病喚士物語 ~訳あり女性達の愛が重い~ 作:タスケ
「……いい、ね。ユキナリから言われたら、かなり幸せ」
「そうですね。ユキナリに言われたなら、とてもいいと思える言葉ですね」
「でしょう? それに私は、ユキナリくんから言われたいからそう思ったわ」
想像したヴァルティとブリュテは、かなりの幸福感を得られた。
それをルアンは聞いては、やはりこの案がいいと思えてくる。
この代替案なら、一線を超えてしまいかねないこともない。
「けど、同時にユキナリともっと深い関係になりたくなるよ。身体が熱く疼いて、もどかしさもある感じかな?」
「私も我慢できなくなりそうです。それだけ、破壊力がありますから」
「えっ。もしかして、危険な気がする?」
「添い寝よりはマシ……にはならなそうね。寧ろ、余計に辛くなるかしら?」
かと思えば、ヴァルティとブリュテは理性の危うさを語りだす。
幸成から言われれば幸せになるが、同時に一線を超えてしまいかねない。
ルアンはまだ耐えられるが、ヴァルティとブリュテだと我慢が効かなくなる可能性が高い。
「どう代替案を出しても、道が塞がってるとかマズくない?」
「ユキナリくんが、まだ私達のことをよく知らないのも一因だけど、それは仕方ない問題なのよね。本当にマズいわ……」
「添い寝をしたらマズい。抱擁だとまるで足りないと言い出す。ポジティブな言葉もマズい。……俺、詰んでる?」
ヴァルティとブリュテとの添い寝は危険。
抱擁だと足りないと言い出す。
ポジティブな言葉も危険。
代替案が出ない以上はこのままだと幸成か、ヴァルティ達のどちらかから一線を越えてくる。
その事実に幸成は詰んでいるのではないかと危惧する中、ルアンはヴァルティとブリュテをなんとか止めないといけないと危機感を募らせていた。
「……とりあえず、抱擁を試してみない? それで駄目なら、もう諦めるしかないわ」
こうなればダメ元で最初に代替案として出した抱擁を試してみて、それで駄目ならもう諦めるしかない。
ルアンはそう言い出すと。
「……仕方ない。これも一時の我慢だと理解するよ。添い寝よりはだいぶマシだし」
「これも仕方のないことと捉えましょうか」
幸成はやってみることにした。
正直に言うと抱擁も傍から見たらスキンシップが過剰。
しかし、その抱擁は今後の関係を良いものにするための布石となるかもしれない。
そう信じて実行することにした。
「正直、物足りないと思うんだけどなぁ」
まずはヴァルティの元へと近寄る中、ヴァルティは不満げにしながらも、両腕を伸ばしては幸成を待っている。
「それじゃ、抱きしめるから。痛かったら言って」
「うん」
幸成はそう言ってからヴァルティの両肩を掴み、引き寄せる形で抱擁する。
ヴァルティも幸成を抱き返す形で抱擁を行い、密着する。
「……あっ。これ、凄い。ユキナリに抱きしめてもらってると、物足りないどころか凄く幸せに思うよ……」
「そうなんだ。なら、良かった」
抱擁し合うとヴァルティは物足りないどころか凄く幸せだと思える。
それぐらいに今が充実しているように感じられる。
そんな中、幸成からするとヴァルティは柔らかい。
柔らかい上半身と胸を押し付けられた感触が服越しに伝わり、その感触と温もりが幸せを感じさせてしまう。
「思ってたより心が満たされる。ユキナリとこうしてると心も身体も温まる気がする」
ただ、ヴァルティはその抱擁から自力で抜け出す気はない。
離さないでほしいと思ってしまうので、幸成は出来る限りで耐えていく。
その抱擁を時間にしてはだが3分ほど経った後、幸成が限界を迎えたので離れた。
「よく考えてみたら、ユキナリにこうして抱きしめてもらえたことがなかったから嬉しい。これなら、添い寝をしたいとは思っても我慢できそう」
