病喚士物語 ~訳あり女性達の愛が重い~ 作:タスケ
訓練が長めに続く最中、そろそろ休憩が必要だとゴルドーが判断をした。
まだ体力に余裕がある者と疲労している者と分かれている。
そこでゴルドーはダンジョンの中ではあるが、比較的安全な場所で休憩を取ることにする。
見張りは兵士達に任せる形で幸成達が休憩をする中で、あることを危惧する会話をし始める。
「なあ、みんな。この世界へ来て、魔物の命を奪うことになってから思うことがあってさ……」
「それって、一体なんのこと?」
休憩が始まって数分後に鈴原が口を開く。何かを伝えようとしている鈴原に佐伯が聞き返す。
「命のやり取りを知った後から無事に元の世界に、日本に、日常に帰ることができた後、自分は前のように元の日常を送れるのかなって」
クラスメイト達の現在に通じる、ある危惧の内容だった。
それは元の世界に戻れた後に、自分達は元の日常を送れるのかという内容。
これは幸成達の中でも根深いものだった。
「魔物相手とはいえ人型も、多くの命を奪った私達が元の日常に戻っても、罪悪感とかで潰れないかって言いたいの?」
「碇谷の言う通りだよ」
碇谷の問いに鈴原は肯定する。相手が人型だったのが特に自分達に影響を及ぼす。
元の世界に戻れても、自分の手は血で染まっていると思えるということだ。
「例え罪悪感に潰されなかったとしても、この世界で命のやり取りを知ったから、元の日常が合わなくなるかもしれない」
「そうなったら自分はどうなるかって話だね」
碇谷の言葉に鈴原は更に言葉を続ける。元の世界に帰れても元の日常を本当の意味で過ごせなくなるかもしれない。
そうなったら自分達はどうなるのか。
「確かに問題になりそうだ。もし、帰れた後に人殺しをしたニュースを見聞きしたら?」
「多分、普通の感覚なら恐怖か嫌悪するのが当然なんだろうけど……」
「場合によっては、無関心でいられるかもしれないもんな」
笹原も言うようにいつか、元の世界で人殺しのニュースを見聞きしたら、クラスメイト達はどう見聞きするだろうか。
幸成はそこを想像したら、価値観が一変しているかもしれないと思い始める。
クラスメイト達が帰れた後、元の世界でまともにやっていけるのかという不安は、今のうちからしっかりと考えておくべき問題なのは間違いない。
「なんか、深刻そうだね?」
「ユキナリ達の世界においては、家畜などを除けば命のやり取り自体が非日常らしいです。しかもそれが元の日常に帰った後に尾を引くとなると……」
「うん。尾を引くようにしかならないと思う」
その会話を聞きながらヴァルティは、クラスメイト達が深刻な顔をしているのに気づき、ブリュテに尋ねる。
ブリュテはクラスメイト達から聞いた内容をヴァルティに説明すると、ヴァルティも納得した様子で頷く。
幸成も自覚している部分が強くなってしまうしかない。
魔物とはいえ殺した経験が元の世界に帰る後に、大きな障害と化すかもしれないと思うと深く考え込んでしまう。
「……今は元の世界に帰るので精一杯。その上で問題になるなら、問題になる時に考えようか」
「田村の言う通りだ。今は帰ることを考えよう。というか、元の世界に帰る前にダンジョン破壊がある」
「そうだよな。まずは今を生き抜かないとだよな」
「あっ。確かに」
「うん。皆を無事に帰すために、頑張らないと」
重い空気を変えようと奈々が今は帰りたい思いで精一杯だと発言すると、笹原と亀田、碇谷も続く。
幸成も今は元の世界に帰るためにまずは、生き抜くことを最優先にするしかない。
ヴァルティとブリュテが守ってくれるといっても、どこまでも頼っていいものではないだろう。
「その帰るといえば、ゴルドーさんは俺達が元の世界に、日本に帰れる魔法の件はどうなってるかわかりますか?」
「ああ、それは王宮魔導師達が総力で研究を進めている。進展はそのうちに教えられると思う」
「そうですか。後どれくらいかかるかは?」
