病喚士物語 ~訳あり女性達の愛が重い~ 作:タスケ
「そのルジアって男はどうしたの?」
「ユキナリくんを殺したルジアは、後に私が殺した。怒り、殺意、悲しさに支配されたかのように、衝動的に。この世界に来る前にね……」
ヴァルティはルアンの元婚約者をどうしたのかと聞けば、ルアンは殺したと告げる。
怒りと殺意に支配され、悲しさに突き動かされるように、衝動的にルジアを殺したと。
「なぜ、ユキナリはそのルジアという者に手をかけられたのですか? 嫉妬がどうとかは聞きましたが、詳しい部分を教えてください」
「まず、私とルジアは婚約者同士。といっても政略結婚の形だったのよ」
「親同士で決められた政略結婚でしたか。その形でルジアという者と貴女は、婚約者同士として結ばれるはずだった」
ブリュテはそこへ至る内容が気になり、ヴァルティも気になる中、ルアンは悲しそうに。
「当時の私はそれが嫌だった。そんな中、私はユキナリくんと出会ったのよ。魔法研究の際の召喚事故の形で」
「研究中に事故、ですか?」
「そのお陰でユキナリくんに出会えたと思うと、ある意味で事故を起こした人には感謝をしなければならなかったわね」
その出会いは、ある意味で研究中に起きた事故によるもの。
その事故によりルアンは幸成に出会えた。
今もだが、そのお陰で幸成と出会えてよかったとルアンは思えている。
「本来なら私がいた世界の物か生き物を召喚するのだけなのに、召喚事故をしてしまったのは魔法研究員の1人。名前は……この話にはほぼ関係ないから省くけど、その研究員がうっかり召喚用の魔法陣に具体的なイメージもしないで魔力を注いだ結果、ユキナリくんが召喚されたのよ」
召喚事故の詳細を説明する中、ルアンは過去のことを思い出しながら語る。
過去の自分と幸成の思い出を。
「最初は困惑したわ。私と研究員達が知ってる者でもなければ、この世界の存在ではないユキナリくんをどうすればいいのかがわからなくなった。けど、ユキナリくんはなんとか状況を受け入れては、元の世界へ帰るために魔法研究に協力したいと申し出てくれた」
その内容は、召喚された幸成の対処に困っていた時に、幸成が率先して協力したいと申し出た。
元の世界に帰るためにと。
「その後にユキナリくんから出てくる発想と内容は、私からすればぶっ飛んだ内容ばかりだった。例えばどこにでも行ける扉とか、魔力を圧縮した光線を放てる武器とか、誰でも空を飛べる道具とやらとか、戦車とか。とても面白いことばかりだった」
「それはまた、ルアンがいた世界からしても、とんでもないことだよね……」
「それでも私にとっては、ユキナリくんが元いた世界は面白い物などで溢れているのだと、教えてくれた」
ヴァルティからすれば訳がわからないが、とんでもないこととしか言えない。
だが、ルアンは幸成がいた元の世界は面白いもので溢れていると語る。
「その中、私のゴーレムの件にも口出ししたことがある。なぜに組み立て式じゃないのかとね」
「そういえば、ルアンのゴーレムはかなり変わってるよね。なんか、わざわざ組み立てたようなものだと思った」
特に印象的だったのは、ゴーレムに関する内容。
ゴーレムを作るのに何故に関節を含めて、組み立てていかないのかと。
「当時の私のゴーレム達の関節などは、魔力で曲げて動かしていただけなの。それを見たユキナリくんが、それだと特に人型の見栄えがよくないと、指摘してくれた」
「ユキナリ、そんなこと言ったんだ」
「何かに拘っていたのでしょうか?」
ヴァルティもだが、ブリュテも意外そうな反応をする。
何故に幸成はそんなことまで指摘するのかと。