離れた後、ヴァルティは心身共に充実できている。
抱擁がヴァルティにとって満足いく形であったのか、不満は微塵くらいしかない。
「これなら我慢できそう。本当にありがとう、ユキナリ」
充実できたヴァルティは、今はこのままでいいと思えていた。
なので礼を述べた後、少し離れた場所に立つブリュテに場を譲った。
「次は私ですね。ユキナリ、私のことも抱きしめてほしいです」
次はブリュテだ。
ブリュテも物足りないと言っていたが、ヴァルティの様子から抱擁することを決めたらしい。
幸成は頷いた後、ブリュテの元へ行き同じく抱擁する。
「こうして抱き合えていると、なんだか不思議な感情を覚えます。ユキナリに抱きしめてもらえる、この瞬間が幸せです」
ブリュテもヴァルティと同様に、抱きしめられている幸成との今を幸せだと感じている。
幸成はブリュテからも柔らかい感触を服越しに覚える。
ヴァルティよりは若干控えめではあるが、それでも柔らかく温かい。
そんな抱擁を5分ほどした後に離れる。その際のブリュテは名残惜しく感じていた。
「今の私は幸せです。ユキナリにこうしてもらうだけで、幸せが広がります。なので私は今、とても満ち足りています」
抱擁を離した後に、ブリュテは幸せだと感じている。
これなら添い寝をしなくてもいいと思えるほど、満ち足りていると言える。
それを理解したブリュテはヴァルティの隣に並ぶと、ルアンを見つめながら。
「仲間外れはよくないと思いますので、ここはルアンも抱擁してもらうのがいいでしょう。ユキナリとの仲を深められますから」
「……そうね。私も、ユキナリくんに抱きしめてもらうわ」
ブリュテの言葉を聞いたルアンは幸成を見つめる。
心臓が暴走しがちに高鳴る中、ルアンは幸成を見つめ続けられた幸成は、ルアンの元へ向かい抱擁する。
「私からは抱き返せないわ。抱き返したら、もっと止まれなくなりそうだもの……」
抱擁されたルアンは頬を染め、顔が緩みそうになるのを必死で抑えている。
緩みそうになる顔を整えるのに必死で、ルアンは抱き返すことなくされるがままだ。
「……これがユキナリくんの温もり。初めて抱きしめてもらえて幸せすぎるわ」
されるがままでも、ルアンは幸成との抱擁に満足している。今が幸せだと思えるほどに。
「別に顔が緩んでもいいんじゃないの? 寧ろ、緩んだ顔のルアンの方が可愛いと思うよ?」
そうするルアンを見たヴァルティは顔が緩んでもいいのではないかと言う。
それを聞いたルアンは思わず驚いてしまいながら幸成から離れる。
「か、可愛いの前に、緩んだ顔を見せたくないの! 私はユキナリくんに可愛いじゃくなくて綺麗だと思われたいから!」
ルアンは顔が緩むのが恥ずかしい。
なので緩んだ顔を幸成に見せたくないと思ってしまった。
だから抱き返せないと返した。
「ルアンも私とブリュテと同じでしょ? ユキナリが欲しくて欲しくて仕方ないでしょ?」
だが、ルアンの発言はヴァルティから見たら本音の欠片しか見せていない。
それがわかっているからこそ、ヴァルティは遠慮なくルアンに問いかけてきた。
「……ユキナリくんに召喚された身だから、否定できないわね」
欲しすぎて仕方ないか否か。
否定できないルアンは『召喚されたから』という理由を付けて、その気持ちを示す。
「なら、抱き返したらいいのに」
ヴァルティの言葉にルアンは一瞬だけ葛藤する。
抱き返したら理性は保てても顔が緩んでしまいかねない。
「顔が緩んでしまう。抱き返したら、確実に顔が緩んでしまうの。ユキナリくんにそんな緩んだ顔を見られたら、私は恥ずかしすぎて顔を合わせづらくなるわ。だから、抱き返せない……」
「なんだか、可愛く思えてきます」
