光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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第38話 内なる暴走

 

 

第五十層

 

ミレーユが去ったあとも、8人の話題は彼女のことで持ちきりだった。

 

「それにしても、レイが誰かと一緒に依頼を受けたことがあるなんて、ちょっと意外だな」

 

キリトが腕を組みながら言った。

 

「……一度だけだ」

 

レイは短く答える。

 

「一度だけ?」

 

「ああ。依頼を受けたとき、たまたま一緒になった」

 

「それで、あの人に気に入られたってこと?」

 

リズが尋ねた。

 

「……そういうことらしい」

 

レイは面倒そうに息を吐いた。

 

「あの依頼が終わってから、何度も勧誘されている」

 

「何度もって、どれくらいだ?」

 

クラインが尋ねた。

 

「……会うたびにだ」

 

「うわぁ……」

 

クラインが顔をしかめた。

 

「そりゃ鬱陶しいな」

 

「……ああ」

 

レイは珍しく、はっきりと同意した。

 

「断っても諦めない。こちらの都合も考えずに話しかけてくる」

 

「それは大変ね……」

 

アスナは同情するように言った。

 

内心では、ミレーユがレイの恋人ではなかったことに、まだほっとしていた。

 

とはいえ、彼女がレイの肩に腕を回していた光景は、思い出すだけで胸がもやもやする。

 

(……あんなに気軽に触れるなんて……)

 

アスナは小さく頬を膨らませた。

 

もちろん、レイ本人にそんなことを言うつもりはない。

 

「……いっそのこと」

 

レイが、ふと思いついたように口を開いた。

 

「ギルドでも作るか?」

 

「……え?」

 

一同が、一斉にレイを見た。

 

普段、他人と必要以上に関わろうとしないレイが、自分からギルドを作ると言い出したのだ。

 

それは、なかなか珍しいことだった。

 

「お前がギルドを作る!?」

 

クラインが驚きの声を上げた。

 

「……勧誘が鬱陶しい。どこかのギルドに所属していれば、少しは諦めるかもしれない」

 

「なるほどなあ……」

 

キリトは納得したように頷いた。

 

確かに、すでに所属先があるのなら、ミレーユも勧誘を続けにくくなるかもしれない。

 

しかし、レイはすぐに難しい顔になった。

 

「……いや」

 

「ん?」

 

「管理が面倒だな」

 

「……は?」

 

クラインが間の抜けた声を出した。

 

「作るって言ったの、お前だろ!?」

 

「……そうだが」

 

「いや、そうだが、じゃねえよ!」

 

レイは真顔で続けた。

 

「メンバーの管理、資金の管理、ギルドホームの手配……。考えるだけで面倒だ」

 

「ギルドを作る前から、そこまで考えてるのか……」

 

キリトが呆れたように呟いた。

 

「……一人で管理するのは面倒だ」

 

「まあ、確かにね」

 

リズが頷いた。

 

そして――彼女の頭に、一つの考えが浮かんだ。

 

(……あれ?)

 

(これって、もしかして……チャンスじゃない?)

 

リズは、隣に座っているアスナをちらりと見た。

 

アスナはレイの話を真剣に聞いている。

 

いや、真剣というより、レイが何を言うのか気になって仕方がない様子だった。

 

リズは、口元に小さな笑みを浮かべた。

 

「ねえ、レイ」

 

「……何だ?」

 

「管理を手伝ってくれる人を、一人勧誘したらいいんじゃない?」

 

「……勧誘?」

 

「そう。ギルドの運営を手伝ってくれる人よ。レイ一人で全部やる必要はないでしょ?」

 

「……なるほど」

 

レイは少し考え込んだ。

 

「だが、そんな都合のいい人間がいるか?」

 

「いるじゃない」

 

「……どこに?」

 

リズは、にっこりと笑った。

 

そして、隣に座る少女を指差した。

 

「ここにいるけど?」

 

「…………」

 

レイの視線が、指差された先へ向く。

 

そこにいたのは――。

 

「……アスナ?」

 

「えっ!?」

 

突然名前を呼ばれ、アスナはびくりと肩を跳ねさせた。

 

リズは、さらに笑みを深めた。

 

「アスナならどう? 攻略の実力もあるし、管理能力だって高いじゃない。人付き合いも上手だし、レイの苦手なことを補えると思うけど?」

 

