これは私が遅いのか、思い付けないだけなのか、はたまたその両方か。
みんなは生き物の解体をしたことがあるだろうか?
私は今世に至ってからやってみたいという意欲が湧いてきた。
理由という理由はないが、何故したくなったかというならば……
性癖の扉を開いてしまった
というのが私の回答だ。
そもそもなんでこんな性癖を開いてしまったのかを言っておこうと思う。
まだ魔法少女になる前……、というより前世の記憶を取り戻すよりも前のことだ。
当時の私は4歳ほどで何でもかんでも興味が湧くし、見たり聞いたりした事象がよく記憶に残るような時期だった。
同い年ぐらいの家でテレビを見ていた時のことだった。
そのテレビのチャンネルはマグロの解体ショーが行われていた。
当時の私はディレクターなどの難しいものはよく理解できなかったが『職人の腕によるマグロの解体』。
それはあまりにも美しい景色であり、締められているのにも関わらずまるで生き物の生命の終点を見てしまったその謎の背徳感が、私の内側に隠れている謎の欲望を解き放った。
これが、私の性癖である解体を開いた。
──そのテレビを見た後、家では魚の解体を行うときはよく手伝ったし、よく動物の一頭買いをねだったものだ。
一頭買いについては金銭的な面やら、管理できないやら、大変やらで消えてしまったが……。
我慢できなかった私はよく命の灯が尽きる寸前の生き物を解体した。
最初は殺してしまっていたが、段々とやっているうちに生命維持をさせたまま解体できる術、経験による知識を身に着けた。
人にはもちろんやらなかったが、その当時は6歳であり、カラスや猫の死体を解体して血まみれになった私が家に帰ったときは、両親はすぐに病院に連れて行ったりしてくれた。
……病院で返り血と両親に医者が言ったあとは、家でしこたま怒られたし、命の授業と称してよく道徳の授業や、動物の狩りの映像何かを見せられた。
怒られたことは地味に今でもトラウマになっている。
と、まぁこれが私の簡単な過去と性癖を開いてしまった理由だ。
あと、今言うのは空気が違うのかもしれないが、今日は面接の日である。
就職目標はもちろん『肉屋』!
しかも、私が就職しようとしているそこは豚、牛、鶏が置いてあるだけではなく、時々
何でも、契約している農場の所有主が所有する山で、先ほど言った鹿や猪や熊などの降りてくる動物を狩った際の肉の解体をそこで行なっているらしい。
しかも、解体した分のうち2割までだったら持ち帰っていいそうだ。
太っ腹だぁ……///
ハッ! いけないいけない、自分だけの世界に入り込んでいた。
さてと……では、行ってきます!
「うッ……ヴぅ……ウゥォォァ……」
「ごめんね、そうなっちゃったら辞めるまで出勤停止だね」
「ワァ……ァ……」
「泣いちゃってる……」
私は今猛烈に呪っている。
目の前にいる店長じゃない。
肉屋でもない。
私が女であることについてだ。
──これは今から1時間ぐらい前に遡る。
私はルンルン気分で
その時、ちょうど目の前で魔法少女とヤヤミミと呼ばれるニチアサのプリ◯ュアに登場するような見た目の怪物が戦いを行っていたからだ。
──《ヤヤミミ/b》
それは、この世界における敵と言ってもいい。
宇宙からの来訪者、人間の闇の具現化、災害の化身、怪獣……。
数えればキリがないほどいろんな説がある。
ただ人間にとって害をなす存在……例えば、異世界物のドラゴンみたいに厄災の化身だったり、魂を抜くやつだったり、人の心の闇を利用したり……能力もいろんなものがある。
だから、たくさんの人が交通事故や老衰、病よりも今ではヤヤミミが原因で亡くなることのほうが多い。
コミカルな名前しているくせに……。
ちなみに見た目がニチアサなやつほど、戦闘能力は弱く、厳ついだったり、見るからにヤバそうなオーラを纏っているやつほど強い。
でも、戦闘能力が弱いやつでも魔法の影響がない物理攻撃弾けるスペックしているから頭オカC。
だけど、それに対して命を賭けて戦う者たちがいる。
それが《b》魔法少女。
魔法少女は2種類ある。
潜在性を見出されマスコットみたいな奴らからほぼ強制的に成らされる『スカウトタイプ』。
自分から魔法少女協会(略称:協会)に赴き、才能があろうとなかろうと命を賭けて戦うことを選んだ『志願タイプ』。
スカウトタイプは今の私の現状みたいに、他の魔法少女の戦闘時を見ているとたまにポンッと出現することがある。
いわゆる巻き込まれタイプといったものだ。
魔法少女の志願タイプは基本的に才能があるかないかなんてわからないから、死んでしまう奴らが多い。
可愛らしい女性たちなのにね。
なら、
それも大きな間違いだ。
スカウトタイプと志願タイプの極めつけな違いは、スカウトタイプは潜在性を見出されるため最低限の才能……が認められている。
だから、今現役で最強とテレビで謳われていた魔法少女もスカウトタイプらしい。
やりたいことがあっただろうに可哀想に。
『死ぬ』の回答がまだだったな。
スカウトタイプは自身の実力を圧倒的に上回っている相手ならば殺される。
そもそもスカウトタイプは初めて魔法少女に変身したときから、ゲームでいう中盤に入れるか入れないかの実力をしている。
つまり、
と、これがこの世界における知らない人物が知っておいた方がいい知識になるな。
ハッ! 私は今誰に説明していたのだ!?
