光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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オリモンでます。
挿絵にはAI生成画像を使用しています。




第25話 地下階層の珍獣・ダンディー

 

地下階層・第五十七層

 

地上の攻略とは別に、レイは今日も一人で地下階層の探索とレベリングを続けていた。

 

昨日は、少々恥ずかしい失敗をしてしまった。

 

アスナと間違えて、見ず知らずの女性に話しかけてしまったのだ。

 

思い出すたびに、何とも言えない気分になる。

 

「……最悪だ」

 

小さく呟き、レイは頭を振った。

 

いつまでも引きずっていても仕方がない。

 

今は目の前のことに集中するだけだ。

 

そう考え、レイは迷宮の奥へと足を進めた。

 

地下階層は、地上の迷宮とは構造が異なる場所も多い。

 

一見すると普通の通路でも、進んだ先に思いもよらない仕掛けが待ち受けていることがある。

 

出現するモンスターも独特で、地上では見たことのない能力を持つ個体も少なくなかった。

 

だからこそ、レイにとっては格好のレベリング場所だった。

 

誰にも知られていない場所で、一人黙々と強くなる。

 

それが、今のレイの日常である。

 

「……次は、あっちか」

 

分岐路の先に見えた扉をくぐる。

 

その先には、広々とした円形の部屋が広がっていた。

 

天井は高く、壁には装飾らしき模様が刻まれている。

 

床の中央には何もなく、モンスターの姿も見当たらない。

 

一見すると、ただの広間だ。

 

しかし、こういう場所ほど油断はできない。

 

レイは剣を構えたまま、慎重に室内を見渡した。

 

「……何もいないな」

 

そう呟いた、そのときだった。

 

「ダンディー……ダンディー……」

 

奇妙な声が響いた。

 

レイは動きを止めた。

 

声のした方向へ視線を向ける。

 

部屋の中央付近。

 

そこに浮かんでいたのは、金色に輝く球体だった。

 

大きさはバスケットボールほど。

 

表面は太陽のように眩しく輝いており、その正面には黒いサングラスが掛けられている。

 

球体はゆっくりと上下に浮遊しながら、同じ言葉を繰り返していた。

 

「ダンディー……ダンディー……」

 

「…………」

 

レイはしばらく、その奇妙な存在を見つめた。

 

モンスターであることは間違いない。

 

しかし、どう見ても普通ではない。

 

太陽のような球体にサングラス。

 

しかも、ダンディーとしか言わない。

 

「……何だ、お前は」

 

レイが声を掛けると、球体はぴたりと動きを止めた。

 

次の瞬間。

 

「おおっ! 我が存在に気づくとは、なかなか見る目があるではないか!」

 

やけに芝居がかった声が響き渡った。

 

「我輩こそ、太陽の如き輝きを放つ至高の存在! その名も――ダンディー!」

 

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「…………」

 

「見よ! この完璧なるフォルム! この黄金の輝き! なんたる美しさ……!」

 

球体はくるりと回転した。

 

「なんという曲線美! 我ながら惚れ惚れする!」

 

「……球体に曲線美も何もあるか」

 

「何を言う! この滑らかな曲線こそ、至高の芸術であろう!」

 

「……自分で言うな」

 

「ふっ……美しさとは、罪なものだな」

 

ダンディーは、まるで自分の美しさに酔いしれているかのように、ゆっくりと回転を続けていた。

 

その様子からは、こちらを警戒している様子など微塵も感じられない。

 

むしろ、自分の姿を見せつけることに夢中らしい。

 

「今日も我が肉体は美しい! 昨日よりも、さらに美しい!」

 

「……誰も聞いてないぞ」

 

「聞いていなくともよい! 我輩自身が理解しているのだからな!」

 

「……そうか」

 

レイは剣を握り直した。

 

会話を続けても、まともな答えは返ってこないだろう。

 

ならば、さっさと倒して先へ進むだけだ。

 

レイが一歩踏み出した瞬間、ダンディーの動きが変わった。

 

「おや? 我輩の美しさに見惚れるだけでは飽き足らず、挑んでくるというのかね?」

 

「……倒す」

 

「よかろう! ならば、その身をもって知るがいい! 我が圧倒的な美と力を!」

 

ダンディーの表面が強く輝いた。

 

次の瞬間、球体の正面から一本の光線が放たれた。

 

「っ!」

 