「最初は物は試しにと、ユキナリくんに言われるがままに組み立て式で人型ゴーレムを制作。完成した後に魔力を注いで動かしてみれば、とても滑らかな動きと見た目。その見た目と滑らかな動作に私は、ユキナリくんに惚れ込み始めた」
しかし、その拘りのお陰で組み立て式の人型ゴーレムが完成。
滑らかな動作と見栄えが切欠になったのかルアンは、幸成に惚れ始めた。
「だから私はその人型ゴーレムを始めとした、他のゴーレム達も組み立て式に改良。その結果、とても素晴らしくいい物が出来たら、特に男性の研究員達が目を輝かせていたわね」
「そんな凄いことをユキナリはルアンにしてたんだね」
動きの滑らかさ、見た目の良さもあり、特に男性研究員達は目を輝かせた。
ヴァルティも納得できるほどの凄さを感じる。
「その後に私は、ユキナリくんを私専用の助手にしようと提案。父と母、兄達と姉達、他の研究員達はすぐに了承してくれた。ルジアは許可してなかったけど、そんなのは関係なかった。あんな男の意見なんて、まるで要らないから」
その後にルアンは幸成を助手にと提案。周囲にはすぐ受け入れられたが、ルジアは納得していなかった。
しかし、そんなルジアの意見は関係ないと言い切る。
「ところで、なんでユキナリはゴーレムのことに口出ししたかは聞いてみたの?」
「『〇ンプラ』または『フィギュア』とかいう物を知るから、言いたくなったとのことよ」
「ユキナリ、〇ンプラって、何? なんでそれをルアンに教えたかわかる?」
「架空の人型兵器の玩具みたいなものだよ。後は多分、ルアンさんのゴーレムをそんな風にカッコよくしたかったのかもしれない」
その後、ヴァルティが幸成に質問。ガンプラについてを聞いてみれば、フィギュアと一緒の玩具だと返ってきた。
「ユキナリ、フィギュアはなんですか?」
「あまり詳しくはないけど、例えば有名な人物を模したリアルな小さな人形のことだよ。俺がいた世界だと、そういった物があるのも普通だからこそ、ゴーレムもそういう風にしたかったんだろうね?」
「歴史人物の石像を小さくした物、といったところですかね?」
フィギュアについても幸成はざっくりとブリュテに返せば、歴史人物の石像のミニチュアと捉えられる。
「ただ、〇ンダムと〇クやらは無理だったわね。見た目をいくら説明されても、私にはあまり理解できなかったし、ユキナリくんには絵心がなかったのもあって、人型ゴーレムにサーベルなどを再現した物の装備だけで済ませた」
「そこまでユキナリは頑張っていたのですね」
「そこまでする必要はなかったかもしれない。だけど、そのゴーレムはとても強いと自画自賛できるわ」
ルアンは懐かしげにも語る途中、ガンダムの見た目は説明されても理解できなかったと話す。
幸成は絵心がなかったため、装備だけでもと頑張ったらしい。
「そのゴーレムの改良を切欠に私はユキナリくんに徐々に惹かれていった。その最中にふと、私は思ったのよ。可能なら、ユキナリくんを元の世界に帰したくない。それが無理なら、私もついていってもいいんじゃないかと」
「ユキナリと離れたくない、か。わかる」
「私もわかりたくなります。その想いには共感したくなりますね」
そんな幸成にルアンは惹かれ、帰したくないと考える。
ヴァルティもだがブリュテも、そんな思いはわかる。
「だからユキナリくんに全部告白してみたのよ。そうしたら『ルアンさんは、俺が好き? ……えっと、好きの前に元の世界の家族とかはどうするんですか?』と、当たり前のことを聞いてきた」
「まあ、ユキナリならそう言うよね」
「私からすれば、元の世界に帰ることが叶う魔法さえ完成したらの話だけど、行き来すればいいだけの話じゃない。だから、私はユキナリくんがいた世界に住むために、どうにかする。そして、ルジアとの婚約は破棄して、あなたと婚約または結婚したいと告げた」
