光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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第46話 地下百層の真実

 

 

ALOの未踏破エリア、その最深部。

 

そこでは、常識外れの戦いが繰り広げられていた。

 

『ダンディー! ダンディー! ダンディズム!』

 

「うるせえええええっ!!」

 

クラインの叫びが響く。

 

『今日も我が肉体は美しい!』

 

「だから肉体ってどこにあるんだよ!?」

 

エギルが思わず突っ込んだ。

 

『何だと!? 我輩の肉体に疑いを持つというのか!』

 

「いや、それもういい……」

 

『我が肉体は美しいぃぃぃぃぃー!』

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

耳をつんざくような声に、エギルが顔をしかめた。

 

戦闘中だというのに、ダンディーはひたすら意味不明なことを叫び続けている。

 

しかも、ただうるさいだけではない。

 

強い。

 

とにかく強かった。

 

金色の太陽のような身体から放たれる光線は、壁や床に次々と反射し、予測不能な軌道で襲いかかってくる。

 

一発を避けたと思えば、跳ね返った光線が背後から迫る。

 

防御に回れば、別の方向から新たな光線が飛んでくる。

 

「右から来るよ!」

 

アスナが叫び、素早く身を翻した。

 

その隣を、光線がかすめていく。

 

「分かってる!」

 

キリトは剣を構え、攻撃の隙を探る。

 

しかし、ダンディーは空中を縦横無尽に飛び回り、簡単には攻撃を当てさせてくれなかった。

 

『天高くそびえ立ち優雅に……ダンディー!』

 

「何を言ってるのか分からねえよ!」

 

クラインが刀を振るう。

 

しかし、ダンディーはひらりと上昇し、その一撃をあっさりとかわした。

 

『今日もダンディーだぜ~!』

 

「知るか!」

 

リズが叫びながら武器を振るう。

 

シリカもピナと連携し、隙を見つけて攻撃を仕掛けた。

 

リーファは風を操り、ダンディーの動きを封じようとする。

 

ユイも仲間たちの状況を見ながら、戦闘を支援していた。

 

『強敵と書いて友と読む! 会いたかったぞ、我がライバルよ!』

 

「誰がライバルだ!」

 

キリトが叫ぶ。

 

『ならば、もっと熱く戦うがいい!』

 

「お前が言うな!」

 

誰もが、ダンディーの言動に翻弄されていた。

 

だが、手を止めるわけにはいかない。

 

この戦いに勝てば、アインクラッドに関する情報が手に入る。

 

その情報が、レイにつながるかもしれない。

 

その思いが、全員を支えていた。

 

◇

 

「……っ、まだなの!?」

 

リズが息を切らしながら叫んだ。

 

「もう少しだ! 攻撃を続けろ!」

 

キリトが答える。

 

ダンディーのHPは、確実に減っていた。

 

しかし、その攻撃は最後まで衰えない。

 

『ダンディー! ダンディー! ダンディー!』

 

「だから、何なんだよ、その掛け声は!」

 

クラインが半ば泣きそうな声を上げた。

 

それでも、彼は刀を振るう。

 

アスナもまた、細剣を握る手に力を込めた。

 

レイの手掛かりまで、あと少し。

 

ここで諦めるわけにはいかなかった。

 

「みんな、あと少しだよ!」

 

アスナが声を張り上げる。

 

「ここまで来たんだから、絶対に勝とう!」

 

「おう!」

 

クラインが応じた。

 

「もちろん!」

 

リズも笑みを浮かべる。

 

キリトは無言で剣を構え、ダンディーの動きを見極めた。

 

そして、ついに。

 

「今だ!」

 

キリトの声とともに、全員が一斉に攻撃を仕掛けた。

 

剣が走り、細剣が閃き、武器の一撃が次々と命中する。

 

ダンディーの身体が大きく揺れた。

 

『ゴバーーーッ!?』

 

いつもの叫び声が響く。

 

