光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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※現実世界でもプレイヤーネーム呼びです




第44話 今度は私が助ける

 

「……実はな」

 

エギルは、集まった仲間たちを見渡した。

 

キリト、アスナ、リズ、シリカ、クライン、リーファ。

 

そして、テーブルの上に置かれたノートPCの画面には、ユイの姿が映っていた。

 

現実世界に身体を持たないユイは、こうしてノートPCなどの端末を通じて、仲間たちと会話している。

 

『エギルさん、何があったんですか?』

 

ユイが画面越しに尋ねた。

 

「ああ。まずは、これを見てくれ」

 

エギルは手元の資料を取り出し、テーブルの上に広げた。

 

「SAOが復活したらしい」

 

「……は?」

 

キリトが眉をひそめる。

 

「SAOって……あのSAOか?」

 

クラインが思わず聞き返した。

 

「ああ。俺たちが閉じ込められていた、あのアインクラッドだ」

 

一瞬、部屋の空気が変わった。

 

「ちょ、ちょっと待って! SAOが復活したって……どういうことよ!?」

 

リズが身を乗り出す。

 

「もちろん、デスゲームじゃねえ。今度は普通のゲームとして復活したらしい」

 

エギルは落ち着いた口調で説明した。

 

「プレイヤーがゲーム内で死亡しても、現実の人間が死ぬことはない。普通のVRMMOとして、再び遊べるようになったってことだ」

 

「……そうか」

 

キリトは複雑な表情を浮かべた。

 

あの世界が、再びゲームとして蘇った。

 

かつて自分たちの命を懸けて戦った場所が、今度は安全な遊び場として存在している。

 

喜ぶべきことなのかもしれない。

 

だが、キリトにとってSAOは、ただのゲームではなかった。

 

仲間と出会い、戦い、失い、そして生き抜いた世界だ。

 

「……皮肉なもんだな」

 

クラインが呟いた。

 

「俺たちはあそこで命懸けで戦ったってのによ……」

 

誰も、すぐには言葉を返せなかった。

 

そんな中、エギルが次の資料を取り出した。

 

「それで、もう一つある」

 

「……まだ何かあるのか?」

 

キリトが尋ねる。

 

「ああ。こっちが本題だ」

 

エギルは、ノートPCに画像を表示した。

 

そこに映っていたのは、見慣れない場所だった。

 

周囲の景色も、建物も、キリトたちには心当たりがない。

 

しかし――。

 

「……っ!」

 

アスナの目が、大きく見開かれた。

 

画像の中に、一人の人物が写っていた。

 

黒い装備。

 

見覚えのある剣。

 

そして、その雰囲気。

 

顔ははっきりと確認できない。

 

それでも。

 

「……レイ君……?」

 

アスナの口から、震える声がこぼれた。

 

「……まさか」

 

キリトも画面を凝視した。

 

確かに、レイに見える。

 

あの黒い装備。

 

あの立ち姿。

 

見間違いだと言い切ることはできなかった。

 

「これ、どこから出てきたんだ?」

 

キリトが尋ねる。

 

「そこが分からねえんだ。いつ、誰が撮影したのかも不明。画像そのものが、どこから流出したのかも分かっていない」

 

エギルは首を横に振った。

 

「今のところ、俺が手に入れられた情報はこれだけだ」

 

「……レイが、写ってる……?」

 

シリカが呆然と呟いた。

 

「でも、レイさんは……」

 

その先を言葉にすることはできなかった。

 

レイは、SAO第七十五層でアスナを守り、命を落とした。

 

誰もが、その瞬間を覚えている。

 

HPがゼロになり、光となって消えていった姿を。

 

それなのに。

 

画像には、レイらしき人物が写っている。

 

「……本当なの?」

 

アスナが、ゆっくりとエギルに向き直った。

 

その表情には、抑えきれない期待と恐怖が入り混じっていた。

 

「エギル……それ、本当なの?」

 

「あ、ああ。画像自体は確かに手に入れたものだ。だが、本人かどうかまでは――」

 

「本当に、レイ君なの!?」

 

アスナはエギルの肩を掴んだ。

 

「どこにいるの!? レイ君は生きてるの!? ねえ、教えて!」

 

「お、おい、アスナ!?」

 

エギルの身体が激しく揺さぶられる。

 

「ちょ、ちょっと待て! 俺にも分からねえ! だから揺らすな、話せねえだろ!」

 

「お願い! 何でもいいから、知っていることを教えて!」

 

「だから、何も分からねえって!」

 

ガクガク、ガクガク。

 

「ア、アスナ! 落ち着いて!」

 

リズが慌てて止めに入る。

 

「アスナ、エギルが喋れなくなってるから!」

 

「そ、そうだよ! まずは落ち着いて話を聞こう!」

 