「大胆ですね?」
「まあ、ユキナリくんからすれば急すぎたことだったから、戸惑いと驚きでいっぱいだった。けど、後日にはOKしてくれた。その際に家族や友達には相談するから待ってほしいと言われた」
ヴァルティもそう思う中、ルアンは元の世界に帰るための魔法が完成した後は、幸成がいた世界に住むことにすると言い切った。
ルジアとの婚約は破棄し、幸成と婚約または結婚したいとの言葉にブリュテは驚いた。
「ただ、そこからが大問題になった。父と母、兄と姉達、使用人達はなんとか許してはくれた。幸いにも私が3女の立場だったから。けど、ルジアだけが大騒ぎして、私の両親とルジアの両親を怒鳴ったから非常に煩わしかった……その後から私にとっての最悪の事態が起きたのよ」
「最悪の事態……」
「ルジアはユキナリくんと2人で話したいと言い出したの。それを見て両家の人達はいい機会だと許可を出した。私もこれ以上は揉めるのも嫌だからと、私達もその場にいるのを条件としてからユキナリくんに了承してもらい、ルジアとユキナリくんは私達と共に外へ向かった」
その婚約破棄を理由に大問題となり、ルジアだけが怒鳴り散らすほどに大騒ぎになる。
その後、怒りながらも幸成と話し合いがしたいとルジアは言い出して、両家はいい機会だと許可をする。
ルアンも、これ以上は嫌なのでその場にいることを条件に許可をし、ルジアと幸成は外へと向かうが。
「その向かう途中で、急にルジアは風魔法をユキナリくんへ放った。その結果が最初に言った末路よ……」
ルジアは急に幸成に風魔法を放った。
その結果、幸成はバラバラにされた。
「……っ!」
「そんな……!!」
「……」
その内容にヴァルティは殺意で顔を歪め、ブリュテは怒りと悲しさが混ざった表情となる。
幸成は無言で、夢の内容を思い返す。
「……その後からもルジアは酷かった。『どこぞの平民のクソガキが僕に婚約破棄させたんだ! その罪は重い! お前などにルアンはもったいないんだ!! ルアンは僕のものだ!!』とか言っていたわ。そこに父さんと、ルジアの父さんがルジアを殴り飛ばした。『いくら婚約破棄させられたからって、やりすぎだ!』と……それでもルジアは、罵倒をやめなかった」
その後もルジアは酷いもので、無惨な亡骸となった幸成を罵倒。
殴られても尚、幸成を罵倒してきたものだからルアンは。
「だから、その場で私は人型ゴーレムを出して、再現したサーベルを持たせて、ルジアを横薙ぎに斬りつけた。『お前のせいで、ユキナリくんは……!!』と、叫びながらルジアの上半身と下半身を斬り別れにして殺した。その結果は事態が悪化。貴族からすれば恋愛から始まる婚約というのは珍しいから、こんな事態になるなんて考えていなかった」
ルアンは激怒して人型ゴーレムにヒートサーベルを持たせ、ルジアを横薙ぎに斬り殺した。
それが原因で事態は悪化した。
「バラディア家とカルーグ家の者達は、これはスキャンダルになるのもあって慌てていた。ユキナリくんが死んだことに悲しんでいたのは、その場では私だけだった。まあ、父と母、兄と姉からすれば、まだユキナリくんのことをちゃんと知らない身だから、そこまでの情が湧いてないのもあるけど……」
幸成が死んだことにルアンだけが悲しみ、バラディア家とカルーグ家の者達はスキャンダルになったと慌てていた。
ユキナリはバラディア家とカルーグ家の者達には、まだ他人に等しい者だから。
「いつかの約束は、ルジアに壊された。そう思うと、私はもうなにもかもなんて知ったことかと思いながら、その場から離れた時に、どこか胡散臭い男の声が、どこからか聞こえてきた。『ユキナリ少年にまた会いたいかい?』と……」
