宇宙嚮導駆逐艦ハレカゼ   作:鉄玉

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晴風メンバーで出されてないのはもう数えるくらいになって来たかな?


いつか見た世界

困惑。それがヤマトからその事を聞いた、最初感想だった。ガミラスは地球よりも遥かに強大で、高い技術力を持つ。そんなガミラスが、果たしてそんな事をするのだろうか。

 

「次元断層で得たガミラスの捕虜、メルダ・ディッツ少尉は、地球側の先制攻撃により戦争は始まったと主張しています」

 

聞いた時は困惑したが、今となっては貧乏籤を引いたと言う思いが強い。最初は艦長のみに話すつもりだった。だが捕虜のこの主張はヤマトでは公然と秘密となっている。思わず艦長にそう漏らしたのが運の尽きだった。ハレカゼ乗員だけが知らないと言うのも不公平だ、と言う主張の元艦橋から艦内放送を使ってこの主張をハレカゼ全乗組員に伝える事になってしまった。その結果がこれだ。

 

「地球が先制攻撃したなんであり得ない! ガミラスの悪質なプロパガンダに決まってる!!」

「そうだよ。まさか副長は信じたわけじゃないよね?」

 

一番最初に文句を言ってきたのは、操舵手の交代要員である山下准宙尉と内田准宙尉だった。

 

「私はただヤマトから伝えられた情報を、皆と共有しただけだ」

「けど今まで艦内放送を使ってまで情報共有をした事はなかったぞな」

 

反論したのは、気象観測室の勝田聡子(かつたさとこ)三尉だ。

 

「今回は艦長が全員に知ってもらうべきだと言ったからな。それで艦内放送を使ったんだ」

 

なぜ今回に限ってそんな事を言ったのかは分からないが、余計な事を思いついてくれた。そう思わずにはいられない。だが同時に、公開して良かったとも思う。誰にも話さないでいるのと、全員でガミラスの嘘に対する不平を言うのとでは、圧倒的に後者の方が気持ち的に楽だ。

 

「艦長はどうしてそんなこと言ったのかな?」

「仲間に対して隠し事をしたくなかったんだろうな」

「あの秘密主義者の艦長が、そんな事考えますかね」

 

山下准宙尉の言葉は意外だった。あの人は聞けば大抵の事は答えてくれる。秘密と言えるような事は無いような気がするが……。

 

「あの人は聞けば大抵の事は答えてくれる。なんせ艦(ふね)の仲間は家族だなんて言うような人だからな」

「そんな事ないぞな。私が前に司令官室の中のことを聞いたら、すごく怖い顔して知らない方がいいって言ったぞな」

「司令官室か。そう言えば私もあの部屋がどうなっているか知らないな」

 

おおかた倉庫になっているとか、そんなところだろう。気が向いたら中を覗いてみよう。

 

「けど艦長っていいですよね」

「いいって何がだ」

「だって二十三歳で二佐ですよ。出世街道まっしぐらじゃないですか」

 

内田准宙尉が羨ましがる気持ちはわかる。私が数年後、艦長と同じような立場になれるかと言うと、おそらく無理だろう。昇進が早い自覚はあるが、それは運が良かったからだ。私の実力ではない。

 

「艦長が男だったらなぁ。玉の輿を狙ったのに」

「自分が艦長みたいになりたいんじゃないのか?」

「だってあの調子だと、いずれ宇宙軍のトップに立つじゃないですか。艦長が男だったら何がなんでもお近づきになりたいですよ」

「滅亡しかけの地球で、一体将来の何に期待をすると言うんだ」

 

気持ちがわからないでも無いが、宇宙軍も地球も無くなっていては意味が無い。

 

「……副長、今それを言うのは空気が読めてないぞな」

 

一気に暗くなった空気に、自身の失言を悟った。

 

「す、すまない」

 

こう言う話は、現実から目を背けるのに最適だ。地球を救う為に、長く危険な旅に出ている。その現実を忘れられる時間を台無しにしてしまった。

 

「そ、それはそれとしてまゆちゃんの野望は失敗すると思うよ」

「えー、どうして?」

「だって岬艦長の世代って、極東管区行政長官の藤堂長官の娘さんと、後軍務局長の娘さんがいる世代だよ。お嫁さんに相応しい人が二人もいるよ」

「そんなことよく知ってるな。山下准宙尉」

 

どちらも子供が軍に入っていると言う噂は聞いた事がある。だかそれが娘だと言うことも、艦長と同世代だと言うことも初耳だ。

 

「士官学校の先生が言ってたんですよ。火星沖海戦で活躍した岬艦長、当時はキリシマの航海長と同世代には大物の娘が二人もいたって」

「とんでもない世代もあったものだ。しかしそれなら二人とも、ヤマト計画あたりに組み込まれそうなものなのにそんな噂は聞かないな」

 

ヤマト計画には、有力者の子息が紛れ込んでいると言うのは有名な話だ。例えばヤマトの南部砲雷長はは南部重工の令息だし、ハレカゼの万里小路准宙尉は万里小路重工の令嬢だ。

 

「ノブレスオブリージュって奴なんじゃ無いですか? 高位の人間が、下々の人より先に逃げるなんて許されないみたいな」

「中世見たいぞな」

「そんな考えの奴がそうそういるわけないだろ。多分軍人として人々をを置いて地球を脱出できないとか考えたんじゃ無いか。ヤマト計画はイズモ計画のメンバーを流用しているのだしな」

 

なんと言うのは人々を守る為にある。軍に入る動機は復讐心だったり、色々違うかもしれないが、軍人になるに際してそれは必ず叩き込まれる考え方だ。まともな軍人なら、地球に守るべき人々を置いて脱出する事に耐えられない。

