遊戯王キャラ達のMCU   作:のうち

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エルフェンノーツキラーチューンのデッキをつくってマスターデュエルで回していますが中々回し方をマスター出来ません。これを覚えればけっこう、またデュエリストとしてレベルアップ出来る気がするので詳しいかたアドバイスをよろしくお願いします。



第三話 戦いの終わり、黒魔女の来訪

 

 戦場となったニューヨークの上空を、一筋の赤い閃光が駆け抜けていた。

「……ああ、もう! 次から次へと!」

 背中の炎翼を噴射しながら、俺は思わず悪態をついた。

 先ほどから休む暇もなくチタウリの軍勢を相手にしている。空を飛び回る飛行艇だけでも厄介だというのに、地上には歩兵が溢れ、時折リヴァイアサンと呼ばれる巨大な怪物まで姿を現す始末だ。

 しかも、こちらはつい数十分前まで普通の人間だった身である。

 閃刀姫レイとしての身体と兵装を手に入れたとはいえ、戦場での経験まで備わっているわけではない。装備の操作方法は自然と理解できても、敵の攻撃を避けるたびに心臓が跳ね上がるし、誰かが危険に晒されれば冷静な判断も難しくなる。

 それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。

『レイ、聞こえるか?』

「はい! 聞こえてます!」

『キャップの位置を送る。彼の指示に従ってくれ。地上の連中をまとめるのは、僕より彼の方が向いてる』

 通信越しに聞こえてきたのは、アイアンマンことトニー・スタークの声だった。

 視界に新しい情報が表示され、目的地を示すマーカーが点灯する。

「了解です!」

『それと、くれぐれも無茶はするなよ。君のスーツには興味があるが、スクラップになったものを調べる趣味はない』

「……努力します!」

『努力じゃなくて約束してほしいんだがね』

 そんな軽口を最後に、通信が切れた。

 俺は小さく息を吐くと、目的地へ向かって飛行速度を上げた。

 ビルの谷間を抜けた先、道路の中央に見覚えのある人物が立っていた。

 青を基調とした戦闘服。胸元には白い星。そして、左腕には星条旗を模した円形の盾。

 キャプテン・アメリカ。

 スティーブ・ロジャースその人だった。

「……本当にいるんだな」

 映画の中で何度も見た人物が、今は自分の目の前にいる。

 そんな感慨に浸る暇もなく、俺は道路へ降下した。

 着地すると、キャプテンは一瞬だけこちらへ視線を向けた。

「君がスタークの言っていたレイか?」

「はい! レイです!」

「スティーブ・ロジャースだ。スタークから話は聞いている。協力してくれるそうだな」

「はい。できることなら何でも」

 俺の返事に、スティーブは短く頷いた。

「ならば、まずはあの建物に残された市民を避難させてほしい。敵の増援が接近している。上空から援護できるか?」

「任せてください!」

 そう答えると、俺は再び炎翼を展開した。

 スティーブは俺の装備を興味深そうに見ていたが、今はそれについて尋ねるつもりはないらしい。

「よし。行ってくれ!」

「了解!」

 その言葉を合図に、俺は空へ飛び上がった。

 目的の建物は、道路を挟んだ向かい側にあった。

 入口付近には数人の民間人が集まっている。しかし、その前方にはチタウリの兵士たちが展開しており、逃げ道を塞いでいた。

「……あれか」

 敵の数は六体。

 正面から突っ込めば、民間人を巻き込む危険がある。

 ならば、まずは注意を逸らす。

「ホーネットビット!」

 俺の呼びかけに応じ、小型の無人兵装が展開された。

 ホーネットビットは俺の周囲を一度旋回すると、指示に従ってチタウリの頭上へ向かう。

 小型兵装による牽制攻撃が始まった。

『ギギッ!?』

 突然の攻撃に、チタウリたちが一斉に上空を見上げる。

 その隙を逃さず、俺は急降下した。

「はあああっ!」

 炎剣を振り抜き、先頭のチタウリを斬り伏せる。

 続けて身体をひねり、隣の敵へ斬りかかった。

 しかし、三体目のチタウリがこちらへ武器を向ける。

「ウィドウアンカー!」

