グリムジョーの一行が、一悶着ありながらも更に強固な関係を築いた日から、更に年月が過ぎた。その間にも、他の虚達との戦闘があったのは勿論だが、その他にも様々な事があった。
一つ目は、現虚圏の王である─大帝、バラガン・ルイゼンバーン。兼ねてよりグリムジョーの一行の事は、バラガンの耳にも入っていたらしく、自分の部下にと勧誘をしてきたのだ。勿論なんのメリットもなく誰かの下につくグリムジョーではないので、断った。
その場で戦いを仕掛けた場合、高確率でグリムジョーが勝利を収められたが、他のメンバーは全滅していただろう。数という戦力差が圧倒的で、向こうにはザエルアポロを含めた最上大虚級の大虚が多数居る。これでは、グリムジョーがバラガンを倒しても、シャウロン達が殺される。つまり、グリムジョーが裸の王様同然となる。
意味のある死ならば兎も角、配下を無駄に死なせるだけならその行動に意味がない。よって、その場で仕掛けるような愚行を犯さなかった。それに、グリムジョーには未来を知っているが故の計画がある。焦る必要はなかったのだ。
二つ目は、虚圏を孤独に彷徨っていた男女の二人組の破面。霊圧が強過ぎて周りの連中が魂が削れて死んでいく。そんな現象が起こるが故に孤独だった二人とグリムジョー達は出会い、一日も満たない間ではあるが話をした。結局、グリムジョーにその二人が加わった霊圧に、ずっと共にいるのはシャウロン達が保たない様子だった為、また会う約束だけをして別れた。
他にも、虚だらけの虚圏で暮らしている死神にも出会った。何でも、尸魂界で同じ斬魄刀を持っていた親友と殺し合いをさせられ、最終的に上層部にトドメを刺された後、この虚圏に来たそうだ。彼は生粋の死神として、教育を受けていた為剣術の腕も達者な物。グリムジョーは長らく、剣の腕を競える相手を探していたので、ついつい長居してしまうなんて事もあった。
それから、【メノスの森】にいる死神─狩能雅忘人にも会った。こちらは一つ所に留まっている上に、数百年を生きて戦い抜いている猛者なので、グリムジョーも学ぶ事が多いにあった。
そして、成長していたのはグリムジョーだけではなく、他のメンバーも各々のやり方で成長していた。
まずチルッチに関して言えば、最上大虚まではいかなかったが、グリムジョーが最上大虚に進化したときの一歩手前くらいまでの霊圧となっていた。
シャウロン達も、退化しない程度に大虚を喰いながらも、研鑽を積むために技を鍛え始めていた。自分達の王に焚き付けられた結果、やる気が漲っているのだ。
そうした日々を過ごしてきたグリムジョー達は今日、新たな転機の日を迎えていた。
それは、グリムジョー達とも因縁のあるバラガン達と、金髪の最上大虚率いる中級大虚達が一悶着起こしたのを偶々見かけた為、高い場所から見下ろしていた時。
少し離れた所に自分達と同じようにその様子を観ていた者達が居たのだ。その容姿や格好(白い羽織りを羽織っている)から、死神の─それも隊長格である事が分かった。それが複数人となれば最早、藍染惣右介の一行ぐらいしかいないだろう。
「グリムジョー、あそこに──」
「あァ、死神だな。しかもあの白いの……死神の上の連中しか着れねェ筈だ」
「──どうすんのよ、グリムジョー。あんたの言う事がホントなら、接触には危険もあると思うんだけど?」
シャウロンが気付いた事を肯定し、自分の考えも口にするグリムジョー。それを聞いたチルッチが、今度は自分の意見も言いつつどうするのかと尋ねた。
──原作の俺がどのタイミングで藍染と一緒だったのか知らねェが、その時の数字からして大分初期の方に仲間入りした筈……。なら今でも問題ねェな。今のシャウロン達の停滞も、破面化が出来るようになりゃァやれる事も増えるしな…!!