「そうだよね。可愛いでしょ。私にはわかる。というか、その言葉からして可愛いよね」
ルアンの発言からすると、顔が緩んだらとても可愛いと思える。
ブリュテはルアンの言葉からして普段は理性的に振る舞うが、顔が緩むと可愛くなるタイプだと思えた。
ヴァルティもまたそう思える。
幸成から見ても、ルアンは可愛いと思えることが確定した。
そんなことがあった翌日の早朝。添い寝がなくなったことで気持ち穏やかに眠ることができた幸成は、すっきりと意識を覚醒させる。
「ふあぁっ……って、えっ?」
ベッドから出ようとすると、窓から射し込む朝日の眩しさを浴びて光で満ちた自室の中、幸成の顔を見下ろす3人の顔が視界を満たしていた。
「なに、これ?」
起きてみたら寝顔を見られていたらしいことに気付いた幸成は、起き上がる前に困惑してしまう。
「おはよう、ユキナリ。今日も晴れた朝だね」
困惑する幸成を見たヴァルティは嬉しそうにしながら、今日も晴れた朝だと告げてくる。
「おはようございます、ユキナリ。深く眠れたようでなによりです」
次にブリュテも嬉しそうにしながら、深く眠れたようだと告げてくる。その2人とは違いルアンは頬を赤くして、幸成を見つめている。
「お、おはようございます。ユキナリくん。……その、私はとめたかったのだけど、2人からはどうしてもとせがまれて」
「ルアンは抵抗してたんだ」
「当たり前でしょう? ユキナリくんの寝顔を見るのは嬉しいけれど、だからといって無闇に覗き見はよくないとは言ったのよ……」
ルアンは2人の暴走を止めようとしたが、止めるに止められずに寝顔を見に来たらしい。
後、さりげなく寝顔を見るのは嬉しいと漏らしていた。
「俺の寝顔を見ることに、何の意味が?」
「私達3人からすれば、ちゃんと生きていると実感することができるからです」
「生きてることを実感する?」
「私達は元の世界でユキナリの死を見ることとなりました。あの時の悲しみは今でも忘れられません……」
「理解したつもりだった、俺が悪かった」
ヴァルティ達3人にとっては幸成が生きていると実感するための行為でもある。
元の世界では死んだ幸成を見ることとなり、それが今でも忘れられないとブリュテが語る。
ブリュテの様子からしても、ヴァルティとルアンからしても、幸成が生きていると実感したい行為でもあるので、幸成は悪いと思いながら謝った。
「……それで、えっと、俺は深く眠ってたけど、3人は眠れた?」
「深く眠れたよ。ユキナリからの抱擁のお陰もあってさ」
「私も眠れました。心が満たされた状態で眠れたので、昨日の疲労もありません」
謝る後、幸成は3人は眠れたのかを尋ねると、ヴァルティとブリュテは深く眠れたと答える。
ルアンも同様に眠れたようで頷いている。
「私も眠れたわ。久しぶりに悪夢を見ることなく眠れたわね。ありがとう」
「いや、俺からは抱擁しかしてないんだけどな…」
「それでも嬉しいから、感謝は言わせてもらうわ。本当にありがとう」
ルアンの悪夢。
それが何なのかはまだわからないが、昨日の抱擁が悪夢を見るのを阻止してくれたと感謝される。
幸成はまだルアンについてを知らないので、ルアンが見る悪夢の内容については聞かないことにした。
「ところで、今後の予定って聞いてる?」
「聞いてない。というか、今の状況からして昨日の後片付けの手伝いか何かかも?」
「というよりは、それしかないかと思います。窓から見たらわかると思いますが、いくつかの民家が崩れていたりしてます」
「崩れかけてるとかじゃなくて?」
「完全に崩れてます」
朝の予定を聞いてない幸成はどうなるかと聞いてみれば、ヴァルティは後片付けを手伝うのが予想できると答える。
ブリュテは窓から見える光景からして、昨日の出来事の余波を受けた民家がいくつか崩れていることを口にする。