 射出されたアンカーが敵の武器へ絡みつき、銃口を強引に逸らした。

 青白い光弾が空へ向かって放たれる。

 その隙に接近し、炎剣で敵を撃破した。

「……あと三体!」

 残る敵へ向き直る。

 だが、そこで背後から声が響いた。

「伏せろ!」

「えっ?」

 反射的に身を屈める。

 直後、頭上を円形の盾が通過した。

 盾はチタウリの一体へ直撃すると、そのまま跳ね返って別の敵を打ち倒した。

 そして、投げた本人の手元へ戻っていく。

「……おお」

 思わず声が漏れた。

 キャプテン・アメリカの盾投げ。

 映画で何度も見た光景だったが、実際に目の当たりにすると想像以上に凄まじい。

「レイ! 右だ!」

「っ!」

 声に反応して振り返る。

 最後のチタウリが武器を構えていた。

 俺は炎翼を噴射して一気に距離を詰めると、炎剣を振り抜いた。

 敵が崩れ落ちる。

 周囲を確認すると、どうやらこの一帯の敵は片づいたらしい。

「……ふう」

 息を吐いたところで、スティーブが駆け寄ってきた。

「よくやった。市民の避難は俺たちが引き受ける。君は上空の警戒を頼む」

「分かりました!」

 そう答えて飛び立とうとしたとき、スティーブが声をかけてきた。

「レイ」

「はい?」

「君はまだ若い。無理をする必要はない」

 思わず言葉に詰まった。

 確かに、今の俺の外見は少女そのものだ。

 だが、中身は別の人生を経験した人間である。

 とはいえ、そんな事情を説明できるはずもない。

「……大丈夫です」

 俺は小さく笑った。

「できることを、やるだけですから」

 スティーブはしばらく俺を見つめていたが、やがて静かに頷いた。

「分かった。だが、危険だと思ったらすぐに退け。生き残ることも大切な任務だ」

「……はい!」

 その言葉を胸に、俺は再び空へ飛び上がった。

 戦いは、まだ終わっていない。

     ◇

 それから、どれほどの時間が経過したのだろう。

 ニューヨークの空では、相変わらずチタウリの軍勢が暴れ回っていた。

 俺はカガリの機動力を活かし、飛行艇の迎撃や民間人の避難支援を続けていた。

 だが、敵の数は一向に減らない。

「……これ、キリがないぞ」

 飛行艇を一機撃破したところで、思わず呟く。

 ワームホールが開いている限り、敵はいくらでも現れる。

 この戦いを終わらせるには、あの穴を閉じるしかない。

 そのことは、映画を見ていた俺には分かっていた。

 そして、ニューヨーク決戦がどのように終わるのかも。

「……確か、そろそろだったよな」

 そう呟いた直後、通信に緊迫した声が響いた。

『全員、聞いてくれ!』

 スティーブの声だった。

『敵の増援が続いている。だが、こちらも突破口を見つけた。各自、持ち場を維持してくれ!』

 俺は空を見上げた。

 巨大なワームホール。

 その向こう側には、チタウリの母艦が存在している。

 映画では、トニーが核ミサイルをワームホールへ運び、母艦を破壊することで侵攻を終わらせた。

 そして、その代償として――。

「……トニーが、死にかける」

 思わず呟いた。

 映画の結末を知っている。

 だが、それはあくまでも映画の話だ。

 俺という異物が混ざったことで、何かが変わってしまう可能性もある。

 それでも、できることはあるはずだ。

「……よし」

 俺は通信を開いた。

「トニー、聞こえますか?」

『ああ。どうした、お姫様』

「今、どこにいますか?」

『ちょっと忙しいところだ。何か用か?』

「……いえ」

 言葉に詰まる。

 これから核ミサイルが発射される。

 それを知っているなどと言って、果たして信じてもらえるだろうか。

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。

「トニー! 空から何か来るかもしれません! 気をつけてください!」

『空から? そりゃあ今も山ほど来てるが――』

 そのときだった。

 遠くの空に、一筋の光が見えた。

 高速で飛来する細長い物体。

 その形状を見た瞬間、俺は息を呑んだ。

「……来た!」