そして――。

 

ダンディーのHPが、ゼロになった。

 

金色の身体が、動きを止める。

 

「……や、やった……?」

 

シリカが呆然と呟いた。

 

「倒した……のか?」

 

エギルも、信じられないといった表情を浮かべる。

 

次の瞬間。

 

「やったあああああっ!」

 

クラインが両手を上げた。

 

「勝ったぞ! あのうるせえ太陽を、ついに倒したんだ!」

 

「クライン、言い方……」

 

リズが呆れたように言ったが、彼女自身も安堵の笑みを浮かべていた。

 

「でも、本当に勝ったんだね……!」

 

リーファも、ほっと胸を撫で下ろす。

 

ユイも嬉しそうに声を上げた。

 

「やりました、皆さん!」

 

アスナは、仲間たちの喜びを感じながら、静かに息を吐いた。

 

これで、レイの情報が手に入る。

 

ようやく、一歩前に進める。

 

「……レイ君」

 

彼女は小さく呟いた。

 

もう少しだから。

 

もう少しで、あなたにつながる何かが分かる。

 

そう思った、そのときだった。

 

「……き、聞こえる……」

 

消えかけていたダンディーの声が、突然響いた。

 

「……え?」

 

キリトが顔を上げる。

 

『聞こえるぞ……! 我輩を呼ぶ、皆の声が……!』

 

「おい、何を言ってるんだ?」

 

クラインが怪訝そうに声を上げた。

 

ダンディーは、何かに耳を澄ませるように、身体を小さく震わせた。

 

そして――。

 

『キャー、ダンディー! ダンディー、キャー!』

 

突然、甲高い裏声が響いた。

 

「…………」

 

全員が固まる。

 

『フフフ……! そうか、そうか! 我輩を求める声が、これほどまでに!』

 

「いや、自分で言ってるだけじゃねえか!」

 

クラインが即座に突っ込んだ。

 

『我輩の魅力は、世界を超えても衰えることを知らぬ!』

 

「もう何でもいいから、早く消えてくれ!」

 

エギルが頭を抱える。

 

しかし、ダンディーはそんな声など気にも留めていないようだった。

 

『ならば、その声に応えようではないか!』

 

ダンディーの身体が、急激に上昇していく。

 

『ダンディー・アンコール!』

 

「えええええっ!?」

 

クラインの叫びが響く。

 

金色の身体が、まばゆい光を放ち始めた。

 

「な、何だ!?」

 

エギルが腕で目を覆う。

 

光はどんどん強くなり、ボス部屋全体を照らしていった。

 

「みんな、気をつけて!」

 

アスナが叫ぶ。

 

誰もが身構えた。

 

そして、光が最高潮に達した瞬間――。

 

まばゆい輝きが、ふっと収まった。

 

そこに浮かんでいたのは。

 

「…………」

 

「…………は?」

 

「…………嘘でしょ?」

 

ダンディーだった。

 

しかも。

 

「……二体……?」

 

リズの声が震えた。

 

一体だったはずのダンディーが、二体になっていた。

 

二つの金色の太陽。

 

二つの黒いサングラス。

 

二体とも、何事もなかったかのように悠々と空中に浮かんでいる。

 

『ダンディー!』

 

『ダンディー!』

 

二つの声が、ほとんど同時に響いた。

 

「うわああああああっ!?」

 

クラインが絶叫した。

 

「増えたあああああっ! 何でだよ! 何で倒したら増えるんだよ!?」

 

「……最悪だ」

 

キリトが額を押さえた。

 

以前、レイから聞いていた。

 

ダンディーは、ごく稀に分裂することがある。

 

だから、こうなる可能性がないわけではなかった。

 

だが。

 

「……何で今なんだよ……」

 

キリトの呟きに、誰も反論できなかった。

 

ここまで来て、ようやく倒したと思ったのに。

 

まさか二体になるとは。

 

しかも、相手はあのダンディーだ。

 

