「それにしても、ですが、ベイト様はずいぶん他の巡礼者の方々とは違うのですね」
「違うってーと?」
シェラの口から、ベイト自身についての質問が飛び出してきた。
ようやく質問攻めが終わったと思っていたベイトが、ため息交じりに聞き返す。
「その、なんと言いますか……、ベイト様の態度は、どうにも教会に属するような人がとるべきものではないように思えまして……」
「だろうな」
言葉を慎重に選びながら苦言を呈するシェラに、ベイトはあっさりと肯定を返した。
「私はあくまで巡礼者だ。聖職者らしさを求められても応える気はねーよ。それに、敬意だの礼儀だのにはとんと興味がないもんでね」
「そう、ですか……」
自分の態度の悪さをしっかりと認識したうえで、改める気などさらさらないと、ベイトは開き直ったかのように宣言する。
取り付く島もないとはまさにこのこと。
これ以上の指摘が意味を成さなくなる彼女の反応に、呆れた反応のひとつでも返したくなるこの状況。
だが、シェラの反応は少し違った。
「じゃあ例えばさ、聖都の大司教様の前でもそんな態度でいるつもりなの? それはさすがに無礼が過ぎない?」
突然の呼び捨てに、ベイトがシェラの方を振り向いた。
明らかな対応の変化にじっとりとした目線をよこす彼女の様子を見て、してやったりと少し満足げにシェラが口角を上げる。
「ちょっとした意趣返しみたいになったけどさ。ベイトがやってることって、要するにこういうことでしょ?」
「……いや、神父サマの前じゃおとなしそーないい子ちゃんやってたくせに、ずいぶんと猫被ってたんだなと思ってね」
「別に猫被ってたわけじゃないわよ。相手によって言葉と態度を使い分けるなんて、誰でも普通にやることじゃない」
「んじゃなんだ。私は敬う対象から外れたってことか」
「ベイトが自分で言ったんじゃない。敬意だの礼儀だのには興味がないって。それともさっきの言葉を撤回する?」
にまにまと勝ち誇った笑みを崩さないシェラに、ベイトが辟易とした態度で大げさなほどにため息を吐く。
ただの夢見がちな、どこにでもいるような普通の町娘だと侮っていた。
だが、その実彼女は計算高く、柔軟な思考の持ち主らしい。
「それに、馴れ馴れしい態度もため口も、そんなに悪いものじゃないと思ってるよ」
その一言とともに、シェラの勝ち誇ったような笑みが、やわらかく崩れていく。
優越感から歩み寄りへ。
彼女の顔に張り付いた微笑みそのものはそのままに、その意味だけが変わっていく。
「聖都までの短い間かもしれないけれど、ちょっとくらいは仲良くしたいでしょう?」
お世辞のような、何気ない一言だった。
だが、シェラの言葉が本心からのものだということは、彼女の笑顔を見れば一目瞭然だった。
だからこそ、なのだろうか。
彼女のその一言に、ベイトが露骨に眉を寄せたのは。
シェラが敬語をやめたとき以上の反応を見せたのは。