光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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第43話 再会への道

 

 

SAOクリアから、数日後

 

現実世界

 

長い眠りから目覚めた人々が、少しずつ日常を取り戻し始めていた。

 

2年間にわたるデスゲームは終わった。

 

多くのプレイヤーが現実へ帰還し、家族との再会を果たしている。

 

しかし――すべての人間が、目覚めたわけではなかった。

 

◇

 

病院の一室。

 

ベッドの上には、1人の少女が静かに横たわっていた。

 

長い栗色の髪。

 

眠ったままの顔には、苦痛も恐怖もない。

 

まるで、ただ眠っているだけのようだった。

 

「……アスナ」

 

少年が、ベッドのそばで彼女の名前を呼んだ。

 

桐ヶ谷和人――キリト。

 

現実へ帰還した彼は、こうして何度も病院を訪れていた。

 

だが、少女は目を覚まさない。

 

「……まだ、起きないのか」

 

呟いても、返事はない。

 

キリトは唇を噛み締めた。

 

SAOはクリアされた。

 

自分たちは生きて帰ってきた。

 

それなのに、隣にいるはずだった仲間がいない。

 

そして、アスナもまた、目覚めていなかった。

 

――レイ。

 

あの第七十五層のボス部屋で、アスナを守って消えた少年。

 

最後まで冷静で、無愛想で、誰よりも強かった男。

 

「……お前なら、どうするんだろうな」

 

キリトは小さく呟いた。

 

レイなら、きっと余計なことは言わない。

 

「……くだらない」とでも言って、淡々と行動するのだろう。

 

そんな姿が、簡単に思い浮かんだ。

 

だが、今ここにレイはいない。

 

アスナを守って、命を落とした。

 

キリトは目を伏せた。

 

「……必ず、アスナを目覚めさせる」

 

それは、彼自身への誓いだった。

 

◇

 

数日後。

 

エギルが営む店に、キリトたちが集まっていた。

 

キリト。

 

リズ。

 

シリカ。

 

クライン。

 

エギル。

 

そして、ノートパソコンの画面に映し出されたユイ。

 

SAOでは何度も共に戦ってきた仲間たちだ。

 

ただ、今は誰もが以前のように笑うことができずにいた。

 

「……アスナは、まだ目覚めないのか?」

 

クラインが、静かに尋ねる。

 

キリトは小さく頷いた。

 

「ああ。何度か病院に行ったけど、状況は変わってない」

 

「そんな……」

 

シリカが、悲しげに目を伏せる。

 

リズも唇を引き結んだ。

 

「アスナ……」

 

彼女にとって、アスナは大切な友人だ。

 

SAOで過ごした時間。

 

一緒に笑ったこと。

 

恋の相談をしたこと。

 

そして、ようやくレイと恋人になれたと、嬉しそうに話していたこと。

 

それらを思い出すたび、胸が締めつけられる。

 

あの2人は、ようやく想いを通わせたばかりだった。

 

これから、2人で現実世界を生きていくはずだった。

 

なのに。

 

「……レイも、アスナも……」

 

リズの声が震えた。

 

キリトは、何も言えなかった。

 

レイは死んだ。

 

アスナは目覚めない。

 

それが、今の現実だった。

 

『……パパ』

 

ノートPCの画面に映るユイが、心配そうにキリトを見つめた。

 

『ママも、アスナさんも……元気になってほしいです』

 

「……ああ」

 

キリトは、画面の向こうにいるユイに目を向けた。

 

「俺も、そう思ってる」

 

ユイもまた、アスナのことを心配していた。

 

SAOで一緒に過ごした時間は、彼女にとっても大切な思い出だ。

 

今は仮想世界の外にいるため、こうして端末を通して会話することしかできない。

 

それでも、仲間たちと一緒にいたいという気持ちは変わらなかった。

 

そのときだった。

 

「お前ら、ちょっと聞いてくれ」

 

エギルが、いつになく真剣な声で口を開いた。

 

全員の視線が集まる。

 

「……何だよ、エギル?」

 

クラインが尋ねた。

 

エギルは一度、全員の顔を見渡した。

 