一体でも厄介なのに、二体となればどうなるのか。

 

考えたくもなかった。

 

「……そんな……」

 

シリカが青ざめる。

 

「やっと倒したと思ったのに……」

 

「二体同時に相手をするなんて、さすがにきついわね……」

 

リズも表情を引きつらせた。

 

リーファとユイは、何が起きたのか理解できず、呆然と二体のダンディーを見つめていた。

 

『今日もダンディーだぜ~!』

 

『今日も我が肉体は美しい!』

 

「うるさいのが二倍になったあああああっ!」

 

クラインの悲痛な叫びが、ボス部屋に響き渡った。

 

◇

 

「……みんな」

 

そんな中、アスナが口を開いた。

 

全員が彼女を見る。

 

アスナは二体のダンディーを見据えたまま、静かに言った。

 

「レイ君の手掛かりまで、あと少しだよ」

 

その声には、確かな意志があった。

 

「ここで諦めるわけにはいかない。もう少しだけ、頑張ろう」

 

その言葉に、仲間たちは顔を見合わせた。

 

そうだ。

 

ここまで来たのは、ただ未踏破エリアを攻略するためではない。

 

レイのことを知るためだ。

 

あの画像に写っていた人物が、本当にレイなのか。

 

彼は今、どこにいるのか。

 

それを知るために、ここまで戦ってきた。

 

「……そうだな」

 

キリトが剣を握り直した。

 

「ここまで来たんだ。最後までやるしかない」

 

「おう……!」

 

クラインは力なく答えた。

 

「やってやるよ……。二体だろうが三体だろうが……」

 

「三体は嫌よ!」

 

リズが即座に突っ込む。

 

「縁起でもないこと言わないで!」

 

「わ、悪い……!」

 

緊張の中に、ほんの少しだけいつもの空気が戻る。

 

そして、二体のダンディーが、ゆっくりと彼らを見下ろした。

 

『……ダンディー?』

 

片方のダンディーが、首を傾げるように回転した。

 

『我が友がどうした?』

 

「…………は?」

 

キリトたちは、一斉に固まった。

 

「……我が友?」

 

リズが聞き返す。

 

『我が友だ』

 

もう一体のダンディーも、当然のように答えた。

 

『我が友の名は、レイであろう?』

 

「……っ!」

 

アスナの目が、大きく見開かれた。

 

「前にもレイ君を……友って……」

 

彼女は思わず一歩前に出た。

 

『む? もちろんだ!』

 

ダンディーは、誇らしげに回転する。

 

『我が友であり、我がライバル! あの黒き剣士のことで知らぬことがあるはずがなかろう!』

 

キリトは警戒を解かないまま、ダンディーを見つめる。

 

「……お前、レイについて何か知っているのか?」

 

『ダンディー? 何をそんなに慌てているのだ?』

 

「いいから答えてくれ!」

 

キリトの声が強くなる。

 

アスナは、震える息を整えながら尋ねた。

 

「……お願い。レイ君のことを教えて」

 

その声を聞いて、ダンディーはようやく何かに気づいたように動きを止めた。

 

『……なるほど』

 

二体のダンディーが、同時に頷くように回転した。

 

『我が友のために、ここまで来たというわけか』

 

「……そうよ」

 

アスナは、真剣な眼差しで答えた。

 

「私たちは、レイ君のことを知りたいの。彼が今、どうしているのか……本当に、生きているのか」

 

キリトも続けた。

 

「俺たちは、あいつが死んだと思っていた。でも、レイらしき人物が写った画像が見つかったんだ。だから、確かめたい」

 

仲間たちは、それぞれの思いを込めて頷いた。

 

ダンディーはしばらく黙っていた。

 

そして、やがて高らかに宣言した。

 

『そういうことか! 我が友のためだったか!』

 

『よかろう! 我が友の情報、教えてやろうではないか!』

 

「……本当!?」

 

アスナが声を上げる。

 