つまり、しばらくは手伝い関係が続くらしい。
「後は発破したダンジョン付近の地面の補強がメインだと思うわ」
「ルアンが言う通り、そこら辺になるかなぁ」
更にルアンが補強も必要となれば、長い期間を要しそうだと幸成は被害が大きいと思う。
だが、ここは気にしすぎない方がいいかもと思い直した。
それよりも、今は身支度をして食堂へ行こうと幸成達は自室を出るのだった。
「おはよう、山本。今日は手伝いになるとゴルドーさんから伝えられた。当たり前だが、昨日の事態の後片付けだ」
食堂に来るなり笹原が手伝いのことを伝えると幸成は予想通りだと思う後。
「特に発破をされたダンジョン周辺の地面に亀裂があるらしくて、そこを土魔法で埋める作業が中心になりそうだ。といっても俺らより兵士達の方が手慣れてそうだから、その補佐として働くみたいだけど」
笹原は、兵士達の補佐として働くことになると続ける。
それを聞いた幸成も頷いた後、奈々達も今は必要なことだと頷く。
「ごめんなさいね。やるしかなかったとはいえ、ダンジョンをそんな形で破壊したのは私だし」
「ルアンさんは気にしなくていい。昨日、そう言ってただろ?」
「そうだよ。ルアンさんがいなかったら、本当にテンペウ国は落ちてたかもしれない」
「ええ。それだけは、確かだから気にしないで。ね?」
謝罪するルアンに笹原、奈々、佐伯は『気にするな』と言えば、ルアンは内心で肩の力を少し抜いて安堵する。
ダンジョン発破という常識外なことをしたことで、恐怖を覚えられたかもと思っていた。
「ご飯を食べたらゴルドーさん達の手伝いに行こう。兵士の人達もだけど、騎士の人達もダンジョンを壊された影響の後片付けをしなきゃらないらしいから。ちなみに今は忙しいから、大量調理ができる野菜スープと白米だぞ」
安堵する後、笹原は料理人達が後片付けの支援として大量調理の野菜スープと白米を用意したと話す。
「やっぱりそこは量が優先になるか」
「ああ。今は炊き出ししないといけないから、そこは効率を優先したらしい」
「なら、手伝いが終わったら今度は炊き出しの手伝いもありかな?」
「昨日はまだしも、炊き出しの手伝いは少し無理だと思う。俺達の中で料理の経験がある人が少なめなのもあるしな」
量が優先かと奈々が呟くと笹原は頷く。炊き出しまで手伝いはあるかもと水村も聞いてみれば、笹原は料理ができる人数の前に炊き出しの手伝いは難しいと返す。
確かに炊き出しをするにしても、経験者が少ないのもあって手伝いは厳しい。
「後、ブリュテさんとルアンさんに頼みがあるとも言ってた」
「あら。何かしら?」
「私もですか?」
「兵士達で瓦礫の撤去とかしてるから、ルアンさんのゴーレムで手伝ってほしいと。次に食料が不足しそうだから、ブリュテさんの力で補ってほしいと、ゴルドーさんが言ってた」
そして笹原は、2人に頼みごとがあると伝えてきた。内容はルアンのゴーレムを使った瓦礫の撤去の手伝いと、ブリュテの力で食料を増やすこと。
「それぐらいなら、いくらでも手伝ってあげる。今回はどちらかと言うと人型のゴーレムの方が効率がよさそうね」
「わかりました。作物ならお任せください。……ところで、ヴァルティには何をさせるかは決まっていないのですか?」
「……ゴルドーさんは、ヴァルティさんに支援を頼むのは怖いし、無理だと断言した」
頼みごとにルアンは快諾してブリュテも了承する。そのブリュテはヴァルティに頼む内容は何かあるかと笹原に聞くと、ゴルドーは怖いから無理だと返したとのこと。
「つまり、復興支援の間は私がユキナリを独占していいということだね」
「そうとも言えると思う。だから山本はヴァルティさんと2人で、やれそうなことを探してみてくれないか?」
