光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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第37話 ガーン!!

 

 

第五十層

 

今日は、レイを含めた8人で待ち合わせをしていた。

 

待ち合わせ場所には、アスナ、キリト、リズベット、シリカ、クライン、エギル、そしてユイが集まっていた。

 

残る1人、レイだけがまだ来ていない。

 

「レイ君、まだかな?」

 

アスナは、通りの向こうへ視線を向けた。

 

今日は8人で行動する予定だ。

 

いつも皆で集まるのも楽しい。

 

けれど、最近はレイと2人きりで会う時間も増えていた。

 

先日の約束を思い出すと、どうしても頬が緩みそうになる。

 

(……また2人で会おうって、言ってくれたんだよね……)

 

「アスナ、なんか嬉しそうだな?」

 

クラインがニヤニヤしながら言った。

 

「えっ!? そ、そんなことないわよ!」

 

「いやいや、顔に出てるって!」

 

「クラインさん!」

 

アスナが頬を赤くして睨む。

 

リズは、そんな2人を見て楽しそうに笑っていた。

 

「まあまあ。アスナが嬉しそうなのは、いいことじゃない」

 

「リズまで……!」

 

「ふふっ」

 

ユイも不思議そうにアスナを見上げた。

 

「アスナさん、嬉しいことがあったんですか?」

 

「え、ええっと……それは……」

 

「秘密だそうだ」

 

キリトが、事情を知らないまま適当に口を挟んだ。

 

「キリト君まで!」

 

一同の笑い声が響く。

 

そんな、いつもどおりの賑やかな時間だった。

 

――そのとき。

 

「だから、何度も言っているだろう。俺は誰かの下につくつもりはない」

 

聞き覚えのある声が、少し離れた場所から聞こえてきた。

 

「……あれ?」

 

アスナが顔を上げる。

 

レイの声だ。

 

一同が声のした方向へ視線を向けた。

 

そこには、黒い装備を身につけたレイがいた。

 

そして、その隣には――1人の女性プレイヤーがいた。

 

長い赤茶色の髪。

 

整った顔立ち。

 

女性としては背が高く、身につけている装備も実用性を重視したものだった。

 

腰には、立派な剣が1本。

 

その女性は、レイに向かって親しげに笑っていた。

 

「まあまあ、そう言わないでよ。あなたほどの実力者なら、私たちと組んだほうが絶対に面白いって!」

 

「興味がない」

 

「またまた。そんなこと言わずにさ!」

 

女性は、まるで昔からの知り合いであるかのように、レイの肩へ腕を回した。

 

「ね? ちょっとくらい考えてくれてもいいでしょ?」

 

「…………」

 

レイは、心底面倒そうな顔をしていた。

 

しかし、女性はまったく気にしていない。

 

むしろ、さらに楽しそうに笑っている。

 

その光景を目にした瞬間。

 

アスナの顔から、笑みが消えた。

 

「……あ」

 

小さな声が漏れる。

 

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。

 

レイが、知らない女性と親しげに話している。

 

しかも、肩を組んでいる。

 

自分だって、レイと一緒に過ごす時間が増えてきた。

 

けれど、あんなふうに自然に触れられるほどの関係ではない。

 

それなのに、目の前の女性は当たり前のようにレイの肩へ腕を回していた。

 

(……あの人、誰……?)

 

アスナの表情が、みるみるうちに曇っていく。

 

そんな彼女の様子に気づかず、リズが女性を眺めながら首を傾げた。

 

「おんや~?」

 

そして、ニヤリと笑う。

 

「もしや、あの2人……付き合ってるとか~?」

 

「…………っ」

 

アスナの肩が震えた。

 

「えっ、アスナ?」

 

リズが、ようやく彼女の様子に気づく。

 

アスナの瞳から、涙がこぼれ落ちていた。

 

一滴。

 

また一滴。

 

止めようとしても、止まらない。

 

「……うっ……」

 

「ちょ、ちょっと! アスナ!?」

 

リズは慌ててアスナの肩を抱いた。

 

「ご、ごめん! 今のは冗談! 本気で言ったわけじゃないから!」

 

「……っ、うぅ……」

 

「アスナ、落ち着いて! ね? まだ何も分からないじゃない!」

 

しかし、一度あふれた涙は止まらなかった。

 

アスナは口元を押さえ、俯いた。

 

(……そっか……)

 

(レイ君にも……好きな人が……?)