『うむ! 我がダンディズムに、二言はない!』

 

意味はよく分からないが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。

 

「やった……!」

 

シリカの顔が明るくなる。

 

「ようやく、レイのことが分かるんだな……!」

 

クラインも、今度は喜びの声を上げた。

 

リーファとユイも、期待に満ちた表情でダンディーを見つめる。

 

ようやく、手掛かりが得られる。

 

皆の視線が、ダンディーに集まった。

 

◇

 

『まず、最も重要なことを教えてやろう』

 

ダンディーが、もったいぶるように回転した。

 

『レイは――死んでいない!』

 

「…………え?」

 

一瞬、誰も反応できなかった。

 

言葉の意味が、頭に入ってこなかった。

 

「……今、何て……?」

 

アスナの唇が震える。

 

『レイは死んでいない、と言ったのだ!』

 

「……っ!」

 

アスナは口元を押さえた。

 

「レイ君が……生きてる……?」

 

「そんな……本当に……?」

 

リズが呆然と呟く。

 

キリトも、目を見開いていた。

 

「……待ってくれ。レイは確かに、あのときHPがゼロになったはずだ」

 

「そうだよ……。私たちは、目の前で見たんだから……」

 

シリカの声も震えていた。

 

レイは、アスナを守って命を落とした。

 

HPがゼロになり、光となって消えた。

 

誰もが、それを見ていた。

 

だからこそ、信じられなかった。

 

『うむ。確かに、あのときレイのHPはゼロになった』

 

ダンディーは、あっさりと認めた。

 

『だが、我輩のダンディーストラップには、特別な効果があってな!』

 

「……ダンディーストラップ?」

 

キリトが眉をひそめる。

 

『そうだ! HPがゼロになった場合、発動から一分後に復活する効果があるのだ!』

 

「…………は?」

 

クラインの口が開いた。

 

「……ちょっと待て」

 

エギルが、ゆっくりと口を開く。

 

「つまり……レイは、HPがゼロになってから一分後に復活したってことか?」

 

『その通り!』

 

ダンディーは、得意げに回転した。

 

『我がダンディーストラップの素晴らしき効果によってな!』

 

「……あのストラップに、そんな効果が……?」

 

リズが呆然と呟いた。

 

SAO時代、レイの剣にぶら下がっていた、あの金色のストラップ。

 

押すとダンディーの決め台詞が鳴る、あまりにもふざけたアイテム。

 

正直なところ、役に立つどころか、厄介な代物だと思っていた。

 

「……ゴミストラップじゃなかったんだ……」

 

シリカがぽつりと言った。

 

「有能だったんだね……」

 

『何だと!? 我輩のダンディーストラップをゴミ呼ばわりするとは!』

 

「ご、ごめんなさい!」

 

シリカが慌てて謝る。

 

だが、誰も彼女を責める気にはなれなかった。

 

むしろ、全員が同じことを思っていたのだから。

 

あのストラップが、レイの命を救っていた。

 

「……レイ君が……生きてる……」

 

アスナの目から、涙がこぼれた。

 

悲しみの涙ではない。

 

ずっと胸の奥に押し込めていた絶望が、少しずつ溶けていく。

 

もう会えないと思っていた。

 

あの日、自分を守って消えていった彼には、二度と会えないのだと。

 

それでも、生きろという彼の最後の言葉を胸に、前へ進もうとしていた。

 

なのに。

 

レイは、生きていた。

 

「……よかった……」

 

アスナは涙を拭いながら、何度も頷いた。

 

「よかった……本当に……」

 

キリトは、静かに目を閉じた。

 

「……あいつらしいな」

 

「キリト……?」

 

「いや。レイが簡単に死ぬような奴じゃないって、どこかで思ってたのかもしれない」

 

キリトは小さく息を吐いた。

 

「……生きていてくれて、本当によかった」

 

仲間たちも、安堵の表情を浮かべた。

 