「……支援、か。ヴァルティ、何かしら役立つ能力とかはある?」
そのヴァルティを大人しくさせておくには幸成が傍にいた方がいいと、ゴルドーもだが笹原達は判断している。
なので復興支援の間は、幸成とヴァルティは一緒に行動をとるように言われると、幸成はヴァルティに頼める能力があるかを聞いてみる。
「支援関係? …………他のダンジョンから、食べれる魔物のお肉を取りに行くとかかな?」
「それはありかもしれない。後でゴルドーさん達に聞いてみよう」
しかし、ヴァルティは直接的な支援は無理そうでも、ダンジョンから食べ物を取ってくることは可能だと幸成に言う。
幸成はその案はありと判断し、ゴルドー達に相談しようと決めた。
決めた後、今日は忙しくなるからと早食いの形で朝食を終わらせ、クラスメイトの各々が崩れた民家の撤去、地面の補修の作業へと向かう中。
「ヴァルティ。ユキナリのことをよろしくお願いします」
「ちゃんと守りなさいよ。後、私とブリュテがいないからといって羽目を外さないようにね?」
「わかってるよ。ユキナリをしっかり守るし、一線は超えないよう守るから」
ブリュテとルアンに頼みと注意の言葉を貰った幸成とヴァルティはゴルドーの元へ行き、ダンジョンから食料となる魔物を獲ってきてもいいかを聞きに行く。
その際、ヴァルティは幸成の左腕に自身の両腕を回して密着させていた。
「ヴァルティ。言われたそばから羽目を外しそうだね?」
幸成が思わずツッコミ。
ヴァルティはルアンから言われたことをあまり守らない気だ。
「バレた?」
幸成にそう言われても、ヴァルティは両腕を幸成の左腕に回したままだ。
「バレたじゃなくて、バレバレだよ」
ヴァルティの行為に呆れながらも幸成は、これもヴァルティらしいと思えてきた。
しかし、これは少し困るかもしれない。
今は復興中の状況下なのに、まるでもなくイチャつくようなことをしていたら周囲から空気を読まないと思われかねない。
「大丈夫。今は私とユキナリは一緒に行動することが復興支援になるから。それより、ゴルドーと話してる時もこうしてていい?」
「今は駄目に決まってる。その場の空気を呼んでほしい」
「えー? ……ん? つまり、復興が終わった後からなら好きなだけこうしていいと?」
幸成もだが周囲の空気も読むべきと指摘しても、ヴァルティはそんなことを聞く。
こう答えるのは間違っていると思いつつも、幸成はそう答える。
「仕方ないから、そうしておくよ」
「わかった。なら、今からそれまでの間は我慢する。今は公私はきっちり分けるよ」
幸成の答えを聞いたヴァルティは渋々と左手から両腕を外しえ頷きをした後、ゴルドーと会うために2人して歩き出す。
歩いて向かってみれば、ダンジョンから近かった建物達は完全に崩れていた。
「これは酷いな。復興までどれくらいの時間がかかるかが不安だ」
歩く中、幸成は思わず呟く。
これだけの被害があると復興までの期間が長くなりそうだ。そう思えてしまう。
ヴァルティはその呟きを聞きながら、ゴルドーが近くにいないかと周囲を見渡す。
「ユキナリ。ここに来たのか」
そんな中、ゴルドーが木材を運びながら声をかける。
幸成とヴァルティを見つけるなり止まってから近づいてくる。
「ゴルドーさん、おはようございます」
「おう、おはよう。……それで、何をしたいと思ってるんだ? 可能なら大きな物を退かすとかしてほしいところなんだが」
挨拶をした後にゴルドーは、幸成達に何か頼めそうな内容はないかと聞く。
その際に大きな物を退かしてほしいと頼みたくなるが、今回はそれではない。
「えっとね。他のダンジョンから魔物のお肉を取りに行く許可をもらいたい」
「ダンジョンの魔物の肉を取りに、か。そうだな。復興中だから食料となる物はあった方がいいか」