シリカも必死に声をかけた。

 

キリトもアスナの肩に手を置く。

 

「アスナ。頼む。続きを聞こう」

 

「……っ」

 

アスナは、ようやくエギルの肩から手を離した。

 

エギルはふらつきながら、深く息を吐いた。

 

「……お前、こんなに力が強かったのかよ……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

アスナは申し訳なさそうに俯いた。

 

しかし、その視線はすぐに画像へと戻った。

 

「……でも、レイ君……」

 

彼女の声は、まだ震えていた。

 

レイは死んだ。

 

それは、アスナ自身が誰よりも分かっている。

 

自分を守るために、目の前で消えていったのだから。

 

それでも。

 

もし、あの画像の人物が本当にレイなら。

 

もし、何か事情があって生きているのなら。

 

もう一度、会えるかもしれない。

 

もう一度、声を聞けるかもしれない。

 

その可能性を、アスナは捨てられなかった。

 

「……エギル。続きを頼む」

 

キリトが静かに言った。

 

エギルは頷いた。

 

「ああ。実は、もう一つ気になる情報がある」

 

「……何だ?」

 

「ALOとSAOのつながりについてだ」

 

「ALOとSAO?」

 

キリトが聞き返す。

 

「ああ。お前たちも知っていると思うが、ALOはSAOとまったく無関係に作られたゲームじゃない。システムの根幹には、SAOと共通する技術が使われているんだ」

 

「そうなのか?」

 

クラインが意外そうに目を見開いた。

 

「俺たちがALOを始めた頃は、そんなこと気にしてなかったな……」

 

「まあ、普通に遊んでいる分には意識する必要もねえからな。だが、SAOとALOにはシステム上のつながりがある。だからこそ、今回のSAO復活にも何か関係があるんじゃないかと考えている」

 

エギルは資料を指で叩いた。

 

「それで、もう一つ。ALOに、未踏破エリア、いわゆる隠しダンジョンが存在するらしい」

 

「未踏破エリア?」

 

リーファが首を傾げた。

 

「ああ。普通にプレイしているだけじゃ、まず見つからないような場所らしい。詳しい位置も、そこに入るための条件も、まだはっきりとは分かっていない」

 

「そんな場所があったんだ……」

 

リーファは驚いたように呟いた。

 

「そして、そのエリアのボスを倒すと、報酬として1つだけ、アインクラッドに関する情報を教えてもらえるそうだ」

 

「……アインクラッドの情報?」

 

キリトの目が細くなる。

 

「それが本当なら、SAOの復活や、あの画像について何か分かるかもしれないってことか」

 

「ああ。ただし、どんな情報を教えてもらえるのかは分からねえ。レイについて聞けば、必ず答えが得られるという保証もない」

 

エギルは念を押した。

 

「それでも、今の俺たちにはほかに手掛かりがない」

 

部屋が静まり返る。

 

誰もが、ノートPCに表示された画像を見つめていた。

 

そこに写っている人物が本当にレイなのか。

 

そもそも、なぜSAOが復活したのか。

 

そして、ALOの隠しダンジョンに用意されたという報酬は、何を意味しているのか。

 

分からないことばかりだった。

 

だが、何もしなければ何も分からないままだ。

 

やがて、キリトが口を開いた。

 

「……行こう」

 

その言葉に、全員が彼を見た。

 

「未踏破エリアを攻略する。ボスを倒して、レイのことを聞く」

 

「キリト……」

 

リズが小さく呟いた。

 

「もちろん、私も行くわ」

 

「私も!」

 

シリカがすぐに続いた。

 

「俺だって行くぜ!」

 

クラインが拳を握る。

 

「レイのことが分かるかもしれねえんだ。何もしないで待ってられるかよ」

 

エギルも頷いた。

 

「決まりだな。明日、全員で攻略に向かう」

 

『ユイも行きます! レイさんのこと、もっと知りたいです!』

 

ノートPCの画面に映るユイも、真剣な表情で言った。

 

「ユイも一緒に来てくれるんだな」

 

キリトが画面に向かって微笑む。

 

『はい! パパやママたちと一緒に、レイさんの手掛かりを探します!』

 

「ありがとう、ユイ」

 

リズも優しく微笑んだ。

 

リーファは仲間たちを見渡し、力強く頷いた。

 

「私も協力するよ。アスナさんの大切な人なんでしょ?」

 

「……ありがとう、リーファちゃん」

 

アスナは小さく頭を下げた。

 

そして、再び画像へ視線を向ける。

 

黒い装備の人物。

 

その姿は、確かにレイに見えた。

 

「……レイ君」

 

アスナは、画面にそっと手を伸ばした。

 

「お願い……。もし、本当にあなたなら……」

 

その先の言葉は、声にならなかった。

 

◇

 