「私もブリュテも聞いた、胡散臭い声がここで来るのか……」
ヴァルティとブリュテも聞いた、胡散臭い男の声。
その声はどこかにいて、どこにもいないような不思議な感覚。
ルアンもまた、その声に導かれる形でこの世界へ来てしまった。
「その声を聞いた私は願った。また会いたいと。そうすると、いくつかの条件を説明してきた。その内容はヴァルティとブリュテと同じく、私の知らないユキナリくんと会えることだった」
「即決をしたのですか?」
「その時の私は自暴自棄な精神状態なのもあって、即決した。私を知らないユキナリくんだとしても、また会えるのなら、この世界に来た方がいいと思って来たのよ……」
その際のルアンは、幸成に再び会えるなら、この世界に来ていいと即決した。
それが今のルアンの過去。
即決したことに問いかけをしたブリュテも、ヴァルティも何も言わなかった。
2人もまた、胡散臭い男の声の言葉に即決した身なのもあった。
「そうまでして、貴女もユキナリに会いたかったのですね?」
「会いたかった。それだけは確かだった。だから、召喚された最初こそはユキナリくんを抱きしめたい衝動に駆られていたけど、ユキナリくんの真剣かつ困った顔を見たのと、名前を呼ぶ形で召喚されなかったことに気づいて自粛した……」
「ルアン……」
ブリュテはルアンの気持ちに共感できるところがあった。
ルアンも最初こそは、強すぎる衝動に負けかけていた。
だが、幸成の真剣さと困った顔から、名前を呼ぶ形で召喚されたわけではないと気づいた。
だから、理性的に振る舞い、やらざるを得ない時と場とはいえ、過激に対処してからも気持ちを抑えていた。
「ルアン、貴女も残酷だね。ルアンがいなくなった後のことをなんとも思わないの?」
「そこを今に突かれると痛い……とは、あまり思わないわ。ルジアの理性を少しでも信じたことの後悔ばかりしかない。後、事が事だから、もし元の世界に私がいたままだったら余計なことに時間を費やされていたかもと、思わなくもないし」
その最中、ヴァルティが元の世界のことを気にしないのかと聞くと、ルアンは今更すぎると思ってしまう。
後悔はあるが、それはルジアの理性を信じておかなければよかったと思っていたことだ。
そう思い返していれば、ヴァルティは『それならいい』と言ってきた。
「そういえば、ヴァルティ。貴女はどうして、ユキナリくんにそこまで拘るの?」
「私を独りにしないようにしてくれたから」
そのヴァルティにルアンが逆に聞き返すと、ヴァルティはサラッと言った。
「……そう。与えられた情報からして、そうとは予想してたけど、ユキナリくんはどこでも優しく接してくれるのね」
「だから、ユキナリが大好き。独りにしないよう、傍にいようとしてくれたから。あの時からずっと、私の傍にいてくれたらいいのにとしか思えなかった」
ルアンは予想していただけに苦笑し、ヴァルティは独りにしないようしてくれた幸成が大好きだと伝える。
あの時からずっと、ヴァルティは幸成の傍にいたいと、思わずにはいられなかったと。
「少なくともルアンは、自称の可能性がある2人とは違うね。だって、上手くいったらの話だけどユキナリとずっと一緒になれたかもだし」
「確かに家族の了承を得たことで、そうなる可能性はあったかもしれないけど、その言い方は複雑だわ……」
「あ、あはは……」
その後にヴァルティからルアンは、自称は外れると予想される内容を言われてしまう。
ルアンもそれはそうだが複雑だと呟けば、幸成は苦笑した。
「ルアンの過去話もあって、夜も更けてきました。そろそろ寝ないと明日に響いてしまいます」