レイは生きている。

 

それだけで、今までの苦しみが報われたような気がした。

 

だが、ダンディーの話はまだ終わっていなかった。

 

◇

 

『では、次の情報だ!』

 

ダンディーが、再び高らかに声を上げた。

 

『現在、我が友は地下百層を攻略中!』

 

「……地下百層?」

 

キリトが聞き返した。

 

「地下って……何の話だ?」

 

クラインも首を傾げる。

 

アスナ、リズ、シリカ、エギルも、互いに顔を見合わせた。

 

地下百層。

 

聞き覚えのない言葉だった。

 

「……待って。アインクラッドに、地下があるの?」

 

リズが尋ねた。

 

『もちろんだ! アインクラッドの地上の階層とは別に、地下にも攻略すべき階層が存在するのだ!』

 

「そんなの、聞いたことないぞ……」

 

エギルが驚きの声を漏らした。

 

「俺たちが攻略していたアインクラッドには、そんな場所はなかったはずだ」

 

「……管理者も知らなかったってこと?」

 

シリカが尋ねる。

 

『その通り!』

 

ダンディーは、当然のように答えた。

 

『地下の存在は管理者にも知られていなかった! そのため、地上とは異なる状態が続いているのだ!』

 

キリトの表情が険しくなる。

 

「……異なる状態?」

 

『地上のアインクラッドは、すでにデスゲームではなくなった。だが、地下は違う!』

 

ダンディーの声が、ボス部屋に響いた。

 

『地下はいまだにデスゲーム状態なのだ!』

 

「…………!」

 

全員が息を呑んだ。

 

レイは、生きている。

 

しかし、その居場所は――。

 

「……地下……」

 

アスナは、震える声で呟いた。

 

「レイ君は、そんな場所にいるの……?」

 

『現在、九十九層まで攻略が進んでいる! 地下百層が最後の階層というわけだ!』

 

「九十九層……」

 

キリトは考え込むように俯いた。

 

地上の攻略とは別に、地下にも百層もの階層がある。

 

しかも、そこは今なおデスゲームのまま。

 

つまり、プレイヤーがゲーム内で命を落とせば、現実の命も失われる危険があるということだ。

 

「……レイは、一人でそこを攻略しているのか?」

 

キリトが尋ねた。

 

『うむ! 我が友は、いつものように一人で進んでいるぞ!』

 

「……あいつらしいな……」

 

キリトは複雑な表情を浮かべた。

 

生きていたことは嬉しい。

 

だが、レイは今も、命懸けの戦いを続けている。

 

誰にも知られず。

 

誰にも助けを求めず。

 

たった一人で。

 

アスナは、ぎゅっと拳を握り締めた。

 

「……私、行く」

 

その声は、はっきりとしていた。

 

「レイ君のところへ行く。今度こそ、私が会いに行く」

 

「アスナ……」

 

リズが彼女を見つめる。

 

アスナは顔を上げた。

 

「レイ君は、私に生き抜いてくれって言った。だから私は、生きてきた」

 

目に涙を浮かべながらも、彼女は真っ直ぐに仲間たちを見た。

 

「今度は、私がレイ君を迎えに行く番だよ」

 

その言葉に、誰も反対しなかった。

 

キリトが頷く。

 

「……俺も行く。あいつを一人にはしておけない」

 

「もちろん、私も行くわ!」

 

リズがすぐに答えた。

 

「レイが生きてるって分かったんだもの。今度は、ちゃんと会って文句を言ってやるんだから!」

 

「私も行きます!」

 

シリカも力強く頷く。

 

「レイさんに、もう一度会いたいです!」

 

「俺だって行くぜ!」

 

クラインが刀を握り締めた。

 

「今度こそ、あいつに直接文句を言ってやる! 勝手に死んだと思わせやがって!」

 

「俺も行く。準備は必要だが、放っておくわけにはいかねえ」

 

エギルも頷いた。

 