やがて、仲間たちはそれぞれ帰る準備を始めた。

 

明日は、ALOの未踏破エリア攻略。

 

何が待ち受けているのかは分からない。

 

ボスがどれほど強いのかも。

 

そして、報酬として得られる情報が、本当にレイにつながるのかも。

 

何一つ、確かなことはなかった。

 

それでも、彼らは挑むことを決めた。

 

「……明日、必ず情報を手に入れよう」

 

キリトが言った。

 

「ああ!」

 

クラインが力強く頷く。

 

「任せて!」

 

リーファも笑顔で答えた。

 

「みんなで行けば、きっと何とかなるよ」

 

シリカも不安を振り払うように言った。

 

「そうね。せっかく見つかった手掛かりだもの。絶対に無駄にはできないわ」

 

リズも頷く。

 

エギルはそんな仲間たちを見渡し、静かに笑った。

 

「よし。明日は早い。今日はしっかり休んでおけよ」

 

「ああ。準備を整えておく」

 

キリトが答える。

 

アスナは、最後にもう一度だけ画像を見つめた。

 

「……待っていて、レイ君」

 

小さな声だった。

 

けれど、その瞳には確かな決意が宿っていた。

 

「私、あなたのことを諦めないから」

 

レイが本当に生きているのか。

 

画像の人物は、ただのそっくりさんなのか。

 

その答えは、まだ誰にも分からない。

 

だからこそ、確かめる。

 

どんな結果が待ち受けていようとも。

 

今度こそ、自分たちの手で。

 

◇

 

その夜──

 

自室に戻ったアスナは、ベッドの端に腰掛けていた。

 

部屋の明かりは落とされ、窓から差し込む月明かりだけが、静かな室内を照らしている。

 

今日、エギルから見せられた画像。

 

そこに写っていた黒い装備の人物が、何度も頭の中に浮かんでくる。

 

「……レイ君」

 

小さく名前を呼ぶ。

 

本当に、あの人なのだろうか。

 

まだ何も分かっていない。

 

生きているという確証もない。

 

それでも、あの姿を見た瞬間、胸の奥に押し込めていた想いが溢れ出した。

 

もう一度会いたい。

 

もう一度、あの声を聞きたい。

 

そして、今度こそ――。

 

アスナは、そっと自分の手を見つめた。

 

SAOの第七十五層で、レイは自分を守るために命を懸けた。

 

目の前で消えていく彼を、ただ見ていることしかできなかった。

 

どれだけ手を伸ばしても、届かなかった。

 

その光景を思い出すと、今でも胸が締め付けられる。

 

「……もう、あんな思いはしたくない」

 

アスナは、ゆっくりと顔を上げた。

 

もし、本当にレイが生きているのなら。

 

今度は自分が彼を助ける。

 

彼が自分を守ってくれたように、今度は自分が彼のもとへ行く。

 

どんな場所にいたとしても、必ず見つけ出す。

 

そして、もう二度と離さない。

 

「……今度は、私がレイ君を助けるから」

 

その声には、迷いはなかった。

 

アスナはベッドから立ち上がり、窓の外に広がる夜空を見つめた。

 

明日から始まる攻略。

 

そこに何が待ち受けているのかは分からない。

 

それでも、もう立ち止まるつもりはなかった。

 

「待っていてね、レイ君」

 

彼女は胸元に手を添え、静かに目を閉じた。

 

「必ず、あなたのところへ行くから」

 

その瞳には、かつて閃光と呼ばれた少女の、強い決意が宿っていた。

 

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第10話「黒き最終兵器」

プレイステーション2「次は俺の時代だ」

ファミコン「……また黒いボディか」

メガドライブ「おい、やめろ! その言い方は危険だ!」

プレイステーション2「何の話だ?」

メガドライブ「黒いボディには不穏なジンクスがあるんだよ!」

プレイステーション2「迷信だ。俺の性能を見れば、そんなことは言えなくなる」

ファミコン「確かに、かなりの力を秘めているな……」

プレイステーション2「当然だ。俺は次世代を担う存在だからな!」

そこへ、さらに黒い影が現れた。

プレイステーション3「……俺もいる」

ファミコン「また増えた!?」

メガドライブ「おいおい、黒いボディが増えすぎだろ!」

プレイステーション3「俺の力は、計算能力も映像も、すべてが桁違いだ」

プレイステーション2「……後輩か」

プレイステーション3「先輩。時代は進むものだ」

メガドライブ「おお、何だか格好いいぞ!」

その瞬間――

バチッ!

プレイステーション3「……ん?」

ファミコン「まさか……!」

メガドライブ「黒いボディのジンクスが、また来るのか!?」

プレイステーション3「いや、これは故障ではない! きっと演出だ!」

ファミコン「その言い訳、どこかで聞いたぞ!」

――第10話・終

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