 核ミサイル。

 映画で見た、あの場面だった。

『……おいおい、冗談だろ』

 トニーの声が変わった。

『ジャービス、あれは何だ?』

『核弾頭を搭載したミサイルです、サー』

『……なるほど。どうやら上の連中は、街ごと吹き飛ばすつもりらしい』

 通信越しに、トニーが舌打ちする音が聞こえた。

『レイ、悪いが少し離れていてくれ』

「トニー!」

『心配するな。ちょっと配達に行ってくるだけだ』

 その言葉を最後に、アイアンマンは急加速した。

 赤と金の装甲が、核ミサイルへ向かって飛んでいく。

「……くそっ!」

 俺も炎翼を展開した。

 追いかけようとする。

 だが、すぐに気づいた。

 今の自分には、あのミサイルを安全に処理する手段がない。

 アフターバーナーで撃墜すれば、核弾頭を街の上空で破壊する危険がある。

 ウィドウアンカーで拘束したところで、ミサイルをどこへ運べばいいのか。

 そして、何より。

 トニーは既にミサイルを抱え、ワームホールへ向かっていた。

「……頼むぞ」

 俺は空を見上げた。

 アイアンマンが、青白い光の渦へ飛び込んでいく。

 その姿が見えなくなった。

 そして、数秒後。

 ワームホールの向こう側で、眩い光が瞬いた。

「……っ!」

 その直後、街中のチタウリが次々と動きを止め始めた。

 飛行艇が制御を失い、地上へ墜落する。

 兵士たちも糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 チタウリの母艦が破壊されたのだ。

「……終わった?」

 だが、まだ安心はできない。

 トニーが戻ってきていない。

 俺は再びワームホールを見上げた。

 青白い光の渦が、徐々に小さくなり始めている。

「……トニー!」

 通信を開く。

「トニー! 聞こえますか!?」

 返事はない。

「トニー!」

 何度呼びかけても、通信は沈黙したままだった。

 そのとき。

 閉じかけたワームホールから、小さな赤い影が落ちてきた。

「……いた!」

 アイアンマンだった。

 だが、その身体からは推進炎が出ていない。

 完全に意識を失っているらしい。

「まずい!」

 俺は炎翼を全開にした。

 赤い閃光となって、落下するアイアンマンへ向かう。

 しかし、距離がある。

 このままでは間に合わない。

「ウィドウアンカー!」

 右腕からアンカーを射出する。

 伸びたアンカーが、アイアンマンの装甲へ接続された。

「よしっ!」

 すぐさま巻き取りを開始する。

 だが、落下する装甲の重量と速度は想像以上だった。

「ぐっ……!」

 腕に凄まじい負荷がかかる。

 カガリの推進機構が唸りを上げた。

 それでも、俺はアンカーを離さなかった。

「……落とすかよ!」

 炎翼を噴射し、全力で減速する。

 アイアンマンの落下速度が、少しずつ弱まっていく。

 だが、地面はもうすぐそこだった。

「くそっ……!」

 その瞬間、視界の端に緑色の影が映った。

 ハルク。

 地上から跳躍した緑色の巨人が、落下するアイアンマンへ向かって腕を伸ばしていた。

「ハルク!」

 俺はアンカーを解除する。

 次の瞬間、ハルクがアイアンマンを抱き止めた。

 そのまま地面へ着地する。

 轟音とともに道路が陥没した。

「……はあ」

 思わず息を吐いた。

 間に合った。

 俺も地上へ降下する。

 ハルクはアイアンマンを慎重に地面へ下ろしていた。

 その周囲には、スティーブやソーたちが集まってくる。

「トニー!」

 スティーブが駆け寄った。

 だが、アイアンマンは動かない。

 俺も慌てて近づく。

「……まさか」

 映画では、この後にハルクの咆哮でトニーが目を覚ましたはずだ。

 だが、もし何かが変わっていたら。

 そんな不安が胸をよぎった。

 その瞬間。

「グオオオオオオッ!」

 ハルクが吠えた。

 凄まじい咆哮が周囲へ響き渡る。

 思わず耳を塞ぐ。

「うわっ!?」

 そして。

『……なんだ? 何があった?』

 アイアンマンの声が聞こえた。

 トニーが目を覚ましたのだ。