レイは横へ跳んだ。

 

光線は床を貫き、激しい光を散らす。

 

直撃こそ免れたものの、その威力は明らかだった。

 

「ほう! 今のを避けるか! なかなかやるではないか!」

 

ダンディーは感心したように声を上げた。

 

「だが、我輩の輝きはこんなものではない!」

 

再び、金色の光が球体に集まる。

 

今度は一本ではない。

 

複数の光線が、ほぼ同時に放たれた。

 

レイは身を低くし、横へ滑るように移動する。

 

一本目を避ける。

 

続く二本目を剣で弾く。

 

しかし、光線はそのまま壁へと飛び、壁面に当たった瞬間、角度を変えて跳ね返ってきた。

 

「……っ!」

 

レイは咄嗟に身を捻った。

 

反射した光線が、先ほどまで頭のあった位置を通り抜けていく。

 

さらに別の光線が床に当たり、そこから跳ね返ってレイの足元へ迫った。

 

前からだけではない。

 

壁や床を利用して、あらゆる方向から攻撃が飛んでくる。

 

一度避けたからといって、安全とは限らない。

 

むしろ、避けた先に次の光線が待ち構えていることさえあった。

 

「ふははははっ! どうだね! 我が輝きは!」

 

「……攻撃中に何を語っているんだ、お前は!」

 

レイは光線を避けながら距離を詰めた。

 

一気に懐へ入り、剣を振るう。

 

しかし、ダンディーは軽やかに浮かび上がり、斬撃を回避した。

 

「おっと! 危ないではないか! 我が美しき肉体に傷がついたら、どうしてくれるのだ!」

 

「……戦う気があるのか、お前!」

 

「もちろんだとも! 美しさと強さ! この二つを兼ね備えてこそ、真のダンディーなのだ!」

 

「……そんな美学は捨ててしまえ!」

 

「ゴバーーーッ! 美学を捨てるなど、我が辞書には存在せぬわ!」

 

「……辞書以前の問題だろ!」

 

思わず声を荒らげながらも、レイは攻撃の手を緩めなかった。

 

見た目も言動も、どうしようもなくふざけている。

 

だが、相手の実力は本物だった。

 

光線の威力は高く、速度も十分に速い。

 

さらに、壁や床で反射する性質が厄介だった。

 

攻撃を避けるだけでも神経を使ううえ、反射する方向を読み違えれば、逃げ道を塞がれてしまう。

 

一瞬でも判断を誤れば、大きなダメージを受けかねない。

 

「……面倒な相手だな」

 

レイは小さく呟いた。

 

その間にも、ダンディーは自分の美しさを語り続けていた。

 

「見よ! この輝き、この存在感! まさに芸術!」

 

「……ただの金色の球体だろ」

 

「ただの球体ではない! 太陽の如き輝きを宿す、至高の肉体である!」

 

「……言い方を変えただけじゃないか」

 

「そして、このお洒落サングラス!」

 

ダンディーは、わざとらしく顔を傾けた。

 

「わかるかね、このお洒落サングラスの良さが?」

 

「……ただのサングラスだろ」

 

「何という無理解! この絶妙な角度……これぞ究極のお洒落!」

 

「……角度も何も、顔の正面に掛かっているだけだ」

 

「太陽たるもの、サングラスにも妥協は許されぬ!」

 

「……太陽とサングラスに何の関係がある」

 

「この黒光りするレンズ……たまらぬ!」

 

「……聞いてないな、こいつ」

 

「ふっ……このサングラスが、我がダンディズムを完成させるのだ!」

 

「サングラスが本体? 失敬な! 我が肉体こそが本体である!」

 

「……まだ何も言ってないだろ」

 

ダンディーは勝手に盛り上がっていた。

 

レイは額を押さえたくなったが、戦闘中にそんな余裕はない。

 

「……その余裕、いつまで続くかな」

 

レイは一度距離を取り、相手の動きを観察した。

 

光線の威力も、反射する性質も厄介だ。

 

正面から攻めても、ダンディーは浮遊して斬撃を避ける。

 

ならば、攻撃を放つ瞬間を狙うしかない。

 

レイは剣を構え、ダンディーの動きに意識を集中させた。

 

球体の表面が輝く。

 

光線を放つ直前、ほんの一瞬だけ動きが止まる。

 

そのわずかな隙を見逃さなかった。

 

