オバロ世界をマスターピースで冒険だ!   作:Revak

3 / 5
第3話

 

「確かにいるな」

 

 村の中にある家の一つにガゼフと死柄木は隠れていた。

 ガラスも使われていない、木だけの開閉だけが出来る窓から隠れる様に覗き見る。

 

 遠くに居る相手はローブを纏った集団だ。頭部全体が覆われる兜に似たフードに体格を隠すローブ。

 頭のてっぺんから足元まで。非常に質のいい物で作られているのだとこの距離でも分かる。

 だが、問題は周囲に居る者たちに付き従う異形。

 

 硬質的な体だ。石を綺麗に切ってくっ付けた様な一種の美を感じる体。

 頭部に眼の類は無く、炎だけが揺らめいている。

 また頭上には天使を模わせる輪があり、その手には光り輝く剣がある。

 

(なんだ、あれ)

 

 ここにきてまったくもって訳の分からない存在が出てきて流石に困惑する。

 今ある情報から推測するならば一種のモンスターでありこの集団は一人一人がこのモンスターを従えている、という所だろうか。

 

(面倒だな……浮遊しているならば崩壊が通じない)

 

 触れれば必ず殺せる技も触れられ無ければどうにでもなる。

 

 出来るのかはわからないがあの異形に自分を持たせて空を飛ぶ、等をされれば非常に──非常に面倒なことに成る。

 

「村全体を包囲し、等間隔で配置されています」

 

 ガゼフの部下が伝え、死柄木は頭を悩ませる。

 

 さてはてどうしたものか。これで自分はこいつと一蓮托生となってしまった。

 

 単なる野盗では無かったのだからやはり見捨てるべきだった、と遅い後悔をする。

 

 こうなった以上ここでガゼフを殺し、村人を殺しても無意味。あの連中に殺されるのみ。

 では、逃げ出したとしてもあの連中に殺される。

 じゃあ、ガゼフを一人突っ込ませたとしても──まぁ勝てないだろう。相手は確実に勝てる手段を用意してここに居る。

 

 では、最後の可能性。ガゼフと協力しあの連中を打ち倒す。

 

 それしか道は無い訳だ。

 

 ただ、これは自分が相手と同等、あるいは上回ってるのを前提とした作戦だ。

 万が一の可能性として自分は圧倒的最強でありあの程度の連中を縊り殺す事が出来るかもしれない。がまぁ考えるだけ無駄な可能性だ。

 常に最悪を想定して動くべきだ。

 

「一体、彼らは何なのでしょうか?」

 

 分かり切った問いかけをする。

 

「あれだけの数と質を持つ魔法詠唱者(マジックキャスター)を用意しているとなると、恐らくはスレイン法国。しかも、六色聖典のいずれかだろうな」

 

(急に知らないワード出されても困るが??)

 

 魔法詠唱者(マジックキャスター)。マジック。つまり奴らは魔法使いという訳だ。

 やはりこの世界は剣と魔法の世界だったらしい。クソわよ。記憶を奪う事で知っていた訳だが、それでも現実として突き付けられると結構堪えてる。

 

 

「ではなぜ、彼らはここに?」

 

 これもわかり切った言葉だ。騎士の記憶とこの状況から推測される答えは一つしかない。

 

「シガラキ殿に心当たりがない、となれば……狙いは私だろうな」

 

 

 まさか法国にすら狙われているとは、と最後に付け加える。

 

(殺されるだけの心当たりはあると)

 

 短時間の会話だが、相手の人となりぐらいは多少わかって来た。

 そこから推測すれば──成程確かに。剣と魔法の世界の、ラノベ的な貴族からすればこの男は非常に邪魔くさいだろう。なまじ能力がある分。

 

 

「シガラキ殿。好ければ雇われないか?

 報酬は望む額を用意しよう」

 

 

(雇う? 俺をそれは──駄目だな)

 

 ここで正式に王国戦士長に雇われて六色聖典とやらと戦ってしまえば自分の立場が"王国所属の、リ・エスティーゼ王国に所属する存在"となる。

 それは非常にまずい。国家情勢すら把握できていない今特定国家に所属していると見なされるのはデメリットでしかない。

 

「俺は旅人だぜ? 国がらみのごたごたにこれ以上関わるのは御免だ」

 

 はっと、鼻で笑い拒絶する。

 

「であれば……王国の法を用いて、強制徴収するというのは?」

 

「──おいおい、そんなことを言われたら尻尾を振る相手を選びたくなってくるじゃないか」

 

 

