光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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第45話 未踏破エリアの裏ボス

 

 

ALOの未踏破エリア

 

攻略を開始してから、かなりの時間が経過していた。

 

迷宮のように入り組んだ通路。

次々と現れる強力なモンスター。

そして、通常のダンジョンでは見られないような仕掛けの数々。

 

それらを乗り越え、キリトたちはついに最深部へと辿り着いていた。

 

残すは、最後のボスのみ。

 

「……よし。ここまで来たな」

 

キリトが、目の前にそびえ立つ巨大な扉を見上げた。

 

「ああ! 長かったぜ、まったく!」

 

クラインが刀を肩に担ぎ、満足げに笑う。

 

「でも、これでようやく最後なんですね!」

 

シリカも、期待に満ちた表情を浮かべていた。

 

「ここまでのモンスターも強かったけど……ボスはもっと手強いんでしょうね」

 

リズが武器を握り直す。

 

「油断は禁物だな。最後まで気を引き締めていこう」

 

エギルが落ち着いた声で告げた。

 

「うん。何が出てくるか分からないしね」

 

リーファも頷く。

 

その隣では、ユイも周囲を見回していた。

現実世界ではノートPCを介して会話に参加することしかできない彼女だが、ALOでは他のプレイヤーと同じように身体を持ち、こうして仲間たちと一緒に冒険できる。

 

「ここまで来るのに、かなり時間がかかりましたね」

 

「そうだな。途中の仕掛けも厄介だったし、モンスターも予想以上に強かった」

 

キリトが答えると、ユイは小さく頷いた。

 

「ですが、もう少しです。皆さん、頑張りましょう!」

 

その一方で、アスナは扉をじっと見つめていた。

 

この先にいるボスを倒せば、アインクラッドに関する情報が手に入る。

 

そして、その情報がレイにつながる可能性もある。

 

確実な保証はない。

それでも、今の彼女たちにとっては、見逃せない手掛かりだった。

 

「……レイ君」

 

アスナは小さく呟いた。

 

必ず情報を手に入れる。

そして、あなたについて知りたい。

 

あなたが本当に生きているのなら、もう一度会いたい。

 

その思いは、未踏破エリアの奥へ進むほど強くなっていた。

 

◇

 

「……なあ、キリト」

 

クラインが、隣に立つキリトへ声をかけた。

 

「ん?」

 

「お前、ずいぶん張り切ってるじゃねえか」

 

キリトは一瞬だけクラインを見た。

 

「……そういうお前もな」

 

「当たり前だろ!」

 

クラインは即座に答えた。

 

「もしかしたら、レイが……」

 

そこで、言葉が止まった。

 

その先を口にするのは、少し怖かった。

 

期待して、もし違っていたら。

また、レイがいないという現実を突きつけられることになる。

 

それでも、期待せずにはいられなかった。

 

「……そうだな」

 

キリトが静かに答えた。

 

「レイのことが分かるかもしれない。だったら、何としてもボスを倒す」

 

「……うん」

 

アスナが頷いた。

 

「私も、同じ気持ち」

 

彼女は拳を握り締める。

 

「どんな相手でも、絶対に勝とう」

 

リズたちも、それぞれ頷いた。

 

誰もが同じことを考えていた。

 

あの画像に写っていた人物は、本当にレイなのか。

なぜ、レイらしき人物が、見知らぬ場所にいたのか。

そして、もし本当にレイなら、どうして――。

 

疑問は尽きない。

 

けれど、今は考えていても仕方がなかった。

答えを得るためには、目の前のボスを倒すしかない。

 

アスナは仲間たちを見渡した。

 

「……みんな、準備はいい?」

 

「ああ!」

 

キリトが剣を構える。

 

「いつでもいいぜ!」

 

クラインも刀を抜いた。

 

シリカ、リズ、エギル、リーファ、ユイも、それぞれ武器を構える。

 

全員の準備が整った。

 

アスナは、最後に一度だけ扉を見上げた。

 

そして。

 

「みんな、行くよ!」

 

力強い声とともに、巨大な扉を押し開いた。

 

◇

 

ギィィィィィ……。

 

重々しい音が、広大なボス部屋に響き渡る。

 

扉の向こうには、薄暗い空間が広がっていた。

 

天井は高く、壁には奇妙な模様が刻まれている。

奥には、何かが待ち構えているような気配があった。

 

キリトたちは警戒しながら、一歩ずつ足を踏み入れた。

 

そして。

 

『フハハハ……』

 

どこからともなく、笑い声が響いた。

 

『ハーハハハハッ!』

 

「……っ!」

 

全員が足を止める。

 

不気味な笑い声が、部屋全体に反響していた。

 