「今のところはわからん。お前達を召喚した魔法は3年もかかって作られたからな。それより期間が短いと信じたい」
「はい。そう信じます」
帰るための魔法の進捗を聞いてみる。
進展はそのうちにわかるがまだいつになるかはわからない。
だが、幸成としてはその事実だけわかれば今は十分だった。
後は元の世界に帰れることを信じるしかない。
可能ならば3年よりも短い期間で、研究が完成することを願っては休憩を終える。
「休憩後のここからは、ダンジョンの外へと移動する形で続ける。出た後からは自由時間だ」
ゴルドーから休憩後はダンジョンの外へと向かう形で続けると聞く。
外に出た後からは自由時間らしい。
「自由時間、か。なら、街中の市場を見に行きたいです。味噌汁のダシになりそうな何かを探しに行きたいと思います」
「市場、ね。俺も行ってみたい。というかその前にみんなで行く?」
「それもいいな」
そして、外に出た後の自由時間は佐伯が味噌汁のダシを探しに市場に行きたいと言う。
それを聞いた幸成とクラスメイト達も市場に行きたくなり、みんなで行くことになった。
しかし、ダンジョンから出た後にあることに巻き込まれ、それが今日は叶わないことを知ることになる。
ダンジョンから出てからは少し足早く向かう。
もしかしたら味噌汁を初めとしたダシの素となる海藻または魚類があるかもという期待が強まっていくが、その期待が打ち砕かれる。
市場への行き方をゴルドーに訪ねる最中に、幸成達へ向かって誰かが叫びながら走ってくるのが見える。
「ゴルドーさん、大変です!? 以前に利用していたダンジョンから、魔物が溢れ出てきました!!」
叫んでいるのは騎士の1人。
叫んでいる内容は、ダンジョンから魔物が溢れ出ているというもの。
それを聞いたゴルドーは、恐れていたダンジョンからの魔物達の暴走が起きてしまったことを知る。
「なんだと!? 今はどうなっている!!」
「今はまだダンジョン破壊者達が食い止めてます! ですが、魔物達の中にはドラゴンやメタルゴーレム、ギガクラブといった大型の魔物も多数います!!」
「くそっ! どうしてこのタイミングで……!」
「ゴルドーさん! このままでは王都がやられます!!」
騎士からの報告を要約すれば、少し前まで幸成達が訓練に使用していたダンジョンから複数の魔物達が溢れ出た。
それも大型の魔物まで溢れ出た。
なので王都を守るためにダンジョン破壊者達が食い止めているが、それだけでは食い止められないかもしれない状況だという。
「こうなれば、今は大型の魔物達を迎え撃つしかない! ササハラ達には一時的に城へ戻ってもらう。そして、ヴァルティ殿とブリュテ殿もできれば戦闘に参加してもらいたい!!」
状況は一刻を争うものとなる。ゴルドーは笹原達の身を守るために1度城に戻らせて、ヴァルティとブリュテにも協力を仰ぐ。
対するヴァルティとブリュテは、まずは幸成を見る。
「本当に、俺達が召喚されるほどに、この世界は崖っぷちなんだな……」
2人に見つめられる幸成は、恐怖で両肩を震わせては今にやっと実感してきていた。
召喚された理由は真実だった。
ここまで切羽詰まっているから、幸成達を召喚したのだと。
「このまま放置したら、ユキナリの身の危険に繋がる」
「ヴァルティ、仕方ありません。溢れ出た魔物達だけでも対処しなければ、ユキナリが危ないのです」
「そうだね。私もユキナリが危なくなるのは嫌だから、対処するよ」
「では、行きましょう」
ヴァルティとブリュテは、幸成が危険な目に遭うことを考えるなり、ゴルドーと共に魔物討伐に向かうことを決める。
「ユキナリが一番安全な場所は」
「可能なら私とヴァルティの近く、ですね」
「けど、今のユキナリの実力だと、まだ危ない」
決めるなりヴァルティとブリュテは、幸成も一緒に戦闘に同行させるよう考えたらしい。
だが、それでは危険と判断せざるを得ない。
