病喚士物語 ~訳あり女性達の愛が重い~ 作:タスケ
第12話
テンペウ城に辿り着いた後、ヴァルティ、ブリュテ、謎の女性は幸成達と合流する。
「では、改めて初めまして。私の名前は『ルアン』。この異世界とは違う世界から呼ばれたわ」
「よろしくお願いします、ルアンさん」
「こちらこそよろしく……ところで、呼び捨てしてほしいと私は言ったわよね?」
「あっ、すみません」
謎の女性ことルアンが名乗った後、幸成はルアンに挨拶をする。
その際、ルアンは呼び捨てにしてほしいと告げてきたので謝罪してから呼び方を改める。
「そうでしたね。……ルアン、今回の件についてはありがとうございます」
「別にいいわよ。寧ろ、私のことを強引に呼んでくれたことが嬉しい。……後から聞いたけど、どうにかして私を呼びたかったからそうしたのよね?」
「そうなります。あのままだと本当に王都が落ちるかもしれないと思ったので」
「確かに落ちてもおかしくなかったでしょうね。あれを見た限りでは。だからユキナリくんは、正しい選択をしたと私は思うわ」
幸成はルアンに感謝する。
するとルアンは別にいいと返した後、自分を強引に呼んでくれたことが嬉しかったと語る。
続けて強引に呼び出した理由を尋ねてきて、幸成は真面目に答えた後に正しい選択だったとルアンは褒めたくなっていた。
「ところで、どうやってダンジョンそのものを破壊したんですか? さっきに物凄い音が聞こえましたけど」
「簡単に言えば発破をしたのよ。ダンジョンそのものをね」
「は、発破? 発破って、テレビ番組で見た建物を爆破する、あの発破?」
奈々がルアンにどうやって破壊したのかを尋ねた後、ルアンはダンジョンそのものを発破したと答える。
その答えに奈々は建物の爆破解体を思い出してしまう。
「ダンジョンの入口に魔力を凝縮させた球体を投げ込み、それをダンジョンの中で爆発させたの。内部から一気に爆破したことで、ダンジョンはその機能を停止。機能を停止した後に残る魔物の群れは私が操るゴーレム達とヴァルティとブリュテが掃討。そんな流れだったわ」
「それって、下手をしたら周囲が一瞬で焦土と化す威力を持ってませんか?」
「そこはちゃんと加減したわ。流石にユキナリくん達を巻き込むようなことだけは避けたかったから」
「そ、そうですか……」
ルアンの説明に亀田が思わず聞くと、ルアンはきちんと加減はしたと答える。
幸成達どころかテンペウ城すらも消し飛ぶような威力を出そうと思えば、出せる事実に亀田は頭が痛くなる。
その様子を見た碇谷や佐伯、鈴原は苦笑を浮かべるしかない。
「ユキナリくん達を巻き込むような威力は出さないように調整しておいたから、本当に大丈夫よ」
「そ、それはありがとうございます……」
ちなみにルアンの身体能力はヴァルティとブリュテと比べるとだが、かなり低い。
その代わりゴーレムによる数の暴力と広域殲滅攻撃が得意という戦い方をする。
それが今回の危険な出来事と上手く噛み合ったことで、ダンジョンそのものを破壊し、溢れ出る魔物達の氾濫を終息することができた。
だから幸成は改めて、ルアンに礼を述べるしかない。
ただ、発破をしたと聞いたので幸成も頭が痛くなる思いがしてしまう。
ルアンもまた、ヴァルティとブリュテ並にヤバいかもと思うからだ。
「それに、そう何度も使用可能の手じゃない。魔力の消費の前にダンジョン周辺の大地そのものが壊れてしまいかねない。だから、本当に使いたくない最後の手段というべきかしら」
「そ、そうですか。それじゃあ、魔力そのものは消費するだけで済むんですか?」
「ええ。消費するだけで済むわ」
そう思われたルアンは発破を使う頻度はそう多くできないらしい。
理由はダンジョン周辺の大地が壊れてしまうのを防ぐためだという。
魔力消費の前に大地そのものがマズいことになるので、ルアン自身もあまり使いたくないとのこと。