「──接触してみるぞ…!但し、油断だけはすんな。いつ戦闘になってもいいよう、気を付けとけ」
最終的にメリットの方が大きいと判断したグリムジョーは、接触を決断する。油断はするなとシャウロン達に警告した後、死神達の居る方へ歩いて行った。
バラガン達の居る場所から少し離れた高い岩の上。
「ひゃぁ──、強そうな虚が仰山居りますねぇ。……ん?」
死神の隊長格の三人の内の一人、三の字を背負った男─市丸ギンが、内心の分からない表情で辺りを見渡した後、五の字を背負った男─藍染惣右介に視線を向ける。
「どないしたんです?また何か、愉しい事でも見つけはったんですか?」
「……いや、それ程の事でもない」
端から見れば、愉悦感のような表情で藍染に聞くギンだったが、藍染は涼しい顔で否定する。
「それよりも……、折角だ。先ずは虚圏の王とやらに挨拶でも──と、思っていたんだが。何か、僕達に用かな?」
「……フン。この虚圏に死神、それもその羽織りを着てるって事は、隊長って奴だろ?そんな奴等が三人も揃って、こんな所に何の用か気になっただけだ」
「貴様っ、何者だ!?」
グリムジョー達が特に霊圧を隠していなかった事もあって、藍染はとっくにその存在に気付いていた。そして接近して来ている事から、目的が自分達との接触だろうと踏まえた上で問いかけたのだ。
聞かれたグリムジョーも、上辺だけの返答を返しつつ数メートルくらいまで近付いた所で立ち止まる。グリムジョーがそこまで接近した事で、藍染の傍らに控えていた九の字を背負う男─東仙要が、腰の刀を抜けるよう構えてから何者かと問い質す。
「グリムジョー。グリムジョー・ジャガージャック。それから、コイツらが──」
「──チルッチよ」
「私はシャウロンという」
「俺がエドラド」
「イールフォルト」
「ディ・ロイだ」
「──へぇ?中級大虚の一団か…!興味深いね……!!特に君は──」
グリムジョーの名乗りに続いて、チルッチ達も順番に名乗っていく。その全員を視界に収めた藍染は、一人一人に観察する様な視線を向けて、最後にグリムジョーで固定される。
「限りなく人に近い容姿……。しかし、腹部の孔と右頬の仮面の名残。つまり君は──
「そりゃァその通りだが、こっちの質問にも答えろ!何の用で虚圏に来た」
藍染の興味の対象は主にグリムジョー。その全身の特徴から、正体を看破した藍染の答えに頷くグリムジョーだったが、自分達の質問の答えがまだだと催促する。
「それもそうだね、すまない。僕は藍染惣右介。そして、彼等が東仙要と市丸ギンだ。我々はこれからこの虚圏で、同胞を集めんとする者達だ」
「──ハッ!こりゃ面白ェ!!死神様がこの虚圏で、虚を仲間にしようたァとんだ酔狂もあったモンだな」
「貴様っ!!藍染様に向かって──」
「止すんだ要」
藍染がこの虚圏に来た理由を聞いて、鼻で笑うグリムジョー。それにキレた東仙がいよいよ刀を抜こうとするが、藍染が冷静にそれを止める。それは偏に、目の前のグリムジョーの実力を薄々察しているからだ。
「君では、彼には勝てないよ」
「──っ!私がこの者に劣ると!?」
「えぇ〜〜?それホンマですか?藍染隊長」
「あぁ。後ろの彼らは兎も角グリムジョー、彼は別格だ。総合的には我々が勝つのは間違いないが、誰かが欠ける可能性もある」
今の東仙要では、グリムジョーの相手は厳しい。事実藍染の言う通りで、グリムジョーの仲間達と藍染達の総合戦力では藍染達の方が高い。しかし、本気で殺し合えば全滅はないが、市丸か東仙のどちらか一人くらいなら仕留められる。
それを聞いた東仙と市丸それぞれ驚くが、藍染が冷静にどうなるかの予想を告げる。
その事は、藍染とグリムジョーの両方が理解している為、双方仕掛けるつもりが微塵もないので、そんな事は起きないが。
「それに……彼程の
「藍染様がそう仰るのであれば……」
「──という訳でどうかな?我々の仲間にならないか?」
それから、藍染が東仙を止めた理由としては、グリムジョーを仲間に引き入れたいという事も多分にあった。その理由に納得した東仙は、抜きかけた刀を収めて傍らに控える。
そして、藍染は右手を差し出しグリムジョーに勧誘の言葉を投げかけた。
「……今会ったばっかのテメェに、従う理由がねェなァ!それとも何か……メリットでもあんのか?」
一見断ろうとしている台詞に思えるが、藍染からの勧誘はグリムジョーが望んでいた事であり、それが目的で接触した。故に、今の言葉はそれを悟らせない為であり、グリムジョーの第一の目的でもある仲間を成体の破面への進化を、対価として引き出そうという思惑がある。
他にも藍染の下に着く目的は幾つかあり、グリムジョーとしては藍染が虚圏に居るのは自分達の時間感覚では長くないと知っているので、メリットを享受しようという考えなのだ。特に、成体への進化は藍染の手に入れる崩玉でやるのが、一番成功率が高い。それだけでも、十分な理由になるだろう。
よって、グリムジョーは高待遇を引き出した上で、藍染の勧誘を受けるつもりだった。
「ふむ……、それもそうだね。それなら──こういうのはどうだろう?」
