ガミラス側の視点を書く事を考えなかったわけじゃないですけど、多分話の収拾がつかないと思うので書くことは無いです。
「このワープでビーメラですね」
「そうだな。これでヤマトも補給ができる。あの状態のヤマトで、敵の威力偵察を受けるのは不安しかなかったからな。ようやく一安心だ」
ヤマトとハレカゼは、連日敵の威力偵察に晒されていた。敵の威力偵察は、せいぜいか射程圏ギリギリから撃ってくる程度のものだ。そんな位置からでは、前進するヤマトとハレカゼには当たるはずがない。だがその度に戦闘配置についていては、乗組員達には多大なストレスとなる。ましてやヤマトでは現在、そのストレスが看過できない事情があった。
「ヤマトでは
「ハレカゼも余裕があるわけでは無いからな」
そもそもハレカゼの物資は、数十人の乗組員を賄う分しかない。ヤマトに分けたところで、副菜が一つ増えるかどうかな量にしかならないだろう。
「リンちゃん、このワープには中性子星の影響がでそうだけど、どれくらいの影響がありそう?」
「サトちゃんに検証を頼んでたんだけど……」
『こちら気象観測室。かなり影響がでてるぞな。航海長にワープの補正計算のデータを送るぞな』
「ココちゃん、補正計算のデータはヤマトにも送っておいて」
艦長の指示は不可思議なものだった。ハレカゼよりも設備のいいヤマトなら、補正データくらいすぐに用意できるというのにどうしたのだろうか。
「沖田艦長が不在だと、多分そこまで気が回らないと思うんだ。だからだよ」
苦笑いを浮かべて艦長は言った。
「顔に出てるよ、しろちゃん」
「気を付けます」
どうやら艦長には私の疑問などお見通しだったようだ。それとも私はそんなにも分かりやすいのだろうか。
「後方より敵艦
「またいつもの威力偵察か。ご苦労な事だ」
飽きもせずに威力偵察か。どうせまた射程圏ギリギリから撃つだけの、おざなりなものだろう。そう思っていた。
「ヤマト左舷に被弾!」
「なんだと!?」
威力偵察じゃないのか!?
「ヤマト緊急ワープに入ります」
「リンちゃん、ヤマトに続いてワープ!」
ワープアウトしたのは、中性子星のカレル163だった。重力勾配の影響でズレが生じるのは予想通りだが、それ以上に大きな問題があった。
「状況報告!」
「六時の方向に中性子星があります!」
「ヤマトの所在は!?」
「周囲にヤマトらしき艦影ありません!」
最悪だ。中性子星の影響は予想できたが、緊急ワープになってしまったせいでヤマトとはぐれてしまった。
「レーダーに感あり!」
「ヤマトか?」
「艦首前方敵艦隊。こ、後方にも反応多数! 囲まれています!!」
まさかこれは、誘い込まれたとでもいうのか?
「艦長私達は……」
「分かってる」
私に分かる事が、艦長に分からないはずかない。おそらくヤマトも同じような状況に陥っているのだろう。
「ぜ、全方位囲まれちゃったよ」
「撃つのは好きだけど、撃たれるのはヤダー!」
「連続でワープができれば逃げられるかしれませんが……」
「そんな事をしては、機関が焼き切れてしまう。今後の航海自体が危うくなるぞ」
不安定なハレカゼの波動エンジンでは、連続ワープなど不可能に近い。万事休す。打つ手が無い状態だ。いや、一つだけあるか。
「降伏すれば、命は助かるかもしれないな」
ヤマトで虜囚となったメルダ・ディッツは、ガミラス人以外も二等ガミラス人として用いる事があると言っていたらしい。情けない話だが、命は助かるのでは無いだろうか。死んだ方がマシ、という目に遭わされない保証は無いが。
「ハレカゼはヤマトと違う。私達が降伏しても、ヤマトが残れば地球は救われる」
私の意見に真っ先に反対したのは、意外な人物だった。
「だ、ダメだよそんなこと!」
「知床二尉。ダメとは言うが、それ以外に生き残る手はない」
「そんな事したら、地球は……」
ヤマトに賭けるしかない。進言すべく振り向くと、艦長は席から立ち上がり制帽を被り直していた。
「総員傾注!」
今までにない、覇気のある声だった。自然と背筋が伸び、艦橋の空気が引き締まった。
「本艦はこれより最大戦速で前方の敵艦隊に突入、これを突破する!」
「で、ですが艦長。敵は前後合わせて百隻を超えます。更に奥には敵の旗艦と思われる弩級戦艦もいるんですよ。ハレカゼで突破なんて不可能です」
「不可能を可能にする為には、死中に活を見出さなければならない。リンちゃん、最大戦速!」
艦長は本気だ。本気でこの方包囲網を突破しようとしている。
「マロンちゃん、波動防壁を艦首に最大展開!」
波動防壁により、敵の攻撃はある程度緩和される。だがこの艦隊を相手にいつまで持つのか。
「メイちゃん第三砲塔は牽制でいいから、第一、第二主砲での射撃に集中して!」
「り、了解!」
第三砲塔は後ろを向いている。ハレカゼの持つ攻撃手段のうち、数少ない真後ろへの攻撃手段が第三砲塔だ。それは後方の敵を近づけない事に使うようだ。
「艦長、対艦ミサイルで後方の敵を牽制しましょう」
第三砲塔だけでは火力が圧倒的に足りていない。甲板と艦底部にある
「いや、それは前方の敵に使おう」
「ですがそれでは後方の敵を追い払えません」
「必要ないよ。ハレカゼは前方を、敵艦隊の中心を捕らえられればいい」