少し怖くなってきたぞ。
──戦いは私は不干渉なのでちょっと横通らせて貰いますね。え? マスコットくん? なになに? 「君からは才能を感じるっぷ!」? ごめん、私今から面接あるから行かなきゃ。バイバイ。……グェ!
はい、逃げられませんでした。
何かチョーカーみたいなの着けられて、「変身ってとなえるっぷ!」とか言ってきやがった。
肉屋に行く前にお前を解体してやろうかな?
でも、なんか口が勝手に動いて……
「ハァァァ!」
「──―」
目の前のヤヤミミに対して放ったステッキは当たることもあるけれど、避けられる方が多い。
「グゥ……!」
「──!」
だけれど相手から打たれる攻撃は打ち損じが少なく、どんどん私の体力を削っていく。
「ハァハァ……」
「──―!」
体力がなくなってきたから休みたいが、止まったら重い一撃を食らわされる。
あぁ、この調子じゃ死んじゃう。せっかく先輩と長生きするって約束したのに……。
──私の名前は
中学2年生の女の子! 夢はケーキ屋さんだったけど、お母さんやお父さん、町のみんなを困らさせているヤヤミミを倒すために魔法少女協会に志願した。
ただ、魔法少女の才能がなかったみたいで、今必死に戦っているけどジリ貧で押されている。
禍々しいオーラもなく、ドラゴンのような強いと感じさせるような見た目もしていない。
言ってしまえば最も弱いとされるヤヤミミ。
人型で黒を基調とした身体に波紋のような白い模様が顔から首ほどまで出ているだけのヤヤミミ。
──通称:ヒトミミ
一番弱い。
だけれど、放っておけば最悪の事態を招きかねない存在。
ヤヤミミは自然発生する。
だから、どこで生まれるかもわからないし、いつ生まれるかもわからない。
だけれど、私は偶然いるのを見てしまったから、魔法少女として戦っているだけに過ぎない。
先輩方と一緒に戦って勝っているから、一人でも大丈夫だろうと高を括ったオチがこれだ。
だからこそ理解した。
今まで、先輩たちは私のような魔法少女と共に戦うとき、大目玉と戦いながらも私の方にも意識を向けていてくれたということを。
必死に身体を動かしているのに、まるで走馬灯のように過去を振り返っている。
体力が底をつき、一瞬止まった瞬間。
「──―!」
「ガハッ……!」
重い一撃がお腹に打たれる。
その衝撃で息ができなくなり、手に持っていたステッキを落としてうずくまる。
「──―」
「ヒッ……」
立て直す間などなく、ヤヤミミの手が私の頭に迫っていた。
私は防御魔法なんて使えないし、少しでも強くなるために用意した武器も手から落ち、抵抗するだけの力などもうなかった。
「──―」
「やめて! こないで! ……こないで! こないで! こないで! こないで!」
ただゆっくりと見えているだけなのか、本当にゆっくり手を伸ばしているのかはわからないけど、だんだんと近づいてくることは変わらなかった。
身体に打ち込まれた痛み、死に対する恐怖、親しい人と二度と会えない絶望。
それらが私に襲いかかり、まるで鉛のように重くなったその脚を……私は引きずることもできず、ただ言葉を綴るだけになってしまった。
「──―」
「いや! イヤ! イヤァ「──変身……」ァァ!!!」
耐え切れず目をつむり、両腕で頭を守ろうとしたその瞬間だった。
突如風が吹き、私に手を伸ばしていたその存在を一刀両断で斬り伏せた。
見たこともない魔法少女だった。
その手には白く淡い光を放っている斧を持ち、顔は何かを被っているようで見えなかったが、その存在を私ははっきりと認識した。
──それはまるで、天使のようだった。
翼があるわけでもなく、服も全て白で統一されていて光を放っていたからよくわからなかった。
だけど、命が危ない時に助けてくれたというその現実が私にとっては救いをもたらしてくれる存在に見えた。
どうやらその時、私の身体は色々なもので限界の域にあったらしく、私は背を地面に倒して意識を失った。
無理矢理変身させられて、逃がしてくれなさそうだったから、取り敢えずヤヤミミを切った。袈裟斬りだ。
何故殴るでも蹴るでもなく、斬るという動作を選んだのかはわからない。
多分、手に持っている
そして思うことがあった。
「ヤッッベェ……殺っちまったよ」
斬れば死ぬ。
プラナリアみたいなやつでもない限り大抵そうだ。
そして、今私は人型のヤヤミミを殺した。
「返り血も付いちまったし……これじゃ面接で怒られちまうよぉ!」
「ぷ? どうしたぷ?」
見た目がめっちゃ熊に見えるから解体したい。
「どうもこうもあるか!? 私は殺っちまったんだ! しかも、服にもこんなにベットリと返り血が付いて……」
「それなら安心するぷ。ヤヤミミは倒されると消えるぷから」
「へ?」
私がもう一度そっちに向くと傷の部分から少しずつ粒のようにバラバラになっていっているのがわかった。
「マジじゃん」
「これがヤヤミミぷ。さて、初仕事も終わったし、協会にいくぷ〜」
「何言ってんの? 私は今から面接があるから、行くわけないっしょ!」
「……ぷ? …………ぷ!? それは困るっぷ! 魔法少女は協会に行くことが義務っぷ!」
「勝手に魔法少女にしといて予定変えろたぁ、いい度胸だ! 表出ろ!」
「ここが表ぷ」
マスコットにツッコまれた。
これは! 私史上! 最大の! 尊厳破壊!
