オバロ世界をマスターピースで冒険だ!   作:Revak

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第2話

 

「この村を助けていただき、本当にありがとうございます……!」

 

 

 村を助けたという事で男──死柄木は村長の家に招かれていた。

 何ともみすぼらしい家だ。科学技術は殆ど無いと言っていいだろう──科学が成立するかは兎も角。

 現在も村長の妻らしき老年の女性が火打石で火を起こし鍋の水を温めている。

 少なくとも文明レベルは低い方──いや。

 

(この村だけ極端に低かったり、あるいは科学全否定の思想を持ってたから虐殺された──というのもあり得るか)

 

 まぁ、騎士達が銃を使ったりしてない時点でお察し程度だが。

 

 

「さて俺はお前たちを助けた訳で、当然対価を欲する訳だが」

 

「も、申し訳ございません。村に通貨は殆ど無く……銅貨と銀貨をかき集めてはいますが……」

 

(銅貨、銀貨ときたか)

 

 言葉通りに読み取るなら銅製の通貨と銀製の通貨なのだろう。まるで剣と魔法のファンタジーだ。

 いや、剣は正しいのだろう。魔法等のファンタジーは今のところ見ていないが。

 

 

「まぁ、金もあるが……今一番欲しているのは情報と、服なんだ。見ての通りボロ布しかなくてな」

 

 はは、と乾いた笑いを浮かべるも相手は緊張したままだ。自分にジョークの才は無いらしい。その気になれば無理やり笑わせられるが。

 というか今一番欲しいのは服だ。金よりも。

 服を買いに行く服が無い処ではない。このままでは下手な町にでも行こうものなら通報待ったなしである。

 

 そして情報は当然。ここが何処なのか、西暦何年なのか。地球なのか。知る必要がある。

 

「で、でしたら──」

 

 

(なんだ、それは)

 

 話を聞けば聞く程訳が分からないというのが今の心理だ。

 

(リ・エスティーゼ王国。バハルス帝国。スレイン法国。冒険者にモンスター?)

 

 トールキンの指輪物語か、あるいはラノベか。

 少なくともファンタジー世界に来てしまったらしい。

 さてどうするか。判断に迷う事態だ。

 

 既に逃亡していた騎士数名を確保し記憶奪うことで一般常識を得ることに成功したため正直これ以上村長の話を聞く必要性は無い。

 だが奪って得ただけの情報と実際に聞いてみることでは内容が食い違うかもしれないので聞いているが、聞けば聞く程どういうことなのか疑問が沸いてくる。

 

 仮に異世界だとして、何で自分がこの世界にいるのか、とか。なんでヒロアカのラスボス能力持ってるんだ、とか。

 そもそも、何で王国が帝国の騎士に扮した法国の偽装兵に村を襲わせているのか。

 

(帝国vs王国の図は既に出来ている。だが、そこで村を──帝国騎士の恰好をさせた者に襲撃させる理由は何だ? 将来的に帝国が王国を手にしたときに反乱の余地を残す為?

 あるいは法国が村人を虐殺する帝国を倒す、という形式を得る為?)

 

 やはり奪った情報と聞いた話だけではまだまだ不足する。

 それに科学技術も気になる。手術の概念があるのか、あったとしてそれは地球上の手術技術がこの世界でも通じるのか。

 帝国騎士を全員殺したのは今更だが間違いだった。数人は生かして実体実験に使うべきだった。

 それに聞いたのはここら辺に地形と情勢だけだ。一般常識を聞けていない。

 彼らにとって取るに足らない情報であっても自分にとっては足元をすくわれる情報かもしれないがこれ以上聞き出すのは流石に信頼関係に罅が入る。

 全員殺すならそれもありだと思ったが。今この段階で村人を殺すのは不利益が大きすぎる。まぁモンスターの概念があるならばモンスターが殺したように見せかけるのもありだが。

 

 それに、この世界の住人にも疑問を抱く。

 

 気になって口元を注視してみればどう見ても口の動きと耳に入る声に問題がある。

 どうやら相手の声は自動的に翻訳されて聞こえる様だ。

 自分にその手の能力を持っていたか疑問を抱いたが意識を集中してもそんな能力は持ってはいない。となればこの世界の住人がデフォルトで持ってる能力、あるいは世界の法則か何かなのだろう。

 もしかしたらその辺の猫とか犬とも話せるかもしれない。試す気は無いが。

 

 

 これからの方針で頭を悩ませていると、村長の家の扉がノックされる。

 

「村長、葬儀の準備が整いました」

 

「あぁ、そうか」

 

 申し訳ありません、と立ち上がり村長は葬儀をする為席を外すという。

 自分も着いて行っていいか、と聞けば不思議そうにしながらも許可を出してくれた。

 

「これほど早く葬儀をするのか」

「えぇ。丁寧に弔わなければ、アンデッドになってしまうので」

 

 アンデッドの概念あるんかい、と思わず突っ込みたくなる。

 アンデッド、という事は負のエネルギーや死者が墓から蘇るなどなのだろう。B級ホラーにありがちなゾンビパニックでは無さそうだ。

 

 

 