幸成の代わりにヴァルティが許可を求めると、ゴルドーはそれを聞いて確かに食料はあった方がいいと思えてくる。
「次のダンジョン破壊は残念ながら、まだ先になるからな。それは許可するぞ。但し、護衛の兵士を3人ほど同行させたい。ヴァルティ殿を信用してないわけじゃないが、万が一のためにな」
それでも幸成には護衛をつけたい。
ヴァルティを信用してないわけではないが、幸成は今後もいてくれないとマズい。
「まあ、そうなるか。確かにユキナリの盾になる何かは欲しいけど」
「そうだろう? なら、行く前に門の傍にいる兵士のザンガ、ミール、ロッソの3人と合流だな。そいつらが今日のお前達の護衛だ」
そのヴァルティの発言に頷いたゴルドーは、今日の幸成とヴァルティの護衛になる兵士3人の名前を教える。
更に門の傍にいるとも教えられれば、幸成とヴァルティはゴルドーと共に門の方へと向かう。
「あれ? ゴルドーさんは撤去作業のはずでは?」
「というか、なんでかユキナリ殿とヴァルティさんを連れてきてる?」
「ヴァルティが食料の確保のために、ダンジョンから魔物の肉を獲りに行くらしいから、お前達を護衛につけるためにな」
「そういうことなら、了解です」
向かってみると、兵士3人ことザンガ、ミール、ロッソが門の傍で立っていた。
そんな彼らにゴルドーは幸成とヴァルティの護衛につけるべく連れてきたと話す。
彼らは事情を聞いて了解すると、幸成の護衛についてからの。
「ところでユキナリ殿。魔物の肉でお勧めしたいものがありまして」
「美味しい肉があるんですか?」
「ベルセバッファローという、暴れ牛のような魔物の肉が最近の極上です。テンペウ国周辺のダンジョンは比較的新しい上に、食糧難も兼ねてますから、是非とも入手してほしいです」
ザンガがお勧めしたい肉があると言い出した。ベルセバッファローという、暴れ牛のような魔物の肉が極上らしい。それを入手してほしいと頼まれる。
「ベルセバッファロー? 牛の肉みたいな魔物の肉か」
「そうです。しかも、食肉にしても日持ちもする肉ですよ。塩漬けにしたら尚更です」
牛の肉のような魔物の肉だとザンガは言い切る。それだけ食糧難の今は需要があるらしい。
「となると、そのベルセバッファローとやらを優先して狙えばいいってことになるね。見た目はどんなのかな?」
「体毛が血のように赤い牛のような見た目です。突進を防ぐか避けたら、前足を軸にして弧を描くように蹴り攻撃をしてきます。そこは注意してください」
「わかった。突進の前に頭をかち割ればいいってことだね。それじゃ、行こっか?」
ザンガからベルセバッファローの特徴を聞いては、突進前に頭をかち割ればいいと理解するヴァルティは、さっさと行こうかと幸成を促す。
「突進の前にかち割ればいいって……」
「普通は攻撃を避けるかしてから、仕留めるのが定石なんですが……まあ、ヴァルティさんなら大丈夫な気もしますね」
そのヴァルティにミールとロッソは、普通はそうしないとツッコミを入れたくなるが、ヴァルティなら問題ないと感じる。
「実際、前に素手でドラゴンの頭をかち割ったからなぁ」
「あれは驚いたよな。まさかの素手でドラゴンの頭をかち割ったのには」
「あの場にいた全員が驚いたよ。というか、食肉扱いされたし」
普通ならドラゴン2体に挟まれたら死となるのだが、ヴァルティがその場にいた。
ドラゴン2体にとっては不運なことだったとザンガ、ミール、ロッソは苦笑しながら思う。
「あはは。……それじゃあ、行ってきます」
「おう。気を付けろよ。帰ってきたら俺に報告するようにな!」
幸成も3人に同意したくなりつつ、ゴルドーに見送られてからヴァルティと共に街の外へと向かうのだった。