「逆に言えば、いきなり最終手段しかなかったくらいにあそこは危険な場所だった、ということか。本当に危険な状況の異世界なのか……」
しかし、そうした最終手段をしなければならないほど、溢れ出る魔物の氾濫は危険だった。
その事実を聞いた笹原は、今更ながらに恐ろしい世界に召喚されてしまったと思う。
「そこは召喚してしまった者の責任ね。ただ、こちらに召喚されなければユキナリくんとは出会えなかった。だから、そういう意味では私はテンペウ国の王達に感謝するわ」
ルアンは召喚された笹原達の前に、幸成に出会えたからこそ、テンペウ国の王達に感謝したいと告げてくる。
その言葉を聞いた笹原達は『なんで感謝できる?』と不思議に思ってしまう後。
「……もしかしなくても、ルアンさんも2人の同類、なのか?」
「かもしれないぞ。なんというか、ルアンさんの目は2人と似てる」
水村と鈴原はルアンの両目を見た後、ヴァルティとブリュテと同じなのではないかと感じる。
実際、その通りだ。
ルアンは理性がヴァルティとブリュテよりはかなり強いだけ。
内心はヴァルティとブリュテと似たような形であり、幸成のことが愛しくてたまらなかった。
「それはともかく、事態は上手く終わってくれたと思うと、お腹が空いてきたね? ここは私達のご飯の前に外で後片付けのために頑張ってるゴルドーさん達に、おにぎりを用意するのもありじゃない?」
その不穏さを打ち消すように佐伯が今はおにぎりの用意が必要ではないかと提案する。
後片付けで忙しいだろうゴルドー達を労う意味でもあり、外で腹を空かせているだろうゴルドー達に届けるのもありかもしれないと。
「そうだな。それくらいしか、今の俺達にできそうなことはないか」
「後片付けも手伝わないとならないかもだが、その前に夕飯としてのおにぎりを用意するのはありだと思う」
「よし。それじゃあ、後片付けで頑張るゴルドーさん達のためにおにぎりを用意しよう」
その提案に笹原達も幸成も賛成していく中、ヴァルティ、ブリュテ、ルアンはおにぎりとは何かを知らないため。
「おにぎり? 鬼斬り?」
「鬼を斬ることが由来の食べ物ではないと思いますよ?」
「何を作るつもりなのかしら? 」
ヴァルティは名前を聞いて『鬼斬り』と聞き間違えていた。ブリュテとルアンも、おにぎりを知らないので、どんな食べ物なのかと疑問に思ってしまっていた。
疑問を抱かれる中、主に佐伯が大量の白米を慣れ始めたように炊飯し始める。
その間に幸成達は、おにぎりの中に入れる具をどうするかを話し合うのだが。
「梅干しは、まだないよね?」
「まだ作られてないから、ここはこの異世界の料理を具にしたおにぎりがいいんじゃない?」
「となると、この異世界の香草の塩漬けとかか?」
「それを混ぜおにぎりにするのもありだな」
本当なら梅干しを入れたいが、入れられない以上は異世界の料理を参考にしておにぎりを作ることにした。
そして、おにぎりの中には異世界の香草を塩漬けにしたものを入れるか、混ぜおにぎりにするかと考えていく。
「何、この匂いは? 独特だけど、いい匂いね」
「白米だよ。炊けたばかりの白米は凄くいい匂いがするんだ」
「これが白米の匂い。ユキナリくん達の世界における主食……」
「主食である白米で作られる、おにぎりですか。私達にとっては未知の食べ物なのですね」
今はおにぎりを知らないので見てるしかできないルアンは、炊け始めた白米の匂いを嗅いで興味深そうにする。
白米で作られるおにぎりが未知の食べ物というヴァルティとブリュテは、白米が炊けた後のおにぎり作りがどうなるかに興味津々となる中。
「焼き鮭の代わりに、この魚の塩焼きを具にするしかないな。本当なら鮭の方がいいんだけど」
「塩焼きの身をほぐして具にすればいいかな?」
笹原達は塩焼きにした魚の身をほぐして具にする準備をする。
その準備をしていく中、炊けたばかりの白米は熱々なので皿に移し少し冷ます。