「……っ!」

 思わず膝から力が抜けた。

 よかった。

 本当に、よかった。

 スティーブたちも安堵した様子を見せている。

 その中で、トニーはゆっくりと身体を起こした。

『……ああ、そうだ。核ミサイルは?』

「成功した。敵は全滅したよ」

 スティーブの言葉に、トニーは小さく笑った。

『……そいつはよかった』

 その直後、彼の視線がこちらへ向けられた。

『おや。お姫様もいるのか』

「……いますよ」

『そんな顔をするな。俺はちゃんと戻ってきただろ?』

「……心配したんですからね」

『悪かったよ』

 軽い口調だった。

 だが、その声には確かな安堵が感じられた。

 俺は小さく息を吐くと、ようやく笑みを浮かべた。

「……おかえりなさい、トニー」

『ああ。ただいま』

 こうして、ニューヨーク決戦は終結した。

     ◇

 戦いが終わったニューヨークには、奇妙な静けさが訪れていた。

 先ほどまで街を埋め尽くしていたチタウリの軍勢は動きを止め、空を覆っていたワームホールも消えている。

 しかし、街に残された傷跡は大きかった。

 破壊された建物。

 炎上する車。

 瓦礫に埋もれた道路。

 そして、負傷した人々。

 戦いが終わったからといって、すべてが元通りになるわけではない。

「……ひどいな」

 俺は小さく呟いた。

 カガリの装甲を解除し、元の姿へ戻っている。

 銀色の髪が風に揺れた。

 戦闘中は気にする余裕もなかったが、こうして改めて自分の身体を見下ろすと、やはり奇妙な気分になる。

 細い腕。

 小さな手。

 そして、見慣れない服装。

 どこからどう見ても、閃刀姫レイそのものだった。

「……本当に転生しちゃったんだな」

 今さらながら、実感が湧いてくる。

 俺は、元の世界へ戻れるのだろうか。

 それとも、このままレイとして生きていくことになるのだろうか。

 そもそも、どうしてこの世界へ来たのか。

 考えなければならないことは山ほどある。

 だが、今は何も分からなかった。

「……はあ」

 思わずため息を吐く。

 すると、背後から声が聞こえた。

「おい、レイ」

 振り返る。

 そこには、装甲を解除したトニー・スタークが立っていた。

「……トニー」

「無事だったみたいだな」

「はい。なんとか」

「そいつはよかった」

 トニーは軽く頷くと、俺の姿を上から下まで眺めた。

「それにしても、驚いたな。スーツを脱ぐと本当に普通の女の子じゃないか」

「……そう見えます?」

「ああ。少なくとも、宇宙人の軍勢を相手に暴れ回っていたとは思えない」

 そう言って、トニーは小さく笑った。

「ところで、君の装備について聞きたいことが山ほどあるんだが」

「……ですよね」

「当然だ。あんな技術、見たことがない。どこの企業が開発した? それとも政府の秘密兵器か?」

「……えっと」

 どう答えたものか。

 まさかカードゲームの世界から来たなどと言っても、信じてもらえるとは思えない。

 俺が返答に困っていると、トニーは肩をすくめた。

「まあいい。今すぐ答えろとは言わないさ」

「……助かります」

「ただし、君が何者なのかは、いずれ聞かせてもらう」

 その言葉に、俺は小さく頷いた。

 当然だろう。

 突然ワームホールから現れた正体不明の少女。

 しかも、未知の兵装を使用してチタウリと戦っていた。

 そんな存在を、S.H.I.E.L.D.が放置するはずもない。

「……分かってます」

「ならいい」

 トニーはそう言うと、俺の肩を軽く叩いた。

「とりあえず、今日は休め。君も相当疲れてるだろ?」

「……はい」

 正直、今すぐ眠りたいくらいだった。

 身体は無事でも、精神的な疲労が尋常ではない。

 なにしろ、転生初日から宇宙人の軍勢と戦わされたのだ。

「……本当に、長い一日だった」

 そう呟いた俺に、トニーは苦笑した。

「同感だ」

 そして、彼は少し離れた場所へ歩いていった。

 俺はその背中を見送りながら、ようやく一息ついた。

 戦いは終わった。

 少なくとも、今日のところは。

 そう思っていた。

     