「……話が長くなったわね。それについては申し訳ないとしか言えない」
「仕方ないよ。ルアンがちゃんと私とブリュテには、教えようとしなかったんだからさ」
「教えたくない理由はわかった上で言うのかしら?」
幸成の苦笑する顔を眺めながら、ブリュテが寝ないとマズいと言えば、とルアンは申し訳ないと言った後に、ヴァルティに教えようとしなかったと指摘される。
その理由をわかった上で言うのかと、ルアンは尋ね返す。
「だとしても、私達はユキナリを亡くしてしまった身。それだけで共通点はあるから」
「そう、ね。その共通点があれば、話さないでいるのもよくなかった」
「ルアンが話したくない理由は理解しましたけど、知れたことはよかったと思います」
「そう? それは、少し助かるわね」
その共通点は同じく、大切な幸成を亡くした身であること。
その共通点があれば、話さないでいるのはよくないとヴァルティもブリュテも思った。
ルアンも、そう思われるのは助かると頷いた。
「それでは、明日の夕食を楽しみにしましょう。ユキナリからすれば今日の夕食は物足りないかもしれなかった内容でしたけど、明日は期待できます」
「ユキナリ。明日の夕食は期待していいよ」
明日の夕食は期待できるとブリュテは話し、ヴァルティも同じく楽しみにしていた。
「確か、高級肉とか言っていたわね? なら、まず期待できる。貴族達の舌は一部を除けば、グルメとも言えるでしょうから」
「一部を除けば? 馬鹿ってこと?」
「正確には馬鹿舌と言うのよ。味の善し悪しと、微妙な違いがよくわからない人のことを指すの」
「なるほど……なら、ルジアは絶対に馬鹿舌だね」
その夕食を期待できるとルアンも思い一部を除けばと口にしては、ヴァルティが馬鹿と言えば、馬鹿舌だと教え直す。
その後にヴァルティは、ルジアは馬鹿舌だと勝手に決めつけた。
「それはどう、かしら? 性格は完全に馬鹿そのものだけど、味覚まではそうとは限らないし……」
「ここは馬鹿舌だと言っておいた方が気が楽だよ」
「……確かにそうかも」
ルアンが曖昧な返事を返せば、ヴァルティは馬鹿舌だと断言した方が気が楽だと教える。
確かにその方が気が楽だとルアンも頷いた。
「ルジアの件はもうどうでもいいとして、早く寝ましょう。……けど、その前にユキナリには私達3人への抱擁をしてもらいたいのですが」
ブリュテはルジアは馬鹿でどうしようもないとして切り捨てた。
その後に、幸成に抱きしめてほしいと願う。
「えっ? 昨日のだけじゃ足りないの?」
「はい。今日の分も欲しいです」
戸惑う幸成が聞き返すと、ブリュテは今日の分もと欲しがった。
「ブリュテ? 早くに寝た方がいいと言ったのは貴女よ。なのに、ユキナリくんが眠れなくなりそうなことを要求しない。……今日は諦めなさい」
「……ユキナリが眠れなくなるのは、よくありませんね……わかりました。今日だけは諦めます。明日の夕食後にでもしてもらいます」
それを聞いていたルアンは、眠れなくさせることは控えるようにと注意。
ブリュテは幸成が眠れなくなるのはよくないとして、明日の夕食後にしてもらうと言ってくれた。
「夜が更けたから、今日の抱擁は無しかぁ。ルアンが話さずにいたからだ」
「誰が好き好んで、悲しい話をするのよ。必要でないと話したくもない」
「それには同意かな。ヴァルティ、ブリュテもだけだ、ルアンの過去も辛いと思えるし……」
その後にヴァルティがルアンに抱擁は無しのことに文句を言いたくなる。
話さないでいたから無しになったと。
ルアンは話す機会はなくてもいいと言えば、幸成は確かに話したくない内容だと頷いた。
「その文句は明日に聞いてあげるから、もう寝ましょう。寝ないと明日に響いてしまうから」