(まぁ、こいつの首を手土産にしたところで、先は無いんだが)

 

 だがそれはそれとしてそうしてくるならこちらは殺すが。

 

 

 ガゼフが強く睨んでくるが、こちらも一歩も引かず逆に睨み返す。

 まぁ、相手としてはもしかしたらのワンちゃんがあるかもしれない、と考えていたのだろう。すぐに相手から眼を反らす。

 

「そうか、であれば……こうしてここに閉じこもっていても事態は好転しない。私は行かせてもらうとしよう」

 

 その声は実に綺麗で、瞳はまっすぐだった。

 思わず嫉妬したくなるほどには。

 お元気で、と差し出された手を死柄木は掴む。

 がしりと、ガゼフは両手で差し出した右手を掴んでくる。

 

「……我儘だというのは百も承知だ。だが、それでもどうか頼む。せめて村人たちだけでも無事に逃がして欲しい。どうか──」

 

 頭まで下げようとしてきたガゼフを死柄木は止める。相手の部下もいる状況で頭を下げられるのは非常に困る。

 

「あぁ。わかった。ここの村人たちが全員生き残れるよう、俺も動くとしよう」

 

 あえて、逃がすとは言わず。村人を守るとも言わない。

 下手に確約すると今後が面倒になる。本当に。政治的な問題がこいつ相手だと滅茶苦茶発生するな、と死柄木は辟易しそうになるのを我慢する。

 

「ならば後顧の憂いなし。私は前だけを見て、進ませていただこう」

 

 

 

 

 

 

 

「シガラキ様、何故戦士長は村を出ていくのでしょう……?」

 

 家の外。馬に乗って戦士長達が村を出ると同時に傍らに居た村長が問いかける。

 そんなもの決まっている。

 

「相手の狙いは王国戦士長。このまま村に居座れば村が戦場に成る。それを避けるために戦士長は出て行った」

 

 村が戦場に成れば負ければ当然、勝ててもそれはひどい状態になる。それこそ相手の実力次第だが村として再起するのは不可能になる程に。

 

「そんな……」

 

 村長は、自身が"戦士長は村を見捨ててのではないか"と少しでも思ってしまった自分を恥じた。

 学も知識も無い、というのは言い訳に過ぎない。少し考えればわかっただろうに。なんて愚かな事を考えていたのだ、と。

 

「では、私たちは、どうすればいいのでしょうか?」

 

 何もしない、というのは有り得ないだろう。だが今、何をすればいいのか村長にはわからない。

 だから、シガラキ様に問いかける。この御方ならば、答えを教えてくださるのではないかと希望をかけて。

 

 にぃ、とその問いかけに死柄木は笑った。相手から言い出してくれるとは実に好都合。

 

「あぁ。村人たちを一か所に集めてくれ。俺が守る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁ、はぁ、とガゼフ・ストロノーフは息を吐く。

 これほどに疲労を感じたのは何時以来か。もしかしたら、御前試合以来かもと考える。

 眼前には空を飛び、こちらの射程範囲外に居座る天使が複数。

 味方は馬から降り、剣を、弓を手に戦っている。

 だが、戦場は芳しくない。

 

 天使系モンスターは物理攻撃に対して耐性を持つ。こちらの武具が魔法効果を持っていれば通じただろうが、こちらの武装には魔法効果は何も無い。

 唯一、武技で剣に一時的に魔法効果を付与できる自分だけが天使を倒す事が出来ている。

 

 このまま戦えば、自分は死ぬだろう。

 

 相手もそれがわかっている。召喚したモンスターに任せ、弱点である魔法詠唱者(マジックキャスター)は隠れている。

 弓で狙えればいいのだが、遠距離攻撃に対して対策を取られている以上、手出しが出来ない。

 空斬等の特殊な遠距離攻撃ならば通じるのかもしれないが、それでも期待するのは駄目だろう。

 

 

 ─────

 

 

「…………? なんだ?」

 

 何か、声が聞こえた気がした。

 

 獣の声だ。聞いたことも無い、獣の声。

 

 だが聞こえたのは自分だけなのか。相手の魔法詠唱者(マジックキャスター)も部下の戦士たちも気にせず戦い続け──いや違う。

 敵の推定指揮官。別種の天使を背後に控えさせた魔法詠唱者(マジックキャスター)だけはガゼフと同じように顔を顰めた。

 

「ォォォォォォォ」

 

 今度ははっきりと、声が聞こえた。

 

 戦士たちの何人かと、敵魔法詠唱者も声を聴いたのだろう。動きが数秒止まる。

 