「……いや」

 

レイは首を傾げた。

 

「アスナは血盟騎士団だろ」

 

「…………」

 

一瞬、アスナの表情が固まった。

 

リズも、思わず目を瞬かせた。

 

「……あれ?」

 

「……何だ?」

 

「レイ、知らないの?」

 

「何をだ?」

 

リズはアスナを見た。

 

アスナは、頬を赤くしながら視線を泳がせている。

 

「……アスナ、言ってないの?」

 

「う、うん……まだ……」

 

「ええっ!?」

 

リズが驚きの声を上げた。

 

そして、改めてレイへ向き直る。

 

「アスナ、もう血盟騎士団を脱退してるわよ」

 

「…………」

 

レイの動きが止まった。

 

「……何?」

 

「だから、脱退したの。今はもう、血盟騎士団の副団長じゃないわ」

 

「…………」

 

レイはアスナを見た。

 

アスナは顔を真っ赤にしながら、小さく頷いた。

 

「……う、うん。本当よ」

 

「……そうか」

 

レイは、それだけ答えた。

 

そして――黙り込んだ。

 

◇

 

数秒。

 

十数秒。

 

沈黙が続く。

 

レイは腕を組み、何かを考えていた。

 

アスナは、緊張で胸がいっぱいになっていた。

 

(ど、どうしよう……)

 

レイが何を考えているのか、まったく分からない。

 

血盟騎士団を脱退したことを、彼はどう思っているのだろう。

 

驚いているのか。

 

それとも、何か別のことを考えているのか。

 

(……怒ってないよね?)

 

不安になりながら、そっとレイの顔を窺う。

 

レイは相変わらず無表情だった。

 

やがて、彼が口を開いた。

 

「……アスナ」

 

「は、はいっ!」

 

思わず返事が大きくなる。

 

「……それなら――」

 

「入る!」

 

「…………」

 

レイが言い終える前に、アスナが即答した。

 

「…………は?」

 

レイが固まった。

 

周囲の全員も固まった。

 

アスナ自身も、自分が何を言ったのか理解するまでに、ほんの少し時間がかかった。

 

(…………え?)

 

(私、今……何て言ったの?)

 

けれど、口から出てしまった言葉は取り消せない。

 

「……あ、あの……」

 

アスナの顔が、耳まで真っ赤になった。

 

「……その……」

 

レイは、しばらく彼女を見つめていた。

 

そして、ゆっくりと尋ねた。

 

「……まだ、最後まで話していないんだが」

 

「……っ!」

 

アスナは、ますます赤くなった。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「……いや」

 

レイは小さく首を振った。

 

「……入るというのは、ギルドの話か?」

 

「は、はい!」

 

今度は、はっきりと答えた。

 

「レイ君が作るギルドなら、私、入りたい!」

 

言ってしまった。

 

しかも、今度は自分の意思で。

 

アスナの心臓は、今にも破裂しそうなほど激しく鼓動していた。

 

レイは、しばらく黙っていた。

 

そして、短く頷いた。

 

「……そうか」

 

「……うん!」

 

「……なら、頼む」

 

「…………え?」

 

今度は、アスナが固まった。

 

「……え?」

 

「ギルドの管理を手伝ってくれ。俺一人では面倒だからな」

 

「…………」

 

アスナの思考が、再び停止した。

 

(……え?)

 

(今、何て……?)

 

(レイ君のギルドに……私が……?)

 

(……一緒に……?)

 

胸の奥から、喜びが一気に込み上げてくる。

 

「……は、はいっ!」

 

アスナは、満面の笑みで頷いた。

 

「よろしくお願いします、レイ君!」

 

「ああ。こちらこそ」

 

レイは、いつもどおりの落ち着いた声で答えた。

 

こうして、レイとアスナ、二人だけのギルドが誕生することになった。

 

◇

 

その光景を、リズは満足そうに眺めていた。

 

そして、レイに気づかれないよう、アスナにだけ見える位置で――

 

そっと親指を立てた。

 

(やったじゃない、アスナ!)

 

声には出さず、口元だけでそう伝える。

 

アスナは一瞬、目を丸くした。

 

それから、頬を赤くしたまま、同じように親指を立て返した。

 

(ありがとう、リズ!)