「アスナのことだ」

 

その言葉に、キリトの表情が変わった。

 

「……アスナ?」

 

「ああ。まだ確かな情報とは言い切れねえ。だが……」

 

エギルは、ゆっくりと続けた。

 

「アスナが、別のVRMMOにいる可能性がある」

 

「……何?」

 

キリトが目を見開く。

 

「別のゲームって……」

 

シリカが戸惑ったように呟いた。

 

「ALOだ」

 

エギルが答えた。

 

「アルヴヘイム・オンライン。SAOとは違うVRMMOだ」

 

「どうしてアスナが、そんなところに……?」

 

リズが問いかける。

 

「まだ詳しいことは分からねえ。だが、アスナらしきプレイヤーの情報がある」

 

キリトは黙り込んだ。

 

アスナが、別の世界にいる。

 

それが本当なら、彼女はただ眠っているわけではないのかもしれない。

 

「……行く」

 

キリトは、迷いなく言った。

 

「キリト……」

 

リズが彼を見る。

 

「アスナがそこにいる可能性があるなら、確かめる。どんな状況だろうと、助け出す」

 

その声には、強い決意があった。

 

クラインが立ち上がる。

 

「なら、俺も行くぜ。あいつを置いてきぼりになんかできねえからな」

 

「私も行く!」

 

リズが続く。

 

「アスナを助けるためなら、何だってするわ」

 

シリカも、力強く頷いた。

 

「私もです。アスナさんを、絶対に助けたいです」

 

エギルは腕を組み、静かに頷く。

 

「もちろん、俺も協力する」

 

ユイも画面の向こうからキリトを見上げた。

 

『パパ、ユイも一緒に行きます!』

 

「ユイ……」

 

『アスナさんに会いたいです。それに、ママのことも心配です』

 

ユイの言葉に、キリトは優しく目を細めた。

 

「ああ。一緒に行こう」

 

キリトは仲間たちを見渡した。

 

悲しみが消えたわけではない。

 

レイが帰ってくるわけでもない。

 

それでも、彼らにはまだ、救えるかもしれない仲間がいる。

 

「……ああ」

 

キリトは、静かに言った。

 

「みんなで、アスナを助けよう」

 

こうして、彼らは新たな世界へ向かう準備を始めた。

 

◇

 

準備を整えたキリトたちは、ALOへと足を踏み入れた。

 

そこは、SAOとはまるで違う世界だった。

 

広大な空。

 

空中に浮かぶ島々。

 

そして、自由に飛び回るプレイヤーたち。

 

剣と魔法が存在する幻想的な世界。

 

SAOのような閉ざされた世界とは違い、空を自由に飛べるという開放感があった。

 

しかし、キリトにとって、その美しい景色を楽しむ余裕はなかった。

 

「……アスナ」

 

彼は空を見上げた。

 

この世界のどこかに、彼女がいる。

 

そう信じて、キリトは歩き始めた。

 

その道のりは、決して平坦ではなかった。

 

情報を集め、仲間と協力し、ときには予想外の事態に巻き込まれながらも、彼らは少しずつ手掛かりを追っていった。

 

慣れない世界での探索。

 

プレイヤー同士の情報交換。

 

思うように進まない調査。

 

それでも、誰1人として諦めることはなかった。

 

そんな彼らの前に現れたのが、リーファという少女だった。

 

「えっと……お兄ちゃんたち、こんなところで何してるの?」

 

明るい声とともに、1人の少女が近づいてきた。

 

緑色の髪を揺らし、好奇心に満ちた瞳を向けている。

 

リーファは、キリトたちの様子を不思議そうに眺めていた。

 

キリトは彼女に視線を向ける。

 

「……人を探してる」

 

「人?」

 

「ああ。大切な仲間だ」

 

その言葉に、リーファは少しだけ表情を変えた。

 

「……そっか。じゃあ、私も手伝うよ」

 

「いいのか?」

 

「うん。困ってる人を放っておけないし!」

 

リーファは笑顔で答えた。

 

その言葉に、キリトは少しだけ表情を和らげた。

 

「……助かる」

 

「任せて!」

 