 葬儀場、というか墓に着き村人が祈りを捧げている。

 対象は四大神とかいう聞いたことの無い神だ。何処の誰なのやら。

 もしかしたら実在した、あるいは実在している神なのかもしれない。最悪神と戦う可能性もあるだろう。勝てるかは兎も角として。

 

 その中には、すすり泣く少女が二人。見覚えのある──というか最初に助けた少女だ。

 

 

(死者の蘇生か。死体さえあれば今の俺なら理論上可能かもしれんが……リスクが大き過ぎる)

 

 死者蘇生がどういう事に捉われているのかわからない以上すべき事ではない。

 死者に泣くという事は死者蘇生は不可能、あるいは非常に難しいという事なのだろう。

 地球ならばどうあがいても不可能だがここは異世界だ。レイズとかの蘇生呪文があっても可笑しくは無い。

 

 自分が死者を蘇らせるなら、やはり巻き戻しだろう。種としての進化さえ戻せるあの力ならば使いようでは死者すら戻せるだろう。

 それにAFOによる強化も入ってるのだから。

 科学技術が使えるなら脳無というのもありかもしれない。あれも一種の死者の蘇生だ。

 

 

 

 

 

「さて、どうするか」

 

 

 何度目になるかわからない言葉を漏らす。

 服は手に入った。死んだ村人の服だが、上半身裸よりよっぽどマシだ。

 靴は履こうかと思ったが、一旦やめている。当然理由は有り靴を履いているより履いていない方が強いから。

 靴の代わりに布を切って足ふまずを守る様にはしているが。

 現在村に居るのは現在本体の死柄木だ。分身の死柄木は森──トブの大森林とやらに潜入中である。

 

 これ以上村に居る理由は無い。

 情報は得たし地形情報も得た。ならばとっとと帰るか後は分身に丸投げでもすればいい。

 

 また、ここまで二倍による分身を使い続けた結果思わぬメリットとデメリットがわかった。

 二倍によるメリットは、分身は自分は分身なのだという自覚があるという所だ。

 これならば原作の様に増えすぎたことによる自我の喪失等は起こらないだろう。まぁAFOで自我も共有しているのだから、早々自分を殺す等という暴挙には出ないだろうが。

 それに仮に殺し合いにでもなったとしても自分が勝つ。出力上げたヘルフレイムや蒼炎等を放てばいい。

 分身は戦闘力が半分以下にまで落ちている。これは二倍の副作用では無く戦闘スタイルの問題だ。

 今の自分は超再生を持っている。だからそれを前提にして自傷覚悟で火力を底上げできるが分身は骨折程度で壊れてしまう。

 再生能力は依然あるが、それでもたかが骨折で消滅するのは大きな欠点と言わざる負えない。

 

 デメリットは、分身だとAFOによる強奪が不可能だという所。

 

 これならば、分身を放置した結果本体より強くなってた、等という事は無いのでその点は安心だが分身突撃からの強奪で本体還元等は出来ないというデメリットがある。

 相手の力が欲しくなった場合どうしても本体で向かう必要がある。

 

「……む」

 

 感知系の個性に何かが引っかかる。千里眼で相手を視認する。

 

 見えたのは武装集団。

 

 統一性の無い武具を身にまとっている。

 モーニングスターから大剣まで、実に多種多様な集団だ。鎧でさえも統一性が無い。

 唯一の共通点は全員が馬に乗っており、弓を所持しているところだろう。

 更に全員が鎧の上からでも分かる程に鍛え上げられた体をしている。この村を襲った騎士等比較に成らない程には。

 よく言えば熟練の傭兵部隊。悪く言えば野盗の類。

 

 ここから範囲攻撃でも放てばそれだけで瓦解しうるだろう。だが攻撃するのは少し迷う。

 

 後詰の部隊、かと思ったがそれにしては来るのが遅いし戦力も違い過ぎる。

 

 となれば、恐らくは騎士討伐に駆り出された傭兵か何かだろう。身なりのいいモノが居ない為傭兵を装う野盗という線はやはり捨てきれないが。

 

 さてどうするか。ここに来るまでに時間がある。

 

 面倒だし逃げるか、というのが思いつくが──それは出来ない状態となった。

 

(ち、面倒な)

 

 分身を森から空に飛びあがらせ、周囲を観察させれば、周囲から別の集団が村を包囲するように動いている。

 分身を透明化させておいてよかった。出なければ丸見えだっただろう。

 

 この状況で下手に逃げ出すのは非常にまずい。今から村人全員殺しても殺戮風景は包囲する者にも武装集団にもバレる。

 ではどうするか、となるが──素直に対処する他無い。

 

 というか。

 

(自分はここまで殺意が高かったか?)