白米が冷めたら皿の上に盛り付けた後、白米の上に魚の塩焼きの身をほぐしたものと、異世界の香草で塩漬けにした物を乗せてから、おにぎりを握っていく。
「あちちちっ!? 握りづらい!?」
「ご飯が熱い!?」
「だけど、握らないと……」
「水に両手をつけて冷やすと楽になるから、それをしてから握ってね」
残念ながらラップはないので直接白米を両手で握っていく中、奈々と笹原達は白米の熱さに悶絶してしまう。
すると、佐伯は白米を握る前には手に水をつけることで、熱さを感じにくくする方法を教える。
「なるほど。それなら握れるかも」
その方法で、熱い思いをしてはおにぎりを握り作っていく。
おにぎりの形はシンプルな三角。
シンプルな形が一番良いと笹原達は握り終えると、同じく作っていた佐伯が味見をしてみる。
「うん。ただの塩おにぎりは当たり前だけど美味しい。次に焼き魚のおにぎりは……うん、美味しく出来てる。香草を混ぜおにぎりにしたのもイケるかな?」
幸いにも具との相性はよかったのでおにぎり達は美味しく出来ているので、笹原達も食べると笑顔になる。
ヴァルティとブリュテとルアンも食べたいと思う中、一旦は休憩も含む理由でゴルドー達が城までやってきて夕飯とする。
そのゴルドー達に用意したおにぎりを渡し、おにぎりを知らないゴルドー達に食べ方を教える。
「なるほど。白米にはこういったシンプルかつ、美味しい料理の形もあるんだな」
「しかも具は魚の塩焼きの身をほぐしたもの。この辺りにしかいない魚と白米を同時に食べると、こんなにも美味しいとは」
「香草を白米と混ぜるのも美味しいですね。味が良くなります」
教わる後に食べ始めるとゴルドー達は具との相性の良さに舌鼓を打つ。
おにぎりは大体はだが具との相性はいい。
但し、水分または油分が多いものを具にしたらおにぎりが崩れる。
それはさておき、ゴルドーと騎士達と兵士達は白米の料理のバリエーションの1つとして、おにぎりは最高だと賞賛する。
「本当なら海苔も欲しかったところだけど、流石に今は代用品すらない。あったら、もっと美味しいのにと残念に思うよ」
「でも、なんとかおにぎりは美味しく出来たから、それはそれで嬉しいよ」
「そうだな。次は鮭を入れたいところだけど、いつになるか……」
ゴルドー達からの称賛を聞いた佐伯は海苔が欲しいと残念に思うが、笹原は海苔なしでも美味しく出来たからこそ嬉しく思っている。
そんな中、おにぎりを知らないヴァルティ達3人はゴルドー達の反応を見ながら、最初は塩おにぎりを食べてみると、とても美味しいと確信する。
「白米を握っただけの食べ物が、こんなにも美味しいなんてね。味のシンプルさがいい感じ!」
「ユキナリの世界には、こんなにも美味しいものもあるんですね。次は香草を具にしたものを食べてみます」
「焼いた魚と白米の組み合わせも悪くないわ。これがユキナリくん達が言う魚介系の食べ物だと、もっと美味しいでしょうね」
ヴァルティが食べる塩おにぎりの評判は上々。続いてブリュテが食べようとする香草を具にしたおにぎりや、ルアンが食べる焼いた魚の身をほぐした具のおにぎりを食べても評判は上々。
「白米自体が、こんなにも美味しい食べ物とは思わなかったわ。ユキナリくん達の世界の料理に興味が湧いてくるわね」
「本当にそうだね。私も、ユキナリの世界の料理に興味が更に湧いてきた」
「これがおにぎり。シンプルですが、ユキナリの世界は美味しい料理が沢山ありそうで期待できますね」
おにぎりは美味しいが、それ以上に幸成達の世界には他にも美味しい食べ物があるのかと思うと、3人は幸成達の世界に興味が湧いてくる。
そのおにぎりを食べ終わった後も、ゴルドー達は後片付けをするために現場へ戻っていく際に。
「美味かった。ありがとう」
「また食べたい」
「次は焼き魚だけじゃなくて、煮卵も入れたい。煮卵なら、この世界風味で作れそうだし」