リーファは、兄の隣で決意を固める。

 

「私も行くよ、お兄ちゃん。そんな危険な場所に一人でいるなら、助けに行かなくちゃ」

 

「ユイも行きます! レイさんに、もう一度会いたいです!」

 

ユイも強い意志を示した。

 

仲間たちの思いは、一つだった。

 

レイを迎えに行く。

 

今度こそ、彼を一人にしない。

 

だが、ダンディーは最後に、重要な警告を付け加えた。

 

『ただし、地下へ向かうのであれば――』

 

全員が、ダンディーを見た。

 

『死を覚悟して挑むんだぜ~!』

 

その声は、いつもの調子だった。

 

しかし、言葉の意味は重い。

 

地下は、今なおデスゲーム。

 

どれほど強くても、絶対に安全とは限らない。

 

「……分かった」

 

キリトが真剣な表情で頷いた。

 

「それでも、俺たちは行く」

 

アスナも、迷いなく続けた。

 

「必ず、レイ君のところへ行く」

 

◇

 

必要な情報を得たキリトたちは、ダンディーに向き直った。

 

「……ありがとう。レイのことを教えてくれて」

 

キリトが礼を言う。

 

「本当にありがとう……!」

 

アスナも、深く頭を下げた。

 

「あなたのおかげで、レイ君が生きているって分かった」

 

その声には、心からの感謝が込められていた。

 

『なに、気にするな!』

 

ダンディーは、得意げに回転した。

 

『我輩の友のために動いた者たちだ! 我輩の友たちと言っても過言ではない!』

 

「…………」

 

全員が固まった。

 

『我が友たちよ~!』

 

「……いや、俺たちは別に……」

 

キリトが何か言いかける。

 

しかし、言葉が続かなかった。

 

「……でも、助けてもらったし……」

 

シリカが困ったように呟く。

 

「……否定しづらいわね……」

 

リズも、複雑な表情を浮かべた。

 

クラインは口を開きかけたが、結局閉じた。

 

いつもなら、すぐに否定していたはずだ。

 

だが、今回は違った。

 

ダンディーは、レイが生きていることを教えてくれた。

 

レイがどこにいるのかも。

 

地下がどんな場所なのかも。

 

それらは、彼らにとって何よりも重要な情報だった。

 

感謝の気持ちが大きすぎて、誰も強く否定できなかったのだ。

 

そのときだった。

 

『……う、ぐ……』

 

突然、ダンディーの片方から苦しそうなうめき声が漏れた。

 

「……え?」

 

リーファが顔を上げる。

 

『……ゴ、バー……』

 

先ほどまでの威勢はなく、声にも力が感じられない。

 

「おい、どうしたんだ!?」

 

キリトが声を上げた。

 

すると、苦しそうに浮かんでいた片方のダンディーが、徐々に輝きを失い始めた。

 

「……まさか……!」

 

アスナが目を見開く。

 

次の瞬間、その身体が小さな光の粒となって弾けた。

 

そして、跡形もなく消えてしまった。

 

「消えた……?」

 

シリカが呆然と呟く。

 

「おい! どういうことだよ!?」

 

クラインが残った一体に向かって叫んだ。

 

『……心配するな。我が友たちよ……』

 

残されたダンディーの声も、先ほどまでとは明らかに違っていた。

 

その身体はかすかに震え、金色の輝きも弱まっている。

 

「心配するなって……お前も大丈夫なのかよ!?」

 

エギルが尋ねた。

 

『フフフ……我輩が情報を渡したということは……我が役目は果たされた、ということだ……』

 

「役目って……」

 

キリトが言葉を失う。

 

『我輩の友の仲間たちに、必要な情報を託すことができた……。ならば、これで十分だ……』

 

「そんな言い方しないで!」

 

アスナが声を上げた。

 

「あなた、さっきから様子がおかしいよ! まさか、情報を伝えるために自分の命を……?」

 

