「……まさか幻想の力を持っている生徒がいるとは思いませんでした。」
能力で時間を止めているのに殺せんせーはお構いなく動いている。止まった世界で動くことができるのは私を除いて今までいなかったのに。そして能力に関する知識も持ち合わせていそうな雰囲気だ。
「私の能力に関して何か心当たりがあるのですか?今まで私みたいな能力を知っている人が居なっかたんです。何か教えてください!」
嬉しい。どうやら100億円の賞金計画が失敗したことなんか些細なことに思えるほど私は能力について知りたかったようだ。殺せんせーが慎重に言葉を選ぶように説明する。
「……十六夜さんが持っている能力は『幻想の力』でしょう。……この地球には、存在しないとされる魔女や吸血鬼といった妖怪が存在します。他にも妖精や神、そしてあなたのような特殊な能力を持った人間もいます。……その能力は生まれつきですか?」
「えーっと、この能力は4歳頃に目覚めた能力で、大体数十秒、最大1分ほど時間を止めれます。」
能力を説明しようとした事が無いから何から説明したらいいか分からない。そんな慌ててる私を見て殺せんせーは提案してきた。
「にゅやッ!それではもう直ぐ時間が切れます。続きは教員室で話しましょう。」
その直後、能力が解除される。解除の瞬間に殺せんせーは発動直前の体勢に見事に戻っていた。変なところで器用な触手だ。
「残念ながら先生の暗殺は失敗でしたね。どこが駄目だったのか教員室で採点しましょう。」
「は、はい。」
何事もなかったかのように舐めている顔で対応している。私から始めたことだが、急に停止させる直前の切り返しなんてできず、少しぎこちない返事になった。教員室に向かおうとするとさっきまで殺せんせーと話していた茅野が話しかけてきた。
「あっという間だったけど、さっき何してたの?」
「一応、不意打ちかしら。殺せんせーには効かなかったけど。」
「とりあえずの不意打ちが防がれるのはみんなが通る道だよね。触手があったらスピードのほかにも何か能力があるかもね。」
確かに殺せんせーには謎が多い。今までの謎に加えて新たに能力と妖怪の知識があることも判明したし、殺気を感じる器官でもあるかもしれない。確か渚君は情報をまとめていたっけ。
「あ、殺せんせーに呼ばれているからまた後でね。」
今は殺せんせーに能力の秘密を聞けるチャンスなんだ。申し訳ないがそちらを優先させてもらう。なぜ殺せんせーは能力の知識があるのだろうか?私以外に存在する能力者から聞いたのだろうか。いや、殺せんせーの身体能力的に自身も能力を持っているのだろう。そう考えながら教員室に入った。
―――――
「失礼します。」
教員室に初めて来たが……部屋いっぱいに参考書とドリル、そして古くて分厚い学術書があった。あの管理シールが貼られているのは本校舎の図書館の本だが、国家機密が正しい手続きで本を借りれるのだろうか?いや、よく見たらあの本は図書館持ち出し禁止の本じゃないか。やっぱ勝手に取っているのか。
「おお来ましたか。まず十六夜さんが気になっている同族の説明をしましょう。先ほど話した通り十六夜さんが持っている能力は『幻想の力』です。実はこの世界には魔法を研究する魔女や人の血を飲む吸血鬼といった科学的に存在を否定された空想上の存在が実際にいるのです。」
「……殺せんせーもそのうちの一人なのですか?」
「いえ、私は少々別口の存在です。私に幻想の力はありません。」
本当かな?殺せんせーは正体に関しては全く教えてくれないしそれっぽく誤魔化しているだけのような気がする。そんな裏の世界が複数あるなんて思えなし、そこ出身だから詳しいわけじゃないのか?そう考えながらある矛盾点に気づく。
「いや、それなら私の能力が効かなかったことに説明つかないじゃないですか?」
「うーん。そこは非常に難しい問題ですね。……実は私が圧倒的なスピードを出せる秘訣は『反物質』が関係しています。近年の論文で反物質は重力や時間の影響を受けないという仮説が提唱されていましたが、時間停止を受けなかったことからその仮説は正しかったのでしょう。」
殺せんせーの正体は反物質をつかうタコだったのか……反物質の単語はフィクションで超エネルギーとして聞いたことがあるが、そんな高度な論文なんか読んだことない。理科が得意な奥田さんなら聞いたことあるかな?
「私の能力が効かない物質があるのは知りませんでした。他にも効かない存在ってありますか?」
「強大な力を持った神のような格上の相手には効かないでしょう。また、知識をため込む魔女には対処法を知っている可能性もあります。」
意外といるな。……私が時間を停止しても神様には効いていない場合、その偉大な神様は時間を止めた元凶を探しに来るんじゃないか?そう考えると怖くなってきた。
「あの、影響範囲やデメリットってどの程度あるんでしょうか?」
「……すみませんが生まれつき能力を持っている人間の体質や、停止した世界の法則に詳しくありません。ですので今度私のほうで調べておきます。調べ終わったら能力に関する授業を行いますので、それまでは能力の仕様を控えていただくと助かります。」
どうやら私の担任は特殊な能力を調べる環境があるらしい。逆に何を知らないんだろう?
「わかりました。特別授業よろしくお願いします。相談ありがとうございました。」
「教え導くことが教師の務めです。さて、それでは十六夜さんの暗殺の採点を行います。」
帰ろうとした直後、完全に帰る流れだったが最後に呼び止められた。暗殺の採点って……
「あ、茅野への言い訳じゃなかったんですか!?」
「当たり前ですよ!なぜ失敗したのか生徒に教えるのが暗殺教室なんですから!」
まだ私は帰れないらしい。