 

二人だけの、無言のやり取り。二人とも、キリッとしたいい顔をしていた。

 

キリトはそれを見て、何かを察したように苦笑した。

 

クラインは、まだ状況を整理しきれていないらしい。

 

「……なあ、ちょっと待て」

 

「……何だ?」

 

レイが顔を向けた。

 

「いや、つまり……レイとアスナが、二人だけのギルドを作るってことか?」

 

「ああ」

 

「……二人だけで?」

 

「ああ」

 

「……ギルドって、普通もっと人数がいるもんじゃねえの?」

 

「……必要なら増やす」

 

レイは淡々と答えた。

 

「だが、今は二人で十分だ」

 

「…………」

 

クラインは、ゆっくりとアスナを見た。

 

アスナは、満面の笑みを浮かべていた。

 

「……アスナ、お前……」

 

「な、何?」

 

「いや……よかったな」

 

「……うん!」

 

アスナは、幸せそうに頷いた。

 

その様子を見て、クラインもそれ以上は何も言わなかった。

 

ただし、リズは違った。

 

「ねえねえ、二人だけのギルドってことは、ギルド名も決めないとね?」

 

「……そうだな」

 

レイは少し考えた。

 

「……名前か」

 

「うん! どんな名前にするの?」

 

シリカも興味津々で尋ねた。

 

レイは、しばらく考えたあと、あっさりと答えた。

 

「……アスナに任せる」

 

「…………えっ!?」

 

アスナが、目を見開いた。

 

「わ、私!?」

 

「ああ。俺は、そういうのを考えるのは苦手だ」

 

「……そ、そうなの?」

 

「……ああ」

 

レイは特に気にした様子もない。

 

しかし、アスナにとっては、とんでもないことだった。

 

(レイ君と二人だけのギルド……!)

 

(しかも、ギルド名を私が決めていいの……!?)

 

嬉しい。

 

嬉しすぎる。

 

けれど、ここで変な名前をつけるわけにはいかない。

 

アスナは真剣な顔で考え始めた。

 

「……どうしよう……」

 

「ゆっくり考えればいい」

 

レイが言った。

 

「急ぐ必要はない」

 

「……うん!」

 

アスナは頷いた。

 

その顔には、隠しきれない喜びが浮かんでいた。

 

◇

 

こうして、思いがけない形で始まった。

 

レイとアスナ、二人だけのギルド。

 

レイにとっては、しつこい勧誘を避けるための対策。

 

そして、面倒な管理を一人で抱え込まないための選択。

 

けれど、アスナにとっては――。

 

レイと一緒にいられる、新しい居場所だった。

 

まだ、恋人になれたわけではない。

 

それでも、レイと同じギルドに所属できる。

 

これからは、攻略の相談も、活動の予定も、ギルドの運営も、二人で考えていくことになる。

 

その事実が、アスナの胸をいっぱいにしていた。

 

「……レイ君」

 

「何だ?」

 

「……これから、よろしくね」

 

レイはアスナを見て、静かに頷いた。

 

「ああ。よろしく頼む、アスナ」

 

その一言に、アスナはまた笑顔になった。

 

そして、リズは誰にも聞こえないよう、小さく呟いた。

 

「……よし、作戦成功♪」

 

もちろん、アスナには聞こえていた。

 

彼女はレイに気づかれないよう、もう一度だけリズへ親指を立てた。

 

二人だけのギルド。

 

その始まりは、思いがけないほど順調だった。

 

ただ一人――。

 

当のレイだけは、アスナがどれほど喜んでいるのか、まだほとんど理解していなかった。

 

──────────────────────

 

 

アスナは、真剣な表情で考え始めた。

 

(レイ君と2人だけのギルド……)

 

改めてそう考えると、胸の奥がくすぐったくなる。

 

しかも、ギルド名を自分に任せてくれたのだ。

 

せっかくなら、レイ君にも気に入ってもらえるような、素敵な名前にしたい。

 

(うーん……どんな名前がいいかな……)

 

しばらく考え込んだあと、アスナの頭に一つの案が浮かんだ。

 

(……『永遠の愛』……!)

 

…………。

 

(ダ、ダメよ!)

 

アスナは心の中で、勢いよく却下した。

 

(な、何を考えてるの、私! そんな、あからさまな名前にしたら、レイ君だって困っちゃうじゃない!)