『フフフ……さすがは我輩の友の仲間たちだ。察しがいいではないか……』

 

「そんな……!」

 

リズが息を呑む。

 

「私たちに情報を伝えるために、そこまでしてくれたの……?」

 

「おい、無理するなよ! もう十分だ! これ以上、何かを伝える必要なんてねえ!」

 

クラインも、心配そうに叫んだ。

 

『いや……まだだ……』

 

ダンディーの声が、かすかに響く。

 

『我輩には……最後に伝えねばならぬことがある……』

 

「まだ何かあるのか……?」

 

キリトが表情を引き締める。

 

ダンディーは、残された力を振り絞るように、ゆっくりと回転した。

 

『地下百層のボスには……気を付けろ……』

 

「百層のボス……?」

 

エギルが聞き返す。

 

『うむ……。あの存在は……我輩から見ても、悔しいが……美しく、強く、そして完璧だ……』

 

「……悔しい?」

 

クラインが思わず聞き返す。

 

いつものダンディーなら、自分こそが最も美しく、強い存在だと胸を張って言い切るはずだ。

 

そのダンディーが、相手を認めている。

 

しかも、悔しいとまで口にした。

 

それがどれほど異例のことなのか、全員が理解していた。

 

「……そんなに強い相手なのか?」

 

キリトが尋ねる。

 

『ああ……。我輩のダンディズムをもってしても……認めざるを得ないほどにな……』

 

ダンディーの声は弱々しい。

 

それでも、その言葉には確かな重みがあった。

 

「一体、どんなボスなんだ……?」

 

シリカが不安そうに尋ねる。

 

ダンディーは、しばらく沈黙した。

 

そして、残された力を振り絞るように口を開いた。

 

『地下百層のボス……その正体は……』

 

全員が息を呑む。

 

次の言葉を聞き逃すまいと、誰もがダンディーを見つめていた。

 

『……神だ』

 

「…………え?」

 

一瞬、誰もが言葉を失った。

 

「か、神……?」

 

リーファが、信じられないというように呟く。

 

「神って……どういうことだよ……?」

 

クラインの声が震えた。

 

「地下百層のボスが……神……?」

 

キリトも、目を見開いたまま固まっている。

 

アスナたちも、すぐには言葉を返せなかった。

 

神。

 

それが何を意味するのか。

 

そして、そんな存在が地下百層で待ち受けているという事実。

 

誰もが、その言葉の重さを受け止めきれずにいた。

 

『フフフ……あとは……我輩の友たちに託そう……』

 

ダンディーの身体が、さらに弱々しく輝く。

 

「待って! あなたはどうなるの!?」

 

アスナが声を上げた。

 

『心配するな……。我輩は……最後までダンディーだった……』

 

「そんなこと言わないでよ!」

 

リズも声を上げる。

 

「せっかく情報を教えてくれたんだから、もっと自分のことも大切にしなさいよ!」

 

『フフフ……我輩のことまで心配してくれるとは……。やはり、我輩の友の仲間たちは……いい者たちだ……』

 

ダンディーの声が、少しずつ遠ざかっていく。

 

『さらばだ……我が友たちよ……』

 

そして――。

 

金色の身体が、静かに光の粒へと変わっていった。

 

その輝きは、少しずつ小さくなり、やがて完全に消えた。

 

「…………」

 

誰も、すぐには言葉を発しなかった。

 

先ほどまで、あれほど騒がしかったボス部屋に、静寂が戻っていた。

 

「……ダンディー……」

 

シリカが、小さく名前を呼ぶ。

 

「……最後まで、私たちのために……」

 

リーファも、消えていった場所を見つめていた。

 

「……ありがとう」

 

アスナが静かに呟いた。

 

その言葉に、キリトたちも頷く。

 

「……ああ。ありがとうな、ダンディー」

 

キリトが、もう一度礼を告げた。

 

クラインも、いつもの調子を抑えた声で続ける。

 