「……4人の騎士達がユキナリを万が一に備えて守る。それならどうだろうか?」
確かにそれは危険だ。
それを理解した上でゴルドーはヴァルティとブリュテに、幸成に万が一がないように4人の騎士達に守ってもらったらどうかと提案する。
「……それでいいかな?」
「今はそれが最善策とします。とにかく、早々に片付けないとなりません」
ヴァルティとブリュテは騎士達に幸成を守るよう任せた上で、魔物達を早急に対処することにする。
そのすぐに幸成とクラスメイト達はテンペウ城へと向い避難するしかない中、幸成の内心は苦しい。
「なんで、こうなったんだ……!」
自分も戦力になりたい気持ちはあるが、まだなれない。
ヴァルティとブリュテがいれば何とかなるかもしれないが、幸成からすれば2人に守られるのかと思うと情けないと思えてくる。
避難の最中に自問自答しながらも、今は生きることを優先するしかないと幸成は走るしかなかった。
テンペウ城内に避難した幸成達の元に、ペリエがやってくる。
マズい現状を伝えるために。
「今から現状を説明します」
「状況はどうなってるんですか?」
「現在、ダンジョンから溢れ出た魔物達は主にヴァルティ殿とブリュテ殿の2人により数を減らしつつあります」
説明によればヴァルティとブリュテが魔物達を相手にしているらしい。
この2人の活躍で王都が守られている。
しかし、まだ深刻な状況なのは事実のようで、溢れ出た魔物の中で未だに大型の魔物がいるらしく、ダンジョンの入り口付近は地獄絵図と化している。
「ですが、このままではジリ貧です。ダンジョンからは未だに溢れ出ようとしているのを確認しています」
「どれくらい溢れ出てるんですか?」
「あのダンジョンの魔物達が更に溢れ出すとなると、王都と王城が共に陥落するかと思われます」
「そんなに!?」
続報がペリエの口から告げられると、まだ溢れ出ようとしている魔物達の数は多すぎる。
このままだと王都と城が落ちるかもしれない。
その事実に笹原達は戦慄し、パニックになりかけるがどうにか耐える。
幸成も同じく耐えている。
「なので、早急に元から絶たないとなりません。なので、ユキナリ殿。今から貴方にやってほしいことがあります」
だがペリエは現状の打開策として幸成にやってほしいことがあるらしい。
「貴方の病喚士の力で、何者かを呼び出してもらいたい」
「でも、まだ名前を知りません」
「わかっています。ですが、時間がありません。確か彼女達と同じかそれに近い力を持った存在を貴方は呼び出せるはずです。その力を使っていただけませんか?」
ペリエが伝えたのは、病喚士の力で呼び出すことについてだった。
確かに幸成は病喚士の力で他のナニカを呼び出せる。
しかし問題は、そのナニカの名前はわからない。
わからないが必死に呼べば来てくれるかもしれない。
そんな希望的観測を持ちながら、幸成は病喚士の力を使うことを決めるしかなくなった。
「……わかりました。やってみます」
「では、場を城内の訓練場に移しましょうか」
「はい」
ペリエと騎士4人共に幸成は訓練場に移動して、そこから緊迫した表情で精神を集中させた。まだ見知らぬ誰かを呼び出すのは危険かもしれないが、背に腹は変えられない。
「…………」
訓練場へ来た後、両目を瞑る幸成。
自分が呼び出そうとするナニカ達の名を呼ぼうとするがらそれはわからない。
仕方ないので、漠然と『誰か来てほしい』と数回は心の中で唱えるようにしてみる。
『…………』
訓練場は静まり返っていた。しかし何事も起こらない。
「名前を知ってからでないと、駄目なのか……?」
「幸成……」
気になり駆けつけるように訓練場へ来た後、奈々を初めとしたクラスメイト達は息を呑みながら見守る。
幸成は再度精神を集中させて呼び出そうとする。
一度や二度では駄目なら、如何なる手を使っても呼び出す。
幸成のその意志に呼応するように、訓練場内の空気が奇妙に動き出す。
(来てくれ。誰でもいいから!!)