艦長には何か明確な目的があるようだ。だかそれがなんなのか、私には分からない。
「持てる火力を全て前方に集中する。魚雷撃ち方始め!」
「魚雷一番から八番、
立石二尉の指示で、主砲ばかりか魚雷まで撃ち始めた。ハレカゼの魚雷は各発射管に予備魚雷が二発ある。つまり合計二十四発が撃てる最大数だ今の一斉射で、三分の一を消費した。沈められた敵艦は八隻。魚雷の数だけ沈めているが、まだまだ敵は残っている。
「タマちゃん、対艦ミサイル撃ち方始め!」
対艦ミサイルも、それほど多くない。ハレカゼにあるミサイルのうち、殆どは対空ミサイルだ。対艦ミサイルは一斉射分しかない。それを後方からの圧力を減らすためではなく、前方への道を切り開く為に艦長は使った。
「艦長、今の攻撃で敵正面に穴が空きました。ですが奥から別の敵艦が、その穴を埋める為に移動しています」
「その穴からの脱出を目指す。敵艦に穴を埋めさせるな! 主砲及び魚雷一番から八番
ハレカゼの魚雷とミサイルによる攻撃は、敵の包囲網に小さな穴を開ける事に成功していた。しかしその穴も、別の敵艦が埋めようとしている。この好機を活かすのは困難なように見えた。
納沙さんがレーダーに集中している間、私は波動防壁含むハレカゼ各所の状態をチェックしていた。だからこそ、ハレカゼの終わりが誰よりも先に分かってしまった。
「……艦長、ここまでです。波動防壁が間も無く臨界点に達します。防壁が消失します」
タイムリミットまでは、まだ時間がある。しかし波動防壁の臨界点が、この数分の攻防で訪れてしまった。
「問題ないよ。このまま突っ込む」
「ですが艦長、前方には敵の弩級戦艦が居るんですよ! あんなのと真正面から戦っては、粉々にされてしまいます」
正面にいるのは、冥王星基地の旗艦だった弩級戦艦と同型の艦だ。ハレカゼよりも遥かに大きく、武装も強力だ。
「リンちゃん、上げ舵三十」
艦長が命令した直後、目の前の戦艦からビームが発射され、その光線はハレカゼの真下を通過したようだった。
「か、回避したのか?」
思わず呟いた直後、ハレカゼは激しい衝撃に襲われた。コントロールパネルを除くと、後方から撃たれたビームが、右舷後方に被弾した事が示されていた。
「右舷第八倉庫付近に被弾。隔壁を閉鎖します」
幸いそこは誰もいない区画だった。その事実に私はホッと息を吐いた。
「リンちゃん、次は取り舵
艦長の指示が実行された直後、またしても敵の戦艦からビームが発射された。だがそれもまた、ハレカゼに当たる事はなく上方を通過していった。
「次のビームを回避したら魚雷を撃ち込むよ。準備して」
「回避したらって、そう何度も避けられるわけありません!」
二度もうまく避けられたからといって、三度目も上手くいくとは思えない。
「進路そのまま」
「艦長!? そんなの当ててくれって言っているようなものですよ!」
弩級戦艦からビームが放たれる直前、ハレカゼは再び直撃弾を受けた。今度は艦底部、魚雷発射管の真下付近だ。大きさの割に人数が少ないから、今の所は人的被害は出ていない。だがそれもいつまで続くのか。
「敵艦発砲!」
その報告を聞いた瞬間、思わず強く目を閉じた。この攻撃は回避できない。できるはずが無い。そう思ったからだ。だがいつまで経っても、予想していた衝撃は襲ってこなかった。
「ど、どうなったんだ?」
「敵の攻撃は、ハレカゼの上下を挟み込むような形で通り過ぎたんですよ」
納沙さんが教えてくれたが、それが本当だとしたら奇跡としか言いようが無い。
「魚雷発射管開け!」
「魚雷一番から八番、
「魚雷発射!」
発射命令は全魚雷の一斉射だ。だが実際に射出されたのはその半分程度だった。
「魚雷発射管一番、三番、五番と六番が発射されてない。なんで!?」
西崎三尉の悲痛な叫びに、私はコントロールパネルに指を走らせた。
「さっきの攻撃で電子機器に不具合、発射指示が通っていない。発射管が開いていないんだ!」
高度に自動化した弊害がでた。魚雷の装填と発射は、魚雷発射管管理室で一括管理されている。発射管の開閉は手動ではなく電動だ。おそらくその回路がさっきの攻撃で壊れたのだろう。
「魚雷が敵艦に迎撃されています。残りの魚雷は
すでに半分が迎撃されている。この攻撃が成功しなければ、敵戦艦にダメージを与える手段は主砲しかない。だかハレカゼの主砲で、敵弩級戦艦を沈められる確証は無い。
「魚雷命中、敵艦速力低下しています!」
「このまま敵艦の脇を抜けるよ。機関全開!」
残り二発の魚雷は敵艦に命中した。被弾した敵艦は、ハレカゼから逃れるような進路を取った。おかげで敵弩級戦艦からの追撃はなかった。
「敵艦隊、反転して追撃してきます!」
敵戦艦は離脱するような進路を取ったが、その他は違った。更に苛烈な追撃が、ハレカゼを襲った。
「構わず逃げるよ!」
艦長は相手にする事なく、前進を指示した。
しばらくすると、敵艦は諦めたのかどこかへとワープをして、現宙域を立ち去って行った。
2181年2月5日日 誕生
2197年4月1日 国連宇宙軍入隊。宙士。巡洋艦ムラクモ第三砲塔砲術士
2198年2月20日 第二次火星沖海戦に参加。宙士長。
2198年12月24日 技術開発部兵器実験室。宙曹。
2199年2月11日 宇宙嚮導駆逐艦ハレカゼ第三砲塔運用員