 夕暮れのニューヨーク。

 俺は人通りの少ない路地裏に立っていた。

 トニーたちとは一度別れ、今後のことを考えるために少しだけ一人になっていたのだ。

 もっとも、完全に自由というわけではない。

 遠くにはS.H.I.E.L.D.の関係者らしき人影が見えるし、トニーからも連絡先を渡されている。

 どうやら、俺の存在は既に監視対象になっているらしい。

「……まあ、当然だよな」

 小さく呟く。

 これからどうしよう。

 住む場所もない。

 金もない。

 身分証明書だってない。

 しかも、今の俺はどう見ても未成年の少女だ。

 ニューヨーク決戦を生き延びたところで、問題は山積みだった。

「……はあ」

 思わずため息を吐いた。

 そのときだった。

 背後の空間が、突然歪んだ。

「……え?」

 振り返る。

 何もなかったはずの路地裏に、黒と赤の光が渦巻いていた。

 空間そのものが裂けるように、円形の穴が開いていく。

 ポータル。

 映画で見た魔術師たちのものとは、明らかに異なる。

 黄金色の火花ではなく、黒い魔力と赤い光が入り交じった、不気味な門だった。

「……なんだ、これ?」

 思わず身構える。

 カガリへの換装を意識した、その瞬間。

 ポータルの向こう側から、足音が聞こえた。

 こつん。

 こつん。

 硬い靴底が地面を叩く音。

 やがて、黒い影がゆっくりと姿を現した。

 最初に見えたのは、大きな魔女帽子だった。

 黒を基調とした帽子の内側には、鮮やかな赤色が覗いている。

 続いて、長い銀髪。

 そして、黒いドレスに身を包んだ女性が、ポータルをくぐって現れた。

 その姿を見た瞬間、俺は息を呑んだ。

「……嘘だろ」

 見覚えがある。

 いや、ありすぎる。

 遊戯王OCGに登場するモンスター。

 罪宝を巡る物語の中心人物。

 黒魔女ディアベルスター。

 その本人が、目の前に立っていた。

「……ディアベルスター?」

 思わず名前を口にする。

 すると、女性はゆっくりとこちらへ顔を向けた。

 銀色の髪が揺れる。

 帽子のつばの下から覗く瞳が、俺を捉えた。

 そして、彼女は小さく笑った。

「……へえ」

 その声は、どこか楽しそうだった。

「本当にいたんだ」

「……え?」

 思わず聞き返す。

 ディアベルスターは俺の姿を上から下まで眺めると、納得したように頷いた。

「銀色の髪に、その顔。間違いないね」

 彼女は一歩、こちらへ近づいた。

「閃刀姫・・・レイ……で合ってる?」

「……そう、ですけど」

 警戒しながら答える。

 すると、ディアベルスターは満足そうに笑った。

「よかった。人違いじゃなかったみたい」

「……あなたは、何者なんですか?」

 思わず尋ねる。

 いや、姿を見れば分かる。

 だが、知りたいのはそういうことではない。

 どうしてディアベルスターがMCUの世界にいるのか。

 なぜ、俺のことを知っているのか。

 そして、どうして突然目の前に現れたのか。

 そんな疑問が頭の中を駆け巡る。

 ディアベルスターはしばらく俺を見つめていたが、やがて口を開いた。

「……そうだね。まずは自己紹介からかな」

 彼女は帽子のつばに指を添えると、芝居がかった仕草で軽く頭を下げた。

「黒魔女ディアベルスター、地球ではアステーリャの名前を使ってるからよろしく。まあ、見たまんまだけど」

 そして、顔を上げる。

「それと――」

 彼女は少しだけ声を落とした。

「私も、あなたと同じ転生者だよ」

「…………は?」

 思考が止まった。

 転生者。

 今、確かにそう言った。

「……え?」

 思わず聞き返す。

 ディアベルスターは、そんな俺の反応を楽しむように笑った。

「驚いた?」

「……いや、驚くに決まってるでしょう!?」

 思わず声を荒らげる。

 すると、彼女は肩をすくめた。

「まあ、そうだよね。私も最初は驚いたし」

「……最初?」