「そうだな。それじゃあ、また明日も頑張ろうか」
ゴルドー達はおにぎりを美味しくいただいたお礼を述べていく。
それを聞きながら、幸成達もまた明日から頑張ろうと気合いを入れ直した。
その日の夜。まだ幸成が来ていない自室にて、ルアンはあることを聞いて驚いていた。
「添い寝? よく理性が保てるわね?」
それは幸成への理性が保てるか否かということもだが、ルアンからすれば添い寝の前に自らが襲ってしまいかねないので、逆にできないと思えてならない。
それをヴァルティとブリュテは幸成にしていると聞いては驚愕するしかない。
「そうするようになってから、まだ日が浅すぎるけどね。というかユキナリは我慢しなくてもいいのに」
驚愕されたヴァルティはといえば、我慢しないでもいいのにと思う。
しかし、幸成は『今はまだ早いから』と思っているので、まだ我慢している。
「今はまだ我慢できますけど、いずれは私も自制が効かなくなると思います」
「なら、添い寝はやめなさい。ユキナリくんが襲うか襲われるかの問題よ……」
ブリュテはまだ我慢できるが、そのうちに自制が利かなくなればいずれは2人が幸成を襲いかねない。
なのでルアンはブリュテとヴァルティに、幸成への添い寝はやめるよう忠告したくもなる。
羨ましいとは思うが、その前に事故が起きかねない。
それは回避しないとならないと言いたくなる。
「それでもユキナリの傍で寝たいから、やめないよ。ここは我慢比べだね」
「はしたないとは理解してますが、ユキナリとの添い寝はやめられないんです」
「本当に事故が起きるわよ。2人共」
それでもヴァルティはブリュテは幸成と添い寝をやめるつもりはない。
2人共に幸成の傍にいたいので、我慢比べの形で添い寝をするようにしたい。
だが、それは本当に事故が起きないか心配だとルアンが思っていると、幸成が戻ってきた。
「ただいま……って、事故がどうのとか聞こえてきたけど、どんな会話をしてたの?」
「ユキナリくんがマズいことになりそうだから、2人には添い寝をやめさせようとしていたのよ」
「……常識人だ。ルアンはまだ常識人だったんだ」
事故がどうのと聞こえていた幸成は部屋の中へ入った後、どんな会話をしていたのかを尋ねる。
するとルアンは、2人の暴走を抑えるために添い寝をやめさせようとしていると語ると、それを聞いた幸成はルアンはまだ常識人なのだと実感する。
「えっ? 事故じゃないよ。お互い許し合った上での行為になるから問題ないと思う」
「ヴァルティ、本当に無自覚に言いましたね。ルアンは絶句していますよ?」
「そうなの? でも、今更止められないから」
なのに問題ないとヴァルティは言い切った。
この発言を聞いたルアンは絶句してしまう中、ブリュテがヴァルティをたしなめても遅い。
ヴァルティは幸成のことを譲れない気持ちを強く持っている。
いざ求められたらヴァルティはヘタレることなく受け入れるだろう。
それを確信しては、このままでは本当に幸成が危ない。
ルアンはそう強く思い始めていた。
「待ちなさい。私達3人からすればユキナリくんのことをよく知る身だけど、ユキナリくんからしたら、まだよく知らない身なのよ? その齟齬を埋める前に関係を深くしようとしたら、それこそマズいと思わない?」
「そうなの?」
「思わない、ですね」
「ちょっと! 本当に待ちなさい! 普通にマズいことになりかねないわよ!?」
ルアンは2人の暴走を止めようとする。
幸成とよく知らない関係のまま、一線を超えようとしているのはマズいと。
「ユキナリくんは、今はまだ関係を深めたくないと思うわ。それなのに一線を超えるようなことをするのは、今後に悪い影響を与えかねない」
「かもしれないとしても、私はユキナリが欲しい。もっと欲しい」
「叶うなら私も同じです。ですが、ルアンがそう言いますなら自制しましょうか」
「自制じゃなくて添い寝はやめた方がいいわよ。今はまだそうした方がいいから」
