私!
バイトの面接に行った朝に戦いに巻き込まれて(?)魔法少女になっちゃった!
バイトは実質幽霊、魔法少女も辞められない……。
怖くて逃げちゃった後は、最強の魔法少女に出会っちゃった*4!? 緊張して逃げてきちゃったらわかんないとこに……。
でも、人がいたからきっと大丈夫! *5近づくから逃げちゃうから追いかけて行く*6と、そこはまさに研究所! *7
彼に追いつくと、彼が小道具を持って私に撃ってきた!? *8つい驚いて飛んできた光を相手の足に返しちゃった! *9
私も持ってた小道具*10を笑って彼に当てようとしたんだけど*11、止められちゃった……。*12
と、流れで回想流してみたが、まるでアニメのようだ。
スピード感が。
だってまだ魔法少女になって1日目ぞ!? こんな濃い魔法少女人生送ってんの私だけだわ絶対!
…………ふざけて気持ち抑えようとしたけど無理だわ。
身体隠して頭隠さずの状態でいるし、なんなら長めの髪が前にも垂れてるから顔見させてないからこっちからも顔ほとんど見えないけど、あの水色に近しい髪色、魔法少女化して下がった私とは対照的に高い身長、万力の握力、見られている側が狩られるものだと認識するようなこの鋭い目。
他にもあるあまりにも該当する要素の多い魔法少女。
これ最強さんだ。
名前はほぼ聞き流してたからわかんないけど、最強さんだ。
怖ぇ……。
蛇に睨まれた蛙ぐらい身体が悪寒を感じている気がする。
初めてだぜこんな感覚は。
待てよ? 私は今、魔法少女になってしまっているわけだから、上司*13であり、先輩であり、最強であり、みんなの憧れとなる対象に対して刃物向けてる???
…………。
…………。
…………。
──―めっちゃヤバいやん!? *14
このままじゃ、魔法少女総出による社会的制裁を受ける可能性はおろか、肉屋にバイトなんて出来ねぇじゃん!!!
……顔が完全にバレてないうちに逃げよ。
能力を使い、私はすぐさまこの廃墟街から抜けた。
何故さっさとしなかったからって?
ここなら人も解体できる治外法権だと思ったんだよ!
人で出来なくても、なんかヤバいヤツらがうじゃうじゃいたらソイツらを解体もできるだろうし…………、損のない冒険だと思ったんだけどな。
非常に残念だ。
そして、すぐに魔法少女を解除して歩いて帰路に着いた。
途中で他の魔法少女や人に見られちゃったって、正体がバレたらヤバいからね。
──―あの存在は何だ……?
私はつい先程までこの指で摘んでいた斧ごと消えた白い女性の姿をした謎の存在について考えていた。
魔法少女ではないな。
魔法少女とは人を守るもの。
襲うなんて言語道断。
ならばヤヤミミか?
だが、過去に先人たちが遺した資料や、私が今まで戦ってきたヤヤミミの全てを鑑みても、白い個体などはただの一回たりとも鉢合わせることはなかった。
ならば、ヤツは何だ?
能力を使っていた。
故に魔法少女かヤヤミミだと考えられる。
だが、どちらにも当てはまらない。
一体何故だ?
何なんだ?
分からない。
新たなヤヤミミの線も考えられる。
突如この世界に出現したバグのようにも思える。
考えれば考えるほど分からない。
だが、魔法少女の線はほぼ完全に消していい。
魔法少女ならば、協会に行くことが義務だ。
行かなければ、本部の権力持ちが来て、その魔法少女を強制的に協会に連れて行く。
何故ならば野良の魔法少女ということはそれは全て『選ばれし魔法少女』と判断できる。
そんな逸材を協会が逃がすはずもない。
だから、連れて行くのだ。
ただ、昨日まで普通の少女だった娘たちを、鍛え上げられていない心で、身体で、死ぬまで働けと言うのだ。
考えるだけで憤りを感じるが、本部が来ていないということは、協会には既に行っているということになる。
それに、もし登録されているなら、私が記録を見た時に一発で予想がつくが、協会にはあのような能力を持った魔法少女のデータはなかった。
それ故に外れる。
そんな時、私の視界の端に男が映った。
先ほど謎の存在に襲われていたの被害者だ。
ここは立ち入り禁止区域。
本来ならば、人は居ないはずなのに何をしていたのだろうか?
