬でディ・ロイと呼ばれた大虚の右目部分を切り裂き、着地する。そんなグリムジョーの実力に驚く猛牛頭と冷静に状況を見て、強いと判断する骨の大虚。
そして人型の方が、グリムジョーに名前を問い掛ける。
「名は何という、死神のような虚」
「…グリムジョー」
「シャウロンだ」
互いに名前を名乗り合い、それから骨の大虚─シャウロンが更に話を続ける。
「…我等と手を組め、グリムジョー。──ただでとは言わん」
「──っ」
「…何の真似だ?」
その瞬間、さっきまでは敵意もあった相手にそれらが消え去り、敵だった全員が片膝をついて頭を下げる。その様子を見ていたチルッチは息を飲むが、グリムジョーは冷静に何故かと尋ねた。
「我等、
自分達の目標を語るシャウロンの目には、強い決意が見て取れる。それを見ながらグリムジョーは、こう思う。
──原作の俺もこの視線を見て、動向を許したのか。
今のグリムジョーは、前世の記憶を持っていた人格と混ざり合った為、シャウロン達が仲間になることは知っていた。しかし、グリムジョーはグリムジョーなのだろう。
そんな事は関係無しに、手を組むことを考えている自分がいる事を感じていた。
「その為には力が必要だ。我等を牽引する強大な力が。……貴様にこそそれは相応しい」
上に手を掲げ、語るシャウロンの言葉を黙って聴いている。シャウロンを見詰めるグリムジョーが何を考えているのかは、この場の誰にも分からない。だが、どうするかを考えている事は誰しもが理解していた。
「共に行こう、グリムジョー。──貴様が、我等の王となるのだ」
こんな誘い文句も中々ないだろう。王やリーダーが配下や部下にと他者を勧誘するならよくある事だが、 逆に自分達の王になれとは珍しい。
──普通は逆だろうが……これはこれで面白ェか!!
その珍しさを面白いと思ったグリムジョーは、笑ってシャウロンの勧誘に答えを出した。
「ハハハッ、良いぜ!!その誘いに乗ってやる。元々、この虚圏の王にはなるつもりだったからなァ」
「…そうか、それなら何よりだ。これからはよろしく頼むぞ、グリムジョー」
「あァ。だがこれだけは言っておく」
仲間になった事で一件落着とはならず、グリムジョーが更に一つ、最後に伝えるべき自分の考えを語り出す。
「見届けろ!」
「「「「「「──っ!」」」」」」
「お前らの王である俺の在り方を!!このグリムジョーの疾走を──!!!それが出来るんなら…世界の果てまで着いて来い!!!」
それは考えを語るというよりも、王であるグリムジョーからのシャウロン達への最初の命令に等しい。実際、そう語っている時のグリムジョーの覇気には、シャウロン達より長い付き合いのチルッチも息を飲んでいた。
もっとも、チルッチだけは若干惚けたような表情にもなっていたが。
それから踵を返したグリムジョーは背中を向け、着いて来いと言わんばかりに歩き出していった。
あれからグリムジョー達は、虚圏中のあらゆる場所を彷徨った。シャウロン達が最上大虚になるために。グリムジョーも自らの力を使いこなす為に。
そうして数百数千の大虚と出会い、数多の大虚と戦い、喰らって進み続けた。グリムジョーの成長は限りなく緩やかだったが、力の全容を知って制御下に置き、“帰刃”のその先へと進もうとしていた。
チルッチもまた、中級大虚のままではあったが力の増大が続いており、中級大虚の中でもかなり上位にまでは行けそうであった。
しかし、シャウロン達はそういう訳にもいかず、随分前から霊圧の上昇などの力の増大が、本人でなくとも感じられる様になっていた。他人でもそうなら、きっと本人は誰よりも分かっているだろう。
だからグリムジョーには、元々訪れる事が分かっていた日が、そろそろ訪れるだろうという事を予感していた。
──そして滔々、その日がやって来た。
「……何だと?」
「…諦めると言ったのだ」
「悟ったんだ。俺達は最上大虚にはなれん」
原作の知識のあるグリムジョーには、半ば分かっていた事だ。この日が訪れる事は。しかし、いざ訪れてみれば知っていても信じられないもので、遂聞き返していた。だが、シャウロンの話は変わらず、寧ろイールフォルトもそれに追随した。