「……そこだ!」

 

レイは床を蹴った。

 

光線が放たれる直前、ダンディーの懐へと踏み込む。

 

剣を振り抜く。

 

刃が球体の表面を捉え、金色の光が弾けた。

 

「おおっ! 我が美しき肉体に傷をつけるとは!」

 

「……傷がつくなら、斬れるってことだ」

 

レイは追撃を仕掛けた。

 

二撃目

 

三撃目

 

攻撃を放つ直前の隙を狙い、短い間隔で剣を叩き込む。

 

ダンディーの表面に、小さな亀裂が走った。

 

「ぬぅっ! おのれ! 我輩の完璧なるフォルムが!」

 

「……自分の心配ばかりしているな」

 

「当然であろう! この美しさは、世界の損失に直結するのだ!」

 

「……大げさすぎる」

 

レイはさらに剣を振るう。

 

しかし、ダンディーも黙ってはいなかった。

 

「よかろう! そこまで我が美しさを理解したいというのなら、特別に見せてやろう!」

 

「……理解したいなんて、一言も言ってないぞ」

 

「ふっ……照れる必要はない!」

 

「……話が通じないな」

 

ダンディーの全身が、これまで以上に強い光を放ち始めた。

 

その光は球体の周囲に集まり、部屋全体を黄金色に染め上げていく。

 

レイはすぐさま距離を取った。

 

今までとは明らかに違う。

 

これから何か、大きな攻撃が来る。

 

そう直感した。

 

ダンディーはゆっくりと回転を始めた。

 

ダンディーは、誇らしげに声を張り上げた。

 

「我が肉体よ、天高くそびえ立ち、優雅に佇め!」

 

「……いや、浮いてるだろ、お前」

 

思わずレイがツッコミを入れる。

 

しかし、ダンディーはまったく気にした様子もない。

 

「ふっ……見よ! 我が肉体が織りなす、究極の美を!」

 

回転速度が上がっていく。

 

球体の周囲に光が集まり、無数の光線が放たれる寸前の輝きを見せた。

 

「必殺――ダンディズム・レイ!」

 

次の瞬間、ダンディーが高速で回転した。

 

同時に、全方向へ向けて無数の光線が放たれる。

 

【挿絵表示】

 

 

「っ!」

 

レイは即座に走り出した。

 

光線が床を穿ち、壁に当たって反射する。

 

反射した光線が別の光線と交差し、さらに別の壁へと飛んでいく。

 

部屋の中を、金色の光が縦横無尽に駆け巡った。

 

逃げ場がない。

 

正面から迫る光線を避ければ、背後から反射した光線が迫る。

 

横へ跳べば、床に当たった光線が進路を塞ぐ。

 

一つ一つを見極めて避けているだけでは、いずれ追いつかれる。

 

「ふはははははっ! どうだね! これぞ究極のダンディズム!」

 

「……攻撃に集中しろ!」

 

「何を言う! 戦闘中こそ、己の美学を貫くべきであろう!」

 

「……だから、そんな美学は捨てろ!」

 

レイは壁際へ走り、迫ってきた光線を身を捻って避けた。

 

直後、反射した光線が背後から迫る。

 

剣を振るい、軌道を逸らす。

 

その隙に床を蹴り、ダンディーとの距離を詰めようとした。

 

だが、回転する球体からは、途切れることなく光線が放たれている。

 

近づくことさえ容易ではない。

 

「なんたる美しさ! なんという輝き! 我が肉体は、まさに至高の芸術!」

 

「……自分で実況するな!」

 

レイは光線の隙間を見極めながら、少しずつ前進した。

 

攻撃の勢いは凄まじい。

 

しかし、回転している以上、光線の軌道には一定の規則性がある。

 

完全に無秩序に放たれているわけではない。

 

レイは反射する光線の角度を読み、次に空間が空く瞬間を探った。

 

一瞬。

 

ほんのわずかに、光線の密度が薄くなる。

 

「……そこだ!」

 

レイは床を蹴り、全力で飛び込んだ。

 

迫る光線を紙一重で避け、剣を振り抜く。

 

刃がダンディーの表面を深く捉えた。

 

「ぬおおおおっ! 我が美しき肉体にぃぃぃ!」

 

ダンディーの回転が乱れた。

 

放たれていた光線が途切れ、球体の表面に亀裂が広がっていく。

 

