上位存在のイケニエとして差し出された穀潰しの少年、なぜかめちゃくちゃ溺愛される 作:茨木野
レベル2神器、槍。魔力を溜め込み、エネルギーとして再利用できる武器だ。
こいつはとりあえず、背中に回して背負っておくことにする。ルシエラの馬鹿でかい魔力を、いい具合に吸い込んでくれるからな。
「ほんとにありがとうございました」
助けた娘たちが、俺に深々と頭を下げてくる。うーむ。不思議なもんだ。つい数日前まで、村で穀潰しと罵られ続けた俺。まさか、人から感謝されるような日が来るなんて。
なんだか感慨深い。悪くはない。
「気にすんな。誰だって、魔物に食われて死ぬのはごめんだろうからな」
昔、俺の親が魔物に食われて死んだ時、ズタボロになった遺体が送られてきて、なんとも悲しい気持ちになったものだ。それを、この子らの親に味合わせずに済んでよかったよ。
「か、かっこいい」
「あぁ?」
ルシエラがさっと俺の前に立ち塞がり、娘たちを鋭い紅い目で睨みつける。
「調子に乗らないことね、下民。あいたっ」
俺はルシエラの銀色の頭に、軽くチョップを落としておく。
「威嚇しないの」
「ちっ」
ちっ、って。おまえ。
「そうだ、おまえらこんなとこでなにしてんだ?」
「あ、わたしたち冒険者なんです」
「ぼーけんしゃ? ああ。そういや、聞いたことある。金貰って、魔物倒したり、アイテム取ってくる奴らだろ?」
「はい。我々は薬草拾いのクエストを受けて森までやって来たのです」
娘さんの片方が答える。ふむふむ。そして運悪く魔物に襲われたわけだ。
なるほど、冒険者。金を稼ぐ手段ね。必要だったわ。すっかり忘れていたぜ。
生きていく以上、金がいる。金を稼がないといけない。だが俺にはその術を知らない。なら。冒険者はちょうど良い職業じゃあないだろうか。
「ね、聞きたいんだけどさ。冒険者ってどうやったらなれるの?」
「ギルドへ行き、試験に受かればなれますよ」
うーむ。試験か。
「まずいな。俺、通るかな?」
田舎の穀潰しだしなぁ。
「さすがっ!」
と、もう一人の娘さんが声を弾ませて答える。ほえ?
「真に強いお方は、謙遜するのですねっ。たとえすごい力を持っていたとしてもっ」
「は、はぁ」
別に謙遜しているわけではないのだが。
まあいいや。
「よかったら街まで案内しましょうか?」
と、娘さん。
「おお、助かるよ」
「これくらい、命を助けて貰ったお礼にしては、安いもので申し訳ないですけど」
「いやいや、十分だから」
よし、とりあえず金を稼ぐめどは立ったぞ。さあ街へ。って、そうだ。
「おまえらクエストの途中なんだっけ。終わるの待つよ」
娘さんの一人は「それが」と不安げに眉を下げる。
「私たちの探してる薬草、全然見つからなくって」
「ふぅん、どんなの?」
「『隠れ草』っていう、魔力回復薬に使われる薬草なんです」
娘さんが図鑑のようなものをカバンから取り出して、俺に見せる。
ほーん。見た目はただの草だけど、青い色をしていた。
「独特の魔力を放出し、人から見えなくしているっていう特性を持ってるのです」
「へー。そりゃ面倒だ」
探すの大変そうだ。って、ん?
俺は視界の端に、何かを捕らえる。
きら、と茂みの奥で何かが光っていた。
「あれ?」
俺はその光のほうへと歩み寄る。淡く、青く発光しているこれは。
「これ、隠れ草じゃない?」
俺がしゃがみ込んで指を差す。娘さんたちが近づいてくるも、小首をかしげていた。
あ、そうか。人から見えなくなるんだったか。
俺は薬草をつまんで、すっと持ち上げる。
「「っ!?」」
二人とも目を丸くして驚いている。草は摘めば、見えるようになるのか。てゆーか。足元に、そこら中に生えているじゃないか。
「す、すごい。よく見つけましたね」
「いや、そこら中に生えてるしさ」
俺はテキトーにつまんで、ぽいぽいと引き抜く。大量の隠れ草が、あっという間に山と積まれていく。
「しかしなぜ俺にだけ見えたんだろうか」
「反魔力の力でしょ」
と、ルシエラ。あ、そういやこいつ、ずっと俺の腕にひっついていた。
「どういうこと?」
「反魔力は魔力を、魔法を打ち消すわ。だから、この草にかかっていた隠しの魔法を打ち消し、姿を見えるようになったってわけ」
はーんなるほど。俺にそういう姿をくらます魔法は効かないってわけね。
「すごい。あなたは、本当にすごいお方ですっ」
娘さんが尊敬の眼差しで目を輝かせる。うーん、俺がすごいって言うか、反魔力がすごいだけのような気がするがねえ。