だが、大抵は予想がつく。
ヤヤミミを殺すためか、魔法少女を殺すため。
私たちは恨みを買っている。
そのほとんどが逆恨みだ。
勝てないヤヤミミに大切な存在が奪われ、魔法少女がそのヤヤミミを倒す。
魔法少女は被害が少しでも出れば、巻き込まれた人や遺族から恨まれ、倒したとしても、人々が少しでも勝てる可能性が高い魔法少女にはどうしてもヤヤミミに向けなければならない殺意が向けられる。
だから、たびたびこのように立ち入り禁止区域でこのような真似をする人がいる。
もう慣れた。
私は辺りを見渡して感じた。
──一人ではない。
一人でこんなに研究や開発を行えるわけがない。
少なくとも3人は欲しい施設だ。
私は警戒を悟られぬように聞いた。
「他に人は?」
その問いには思い掛けない答えが返ってきた。
「いません。一人です」
「……は?」
「俺は10年前この地で大切な人を亡くしてから、努力を続けてきました。この研究施設は俺が…………お前に対して殺してやりたいと思う殺意から繋がった行動だぜレビューア」
……そうか。
彼は私が遅れてしまったがために……失った人だったのか。
私は両手を顔の横まで上げ、彼に言葉をかけた。
「10年前……。私が今とは比べものにならないほど未熟な時だ。この地でクニミミが突如として発生し、十数万を超える人々が死んでいった。当時の私は精神ばかり成熟し達観し、悟った気になっていた。……あの失態から私は最も大きく変わり始めた」
それでこそ、今では最強と呼ばれるまでに。
彼は黙っていた。
何を考えているかだいたい予想は付くが、決して彼は口には出さない。
「君の復讐。是非やってくれ。君の家族を失わせてしまったのは私の責任だ。全て私にある。だか「黙れッ!!!」ら」
彼の叫びが強く私の心を引っ張っていた。
彼は持っている銃をこちらに向け、震えた手で今までの思いをぶつけるかのように思いを吐き出した。
「俺の10年の思いを……、お前に対する殺意を……、ヤヤミミに対する憎悪を……。全て復讐の一言で片付けるな! 俺はお前たちみたいに魔法は使えないし、戦う意思もない……。ただ理不尽にあって、恨める対象を恨んで、声を上げることすら出来ない弱者だ! だが、弱者であるからこそ! この思いが完全に冷めることはなかった! 殺意が完全に消えることはなかった! 思い返せば思い返すほど、どんどん怒りの渦を飲み込まれそうになる。だけれど今でも大切に思える人がいるから、後戻り出来ない行動に実践出来ていないだけだ!」
そう叫ぶ彼の瞳は潤っていた。
「だが心が落ち着いて思い返せば仕方なかったと納得できてしまう……。だがその納得をしてしまったらアイツらの死は肯定されることになるのか? ならないだろ! アイツらはまだ死ぬには早すぎた! これから伸ばせる未来を摘まれた! 思えば思うほど脳裏にこびり付いてくる」
そんな彼は銃を捨て、拳を作り、私に向かって走ってきた。
「俺は! 本当はこの行き場のない気持ちを抑えつけたかったんだ!」
そう叫ぶと同時に彼の拳は私の頬に強くめり込んでいた。
私は力なく、後ろに倒れそのままの勢いで地面に強く衝突した。
彼の思いが詰まったものを受け身を取ったり守ったりしたら、それは彼に対する侮辱につながると思ったからだ。
「……そうか」
お互いが一言も話せなくなり、沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは私からだった。
「君は私を殺せれば満足するか?」
「……何を急に……」
「君が私を殺して満足できるなら、魔法少女協会で働いてくれないかと思ってな」
「!? なにをバカなことを!?」
「何もおかしなことじゃない。私は最強の魔法少女と呼ばれている。それ故か妬まれ、恐れられ、恨みを抱いているものも少なくない。そんな感情を持っているのは魔法少女の中にもいるだろう。もしかしたら君に協力してくれるかもしれない」
「…………」
「そして何より魔法少女として、最強の人物として君という科学者が欲しい! この成果まで持ってくるにはとんでもない努力と才能を持っていたに違いない! 後ろから刺したって、寝首をかいたって私はとっさに身体が動くほど危機能力が高い。そのことを知らなければ君はこれから先も私を殺すという手を考えても私に届くことはない」
「…………」
「ならば! 殺したいと思っているほど憎んでいる相手を間近で観察できて殺すことさえ可能な武器を作るほうが簡単ではないか!? より能力に、魔法少女に詳しい人物たちと協働すればどんなに私たちが離れていったって、引きずり下ろせる! 追い越せる!」
そして、私は手を差し出す。
「だからこの手を取れ!」
「…………その手には乗れない。いや、乗りたくないってほうが正しい。俺はお前を殺したい程に憎んでいる。だからここまでやった。だからここまで頑張れた。だがさっきのバケモンと急に現れたお前に俺は反応できなかった。勝てなかった。心の中で既に諦めていた。だからその手を握ることは俺の過去を否定するようで握れない。だが、選択肢なんて1つしかないんだろう。なら俺は少なくともお前を殺すまでは背後から力をつけさせてもらう」
そう言って彼は手を握った。
「交渉は済んだ。後日近くの協会に行くといい。君を歓迎するように私から言っておこう」
「……」
そして私は彼に背を向け歩き出した。
彼は何も言わず、持っていた銃を上げることもなく、ただ私の背を見ていた。
正直タイトル詐欺師すぎの部分と、他に面白そうな案が思いついてきたから(どうせすぐに迷う)消そうか迷う