ルアンが強く説得するとブリュテはまだ自制はできるので、今は止める方を選ぶ。
しかし、ヴァルティは止めるつもりはない。寧ろ、より幸成を求めてしまいがち。
「なら、ルアンも添い寝する? 気持ちよく眠れるよ?」
「今にそうしたら関係悪化の火種になりかねないでしょう!? ユキナリくんともう少し交流してからにしなきゃ駄目でしょうが!」
だが、ここでヴァルティはルアンを引きずり込んでしまおうとする。
一瞬だけ、それをしたいと思うがルアンはすぐに正気に戻る。
幸成と出会って僅かのルアンが添い寝をしたら、今後の関係の悪影響になりかねない。
だから自制を選ばざるを得なかった。
「むぅ。なら、ルアンは添い寝の代替案は思いついくの? いい内容じゃないなら私は納得しないからね」
「……寝る前の抱擁はどうかしら?」
「足りませんね。まるで足りません」
自制しようとするルアンに、ヴァルティは代替案を求める。
その代替案として寝る前の抱擁を提案してみるも、ブリュテは足りないと返してきた。
その返しにルアンは頭を抱えてしまいそうになる。
2人を添い寝から引き剥がすのは無理かもしれないと思えてくる。
「……うわぁ。当事者なのに俺は置いてけぼりだ」
幸成としては自分の意見も聞いてほしい。でも、今の2人は幸成の意思を聞く耳を持たないから困り果ててしまう。
ただ、このままでは本当に事故が起きかねないと理解はしている。
理性を保つのが精一杯でもあるから、ここはルアンの味方をしたい。
「それもそうだったわね。ユキナリくんなら代替案は思いつく? ちなみに私は思いつかないわ……」
「えっ? …………抱擁が駄目らしいなら、キス、とか? 但し、唇は避ける形で」
「それは却下よ」
確かに幸成を置いてけぼりにしては駄目だとルアンが気づく後、幸成に代替案を尋ねると、幸成も困り顔で言える限りの代替案を挙げる。
その代替案を聞いて、ルアンはキッパリと却下した。
「そんなことしたら、ヴァルティが真っ先にユキナリくんを襲いかねない。位置がどうかの前に、私達からすると刺激的すぎる行為よ」
「……そうかもしれません」
理由はキスは刺激的すぎる。キスをされれば、またはしたらヴァルティが暴走するかもしれない。そうすると関係悪化の原因になりかねないので、却下するしかなかった。
ブリュテもその点を理解したようで、渋々と納得する。
だが、ヴァルティは納得していない。
「確かに襲う自信しかない。だって、ずっと愛してる人からキスされたら、止められるわけがないよ」
ヴァルティは納得しないどころか、正直に襲うと認めた。
キスをしたら理性が保てるかわからない。
「なら、本当にどうしたらいいの?」
添い寝の代替案。
それがないといつかに過ちを犯しかねない。
幸成としては過ちは避けたい。
避けられない状況になれば、仕方なく関係を深めるしかないからだ。
なので幸成はルアンを見つめては、次の代替案を考えてくれないかと期待するしかない。
「添い寝の代わりにキス、抱擁も駄目となると、他に思いつく内容となると……」
幸成から期待されると、ルアンもまた他に思いつく内容はないかと考えるが正直に言って、他に思いつく内容が出てこない。
「ところでルアンが来たなら今の時間制限は確か、今から約30日後だよね?」
そんな時にヴァルティが4人目の時間制限についてを話したくなる。
もし、幸成が呼ばないままでいたら時間制限が来て、残り2人のどちらかが召喚される。
関係がまだ浅いまま、自称妻か恋人のどちらかが来たら、後々に関係の構築がより困難になるかもしれない。
それを考えると、今のうちにどうするべきかをルアンは考えを巡らせたい。
「ええ。ユキナリくんが何もしないでいれば、4人目が自動的に召喚される。それと添い寝関連がどう関係しているの?」
「ここは逆に思えばいいんだ。ユキナリとやっちゃってもいいと。深い関係になっていいと。それなら何か言われても既に事実があるから、何を言われても問題ない」