「クソ……クソ……」
「豊かな人ぷ」
「……解体してやろうか?」
ボソッと言った俺の言葉にマスコットは聞き取れなかったみたいで「何言ったぷ?」と何度も俺に聞いてきた。
うるせぇ!
そうして、私は解除方法もわからないまま人目を避け、肉屋の面接へ行った。
「やぁ、君が電話で応募してくれた子かな? 最近はこういう職業に就く子が少なくて困っちゃうよ。面接はなしでもううちで働いてもらってもぉぉぉ!!?!??」
「? どうしたんですか?」
先ほどまで糸目だった店長が開眼した瞬間、驚いてた。
やべぇwこの感覚クセになりそうw
「どうしたもこうも血だらけの娘見たら普通驚くでしょう! しかも、顔隠してるし! 斧持ってるし!」
「あぁ、これですか? この
「ぷ!?」
そして、私はありのまま(魔法少女のことは語らず、自分にのみの)起こったことを話した。
「なるほどね。変身させられてヤヤミミを倒したと」
「そうですね。この血もヤヤミミのものです。なんか落ちませんけど」
普通死体がなくなるんなら血もなくなるやろ。
どうなってんコレは。
「…………ごめんね。やっぱ不採用で」
「えぇ!? 何故ですか!? さっきは今日から働いてって!?」
「魔法少女が副業しちゃダメだし、うちで雇ってもバレたらうちの店まで営業停止食らっちゃうし、何より素顔を晒してない時点で怖いし」
「うグッ!?」
店主さんが言っていることが全て事実なのが私の心にグサグサと刺さってくる。
魔法少女は協会で登録、そしてヤヤミミが出てきた緊急時に出動しなければならない。
そのためには、副業は完全に禁止され、常に出動できる体制を作っておかねばならない。
また、ヤヤミミが自身の実力以上の場合があるため、しっかりと訓練しないといけないということもある。
その他にも、他の魔法少女と面識、協力関係を作っておかないと、嫌われていたら、助けられなかったり、邪険にされたり、結構嫌なことがある。
あ、前世からの陰属性が出てきちゃう……。
「でもー!!! やりたいんですぅぅぅ!!!」
私は涙を流したながら訴えた。
フリじゃない。
ガチだ。
そうすると効いたのか店主さんは言った。
「うッ……ヴぅ……ウゥォォァ……」
「ごめんね、そうなっちゃったら辞めるまで出勤停止だね」
「ワァ……ァ……」
「泣いちゃってる……」
魔法少女はその名の通り性別が女でなければなれない。
たまにバグが存在するらしいが……。
前世は男だった。
それも相まって、私は女であることを心の底から呪った。
紗連 甲枚(され こうめ)
年齢:17
魔法少女にさせられた悲しき少女。
コレがなかったらたくさん性欲を満たせたろうに可哀想に。
人には手を出すなよ?
見た目は、黒髪、短髪、長身を兼ね備えた美少女とは言わないけど、こいつの可愛さは俺だけが知っているみたいなのを思わせる見た目。
解体したすぎて、魔法少女形態の時、基本ラリってる
桃色 奈灑(ももいろ なさ)
年齢:14
家族や知り合いが多少なりとも被害に遭ってるからどうにかしたいと思って志願した。
才能がないとは言わないけど、大器晩成型だから、まだまだ未熟だった。
見た目は、ピンク髪、短髪、身長は157センチぐらい。顔はお目々まん丸、お顔まん丸してる。ハムスターみたい。属性的には陽属性。
魔法少女時はめっちゃステッキ振り回してる。隙多い。まだまだ未熟。
肉屋の店主
年齢:67
見た目はツルッパゲにふくよかな体型で、少しおヒゲ生えてる。
実はこの年まで生き残ってるし、地味に本人性能が高い。あと怒らせるとたまに本当か嘘か分からないタイプの怖いこと言う。