レイは着地と同時に体勢を立て直し、間髪入れずに踏み込んだ。

 

「……これで終わりだ!」

 

最後の一撃が、亀裂の入った球体を斬り裂いた。

 

金色の光が一気に膨れ上がる。

 

「我が肉体のまこと美しきこおぉぉぉぉぉー!!」

 

断末魔の叫びとともに、ダンディーの身体が弾けた。

 

光の粒子が部屋中に散り、やがて何もなかったかのように消えていく。

 

静寂が戻った。

 

レイは剣を下ろし、しばらくその場に立っていた。

 

「…………」

 

敵は倒した。

 

それは間違いない。

 

しかし、どうにも釈然としなかった。

 

強かった。

 

攻撃は厄介で、最後の必殺技は一歩間違えれば危険だった。

 

実際、攻略にはかなりの集中力を要した。

 

それなのに、戦闘中の言動があまりにも妙だったせいで、達成感よりも疲労感のほうが強い。

 

「……何だったんだ、あいつは」

 

当然、返事はない。

 

先ほどまで自分の美しさを延々と語っていた球体は、もうどこにもいなかった。

 

レイは小さく息を吐いた。

 

「……まあ、強かったのは確かだな」

 

妙な相手ではあったが、油断すれば危険なモンスターだった。

 

今後も地下階層を探索するなら、あの光線には注意が必要だろう。

 

特に、あの回転攻撃。

 

一人で戦う以上、あれをまともに受ければ大きな損害になりかねない。

 

レイは頭の中で戦闘を振り返り、攻撃のタイミングや避け方を整理した。

 

そして、いつものようにエリアを後にした。

 

◇

 

レイは一人、地下階層の通路を歩いていた。

 

戦闘で消耗した分、今日はもう無理をする必要もない。

 

十分な成果は得られた。

 

あとは拠点へ戻り、次の探索に備えるだけだ。

 

「……まったく、妙な相手だったな」

 

ふと、先ほどの戦闘が頭をよぎる。

 

金色の球体。

 

黒いサングラス。

 

そして、何度も繰り返された自画自賛。

 

『なんたる美しさ……!』

 

『なんという曲線美!』

 

『今日も我が肉体は美しい!』

 

『わかるかね、このお洒落サングラスの良さが?』

 

思い返すだけでも、妙に耳に残る言葉ばかりだった。

 

「……最後まで、自分の美しさしか考えていなかったな」

 

レイは呆れたように呟いた。

 

そのまま歩き続ける。

 

しばらくして、何を思ったのか、ふと自分の手に視線を落とした。

 

「……まあ、我が肉体ほどではないがな」

 

ぴたり、と足が止まった。

 

「…………」

 

レイは自分の手を見つめた。

 

そして、何事もなかったかのように視線を戻す。

 

「……何だ?」

 

特に変わったことはない。

 

いつも通りの自分だ。

 

そう判断すると、レイは再び歩き始めた。

 

「……くだらない。さっさと帰るか」

 

本人は気づいていない。

 

今の言い回しが、先ほど倒したモンスターのものにそっくりだったことに。

 

そして、さらにしばらく歩いた頃。

 

「……ダンディー……」

 

小さな呟きが、地下階層の通路に響いた。

 

レイは歩みを止めない。

 

「……ダンディー……ダンディー……」

 

まるで、覚えた言葉を無意識に口ずさむように。

 

本人にとっては、特に意味のない独り言だった。

 

ただ、先ほどの戦闘が妙に印象に残っていただけ。

 

そう思っている。

 

「……ダンディー……」

 

レイは最後まで、自分が何を呟いているのかを気にすることなく、帰路を進んでいった。

 

こうして、地下階層でのレベリングを終えたレイは拠点へと戻っていく。

 

最強のソロプレイヤーを苦しめたのは、圧倒的な威力を誇る光線と、反射を利用した恐るべき必殺技。

 

そして、もう一つ

 

サングラスを掛けた、あまりにも自分の美しさを信じて疑わない珍獣だった。

 

その奇妙な言葉は、知らず知らずのうちにレイの中へと染み込み始めていた。

 

……もっとも、本人がその異変に気づくのは、もう少し先のことになる。





ダンディーが大爆発し誕生!

【挿絵表示】
珍獣・ダンディー

【挿絵表示】
ダンディズム・レイ
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