 

先日、2人で食事をしたときのことが脳裏をよぎる。

 

『たまには2人だけも良いな』

 

『なら、また2人で会おう』

 

あの言葉が、どれほど嬉しかったか。

 

何度も思い返しては、そのたびに幸せな気持ちになっていた。

 

けれど。

 

もし、レイにはすでに好きな人がいるのなら。

 

もし、あの女性が恋人なのなら。

 

自分が喜んでいたことは、いったい何だったのだろう。

 

「……レイ君……」

 

小さく名前を呼ぶ。

 

その声は、今にも消えてしまいそうだった。

 

「アスナ……」

 

キリトも、どう声をかければいいのか分からず、困った顔をしていた。

 

シリカは心配そうにアスナの手を握り、ユイも不安そうに彼女を見上げている。

 

「アスナさん……悲しいんですか?」

 

「……ユイちゃん……」

 

アスナは、何とか笑おうとした。

 

けれど、うまく笑えなかった。

 

「……ごめんね。大丈夫だから……」

 

その言葉とは裏腹に、涙は次々と頬を伝っていく。

 

リズは、自分の軽率な発言を心から後悔していた。

 

「本当にごめん、アスナ……。私、何も考えずに……」

 

「……ううん……リズのせいじゃ……」

 

「ううん、私が悪かった。ごめんね」

 

リズは、アスナの背中を優しくさすった。

 

「まだ恋人って決まったわけじゃないから。ね? ちゃんと話を聞いてから考えよう?」

 

アスナは小さく頷いた。

 

それでも、胸の痛みがすぐに消えることはなかった。

 

◇

 

しばらくして。

 

ようやくアスナの涙が落ち着いた頃、レイが1人でこちらへ歩いてきた。

 

女性の姿は、もうない。

 

「……待たせたな」

 

いつもどおりの、淡々とした声だった。

 

「レイ君……」

 

アスナは慌てて目元を拭った。

 

泣いていたことを、できるだけ知られたくなかった。

 

しかし、レイは彼女の赤くなった目に気づいたらしい。

 

一瞬だけ視線を止める。

 

「……どうした?」

 

「な、何でもないわ!」

 

アスナは慌てて首を振った。

 

「ちょっと目にゴミが入っただけ!」

 

「……そうか」

 

レイは、それ以上追及しなかった。

 

ただ、ほんのわずかに眉を寄せていた。

 

その様子を見ていたクラインが、恐る恐る口を開く。

 

「なあ、レイ……」

 

「何だ?」

 

「さっきのことなんだけどよ……」

 

レイがクラインを見る。

 

他の面々も、自然と緊張した。

 

先ほどのアスナの様子を見ていたからだ。

 

誰もが、できることなら余計なことを言いたくなかった。

 

だが、気になってしまうのも事実だった。

 

クラインは慎重に言葉を選びながら尋ねた。

 

「さっき、お前と一緒にいた女の人……」

 

「ああ」

 

「……もしかして、付き合ってんのか?」

 

「…………」

 

一瞬、空気が凍りついた。

 

アスナの肩が、ぴくりと震える。

 

リズはクラインを止めようとしたが、すでに遅かった。

 

キリトも息を呑む。

 

シリカは心配そうにアスナを見た。

 

エギルは無言でクラインの肩を叩き、今すぐ黙れと言わんばかりの目を向けている。

 

そして、レイは――。

 

「あぁっ!!」

 

普段の彼からは想像もできないほど、不機嫌な声を上げた。

 

「ひっ!?」

 

クラインが飛び上がる。

 

「お、おぉ……!?」

 

レイの目が、鋭く細められた。

 

「二度とふざけたことを言うな」

 

「えっ、いや、その……!」

 

「次に同じことを言ったら、お前の枕元にダンディーストラップを置く」

 

「…………は?」

 

「そして、無限にダンディーを押してやる」

 

「なっ……!?」

 

クラインの顔から血の気が引いた。

 

レイは、いつになく冷たい目で彼を見つめている。

 

「寝ても覚めても、ダンディーだ。止めることもできない。逃げることもできない」

 

「ちょ、ちょっと待て! それは洒落にならねえ!」

 

「……なら、二度とふざけるな」

 

「す、すみませんでしたぁっ!!」

 

クラインは勢いよく頭を下げた。

 