こうしてリーファも仲間に加わり、キリトたちは彼女の協力を得ながら、さらに情報を集めていった。

 

探しているのは、ただ1人。

 

アスナ。

 

それぞれの想いを胸に、彼らはALOの世界を進んでいった。

 

◇

 

やがて。

 

キリトたちは、ついにアスナのもとへ辿り着いた。

 

そこは、容易には近づけない場所だった。

 

そして、その場所にいた少女は――。

 

「……アスナ」

 

キリトの口から、彼女の名前がこぼれた。

 

アスナは、囚われていた。

 

自由を奪われ、閉じ込められたまま。

 

だが。

 

彼女の瞳は、死んでいなかった。

 

強い光が宿っていた。

 

悲しみを抱えていないわけではない。

 

絶望していないわけでもない。

 

愛する人を失った痛みが、消えたわけでもない。

 

レイは、もういない。

 

自分を守るために命を落とした。

 

最後に残した言葉は――。

 

『……生き抜いてくれ』

 

その声が、今も胸の奥に残っている。

 

アスナは、きっと何度も泣いたのだろう。

 

レイのいない現実を受け入れられず、何も考えられなくなったこともあったのかもしれない。

 

それでも。

 

彼に生きろと言われたから。

 

彼が命を懸けて守ってくれた命だから。

 

自分まで諦めるわけにはいかなかった。

 

アスナは、顔を上げていた。

 

「……キリト君」

 

その声は、少しだけ震えていた。

 

「みんな……来てくれたのね」

 

「……ああ」

 

キリトは拳を握り締めた。

 

「迎えに来た。もう大丈夫だ」

 

リズが涙を浮かべる。

 

「アスナ……!」

 

「リズ……みんな……」

 

アスナは仲間たちを見渡した。

 

そして、ほんの少しだけ微笑んだ。

 

「……ありがとう」

 

その笑顔には、悲しみがあった。

 

それでも、確かな意志があった。

 

彼女は、まだ前を向いていた。

 

レイが命を懸けて守ったものを、自分の手でつなげていくために。

 

◇

 

「……おいおい、何だよ、あいつは」

 

キリトたちの前に現れた男が、苛立った声を上げた。

 

須郷伸之。

 

ALOでは、オベイロンと名乗る男。

 

アスナを閉じ込め、彼女を自分の思いどおりにしようとしていた張本人だった。

 

「せっかく大人しくしていたというのに……。余計な邪魔をしてくれるな!」

 

キリトは、冷たい目で男を見た。

 

「……お前が、アスナを閉じ込めていたのか」

 

「ふん。彼女は私のものだ。君たちに何ができる?」

 

オベイロンは、嘲るように笑った。

 

「ここは私の世界だ。君たちのような連中に、何が――」

 

「……うるさい」

 

キリトが剣を構えた。

 

その横では、クラインが刀を抜いている。

 

「アスナを返してもらうぜ」

 

「当然よね」

 

リズが武器を構える。

 

シリカも、ユイも、エギルも、リーファも、それぞれ戦闘態勢に入った。

 

そして、キリトは一歩前へ出る。

 

「……終わりだ」

 

オベイロンは一瞬、言葉を失った。

 

「な、何だと……?」

 

次の瞬間。

 

キリトたちが、一斉に動いた。

 

「うおおおおっ!」

 

「そこまでよ!」

 

「覚悟しなさい!」

 

「アスナさんを返して!」

 

「ちょ、ちょっと待て! 待てと言っているだろう!」

 

オベイロンは慌てて後退し、何かを操作しようとした。

 

しかし、多勢に無勢。

 

しかも、相手はSAOを生き抜いた者たちだ。

 

圧倒的な連携。

 

容赦のない攻撃。

 

オベイロンが何かを言い終える前に、キリトの剣が閃いた。

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

一瞬だった。

 

あまりにも、一瞬だった。

 

オベイロンは情けない悲鳴を上げ、あっという間に倒された。

 

「…………」

 

キリトたちは、しばらく沈黙した。

 

「……え、終わり?」

 

シリカが目を丸くする。

 