 

 何故か思考にポンポン殺すとかが出てくる。

 可能性としては崩壊やAFOを所持したことで人格其の物まで個性によって浸食されている可能性。

 あるいは単に異世界や超常能力を有しているという事実によって精神が興奮状態になっているか。

 どちらとも非常に可能性が高い。というか前者だと非常に拙い気もする。

 

 まぁそれは置いておいて。

 村長の元に歩きながら台詞を考える。

 丁度村長は他の村人と話していたところだ。内容は村人が減ってしまった為畑や家畜をどうするか、家をどうするかという話。

 歩いて近づけば、村長は気づきシガラキ様、と声をかけてくる。

 

「村長。いいですか」

 

「これは、シガラキ様……どうしましたか」

 

 余談だが、この世界では名前が先で名字が後らしい。なので最初死柄木弔と名乗ったら弔様と呼ばれ混乱した。

 後で弔が名で死柄木が名字だと説明したので今は死柄木呼びである。

 

 他の村人に聞かれると少々まずいので手招きし人気のない所に連れて行く。

 村長は疑問を隠せてはいないが素直についてきてくれる。来てくれなかったら面倒だったので助かる。

 

「単刀直入に言う。この村に武装した集団が近づいている」

「な、それは──」

 

 包囲するように動くローブの集団は隠しておく。そこまで言うとパニックになってどうなるかわからない。

 

「そいつらに対する対処法で悩んでいる。来ているのはどうやらこの村を襲ったバハルス帝国の騎士とは違う格好をしている」

 

 そういうと村長は露骨にホッと顔を緩ませる。

 

「では、どうすれば……」

「……可能性としてはこの村を救いに来た王国の騎士、だが統一された武装ではないから野盗等の可能性もある」

 

 露骨に怯え始めるが、こればかりはもうどうしようもない。

 

「俺がどうにかしてもいいが、当然対価は頂く」

 

 相手に何も言わせず、こちらの要求を言い切る。

 

「一つは森での活動の許可。そして村での一部活動の許可が欲しい。

 森では家を作ったりモンスターを研究したり、そう言った事がしたい。村ではちょっとした畑を作ったり、作物に関する実験をしたいんだ。

 当然村にとって害には成らないように注意する。それを認めてくれるのなら、今回も俺がどうにかしてやる」

 

 そこまで言い切れば、村長は躊躇い無くこう言った。

 

「シガラキ様。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村に向かって馬を走らせる集団が居た。死柄木が発見した集団である。

 その中の一人は実に異質な雰囲気を醸し出していた。

 黒髪黒目。南方の血が混じっている男はこの集団の中で最も強く、尊敬される者だ。

 鍛え上げられた肉体は並みの相手ならば両断し、雑兵を寄せ付けない圧を発する。

 

 その男──ガゼフ・ストロノーフは村に向かって馬を走らせ、己の目に映る相手を注視する。

 

 

 一人は老年の男だ。体と貫録から村長だと推測される。

 もう一人は若い男だ。顔つきは非常に若い。だが老人の様に白い髪を持ち赤い瞳を持つ事から判断を少し迷う。

 気になるのは単なる村人と同じように簡易的な服装を着ている割には靴を履いていない所。よく見れば足に布が巻いてあるがそれだけだ。

 何故履いていないのか。可能性としてはモンクだろう。下手な靴を履くより素足のが楽なのだ。

 小石を踏んだり猛暑の中石の道を歩いても火傷等追うことは無い。だがそれは高位のモンクでの話。となれば相手は余程の強者かとガゼフは推測する。

 

 馬で至近距離まで移動し馬上から二人に話しかける。

 

「私はリ・エスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ! この近隣の村々を襲う帝国騎士を討伐するため王の命令を受け村々を周っている者である」

 

「王国戦士長」

 

(そんなの聞いてないぞボケが)

 

 わざと隠した訳ではないのだろう。本人の頭からすっぽ抜けていたのだろうがそれでも村長に対し少しばかり悪感情を抱いてしまう。

 男──ガゼフ・ストロノーフと名乗った男は嘘を言っていない。

 嘘感知などの個性を使えば虚実もわかる。

 正しこれらの個性は相手の感情から判断するため"妄想を現実と思い込んでいる狂人"の言葉を正しく判断できないという欠点があるが。

 

(だが、王国戦士長ときたか。面倒な)

 

 騎士の記憶を奪うことでスレイン法国の秘密部隊であり、何かしらの目的があって村々を襲っている事は把握していた。

 だが末端に大した情報は与えられておらず、自分が所属する部隊の上司すら名前も立場も把握していない有様である。

 

「この村の村長だな? 隣にいるのは一体誰だ?」

 

 ガゼフは至極真っ当な問いかけをする。

 それにどう答えるか──答えは決まっている。

 

「初めまして。私は弔・死柄木。旅人です。この村が襲われていたので助けに来た戦士です」

 

 別に戦士でもなんでもないが、とりあえずは戦士を名乗る。

 その言葉を聞いたガゼフは馬から降りる。

 

「この村を救ってくださり。感謝する」

 

 そして、軽く頭を下げる。

 

(へぇ……)

 

 本物の人格者か。あるいは何も考えいてない馬鹿か。

 

「良ければ、この村を襲った者達について聞きたいのだが──」

 

「戦士長!」

 

 ガゼフの言葉を遮る様に一人の戦士が声を上げる。

 上司の会話を断ち切る様に声を放ち、声を出した当人も焦燥しているところから余程の事態ではあるらしい。察しは着くが。

 

「村を包囲するように動く複数の人影を発見! こちらに接近中です!」

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