 

「……そう言えばクマノ計画って、結局なんだったぞな?」

「なんだったというと?」

「イズモ計画は地球人の男女を乗せた艦(ふね)で、地球人が活動できる惑星を見つける事ぞな。だからヤマトには男女が揃ってるぞな」

 

どちらか男女片方だけでは、人は子をなす事ができない。イズモ計画の人員を流用した、ヤマト計画では男女が揃っている。だがハレカゼは違う。言われてみれば、これは妙な話だ。イズモ計画のサブプランであるクマノ計画が、なぜ女だけで構成されているのだろうか。

 

「副長は何か知ってますか?」

「私も皆と同様、突然声をかけられ訳のわからないままに参加したからな。クマノ計画についてはさっぱりだ」

「クマノ計画に関わっていたのは誰ぞな?」

 

計画に関わっていない私には確かな事は言えない。だがこれまでの航海で、艦長と付き合いの深い人間がわかって来た。多分それが、クマノの主要メンバーだ。

 

「艦長は当然として後は納沙二尉、知床二尉、それと柳原一尉だな」

「航海長も参加してたの? そんなそぶり見せた事ないのに」

「おそらくだがな。赤道祭の時、あの四人はこっそり抜け出していた。何か特別な縁がなければ、変な事だとは思わないか?」

 

赤道祭終了間際、私は艦橋に顔を出している。艦長に全ての業務を押し付けて、少し心が痛んでいた。せめてヘリオポーズを超える前に、最後の交信をする時間くらいは取らせてあげよう。そう思ったからだ。

だが予想に反して、艦長は艦橋にいなかった。いたのは納沙二尉と知床二尉の二人だ。

 

「じゃあ今度航海長に聞いてみるぞな」

「答えてくれるかなぁ」

「すでに破棄された計画だ。秘密にすることは無いはずだ」

 

自分ではそう言ったものの、正直自信は無い。というのも、ハレカゼニ乗ってから一度調べまた事があるからだ私が閲覧できるデータには、ヤマト計画とイズモ計画両方のデータがある。もっともイズモ計画に関しては破棄されている為、ヤマトの実際の装備とイズモ計画艦の装備とでは大きく異なる。だが何故か、クマノ計画のデータに関しては見つける事ができなかった。私にアクセス権限が無いのか、それとも最初からハレカゼにそのデータが無いのか。

 

「少なくとも艦長に聞くよりは、航海長に聞く方が見込みがありそうぞな」

「艦長も聞けば答えてかれるとは思うが……」

「秘密主義者の艦長は答えないと思いますよ。前に恋愛事情聞いた時ははぐらかされましたし

「山下准宙尉はよくもまあそんな怖いもの知らずに色々と聞けるな」

 

開かずの間の司令室の件といい、ゴシップが好きなのかもしれないな。

 

「だって自分が何も知らない人に命を預けるのって怖いじゃ無いですか」

「答えをもらっていないのなら、質問した意味が無いと思うぞな」

「どんな質問には答えたく無いのか。それによって、相手の人となりも少しはわかるってものだよ。今回の場合だと、今の関係だと艦長は恋愛事情を話してくれないって事が分かった。それだけでも収穫だよ」

 

恋愛事情は、人によってはトップシークレットに当たるだろう。少なくとも岬艦長にとって、恋愛事情は人に話したく無い事の一つだと分かった事が、岬艦長の人となりを知る一歩となる。山下准宙尉はそう考えているようだ。

 

「副長はどうですか?」

「わ、私か? 私は別に、そんなのはなかったな。士官学校時代は勉強で忙しかったし、軌道惑星艦隊司令部に勤めていた頃は、出会いなんてないからな」

 

軌道惑星艦隊司令部は、名前だけが残った部署だ。監視システムに対してアクセス権限はあるが、その任務のほとんどは極東管区司令部が代行している。所属しているのは老人ばかり。出会いなんてあるわけが無い。

 

「残念。ハレカゼの乗組員はそんな人ばっかりですね」

「山下准宙尉はそんなことばかり話しているのか?」

「ばっかりじゃ無いですよ。今の所、航海科と艦橋用員だけです」

 

意外と多いとみるべきか、それとも少ないとみるべきか。彼女の勤務場所を鑑みるに、ほとんど全員と言っていいのでは無いだろうか。だとしたら多いような気がする。ふと壁の時計に目を向けると、もう後三十分ほどで交代の時間だった。

 

「そろそろ時間だな」

「まだ交代には時間があるぞな」

「シャワーを浴びてから艦橋に行くつもりだ」

 

浴室に向かう最中、ふと司令官室の事が気になった。たいした時間は掛からないから、少し寄り道して行く事にした。

 

「しかし使われてないのに、わざわざロックまでかけるなんて一体どうして何だろうな」

 

私の権限で入れない部屋など、艦長室くらいのもの。そう思っていた。だが認証番号を打ち込んで返ってきたのは、アクセス権限無しという予想外の表示だった。

 

「一体どういう事だ?」

 

ハレカゼの副長である私が入れない部屋。

ふと、さっきの秘密主義者という言葉が頭に浮かんだ。果たして岬艦長は、私がこの部屋のことを尋ねた時、答えをくれるのだろうか。




勝田聡子
2178年10月1日 誕生
2194年4月1日 士官学校入学
2198年3月31日 士官学校卒業。三等宙尉。空間防衛総隊司令部、太陽系気象観測班
2199年2月11日 宇宙嚮導駆逐艦ハレカゼ気象観測室室長
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