「……何だったんだ、今の」

 

クラインも呆れたように呟いた。

 

リーファは呆然とオベイロンを見下ろした。

 

「……うわぁ。すっごく情けない……」

 

リズは肩をすくめた。

 

「アスナを閉じ込めておいて、これ?」

 

エギルも、呆れたように息を吐く。

 

「……拍子抜けだな」

 

キリトは剣を下ろした。

 

「……アスナ」

 

彼は、彼女のもとへ歩み寄った。

 

「もう大丈夫だ」

 

アスナはキリトを見つめた。

 

そして、ゆっくりと頷いた。

 

「……うん」

 

彼女の瞳には、まだ悲しみが残っていた。

 

けれど、もう一人ではなかった。

 

◇

 

アスナが解放されてから、数日が経った。

 

現実世界では、彼女も無事に目を覚ましていた。

 

長い眠りから覚めた彼女は、病院のベッドの上でゆっくりと目を開けた。

 

最初に見えたのは、見慣れた天井。

 

そして、すぐそばには心配そうに自分を見つめる人たちがいた。

 

キリト。

 

リズ。

 

シリカ。

 

クライン。

 

エギル。

 

アスナが目を覚ましたことを知り、皆が駆けつけてくれたのだ。

 

「……みんな」

 

まだ声に力はなかったが、その声を聞いたキリトたちの表情が明るくなる。

 

「アスナ……!」

 

リズが、涙を浮かべながら彼女の手を握った。

 

「よかった……本当によかった……!」

 

「リズ……ありがとう」

 

アスナは、弱々しくも微笑んだ。

 

キリトも、安堵したように息を吐く。

 

「……おかえり、アスナ」

 

「……うん。ただいま、キリト君」

 

すべての悲しみが消えたわけではない。

 

レイが戻ってくるわけでもない。

 

それでも、アスナは生きていた。

 

彼に託された言葉を胸に抱きながら。

 

彼が守ってくれた命を、これからも生きていくために。

 

そして、ある日。

 

キリトたちは、再び集まっていた。

 

場所は、エギルの店。

 

そこには、アスナもいた。

 

リーファも、リズも、シリカも、クラインも、エギルも。

 

そして、テーブルの上に置かれたノートPCの画面には、ユイの姿が映っていた。

 

全員が揃っていた。

 

「……それで、今日は何の用なの?」

 

リズがエギルに尋ねた。

 

「わざわざ集めたんだから、何かあるんでしょ?」

 

エギルは、いつになく真剣な表情を浮かべていた。

 

「ああ。お前らに、話しておきたいことがある」

 

キリトが眉をひそめる。

 

「……話?」

 

「ああ」

 

エギルは全員を見渡した。

 

そして、ゆっくりと口を開く。

 

「……実はな」

 

その言葉に、全員の視線が集まった。

 

アスナもまた、静かにエギルを見つめる。

 

ノートPCの画面に映るユイも、彼の言葉を待っていた。

 

彼がこれから何を話すのか。

 

誰も、まだ知らなかった。

 

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第9話「次世代機たちの野望」

プレイステーション「次の時代も、俺が主役だ!」

64「まだ勝負は終わっていないぞ!」

サターン「こちらにも、まだ切り札がある!」

そこへ、新たなゲーム機たちが姿を現した。

ドリームキャスト「未来のゲーム体験なら、俺に任せろ!」

プレイステーション2「……俺もいるぞ」

プレイステーション「お前は……!?」

プレイステーション2「俺は次の世代。さらに進化した力を持っている」

プレイステーション「ま、待て! 俺の次がもういるのか!?」

メガドライブ「世代交代って、残酷だなぁ……」

ファミコン「お前もいつか経験することだ」

メガドライブ「俺はまだまだ現役だ!」

ファミコン「その前に修理してもらえ」

メガドライブ「ぐっ……!」

プレイステーション2「過去の栄光にすがるつもりはない。俺は新たな時代を切り開く!」

ドリームキャスト「ならば、俺も夢を見せてやる!」

次世代機たちの野望がぶつかり合い、ゲーム界はさらなる激戦へと突入する。

――第9話・終

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