「問題しかないわよ!? まだユキナリくん自身が望んでない上に、最低限の節度を守らないとならないのよ!?」
だがヴァルティは4人目が来る前に、幸成と深い関係になってしまえばいいと考えた。それなら自称妻か恋人のどちらかが来ても問題はないと。
そのヴァルティの考えを聞いたルアンは問題しかないと大声で指摘する。
幸成はまだ望んでいないのに、最低限の節度すらも保てないのはマズい。
「ですが、時間があまりないのも事実です。4人目が来たら本当に手に負えなくなりかねないのが、私達からすれば見えています」
「そうだけど! そうだけど!!」
続けてブリュテが時間があまりないのも事実だと言い切る。
この指摘にはルアンも納得するしかない。
まだ関係が浅いうちに4人目が来るとマズいのは、ヴァルティ達3人からすれば明白。
それは理解していても、だからといって暴走を許すのは、後のことを考えると絶対にマズい。
「ね、ねえ。その自称妻と恋人の2人は、どんな誰かなんだ? なんか、凄く気になってきた」
3人して騒ぐ中、幸成が自称妻と恋人の2人の詳細を知りたくなっていた。
これまでに全く話されてこなかったので、聞けそうな今になって幸成は聞く。
ヴァルティとブリュテ、ルアンは3人共に顰め面となりながらも。
「独占欲は私並かも」
「下手をしたらヴァルティ以上の可能性があります」
「私達の中では、最も厄介な存在と認識してほしいわね」
それぞれの率直な評価を幸成に話していく。
それを聞いた幸成は、自称妻と恋人の2人はより厄介そのものだと思っては頭を抱えたくなる。
「ヴァルティ並か、それ以上?」
「うん。知ってる情報の限りだと、そう判断できるくらいには厄介だね」
「……俺が知らない俺は、過去に一体何をやったんだ?」
「ユキナリはよく頑張った。けど、頑張った結果は不幸な結末を迎えたんだよ」
頑張っていたのだと語ってくるヴァルティ並、またはそれ以上。厄介としか表現できないと、幸成は本当に頭を抱えたくなった。
それはどんな誰かなのかを想像すると、厄介しか浮かばない。
そんな自称妻と恋人は一体どんな誰かなのかが気になりつつも、もしもの自分達が迎えた不幸な結末に思いを馳せるしかない。
「けど、その2人が暴走しかけてもユキナリなら止められる言葉がある。それは『そんなことしたら嫌いになるぞ』と言えば、あっさりと暴走は止まるよ」
「ヴァルティ? それは私達にとっても辛い言葉なんですけど?」
しかし、仮に自称妻と恋人が暴走しかけても幸成が『嫌いになるぞ』と言えば、2人は辛さと悲しさで暴走は止まるとヴァルティは断言。
それ以外にもヴァルティ達3人も含めた暴走を止められる言葉にもなるようだ。
実際、言われたらと想像しただけでブリュテは絶望に浸りかねないと思えた。
ルアンも同じく絶望の淵に立たされそうになると思える。
「そうなんだ。もしもの時に使える、というわけか……乱発は無理そうだけど」
「そうね。乱発したら余計なことに繋がるかもしれないから、しないほうがいいと思うわ」
「ところで、添い寝の代替案はどうなるのでしょうか?」
そう聞いた幸成は使えるとしても、乱発したら後が絶対にマズいと予想する。
ルアンもその懸念があるから乱発しない方がいいと助言する。
そして、添い寝の代替案はどうなるかについてをブリュテは思い出すと、ヴァルティとブリュテの2人は幸成とルアンを見つめる。
「……ここは、ポジティブな言葉とかかしら?」
「例えば、どんな言葉?」
「ユキナリくんに『大好きだ』と、言われる、とか」
「「…………」」
そのルアンは言葉繋がりで思いついた。ポジティブな言葉を、例えば『大好きだ』と言われるだけでも幸福を得られる。
その言葉を幸成に言われれば、きっと幸福を得られるはず。
そう思った後にヴァルティとブリュテは想像してみた。