「さて十六夜さん、今回の暗殺が失敗した原因は何でしょう?」
能力の説明が終わった後、帰るつもりだった私を引き留めて居残りをさせられている。
「えっと……能力が効かないことを想定していなかったことですか?」
「その通りです。能力に絶対的な自信があっても何事にも例外というものがあります。能力が効かなかった場合、第二、第三の攻撃のシミュレートを行っていれば私の触手一本程度は打ち取れた可能性がありました。事実、能力が発動された瞬間私は能力の分析を行っており、十六夜さんの反応が遅れていました。自身の才能にかまけてそれ以上の努力を怠ってはせっかくの刃を腐らせてしまいます。先生からのアドバイスです。」
才能に奢ってはいけないか……確かにE組に落ちた理由も授業だけでテストで良い点とれていたからって勉強しなくなったのが原因だし……私の悪い癖だな。
「おや、その顔は心当たりがありそうですね。これを機に反省しこれから勉強していきましょう。」
「はい、わかりました。」
「それでは最後に……懐中時計の手入れをしました。よく手入れされていますのでオーバーホールして油を差しておきました。今の時代スマホがあれば時間が確認できるのになかなかお洒落ですねぇ。」
暗殺失敗したら手入れをされるって聞くけどこのことだったのか。寺坂君らはシャンプーされたと聞いたが私は時計が選ばれたようだ。
「ありがとうごさいます。能力を使っている時間は電化製品が動かないためゼンマイ式の懐中時計を持っているんです。」
「おや、そうだったんですね。自慢じゃないですが先生の体内時計は正確で0.01秒単位で測定できます。能力の効果時間の計測は私が数えましょう。」
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手入れが終わったら殺せんせーは私を帰した。家に帰る前に渚君と奥田さんがいたら反物質の話だけでもしたいと考えながら教室に戻ると茅野が話しかけてきた。
「おかえり。単純な不意打ちにしては手入れがやけに長かったけど何話していたの?」
「あーね……実は私まだ誰にも言えない秘密があるんだよね。けど殺せんせーがそれについて詳しかったから相談していたの。」
「そうなんだ。無理には聞かないけど、話せたら私も相談に乗るよ。」
「ありがとう。殺せんせーのインパクトにも負けない秘密だからビックリするよ。」
能力について家族以外に話したことは無かったが、いずれ共有出来たらいいな。不気味に思われないか少し怖いが。
「あ、渚君と奥田さんってまだいる?」
「二人ともまだいるよ。丁度向こうで二人で話しているよ。」
「ありがとう。ちょっと行って来る。」
二人は殺せんせーを殺す毒を作るための話し合いをしている。
「二人ともちょっといい?殺せんせーから音速を出せる秘密を教えてもらったの。」
「十六夜さん。殺せんせー自分の事全く教えてくれないのによく聞き出せたね。」
「私の秘密を教えたから向こうも教えてくれた感じだったわ。計画したことでは無かったけど。殺せんせーのスピードは『反物質』のお陰で出せているらしいの。奥田さん何か知らない?」
「反物質ですか……確かにここ数年で反物質の研究が飛躍的に進んだと言われてます。けど、最近はあまり聞かないですね。」
「そうだったんだ。じゃあ殺せんせーって科学的に生み出されたんじゃないかな?殺せんせーを造っている時には論文を書いていなかったとか。」
うーん。さっき吸血鬼や魔女が居るって聞いたばっかだからその線で考えていたが、確かにそっちだと辻褄が合うな。……そう考えると科学兵器を使った暗殺は各国政府が諦めたが、幻想の存在はどう思っているのだろうか?