幸成の想いが強くなる度に、訓練場内の空気は歪みを強める。
その歪みから人間1人は入れるほどの光の玉が現れた。
「これは、もしや……!」
「幸成、もう少しだよ!」
「うん!」
ペリエと奈々の声に励まされ幸成は更に精神を集中する。
光の玉は徐々に人の形を形成し始める。
そこから現れたのは美しい容姿の女性。現れた女性は赤紫色の長い髪をしており、見た目からして冷静さがある印象を感じさせる。
「あら。私が呼ばれたの?」
その女性は魔道士と思わせる衣服を着ている。
その両目は優しさと共に強い意志を感じさせた。
「はい。名前は知らないけど、なんとか貴女を呼びました」
「名前を知らない状態で呼ぶ辺り、余程に切羽詰まった状況ね?」
現れた女性は切羽詰まった状況を察した後、幸成を見るなり首を傾げた。
「自己紹介をしたいところだけど、それは後回しにした方がよさそう。それで、私が呼ばれた理由を教えてくれるかしら?」
「わかりました。今、魔物がダンジョンから溢れ出たことで窮地に立たされています」
幸成は現れた女性の言葉に頷いた後、現状を簡単に説明する。
女性は説明を受けるなり状況を理解したようで真剣な表情を見せた。
「魔物が溢れ出たダンジョンそのものを一掃すればいいのね?」
「はい。可能なら、ですが」
「その程度のことは余裕よ。但し条件があるわ」
「なんですか?」
女性は魔物の溢れ出たダンジョンから溢れ出た魔物から順番に一掃することを引き受ける。
だが、引き受けた上である条件を出してくることが、ここまで来る理由があったのだろう。
なので幸成は彼女の要求を聞く。
「簡単なことよ。この事態が終わった後、私の名前を知ることと呼び捨てにすること。もう1つはデートしてほしい。今はそれだけ」
「デートって……」
「行ってくるわ。私の名前は終わった後にでも教えることにするから」
その条件とは女性を呼び捨てにすることと、デートしてほしいという内容だった。
「さて。向かうとしますか」
女性はそう言うなり、その場から一瞬で姿を消した。それを見たペリエは驚愕してしまう。
「い、今のはもしや、瞬間移動の魔法?」
「は、はい?」
「ユキナリ殿。あのような人材を呼べるなんて、貴方はとんでもないですよ」
ペリエは今のこの世界においては、瞬間移動の魔法を使える魔法使いは見たことがない。
なので幸成が呼び出したナニカの存在は、とんでもない力を持っていることを理解した。
女性が呼び出された頃。ヴァルティとブリュテは魔物達を相手に無双の如く戦っていた。
一方でダンジョン内からはドラゴンやメタルゴーレムといった、大型の魔物達が次々と溢れ出てくる。
「キリがないね」
「まだまだ魔物が溢れ出してくると、まるで手が追いつきません」
2人は愚痴りながらも魔物達を倒し続けていく。ヴァルティはメタルゴーレムとドラゴンなどを一撃で殴り倒す。
ブリュテは地面から生やした植物を大砲のように作り、大きな種のような物を散弾として飛ばしては小型の魔物達を倒していく。
「もう。おかわりは要らないよ!」
「どれほど倒したかは、もう数えられません」
しかし、ダンジョンから溢れ出る魔物の数は2人で倒しても一向に減らない。
その上に溢れ出る魔物の中には大型の魔物も多数いる。
2人はまだ疲労していないが、ダンジョン破壊者として参戦する者達は既に疲労困憊。
そのため、大型の魔物を避ける形で戦闘を継続している。
「ヴァルティ殿! ブリュテ殿! このままでは数が減りません!!」
「わかってる!」
その最中にダンジョンからは、まだまだ魔物が溢れ出ようとしている。
それを見た騎士の1人が悲鳴じみた報告をすれば、ヴァルティはうるさいと思ってしまう。
「ああ、もう。またドラゴンとかがでてくる。数は5体くらいかな?」