『よくぞ此処まで来た!』

 

低く、どこか芝居がかった声。

 

『数々の試練を乗り越え、この最深部へ辿り着いたこと……まずは褒めてやろう! だが、ここから先へ進めると思うなよ!』

 

「……ボスか?」

 

キリトが剣を構える。

 

「みんな、警戒して!」

 

アスナの声に、全員が一斉に戦闘態勢へ入った。

 

クラインは刀を構え、リズは武器を握り直す。

シリカも身構え、エギルとリーファも敵の姿を探した。

 

「どこだ……?」

 

クラインが周囲を見回す。

 

「声は聞こえるのに、姿が見えませんね……」

 

シリカが警戒しながら呟く。

 

ユイも周囲を見渡し、声の発生源を探っていた。

 

『フハハハハッ! 我が姿を見て驚くがいい! そして、ひれ伏すがいい!』

 

声が、ひときわ大きく響いた。

 

そして。

 

ボス部屋の中央に、何かが浮かび上がった。

 

金色の球体。

黒いサングラス。

そして、以前よりもさらに巨大になったその姿。

 

見覚えのある、あまりにも見覚えのあるシルエット。

 

「…………」

 

キリトが固まった。

 

アスナも、目を見開いたまま動かない。

リズの表情が引きつる。

 

クラインは、ゆっくりと口を開いた。

 

「……おい」

 

金色の球体が、ゆっくりと回転する。

 

そして、聞き覚えのある声が高らかに響いた。

 

『ダンディー! ダンディー! ダンディズム!』

 

『天高くそびえ立ち優雅に……なんだ?』

 

『あー、あれだ…今日も我が肉体は美しい! 』

 

「…………」

 

沈黙。

 

誰もが、目の前の光景を理解するのに時間がかかった。

 

いや。

 

理解したくなかった。

 

「…………は?」

 

キリトの口から、ようやく声が漏れた。

 

「……嘘でしょ」

 

リズが額を押さえる。

 

「な、何で、また……?」

 

シリカが困惑した表情で尋ねた。

 

リーファも、目の前の球体を見つめている。

 

「……えっと。あれが、この未踏破エリアのボス?」

 

エギルは腕を組み、しばらく考え込んだ。

 

「……どう見ても、アイツで間違いねえな」

 

その中で、クラインだけは違った。

 

「またお前かよおおおおおおっ!!」

 

彼の叫びが、ボス部屋に響き渡った。

 

「何でここにもいるんだよ! お前、いったい何体いるんだ!?」

 

『フハハハハッ! 何体だと? 愚問だな! ダンディーは何処に現れようともダンディー! その存在そのものが至高なのだ!』

 

「答えになってねえよ!」

 

『細かいことを気にするな! そのような小さな器では、我がダンディズムを受け止めることなどできんぞ!』

 

「誰の器が小さいって!?」

 

クラインが食ってかかる。

 

ダンディーは、そんな彼を気にする様子もなく、誇らしげに空中を旋回した。

 

『強敵と書いて友と読む! 会いたかったぞ、我がライバルよ!』

 

「誰がライバルだあああああっ!」

 

クラインが即座に叫び返す。

 

「俺じゃねえよ! そっちの黒い奴だろうが!」

 

ダンディーは、サングラス越しにキリトたちを見渡した。

 

そして、ぴたりと動きを止める。

 

『……む?』

 

その視線が、一人の少女へ向けられた。

 

「…………」

 

アスナは、呆然とダンディーを見つめていた。

 

「……ダンディー……?」

 

彼女の声には、驚きと困惑が入り混じっていた。

 

まさか、こんなところで再会するとは思っていなかった。

 

そもそも、再会という言葉を使っていいのかすら分からない。

 

ダンディーは、以前SAOで何度もレイの前に現れた、あの正体不明の存在だ。

 

そして今、ALOの未踏破エリアのボスとして、目の前に浮かんでいる。

 

「……何で、ここにもいるのよ……」

 

リズが、心底うんざりした声で呟いた。

 

「知らないわよ……」

 

アスナも、思わず答えてしまった。

 

そのとき、リーファが小さく声を上げた。

 

「えっと……みんなが知ってる相手なの?」

 

彼女にとっては、目の前の金色の球体も、突然叫び始めたクラインも、理解の追いつかない光景だった。

 

「……ああ。まあ、知ってるというか……」

 

キリトは言葉を濁した。

 

「SAOにいた頃、一度顔を合わせた相手だ」

 

「一度?」

 

リーファは改めてダンディーを見つめた。

 

金色の球体に黒いサングラス。

その姿だけでも十分に奇妙なのに、本人は自分の美しさを疑っていないらしい。

 