「うん」

 ディアベルスターは静かに頷いた。

「私も昔は、普通の人間だったんだよ」

 その言葉に、俺は息を呑んだ。

 彼女も、俺と同じ。

 別の世界で生きていた人間が、遊戯王のキャラクターとして転生した存在。

 そして、今はMCUの世界にいる。

「……どうして」

 思わず呟く。

「どうして、ここに……?」

 ディアベルスターは少しだけ考えるような仕草を見せた。

 そして、ゆっくりと口を開いた。

「……長い話になるけどね」

 彼女の瞳が、どこか遠くを見つめる。

「私がいた世界では、もう全部終わったんだ」

「……終わった?」

「うん。罪宝を巡る戦いも、あの子たちとの旅も……全部」

 その声には、どこか懐かしむような響きがあった。

「いろいろあったけど、最後まで見届けたよ」

 ディアベルスターは小さく笑った。

「だから、今度は少し違う世界を見てみようと思ってね」

「……それで、ここに?」

「そういうこと」

 彼女は軽く頷いた。

 そして、改めて俺を見つめる。

「それで、あなたは?」

「……俺?」

「そう。どうしてこの世界に来たの?」

 その質問に、俺は言葉を失った。

 どうして。

 そんなこと、こちらが聞きたいくらいだ。

「……分かりません」

 正直に答える。

「気がついたら、あのワームホールから落ちてきて……」

「……ワームホール?」

「はい。さっきまで、宇宙人と戦ってました」

 ディアベルスターは一瞬だけ目を丸くした。

 そして。

「……ぷっ」

 小さく吹き出した。

「……え?」

「いや、ごめん」

 彼女は口元を押さえながら笑っていた。

「転生したと思ったら、いきなり宇宙人との戦争に放り込まれたんだ?」

「……そうですけど」

「それはまた……ずいぶん大変だったね」

 そう言いながら、彼女は楽しそうに笑っている。

 こっちは本当に死ぬかと思ったというのに。

「……笑い事じゃないんですけど」

「ごめんごめん。でも、ちょっと想像しちゃって」

 ディアベルスターはひとしきり笑うと、ようやく落ち着いた様子でこちらを見つめた。

「……まあ、安心して」

「……何がですか?」

「少なくとも、私はあなたの敵じゃないよ」

 その言葉に、俺は少しだけ肩の力を抜いた。

 だが、まだ完全には信用できない。

 なにしろ、相手は黒魔女ディアベルスターだ。

 しかも、罪宝狩りの悪魔の物語を終えた後の存在。

 どれほどの力を持っているのか、想像もつかない。

「……それで、何の用なんですか?」

 俺が尋ねると、ディアベルスターは小さく首を傾げた。

「用?」

「はい。わざわざポータルを開いて、俺の前に現れたんですよね?」

「ああ、それね」

 彼女は思い出したように頷いた。

 そして、にっこりと笑った。

「迎えに来たんだよ」

「……迎え?」

「そう」

 ディアベルスターは右手を差し出した。

「この世界で、あなたが一人ぼっちにならないように」

 その言葉に、俺は思わず目を見開いた。

 夕暮れのニューヨーク。

 戦いの傷跡が残る街の片隅で、黒衣の魔女が微笑んでいる。

 その背後には、今も黒と赤のポータルが開かれていた。

 そして、彼女は言った。

「ようこそ、レイ」

 その声は、不思議なほど優しかった。

「私たちの、新しい世界へ」

 こうして、俺の転生初日は終わりを迎えた。

 いや。

 正確には、ようやく始まったのかもしれない。

 閃刀姫レイとしての、新しい人生が。




 最後まで読んでくださりありがとうございます。感想コメントやアンケート、遊戯王に関するアドバイスありましたら是非お願いします。

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  • トライブリゲード×Gog
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