 

想像しただけで、顔が熱くなる。

 

けれど、考えれば考えるほど、頭に浮かんでくるのはレイへの想いを感じさせる名前ばかりだった。

 

(じゃあ……『愛の翼』……?)

 

…………。

 

(……これもダメ!)

 

(そ、それなら……『2人の楽園』……!)

 

…………。

 

(ダメダメダメ! 恥ずかしすぎるよぉ……!)

 

アスナは、心の中で頭を抱えた。

 

一方、周囲の仲間たちは、そんな彼女を微笑ましそうに見守っていた。

 

「……アスナ、さっきから顔が赤いけど、大丈夫?」

 

リズが、そっと声をかける。

 

「だ、大丈夫! 何でもないから!」

 

アスナは慌てて答えた。

 

(うぅ……! 落ち着いて、私! ギルド名を決めるだけなんだから!)

 

そう自分に言い聞かせ、再び考え始める。

 

(……『運命の絆』……)

 

…………。

 

(……ダメ! これも、なんだか愛を誓ってるみたいじゃない!)

 

「……なあ、アスナ」

 

クラインが不思議そうに声をかけた。

 

「さっきから、何か思いついては悩んでるみたいだけど……」

 

「な、何でもないってば!」

 

「そ、そうか……?」

 

クラインは困惑したように首を傾げた。

 

キリトはそんなやり取りを見ながら、苦笑を浮かべている。

 

リズに至っては、アスナが何を考えているのか、おおよその見当がついているらしい。

 

(……アスナ、あんたねぇ……)

 

呆れ半分、微笑ましさ半分といった表情で、そっと見守っていた。

 

当のアスナは、そんな周囲の様子にも気づかず、必死に考え続けていた。

 

(……『永遠の絆』……)

 

(……ダメ!)

 

(……『2人の未来』……)

 

(……これもダメぇ!)

 

思いつくたびに、却下。

 

そして、また新しい名前を考える。

 

その繰り返しだった。

 

(……どうしよう……。全然決まらない……!)

 

アスナは、心の中で途方に暮れた。

 

レイ君と2人だけのギルド。

 

そう考えるだけで嬉しくて、つい名前にも自分の想いを込めたくなってしまう。

 

けれど、あまりにも露骨な名前では、恥ずかしくて仕方がない。

 

(……もっと、こう……さりげなくて、素敵な名前にしないと……!)

 

そう考え直したアスナだったが、次に浮かんできた候補も、やっぱりレイへの愛情がにじみ出たものだった。

 

(……ダメだぁ……!)

 

結局、その場でいくら考えても、納得できる名前は浮かんでこなかった。

 

それでもアスナは、諦めずに考え続ける。

 

そんな彼女を見て、リズは小さく笑った。

 

「……ま、ゆっくり考えればいいんじゃない?」

 

「……うん。そうする……」

 

アスナは頷いた。

 

けれど、その頭の中では、すでに次の候補が浮かび始めていた。

 

もちろん、それもまた――。

 

2人の愛を感じさせる、あからさまな名前だった。

 

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第4話「白き救世主、スーパーファミコン!」

ファミコン「メガドライブも倒れた。これで帝国は安泰だな!」

???「本当にそうかな?」

ファミコン「またか! 今度は誰だ!?」

白いボディのゲーム機が、静かに姿を現した。

スーパーファミコン「真打ちは遅れてやってくる。俺の名は、スーパーファミコン」

ファミコン「ス、スーパーファミコンだと!?」

スーパーファミコン「お前が築いた時代は認めよう。だが、これからは俺の時代だ」

ファミコン「俺の後継機だというのか……!」

スーパーファミコン「そうだ。より美しい映像、より豊かな音、そして新たなゲーム体験。俺がゲーム界を進化させる!」

ファミコン「くっ……! まさか、俺の前にこんな強敵が現れるとは……!」

メガドライブ「おい……俺のことを忘れてないか……?」

スーパーファミコン「……まだいたのか」

メガドライブ「扱いがひどくないか!?」

ファミコン「だが、俺もまだ終わらん!」

スーパーファミコン「ならば、次の時代を懸けて勝負だ!」

こうして、ゲーム界は新たな戦いへと突入した。

――第4話・終  ※全ゲーム機、失敗あれど素晴らしいです

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