「もう言いません! 絶対に言いません! だから、それだけは勘弁してください!」

 

「……分かればいい」

 

レイは、ようやく視線を外した。

 

一同は、心の底から安堵した。

 

――ダンディーストラップを枕元に置かれる。

 

しかも、無限に鳴らされる。

 

それは、もはやモンスターとの戦闘より恐ろしい拷問かもしれなかった。

 

「……レイ君」

 

アスナがおそるおそる声をかける。

 

「……さっきの人は……?」

 

レイはアスナへ視線を向けた。

 

彼女は、まだ少し目元が赤い。

 

レイはわずかに眉を寄せたものの、尋ねられたことには素直に答えた。

 

「……ミレーユだ」

 

「ミレーユさん……?」

 

「ああ。プレイヤー名だ」

 

レイは淡々と説明を始めた。

 

「オレンジプレイヤーだ」

 

「……えっ?」

 

キリトの表情が変わった。

 

オレンジプレイヤー。

 

犯罪行為に手を染めたプレイヤーを指す言葉だ。

 

アスナも、その意味はよく知っている。

 

「オレンジプレイヤーって……犯罪者、ってこと?」

 

シリカが不安そうに尋ねる。

 

「そういうことだ」

 

レイは短く答えた。

 

「しかも、俺が今まで見たプレイヤーの中では最強だ」

 

「…………は?」

 

クラインが、先ほどの恐怖を忘れたように目を見開いた。

 

「ちょ、ちょっと待て! オレンジプレイヤーで、しかも最強って……どういうことだよ!?」

 

「言葉どおりだ」

 

「いや、言葉どおりって……!」

 

キリトも真剣な表情になっていた。

 

レイが、これほど明確に他のプレイヤーの強さを評価することは珍しい。

 

ましてや、自分が見てきた中で最強だと言うのだ。

 

ただ者ではないことは間違いない。

 

「……レイ。そのミレーユって人は、何をしていたんだ?」

 

キリトが尋ねた。

 

「勧誘だ」

 

「勧誘?」

 

「ああ。自分たちの仲間になれ、と」

 

レイは、面倒そうに息を吐いた。

 

「断ったが、しつこかった。それだけだ」

 

「……なるほどな」

 

キリトは納得したように頷いた。

 

「それで、あんなに親しげだったのか」

 

「……勝手に肩を組んできただけだ」

 

レイは、少し不機嫌そうに付け加えた。

 

「俺は許可していない」

 

「そ、そうだったのね……」

 

アスナが、ぽつりと呟いた。

 

レイは彼女を見た。

 

「……何だ?」

 

「う、ううん! 何でもない!」

 

アスナは慌てて首を振った。

 

けれど、胸の中では別の感情が広がっていた。

 

オレンジプレイヤー。

 

しかも、レイが見てきた中で最強。

 

普通なら、警戒すべき情報だ。

 

どんな人物なのか。

 

なぜ犯罪者になったのか。

 

レイに近づいた目的は何なのか。

 

気になることは、いくらでもある。

 

けれど、今のアスナにとって何よりも大切なのは――。

 

(……恋人じゃ、なかった……)

 

その事実だった。

 

(よかった……)

 

胸の奥にあった重苦しいものが、少しずつほどけていく。

 

レイとミレーユは付き合っていない。

 

先ほどの親しげな様子も、ミレーユが一方的に距離を詰めていただけだった。

 

そう分かった途端、アスナは心の底から安堵していた。

 

(……本当に、よかった……)

 

また涙が出そうになり、慌てて俯く。

 

今度の涙は、悲しみからではない。

 

安堵と、嬉しさからだった。

 

「……アスナ?」

 

レイが不思議そうに声をかける。

 

「……本当に大丈夫か?」

 

「う、うん! 大丈夫!」

 

アスナは、今度こそ笑顔を浮かべた。

 

「心配してくれてありがとう、レイ君!」

 

「……そうか」

 

レイは、それ以上何も言わなかった。

 

けれど、アスナの笑顔を確認すると、わずかに表情を緩めた。

 

それを見たアスナの胸が、また大きく跳ねる。

 

(……やっぱり、好き……)

 

改めて、自分の気持ちを思い知らされた。

 

◇

 

「……しかし、気になるな」

 

キリトが腕を組んだ。

 

「オレンジプレイヤーが、レイを勧誘していたんだろ?」

 