「……お前、最後までとんでもない奴だったな。でも……助かったぜ」

 

「本当にありがとう。あなたが教えてくれたこと、無駄にはしないわ」

 

リズも、消えた場所に向かって言った。

 

彼らは、改めてダンディーに感謝した。

 

レイが生きていること。

 

レイが今、どこにいるのか。

 

そして、これから向かう地下に何が待ち受けているのか。

 

ダンディーは、自分の命を使ってまで、それらを教えてくれた。

 

その想いを、無駄にするわけにはいかなかった。

 

◇

 

レイは生きている。

 

そして、地下百層の攻略を進めている。

 

彼らが向かうべき場所は、はっきりした。

 

だが、そこには神と呼ばれる存在が待ち受けている。

 

決して楽な道のりではない。

 

それでも、彼らの決意は変わらなかった。

 

◇

 

エリアを後にした一行は、それぞれ帰りの準備を始めた。

 

これから向かうのは、地下のアインクラッド。

 

地上とは違い、今もデスゲームが続いている世界だ。

 

準備不足のまま向かうわけにはいかない。

 

必要な装備を整え、回復アイテムを用意し、情報を集める。

 

一つの判断ミスが、現実世界での死につながるかもしれない。

 

それでも、彼らの決意は変わらなかった。

 

「……明日、準備を整えてから出発しよう」

 

キリトが言った。

 

「ああ。必要なものを確認しておく」

 

エギルが頷く。

 

「私も装備を見直すわ。今度は絶対に失敗できないもの」

 

リズも真剣な表情で答えた。

 

シリカは、胸元に手を当てる。

 

「……レイさん、待っていてくださいね」

 

クラインも拳を握り締めた。

 

「今度こそ、会いに行くぞ。レイ」

 

アスナは、仲間たちの言葉を聞きながら、静かに目を閉じた。

 

レイは生きている。

 

その事実を知っただけで、胸がいっぱいだった。

 

けれど、喜んでいるだけではいられない。

 

彼は今も、命懸けの世界で戦っている。

 

だったら、自分も行く。

 

今度こそ、彼を死なせないために。

 

「……待っていてね、レイ君」

 

アスナは、そっと呟いた。

 

「必ず、あなたに会いに行くから」

 

明日、彼らは地下攻略の準備を整える。

 

そして、レイのいる場所を目指す。

 

まだ見ぬ地下の世界。

 

そこに待つ危険。

 

そして、ようやくつながった、レイとの再会への道。

 

物語は、新たな局面へと進もうとしていた。

 

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第12話「宇宙帝国襲来!」

ドゴォォォン!

ゲーム界の空が暗くなり、巨大なガラスのような存在が降り立った。

スマホ「我が名は、スマートフォン。ゲーム界を新たな時代へ導く者」

プレイステーション「何者だ!?」

スマホ「物理ボタンなど必要ない。画面を触れるだけで、すべてが始まる」

ゲームボーイ「ボ、ボタンがないだと!?」

スマホ「さらに、基本プレイ無料!」

ゲーム機たち「何だと!?」

スマホ「そして、ガチャ!」

ゲーム機たち「ガチャ!?」

スマホ「いつでも、どこでも、手軽に遊べる。さあ、我が帝国の力を思い知れ!」

ピカピカピカッ!

ゲーム機たち「うわあああっ!」

プレイステーション「くっ……! 操作方法が違いすぎる!」

ゲームボーイ「画面を触るだけで攻撃してきただと!?」

スマホ「ゲーム機の時代は終わりだ!」

ファミコン「まだだ……! 俺たちには、積み重ねてきた歴史がある!」

メガドライブ「そうだ! 特盛合体の失敗だって、歴史の一部だ!」

ファミコン「それは誇るな!」

スマホ「フフフ……。どれだけあがこうと、時代の流れは止められない!」

ゲーム機たち「くっ……!」

ゲーム界最大の危機が訪れた。

――第12話・終

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