グリムジョーの話を聞いて、言っている事に一定以上の道理があると考えた藍染は、すぐにグリムジョーの望んでいるだろう理想の答えを導き出し、条件として提示する事にした。
「今私は、死神の虚化─或いは虚の死神化に関する研究を行っていてね…。成体の破面に進化させる宛がある。それを手に入れた暁には、一番に君の同胞に使おう。……どうかな?」
「………少し、俺達だけで話をしていいか?」
「構わないよ。存分に話すといい」
今のグリムジョーが望む一番の条件は引き出した。後は、藍染の下に着く理由を仲間達にも共有しておかなければならない。後から事後報告をするよりも、ここで理由を話して納得させておいた方が良い。
グリムジョーはそう判断した為、このタイミングで話し合いの時間を欲した。藍染もその時間は当然必要とするだろうと考えていたので、さらりと許可する。
──藍染達と話していた岩から少し離れた砂の上。
話し合う為に少し移動したグリムジョー達は、藍染達と互いに位置は見えるが声は聞こえない程の距離を取って、話を始める。
「──で?邪魔しちゃダメかと思って口出ししなかったけど、説明してくれるのよね?グリムジョー。あの死神の仲間になろうとしてる理由」
「それは私も気になる処だな」
「あァ、勿論だ」
真っ先に口を開いたのはチルッチ。グリムジョーが交渉していた時は、全員口を出さず黙って見守っていたが、内心では疑問を感じていた。
──何故、死神の仲間になろうとしているのか。
その疑問をストレートに聞いたチルッチに同調したシャウロン。残るイールフォルト達もグリムジョーに視線を向けたところで、グリムジョーはゆっくりと話を始めた。
「奴の仲間になる理由としちゃァ、メリットがあると判断したからだ!」
そうして切り出したグリムジョーは、主な二つのメリットを一つずつ羅列していった。
一つ、シャウロン達が退化の心配がない破面の成体に確実に進化出来るならば、するに越した事はない。グリムジョーには、他者を成体に進化させる術はない。それなら、尚更だ。
二つ、王になるにしても、奴が破面で軍や拠点を築き上げた後の方が楽に強力な戦力も拠点も手に入る。グリムジョーだけでそれらをするなら、多大な時間がかかる為こちらの方が良い。
以上が、グリムジョーの考えていた利点だ。
「……フム、成る程な。我々としても更なる力を確実に手に入れられるなら、それは大きなメリットだ」
それを聞いて真っ先に納得の意を示したのは、シャウロンだ。元々、冷静沈着で物事を考える事に長けているシャウロンは、すぐにメリットの大きさに気付いたのだ。
「それはもう分かったんだけど、あんたまさか王になるのを諦めた訳じゃないでしょうね?」
「もしそうなら、俺達は断固反対するぞ」
「──どうなんだ?グリムジョー」
今のグリムジョーの説明で、利点の大きさは全員が理解した。しかし、藍染は仲間と言っているが、藍染がリーダーである以上形式上は部下という形になる。
それを誇り高いグリムジョーが受け入れているという事が、チルッチ達にはもしかしたら──と思わせてしまい、エドラドやイールフォルトもその真意を問い質す。
「んな訳ねェだろ…!利用するだけだ」
当然、グリムジョーは心底から藍染の部下になるつもりなどない為、それはないと即答してから話を続ける。
「藍染も俺等の事なんざ、駒を集める程度にしか思ってねェだろ……。藍染が俺等を利用し、俺等も藍染を利用する…!それだけだ…!!」
「──ふむ、そういう事なら分かった」
イールフォルトがグリムジョーの言葉に納得すると、全員がそれで良いとばかりに頷く。これで、結論は出た。
そうしてグリムジョー達は、藍染達の居る方へ戻っていくのだった。
「それで?……話は纏った──と、見ていいかな?」
戻って来たグリムジョー達を見て、早速解答を聞こうと、話し掛ける藍染。そんな藍染の目を真っ直ぐ見返したグリムジョーが、代表して口を開く。
「あァ、アンタの話を受ける事にした」
「そうか…!それなら何よりだ。──これからよろしく、グリムジョー」
「……あァ」
こうして、藍染とグリムジョー。互いに相手を仲間とすら思っていない、利用し合うだけの関係が成立した。
藍染はよろしくと言いながら、握手をしようと手を出しもしない。そしてグリムジョーも、もし握手を要求されたとしても受ける気はない。
藍染は、切り捨てても痛くも痒くもない強い力を持つ手駒を。
グリムジョーは、仲間の強化と拠点構築、強力な同胞の確保。
互いに望む物を互いに見出したが故に一致した利害の下、ここに破面軍の第一歩が始まった。
アンケートは、後二日で終わろうと思います。
感想等、ありがとうございます!これからも頑張ります!
ネリエルをグリムジョーのヒロインに加えるかどうか、迷っています。なので、こうして幾つかルートをアンケートにさせて頂きました。
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グリムジョーのヒロインで良いよ!
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ネリエルは一護じゃないとダメ!