「ウォォォォォ!!!」

 

 そしてはっきりと、聞こえた。

 

 

「馬鹿な! ドラゴンだと?!」

 

 

 敵指揮官──ニグン・グリット・ルーインは絶叫した。

 

 現れたのはドラゴンだ。まごうことなき。

 

 二十メートルを超える巨体。鱗に覆われた体。背中から蝙蝠の被膜の様なモノが付いた翼が生えている様は実に、ドラゴン。

 緑色、つまりはグリーンドラゴンなのか、と頭の片隅で考えてしまう程には現実離れたした光景であり──更に目に映る光景に目を疑いたくなった。

 

 ぐるる、と獣のうねり声が、数十。

 

 ドラゴンに付き従うように現れたのはハーゲスト、ジャイアントスパイダー。その他魔獣系モンスター。

 

「な、なんだと?!」

 

 ドラゴンがモンスターを支配する。それ自体はまぁ別にいい。よくある事だ。

 事実評議国などはモンスターどころか亜人や人を支配しているのだから、多種族を支配するというのは有り得る事。

 だが、何故ドラゴンがこの時、この場所に。やって来たのか。

 

(よーし、問題なく行けるな)

 

 

 答えは当然、死柄木弔。森に置いてきた分身体の。

 

 使用している個性はマウントレディの巨大化+ヤモリ+スケイルメイル+剛躯+ドラゴン。

 異形系個性を二つも載せた異形ドラゴンの爆誕である。

 

 ドラゴン単体でも良いかもしれないと思ったが割とあの個性では人の面影が強いのでヤモリを。更にドラゴン感を足す為にスケイルメイルを、という具合である。

 更にこれでわかったのは、二倍による分身では完成された体(マスターピース)の適応能力が使えないというのが判明した。

 その為異形個性を使ったとしてもそれに合わせる、というのが出来ない以上これも分身対故の弱点と言える。

 

 そして魔獣系モンスターを支配しているのは動物ボイス+ヴォイス。ボイスで重なってしまった。

 

 

 何故異形化してやって来たのか、答えは簡単だ。死柄木弔が王国戦士長を助ける訳にはいかない。だがここで見捨てる訳にもいかない。

 ならば、まったくもって関係ない化け物を装い、助ければいい。

 

 当然、敵方にもバレないように王国側にも死傷者を出す必要があるだろう。今の自分の立場は"偶々やって来た森に住んでるモンスター"だ。それが選り好みすればバレる可能性が出てくる。

 それこそ頭のいい者なら森からやって来たドラゴンと死柄木弔を結び付ける者もいるかもしれない。何しろここは剣と魔法の世界。何があっても不思議ではないのだから。

 

「オオオオ!」

 

 叫び。口からヘルフレイムを発動し熱をためる。

 

 そして──放出。

 

 自傷ダメージを受けない程度に加減したヘルフレイム、炎熱系最強と謳われる個性は敵の天使を瞬く間に焼き焦がし、何人かの魔法詠唱者すら殺す事に成功する。

 王国側の死者が一人だけ、というのはいいのか悪いのかわからない。ゼロよりはましだが、多すぎても困るのだから。

 

 

 個性の発動は、好きな所から出来る。

 

 原作でも脊髄から鋲突を発動していた。ならば今の自分が好きな所から好きな個性を発動できない道理が無い。

 だからこその素足。"触れる"が発動条件である崩壊やオーバーホールは足からでも発動できる。

 ただ、個性其の物の前提条件は無視できない。

 崩壊は触れる事で発動する個性だ。触れていないのに使うことは出来ない。まぁ、極論言えば"俺は世界に触れている"見たいな理論で世界そのものを崩壊させる、というのは不可能だ。

 どうしても触れるという条件は要る。尻尾やテープなどの個性は尻や肩限定でなく何処からでも発動できるのはAFOの利点だろう。

 あくまでも個性の発動個所を好きな所から出来る、というだけだ。創造を使うのには脂肪が居るのと同じで個性の範疇を超えた拡大解釈は出来ない。

 

 

 

 

(好機!)

 

 突如現れた第三勢力であるドラゴンと魔獣。それをガゼフは千載一遇のチャンスだと判断する。

 

 今、敵も味方も混乱している。この状況こそが、敵を倒す唯一無二のチャンスだ。

 

 敵は謎多きスレイン法国の神官。ならば、ドラゴンをも倒せる手段を持っていても可笑しくは無い。

 

 だからこそ、今だ。敵の魔法詠唱者もハーゲストなどを相手しなければならなくなったこの状況だからこそ。

 

 叫ぶ、等という愚は犯さない。ただただ走る。走る。

 武技は使わない。この場で武技を使い消耗するわけにはいかない。

 

 だが、さすがに相手は特殊部隊の隊長。ガゼフがフリーになった事を即座に見破る。

 

(まずい!)