「ああ」

 

「しかも、レイが見た中で最強……」

 

キリトは考え込むように視線を落とした。

 

「何か目的があるのかもしれないな」

 

「……だろうな」

 

レイは否定しなかった。

 

「だから断った」

 

「それだけでいいのか?」

 

「興味がない」

 

いつもどおりの答えだった。

 

クラインは、まだ少し怯えた顔でレイを見ていた。

 

「……なあ、レイ」

 

「何だ?」

 

「そのミレーユって人、また来ると思うか?」

 

「来るだろうな」

 

「即答かよ!?」

 

「……あれだけしつこいんだ。諦めるとは思えない」

 

「うわぁ……」

 

クラインは頭を抱えた。

 

「ダンディーだけでも厄介なのに、今度は最強のオレンジプレイヤーかよ……」

 

「……ダンディーと一緒にするな」

 

「そこ!?」

 

レイは真顔だった。

 

「ダンディーのほうが、話が通じない」

 

「いや、それはどっちも大問題だろ!」

 

[ ] リズが突っ込む。

 

そのやり取りに、ようやく場の空気が少し和らいだ。

 

ユイは不思議そうに首を傾げていた。

 

「レイさん。そのミレーユさんは、またレイさんに会いに来るんですか?」

 

「……その可能性は高い」

 

「そうなんですね」

 

ユイは小さく頷いた。

 

「では、次に会ったときは、皆さんで気をつけましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

キリトが答える。

 

レイは、面倒そうに溜息をついた。

 

「……好きにしろ」

 

そう言いながらも、仲間たちが警戒してくれることを拒むつもりはないようだった。

 

アスナは、そんなレイをそっと見つめた。

 

ミレーユという女性は、危険な存在なのかもしれない。

 

レイがこれほど強さを認める相手なのだから、油断はできないだろう。

 

それでも。

 

恋人ではない。

 

そのことが分かった今、アスナの胸には少しだけ余裕が戻っていた。

 

(……でも、レイ君の肩に腕を回すなんて……)

 

そこまで考えて、アスナは小さく頬を膨らませた。

 

(……ちょっと、羨ましかったかも……)

 

自分でも、そんなことを考えてしまうのが恥ずかしい。

 

けれど、いつか自分も。

 

レイと、もっと自然に距離を縮められたら。

 

そんな願いを胸に抱きながら、アスナは彼の隣へと歩み寄った。

 

「……レイ君。今日は一緒に行動するんだから、ちゃんと私の近くにいてね?」

 

「……何でだ?」

 

「い、いいから!」

 

「……分かった」

 

レイは深く考えずに頷いた。

 

アスナは、ほっと胸を撫で下ろす。

 

そして、誰にも気づかれないように、小さく笑った。

 

今日もまた、レイの隣にいられる。

 

今は、それだけで十分だった。

 

ただし――。

 

ミレーユという謎の女性が、これで諦めるとは限らない。※設定特盛ですが出番ないです

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第3話「特盛合体の末路」

メガドライブ「さあ、見せてやる! 俺の究極形態を!」

メガCD「合体準備、完了!」

スーパー32X「こちらも準備完了!」

メガドライブ「二つの力を一つに! メガドラタワー、完成だ!」

ドドドドドドッ!

ファミコン「で、でかい……!」

メガドラタワー「どうだ! この圧倒的な存在感!」

ファミコン「……それ、ちゃんと動くのか?」

メガドラタワー「当たり前だ! 俺の性能は最強! 処理能力も最強! これでゲーム界は俺のもの――」

バチバチバチッ!

メガドラタワー「……ん?」

メガCD「エネルギー供給、異常!」

スーパー32X「本体負荷、限界突破!」

メガドラタワー「ちょ、ちょっと待て! まだ何もしてないぞ!?」

バチバチバチバチッ!

ファミコン「お、おい! 煙が出てるぞ!」

メガドラタワー「違う! これは演出だ! きっとそうだ!」

ドゴォォォォン!!

メガドラタワー「ギャアアアアアッ!!」

煙が晴れたあと、そこには大破したメガドライブたちが転がっていた。

ファミコン「……だから特盛にするなと」

メガドライブ「メ、メガドライブ……大破……」

ファミコン「次はもう少し考えてから合体しろ」

メガドライブ「……覚えてろよ、ファミコン……」

――第3話・終

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