「俺達は、喰った虚千を超えた辺りから力の増大を感じなくなった……。今日の捕食で三千、これ以上は無意味と知った」
「ハァ?そうやって自分の可能性を諦めても、捕食を辞めたら退化するしかないのよ!?──だったら進むしかねェだろ!!」
イールフォルトの語った事は、グリムジョーとチルッチ以外の者には共通しており、誰も訂正しない。それは即ち、ナキームにディ・ロイ、エドラドも諦めることを受け入れたという事だ。
これには黙って聴いていたチルッチも反論し、最後の方はかなり荒い口調になっていた。彼女はドライなところもあるが、基本的に熱くなりやすい性格で仲間の事も大事にする性格だ。
だからこその反論だったが、シャウロン達の意思は既に固まっていた。
「そう思えるのは、まだお前が成長を続けているからだ。だが、我等は長らくそれがない。……諦めざるを得ないのだ…」
「っ………」
事実成長を続けているチルッチには、シャウロン達の気持ちが分かるとは決して言えない為、黙るしかなかった。
「諦めてェなら好きにしろ。元々、王になるのは俺自身で決めた野望でもあった…!覇道を歩む事を、俺はやめねェ」
「……ああ、構わん。だが……行くなら我等を喰っていけ」
「シャウロンッ!?それは──!!」
──進化する可能性がなくなるんだぞ!
と、チルッチはシャウロンの放った言葉に思わず怒鳴り声を上げる。だが、それなりに長い付き合いのグリムジョーが立ち止まらない事を理解しているシャウロン達は、その決意を変えようとはしなかった。
「分かっている。だが、悟ったと言った筈だ。……最上大虚になれるものとそれ以外とは、恐らく只の虚である頃──いや、或いは更に以前から分かたれているのだと、そう悟ったのだ」
「…………」
「虚として存在したその瞬間から、我等は
シャウロンが長々と語る諦めた際の理由を、意外にも黙って聴いていたグリムジョーは、内心どうしようかと考えていた。
喰ってやるべきかどうか、それを迷っていたグリムジョーは、シャウロンの言葉を最後まで聴いたことで、答えを出した。
──そこまで言うなら、背負ってやる!お前達も糧にして俺は……この先を歩んでやる!!
「良いぜ、喰ってやる!!但し……一部だけだ」
「っ!」
「俺は言った筈だ!俺の覇道の果てを見届けろと!!それを承知でテメェらが着いて来た以上……こんなトコで野垂れ死ぬなんざこの俺が許さねェ!!!」
シャウロン達の事は喰らうが、野垂れ死には許さない。これが、グリムジョーの出した答えであった。
「テメェらの意思は、俺の血肉にして背負っていってやる…!!だからテメェらもよ……立ち止まる事だけはすんな」
「……グリムジョー」
「「「「「──っ!ああ!!」」」」」
グリムジョーの出した信念からの答えは、シャウロン達の固まった意思にも響く物だった。それを聴いたシャウロン達は、さっき迄の諦めモードの沈んだ雰囲気からは打って変わって、気合の入った声の返事にだった。
ここ最近の不成長に悩んでいた事で、すっかり出会った頃の事を忘れていた。それを今のグリムジョーの言葉で、思い出したのだ。
そして改めて、グリムジョーという自分達の王に最後まで着いて行こうと決意を新たにしたのだ。
それからグリムジョーは、チルッチ以外の全員の体の一部を喰らい、また旅に出た。だがその一行には、今までの様なギスギスとした雰囲気は微塵もない。
それどころか、崩れることなき強固な絆を結んだ者達の、堂々とした歩みがそこにはあったのだった。
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これからもよろしくお願いします!
ネリエルをグリムジョーのヒロインに加えるかどうか、迷っています。なので、こうして幾つかルートをアンケートにさせて頂きました。
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グリムジョーのヒロインで良いよ!
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ネリエルは一護じゃないとダメ!