「倒し続けても終わりが見えないですね……」
鬱陶しいと思え始める中、地面から沢山の何かが飛び出してきた。
「何? 新手の魔物?」
「いえ、これは……ゴーレム?」
それは数多の姿のゴーレム達。
鳥、猛牛、蛇、熊。
他にも多数の動物を模したゴーレム達が大量に現れたかと思えば、溢れ出る魔物達へ襲いかかった。
ゴーレム達は溢れ出る魔物達を倒していき、更には大型の魔物のドラゴン5体も圧倒的な数の力で地面へ頭を叩きつけた後に、息の根を止めていく。
「な、なに、これ?」
「新手の魔物ではなさそうですが……」
ヴァルティとブリュテもまた突然現れたゴーレム達の正体がわからないでいる時に、空から声が響く。
「ゴーレム達はそのまま溢れ出た魔物を倒し続けて。私がダンジョンを一掃する」
「この声は……?」
「なぜ、貴女がここに? もしかして呼ばれたのですか?」
「ええ。ユキナリくんにね。まあ、私を呼ぶには名前を知らなくて強引にだったけど」
その声の主の姿を見たなり、ヴァルティは内心『自称妻か恋人よりはまだマシかな』と、ブリュテは幸成が強引に呼んだと知るなり今は助かると安堵する。
「まあ、これを見る限りはユキナリくんが強引に呼んだのはよかったみたいだけど。それで、ダンジョンはどうなってるの?」
「見ての通りよ。溢れ出る魔物が一向に減らない」
「なら、根元を断つ。というわけで、今回は派手にやらせてもらうしか手はないわ」
ヴァルティとブリュテの説明を聞いて根元を断つと告げた女性は宙に浮いたまま、開いた右手に魔力を集中させる。
「さて。準備を整えたわ。私はこれから派手に撃ち放つから、衝撃に備えてもらえるかしら?」
「はいはい」
「わかりました」
女性は右手に集めている魔力を圧縮。
圧縮した魔力をダンジョンの入口へ目掛けて、一見すると小さな光の玉にしたものを投げ込む。
その数秒後、一瞬だけだが激しすぎる音がダンジョンの入口から轟く。
同時に溢れ出ようとしていた魔物達の身体が、衝撃波を伴う爆発により四散。
その後からはダンジョンの入口そのものが崩壊していた。
「これは……もしかして、ダンジョンが破壊されたのか?」
傷つき疲弊しながらもゴルドーは今の状況を把握した後、溢れ出ようとしていた魔物達が来なでいるのを見て、ダンジョンは破壊されたことを察する。
「ええ。私の一撃で破壊したわ。私の戦闘能力は対多数または広域殲滅に特化している。今回はダンジョンそのものを爆破するという、かなり乱暴な方法を取らざるを得なかった」
「それは、凄いことをしたな……」
察した後、女性はやってみせたのは大規模な攻撃魔法。
幸いにも爆発の方向はダンジョンの向こう側へと集中しているので、地表への被害は数える程しかない。
「けど、ダンジョンが消えた以上はこの場所に現れる魔物はもう皆無であり、残る魔物は現在対処した為、王都の危機は去りました」
「本当に済んだのか?」
「済みました」
その後、残された少数の魔物達はヴァルティとブリュテ、ゴーレム達により倒される。
それを見下ろしつつ女性が淡々と説明をすれば、ゴルドーはなんとか安堵する。
魔物達の氾濫騒ぎは、幸成が病喚士の力でまだ名前が不明の女性を呼んだことで収まるのであった。
魔物達とダンジョンそのものが終わる後のヴァルティ、ブリュテ、謎の女性は、後片付けはゴルドー達に任せてテンペウ城まで足を運ぶ途中の時に。
「ねえ、2人共。明日以降の予定について話がしたいの。2人も関わる内容を話したいわ」
謎の女性はヴァルティとブリュテに対して、何やら考える素振りを見せた後に、話したい内容があると告げる。
ヴァルティは本当に自身とブリュテが関わることなのかと不審がる。ブリュテも同じ気持ちだった。