 

 だが、対処法が思い浮かばない。

 

 隊員の殆どは魔獣への対処に割かれ、勇敢にも天使を向かわせた者は天使を裂かれ己の体も潰されている。野蛮なるドラゴンの手で。

 

(風花聖典は何をしている! こんなものは聞いていなかったぞ!)

 

 だからこそ、ニグンは切り札を切る。

 たとえドラゴンでも、これならば殺せるという切り札を。

 

 相手は周辺国家最強の戦士ガゼフ・ストロノーフ。下手に躊躇すればやられるのは自分だ。

 

「監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)!」

 

 本来監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)は動かすべきではない天使だ。

 能力として動かない間の部下の防御力強化という能力を持っている為。最善の運用は召喚しての待機。

 だが、今はそれをしている場合ではない。少しでも時間を稼ぐ為に動かす。

 

「邪魔だぁぁぁ!」

 

 ガゼフ・ストロノーフは叫び、武技を使用し監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)に突撃する。

 使用するのは能力向上。能力超向上。戦気梱封。六光連斬。

 

 放たれた六つの斬撃は、巨体である権天使に全て直撃し少なくないダメージを与える。

 

 第四位階で召喚できる天使と言えど、相手が悪い。このまま戦わせれば負けるだろう。

 自分が加勢してもいいがそうなればドラゴンと魔獣が何をしでかすかわからない。

 

 だからこそ、切り札を──魔封じの水晶を取り出す。

 

 これは最大最高の切り札。使えば必ず──ガゼフ・ストロノーフならば確実に殺せるジョーカー。

 ドラゴンについては正直わからない。だが、消滅には至らなくとも大ダメージは与えれるだろうとニグンは考える。

 

 水晶を手に出し、掲げる。そうしなければ使えないから。

 

「見よ! 最高位天使の──」

 

 天使の。

 

 水晶が。

 

 無い。

 

「は?」

 

 晴天の霹靂とは正にこのこと。先程まであった水晶は消えて、無くなっている。

 

 何が起こった? 何があった?

 

 なんで、魔封じの水晶が無いんだ?

 

 

 思考が定まらない。唯一絶対の、最高の切り札は、何処へ?

 

 

 ──当然。盗んだのは──

 

(あっぶねぇ! 敵の切り札とか切らせるわけにいくかボケ!)

 

 死柄木弔の分身体である、ドラゴン。

 

 即座に窃盗という、眼に見える範囲の相手が所持している者を盗み取る事が出来るという強力な個性を使い、水晶を奪った。

 当然、死柄木にはこれが何かは分からない。だが、ろくでもない物であるのは間違いない。

 己の手に水晶を持ってくると同時に格納──フードちゃんの個性──を使い体の中に押し入れる。こうする事で傍目からは水晶が何処に行ったか分からないだろう。

 

「オオオオ!」

 

 ガゼフが更に武技を使い、遂に監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)を討伐。

 

「ま、<魔法の矢>(マジックアロー)!」

 

 

 その他、衝撃波(ショック・ウェーブ)等の攻撃魔法を放つ。

 全て、回避──あるいは直撃しても大したダメージには成らない。

 確実に当たる<魔法の矢>(マジックアロー)ではガゼフの勢いを殺しきれず、衝撃波(ショック・ウェーブ)等の絶対命中が無い魔法は避けられる。

 

「しま!」

 

「剛腕剛撃!!」

 

 更に、ガゼフが接近し──剣を振り落とした。

 

 鮮血が舞う。

 

 ガゼフの、魔法効果の付いていない単なる鉄剣はガゼフの武技で一時的に魔法効果を宿し鋭さを増す。

 如何にニグンが纏っているローブが法国製の魔化されている、素材から厳選された装備品であっても──最強と謳われる戦士の斬撃を防ぎきる事は出来なかった。

 いや、本来ならば斜めに両断され体が文字通り二つに成るほどの、鋼鉄だろうが容易く裂く剣を受けて原型を留められているのだからニグンの強靭さと装備の良さを称えていいだろう。

 

「敵指揮官、撃破!」

 

 ガゼフが大声を出し、自らの勝利を宣言する。

 

 その声を聴いたドラゴン──死柄木は空に飛びあがり、雲の彼方へと消えた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。