「話は戻るんですけど、殺せんせーに効く毒って何かありますかね?」
「殺せんせーはまだ謎が多いから種類を増やして攻めてみたらどうかな。どれか一つは当たるんじゃない?」
「毒殺するつもりなのね。危険だから気を付けてね。」
殺せんせーに毒か……化学的な毒は奥田さんが試すから、生物由来の毒でも試そうかしら。毒草や毒キノコでも調べてみようかな。そう考えながら私は家に帰った。
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「今日から体育の授業を担当する烏間だ。奴を殺すまでの1年間、暗殺の訓練を行う。」
今日から烏間先生による体育の授業が始まる。第一声は烏間先生の方が普通だな。なにせ殺せんせーは準備体操で視覚分身をさせようとしたのだから。私以外じゃできる人間はいないぞ。……まあ烏間先生の方も暗殺の訓練の宣言は普通ではないか。
正しいナイフの持ち方や振り方を聞き、そして振ってみるが……初めてだからか楽しい。教えてもらった基本の姿勢を崩さないよう何度も振る。振っていたら前原君が質問していた。
「こんな訓練意味あるんスか?しかもターゲットが居る前でさ。」
「勉強も暗殺も同じことだ。基礎は身に付けるほど役に立つ。」
そう言いながら烏間先生は二人相手からナイフを捌く攻防を見せてくれた。あの技術を見ると能力を初めて使った暗殺がいかに勿体ない攻撃だったかが良くわかる。そうしているうちに授業が終わった。
「十六夜さん、ナイフを振ってるとこカッコよかったわよ。」
「ありがとう、狭間さん。まだ初回だけど自分でもナイフが得意なんじゃないかと思うわ。」
「いいわねー、私なんて振ってる途中にナイフすっ飛んじゃったたわ。」
「投げナイフの完成ね。さっき烏間先生もやってたし私もやってみようかしら。」
狭間さんは私の前の席の人だ。普段本を読んでいるし体を動かすことに慣れてないのかもしれない。
「殺せんせーにダメージを与えたぞ!」
急いで振り返るとカルマ君が殺せんせーの触手を破壊していた。
「あっれー、せんせーひょっとしてチョロイひと?」
すっごい煽ってる。そこそこ距離があるのにここまで聞こえてくるって言われてる本人からしたら溜まったものではないだろうに。大声で言うのも煽る秘訣なんだろう。
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今は小テスト中だが、ブニョンブニョン鳴らしてる人がいる。壁をブニョブニョして何をしたいんだ?……みんなから壁パン説が出てきたが、マッハのスピードが出せるんだからもっと強いパンチは出来るはずだ。校舎の耐久性を考えてパンチしてるのか?変なとこで理性的だ。あ、先生が怒られた。
「よぉカルマァ、あのバケモン怒らせても知らねーぞー。」
「殺されかけたら怒るのは当たり前じゃん寺坂。しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ。」
「ちびってねーよ!!ケンカ売ってんのか!!」
「こらそこ!テスト中に大きな音立てない!」
ツッコみ待ちか?あ、テストが終わったカルマ君が殺せんせーにちょっかいをかけて遊んでいる。……いや、遊んでいるというよりかは『先生』として試している?見極めを誤ると真っ黒になって怒るのに対した度胸だ。
「じゃあね『先生』〜。明日も遊ぼうね!」
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「ケッ、何カッコ付けてんだあいつ!」
放課後私は寺坂君らとカルマ君の話をしていた。初日で二度も攻撃を成功させたのはカッコよかったが、男子からはそう映るのか。
「文句言うならダメージを与えてから言いなさいよ、今度はカルマ君相手にお漏らしするわよ。」
「シテねーよ!何度言ったら分かんだてめーらは!!」
「このペースで行ったらいいけど、そんな甘く無いわよね。多分明日からは一回も攻撃出来ないと思うわ。」
「ありゃ、そうなのか。俺はもう何度か出来ると思うんだか。」
「俺ももう少し粘ると思うぜ。アイツならもう何手か考えててもおかしくねえ。」
「甘いわ二人とも。私もとっておきの暗殺を試したけどダメだったわ。まだ出してない手の一つや二つある筈よ。」
何せ私の能力が効かなかったのだ。どんな隠し札、犠牲、秘密の能力があっても殺せんせーならその上を行きそうな気配がある。見た目は弱いタコだが。
「確かにこのまま行ったら授業どころじゃなくなるからね。先生として対策しないとただの迷惑だわ。席も近いしね。」
「とにかくアイツが恥かくような手入れがされれば何でもいい。」
「カルマ君と寺坂君って相性悪そうよね。」
特に寺坂君がカルマ君相手に心を開く未来が見えない。逆もまた然りだ。カルマ君は明日からどんな暗殺をするのだろうか。烏間先生のナイフ術よりも殺せんせーの方が上なのに通用するのかな?……そういえば今日と初日で見せた烏間先生の実力カルマ君見ていないから、殺せんせーの事過小評価していそうだ。