「正直に言うとユキナリくんともだけど、早くにでも貴女達とも仲良くしておきたい。理由は簡単なことに2人も理解しているでしょうけど、ユキナリくんを完全に独占するのは不可能。それゆえに私達は、互いに仲良くしないとやっていけないということよ」
「…………」
「確かにそうですね。残り2人のことも考えると、尚更に必要でしょう」
謎の女性から告げられた内容は、ユキナリの独占は不可能であること。
つまり、ヴァルティ達3人と残りの2人もいる限りはユキナリを独占することは不可能だと指摘される。
それを半ば理解しているヴァルティは黙り込み、ブリュテは謎の女性の言葉に同意した。
「だからこそ、私を呼んでくれたユキナリくんと約束してもらった内容に、2人もいた方がいいと思うわ」
「約束? 一体何を約束したの?」
「デートよ。私達3人とユキナリくんの4人の形で」
「えっ?」
「はい?」
謎の女性は幸成とデートをするという約束を取り付けた。それをヴァルティとブリュテも交えてやりたいという。
質問してみたらのまさかの内容にヴァルティは唖然としてしまい、ブリュテも少し驚いてしまう。
「2人も今回の件の功労者。乱暴な手を使用した私が来るまでの間、2人はユキナリくんのために尽くしてくれた。だからこそ、ユキナリくんを共有する関係を作りつつ、最低限の線引きができないといけない。その手始めとして、私を含めた形でユキナリくんとデートをする時間を設ける。それが最も平和だとは思わない?」
「……確かに私はユキナリのために倒しまくってた。それを込みでユキナリとデートをしたいって話?」
「ユキナリのために最低限の線引きの意味合いも込めてのデート、ですか」
「そうよ。嫉妬する可能性は絶対に無くせないけど、妥協点としてのデート。そこから徐々に仲良くしていければいいと思う」
謎の女性から提示された内容は、2人も幸成のために尽くしたのだからデートをする時間を取り付けるというもの。
それを聞いたヴァルティは少し悩んだ様子を見せ、ブリュテは考える素振りを見せる後。
「ねえ。貴女はユキナリを独占したいとは思わないの?」
「可能なら、そうしたいとは思う。でも、仮に独占した未来の後を想像した時には、私を含めたこの4人で上手くやっていけるとは限らないし、ユキナリくんが不幸になりかねない。だから、最低限の線引きをするわ」
悩みながらヴァルティは謎の女性の本音が何なのかを、遠慮なく聞いてみた。
すると謎の女性は独占したい気持ちはあるが、その先を考えるとヴァルティとブリュテが絡んでくる。
その上に互いに相性が悪ければ、今後の関係を築くのが難しくなる。
それもあって謎の女性は、独占は不可能だと判断した。
「それに自称妻、または自称恋人の2人が来るまでの間に関係をいい意味で固めれば、後々は苦労しにくくなるもの。だから、早めに手を打ちたいのよ」
謎の女性はさらっと毒を吐いては残りの2人についてをヴァルティとブリュテに語る。
謎の女性の発言からしても、2人の頭の中にある残り2人の情報内容からしても、確かにそうした方がいいかもと感じてしまう。
「……そうだね。確かにユキナリとの関係をいい意味で固めれば、後々は楽になるかもしれない。私達に加えてあの2人も混ざると、どうなるかがわからない。悔しすぎるけど、ユキナリを独占できない以上は妥協しないと」
「その方がいいでしょう。残り2人の性格を考えると、私達よりもかなりヤバいことを起こしそうです。ですので、早急に手を打つ必要もあります」
感じて思う後にヴァルティとブリュテもまた、謎の女性と同様に早急に手を打つべきだと判断する。
幸成を独占できない以上は、今は3人で妥協して最低限の線引きは行う。
そのためにはルールも必要かもと思うが、ヴァルティ達3人と残り2人からして、正直には守りきれない。
謎の女性はヴァルティとブリュテに話をする最中に思っていた。