「……これと?」

 

「ああ……」

 

「……大変だったんだね」

 

「……ああ」

 

キリトは、遠い目をした。

 

一方、ユイはダンディーの姿をじっと見つめていた。

 

「……あの方が、ダンディーさんなのですか?」

 

「ユイ、知ってるのか?」

 

キリトが尋ねる。

 

「いえ。ダンディーさんご本人にお会いするのは初めてです。ただ、スカル・リーパーとの戦いのときに、レイさんが身につけていたダンディーストラップの存在は知っています」

 

「ダンディーストラップ……?」

 

リーファが聞き慣れない言葉に首を傾げた。

 

「はい。ですが、私が知っているのはストラップのことだけです。まさか、こんな大きい方だとは思いませんでした」

 

ユイは改めてダンディーを見上げる。

 

「……何度見ても、大きいですね」

 

『むむっ!?』

 

その言葉に、ダンディーが勢いよくユイの方を向いた。

 

『そこの小さき者よ! 大きいとは何事だ! 我が存在感を表すには、この程度の大きさなど当然! むしろ、まだまだ成長の余地があると言っても過言ではない!』

 

「えっ……あ、はい。すみません」

 

ユイが少し戸惑いながら答える。

 

『よい! 我輩の寛大な心で許してやろう! それにしても、我輩の肉体の美しさに気づくとは、なかなか見る目があるではないか!』

 

「……大きいとは言いましたけど、美しいとは言ってませんよ?」

 

ユイが小さく首を傾げた。

 

『な、何だと!?』

 

ダンディーの動きがぴたりと止まる。

 

『我輩の美しさを理解できぬとは……まだまだ修行が足りぬようだな! よかろう! このダンディー自ら、真の美しさというものを教えてやろう!』

 

「……何か始まったぞ」

 

クラインが呆れたように呟いた。

 

「……相変わらずだな」

 

キリトも深いため息をつく。

 

リーファは、そんな2人を交互に見た。

 

「ねえ、お兄ちゃん。あれって、いつもあんな感じなの?」

 

「……ああ。だいたいな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

リーファは、何とも言えない表情でダンディーを見つめた。

 

◇

 

「……ちょっと待て」

 

キリトが額に手を当てた。

 

「何で、こいつが未踏破エリアのボスなんだよ……」

 

誰も答えられなかった。

 

そもそも、ダンディーがなぜここにいるのか。

ダンディーとALOに、何か関係があるのか。

それとも、ただの偶然なのか。

 

何一つ分からない。

 

『フハハハハッ! どうした、我がライバルよ! 久々の再会に感動しているのか!』

 

「してねえよ!」

 

クラインが叫んだ。

 

『ならば、もっと喜ぶがいい! このダンディーとの再会など、そう何度も経験できるものではないぞ!』

 

「何でだよ!」

 

『この輝き、この存在感、この圧倒的なダンディズム! 世界が違おうとも、我が美しさは決して色褪せぬ!』

 

「自分で言うな!」

 

『自分の魅力を理解し、誇ること。それこそが真のダンディズム!』

 

「もういい! 黙ってろ!」

 

クラインが頭を抱えた。

 

その様子を見ながら、リーファが恐る恐る尋ねる。

 

「……お兄ちゃん。あの人、いつも自分のことをあんなに褒めてるの?」

 

「……人というか、あれは……」

 

キリトは言葉に詰まった。

 

「まあ、そういう奴だ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

リーファは、もう一度ダンディーを見た。

 

金色の球体。

黒いサングラス。

そして、妙に堂々とした態度。

 

初対面の相手にどう接すればいいのか、正直なところ分からない。

 

一方、ダンディーは楽しそうに空中を回転していた。

 

『今日もダンディーだぜ~!』

 

『我が輝きに、暗闇すら道を譲る!』

 

『天高くそびえ立ち、誰よりも優雅に輝く! それが我が生き様よ!』

 

「……生き様って」

 

エギルが、思わず呟いた。

 

「そもそも、どういう仕組みで浮いてるんだ……?」

 

『何だと!?』

 

ダンディーが、勢いよくエギルの方を向いた。

 

『我が存在の神秘を問うか! よかろう! だが、凡人に理解できるほど単純なものではないぞ!』

 

「いや、別に仕組みを聞いただけなんだが……」

 

『我が肉体は美しいぃぃぃぃぃー!』

 

「うわっ!?」

 

突然の大音量に、全員が肩を跳ねさせた。

 

リーファは思わず耳を塞ぎ、シリカはびくりと身体を震わせる。

リズは深々とため息をついた。

 

「……もう嫌。ボス戦が始まる前から疲れたわ」

 

「……同感だ」

 

キリトも、珍しく心の底から同意した。

 

ユイは、そんな一同の様子を見ながら、少し困ったように首を傾げる。

 

「皆さん、以前からこの方に振り回されていたんですね……」

 

「ああ。説明するのも面倒なくらいにな」

 

キリトが答える。

 

「なるほど……。レイ君の持っていたストラップのことも、少し気になってきました」

 

ユイはダンディーを見つめた。

ただの装飾品だと思っていたものが、目の前の存在とどう繋がっているのか。

今はまだ、何も分からない。

 

アスナは、ダンディーを見つめたまま小さく息を吐いた。

 

本当なら、今はレイのことだけを考えていたい。

ボスを倒し、情報を手に入れたい。

そのために、ここまで来たのだ。

 

なのに。

 

「……どうして、こうなるの……」

 

思わず、本音が漏れた。

 

◇

 

『さあ、我が挑戦者たちよ!』

 

ダンディーが、ボス部屋の中央で大きく回転した。

 

『我を倒し、この未踏破エリアを制覇してみせよ! もっとも、我が前に立つことすら叶わぬであろうがな!』

 

「……倒せば、情報が手に入るんだよな?」

 

キリトが確認するように呟いた。

 

「ああ。そのはずだ」

 

エギルが答える。

 

「なら、やるしかない」

 

キリトは剣を握り直した。

 

相手がダンディーだろうと、関係ない。

レイの手掛かりを得るためには、こいつを倒す必要がある。

 

それだけだった。

 

「……アスナ」

 

キリトが、彼女へ視線を向けた。

 

「大丈夫か?」

 

アスナは一瞬だけ目を伏せた。

そして、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……うん」

 

表情から、戸惑いが完全に消えたわけではない。

むしろ、困惑は増すばかりだった。

 

なぜダンディーが、ALOの未踏破エリアにいるのか。

なぜ、また自分たちの前に立ちはだかるのか。

 

考えても答えは出ない。

 

けれど、今は進むしかなかった。

 

「……絶対に倒そう」

 

アスナは、しっかりと武器を構えた。

 

「そして、レイ君のことを聞くの」

 

「……ああ」

 

キリトが頷く。

 

クラインも、刀を構え直した。

 

「よっしゃあ! こうなったら、今度こそぶっ倒してやる!」

 

『フハハハハッ! その意気だ! 我が強さを前にしてもなお挑む、その心意気だけは認めてやろう!』

 

「上から目線で褒めてんじゃねえ!」

 

『だが、勝てると思うなよ! 我が美しき輝きの前に、貴様らの剣など届きはせぬ!』

 

「やってみなきゃ分からねえだろうが!」

 

『よかろう! ならば見せてやろう! ダンディーの名に懸けて、この戦いを華麗に彩ってみせる!』

 

「戦いを彩るって何だよ!」

 

『ダンディー! ダンディー! ダンディズム!』

 

「だから、うるせえって言ってんだろおおおおっ!」

 

ボス部屋に、クラインの叫びが響き渡る。

 

こうして。

 

ALOの未踏破エリア、その最後の戦いが始まろうとしていた。

 

相手は、金色の球体に黒いサングラスをかけた謎の存在。

これまで何度もレイの前に現れた、あのダンディーだった。

 

困惑と疲労、そしてわずかな期待を胸に。

キリトたちは、未踏破エリアの裏ボスへと挑む。

 

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第11話「携帯機たちの戦い」

ゲームボーイ「据え置き機ばかり、目立ちやがって……!」

ゲームギア「画面の美しさなら、俺だって負けていない!」

ゲームボーイ「大事なのは、いつでもどこでも遊べることだ!」

ゲームギア「ならば勝負だ!」

ゲームボーイ「望むところだ!」

ドゴッ!

ゲームギア「ぐっ……! なかなかやる!」

ゲームボーイ「お前もな!」

そこへ、さらに新たな携帯機が現れた。

DS「二つの画面という発想、どうだ!」

PSP「映像も音楽も、ゲームも楽しめる。携帯機の可能性は無限だ!」

ゲームボーイ「な、何だかすごいのが来たぞ……!」

ゲームギア「俺たちの時代も、ずいぶん変わったな……」

DS「時代は進化する!」

PSP「だが、携帯機の戦いはまだ終わらない!」

ゲームボーイ「よし! 俺もまだまだ頑張るぞ!」

ファミコン「……あいつら、元気だな」

メガドライブ「俺たちも負けてられないぞ!」

ファミコン「お前はまず、壊れないことを目指せ」

メガドライブ「だから根に持ちすぎだろ!」

――第11話・終

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