「うん。明日には文句言ってやるからね」
そういった会話が終わる後、幸成達4人は眠りにつく。
明日に向けて休む為に。
翌日の早朝、テンペウ城内の食堂にて。
「か、身体中が、痛い……!」
「……筋肉痛とかが、辛いな」
「こ、腰が痛い……」
幸成達4人が来てみれば、クラスメイト達は揃って筋肉痛などを患っていた。
それもそのはずで、昨日は復興作業と称しての重労働。
肉体的に男子も女子も、大変な負担がかかっていた。
「みんなして大変そうだ。回復魔法でなんとかならないかな?」
「可能なら、山本にそうしてもらえると助かる……」
「幸成、お願いできるかな? 流石に、これは辛くて……」
そのクラスメイト達を放っておけない幸成は、回復魔法を使おうとする。
笹原と奈々が代表してお願いをしてきた後、幸成は食堂内にいるクラスメイト達に1人ずつ、回復魔法をかけていく。
「……ふぅ。これで、とりあえずは動けると思うけど」
「ああ、大丈夫だ。お陰で楽になった」
「ありがとう、幸成。お陰でかなり動けそう」
「助かるよ、山本」
全員に回復魔法をかけ終えた後、笹原も奈々も筋肉痛や腰の痛みがある程度はなくなっている。
動けると伝える後、回復魔法のお陰でクラスメイト達もだが動けるようになったことに、新田も感謝する。
「この世界の魔法って、イメージが主なのね。ある意味で楽でありながら難しいとも言えるけど、今のユキナリくんは上手い具合に扱えてるわ」
「ありがとう、ルアン」
それを眺めていたルアンは、幸成の魔法の扱い方が上手いと褒める。
ブリュテとヴァルもだが、幸成の魔法の扱い方に上達を感じていた。
「ユキナリの回復魔法のお陰で、みなさんは動けるようになれたのなら、十分上達しています」
「というか全員を回復できたなら、魔力はかなりある方なのかな?」
上達を感じるが同時に、クラスメイト全員に回復魔法をかけられたことに、ヴァルティは幸成の魔力量は多いのではと感じる。
「みんなの身体のみの回復を優先して、魔法を使ったからじゃないかな? クラスメイト全員にちゃんとした回復魔法をかけてたら、追いつかないし……」
「それでも、魔力の多さを感じる」
「本当に、ここまで上達しているとは思ってもなかった」
それについては幸成自身が、身体のみの回復を優先したからではと考える。
しかし、ヴァルティは幸成の魔力量は多いと改めて思えてしまう。
ルアンは本当にここまで上手く魔法を使えるようになるとは、想像していなかった。
「それは嬉しいかも。……そういえば、今日の朝食のメニューはなんだろう?」
「今なら、多少脂っこい物でも大丈夫だから、普通に食べられそうだな」
「私も動けるから、普通に食べられそう」
「それなら、食事の時に聞いてみようかな?」
笹原と奈々は回復魔法をかけられたので、多少の内容なら食べられそうと話す中、運ばれてきた今日のメニューは。
「卵焼きだー!!」
白米と、香草を使った煮魚の次にある料理を見た碇谷が、歓喜の声を上げた。
「復興作業中にアサリに似た貝があると知ったから、貝ダシの卵焼きを料理人の人達に教えてみたんだ。後は味噌が完成してくれたら、本当にほぼ和食になるよ!」
佐伯が復興作業の中、市場を通る途中でアサリに似た貝を見つけた。
それを料理人に伝え、卵焼きに使ってもらったと言えば、幸成を含むクラスメイト達は佐伯に深く感謝したくなる。
「そうか。貝ダシという手があった! それなら、肉じゃがも上手く作れるかな!?」
「え? ……この世界にはしらたきがないから、それを除けば、肉じゃがになる。ただ、山本くんが好むのは昆布かカツオのダシの方だと思うよ?」
「それでも助かる! ありがとう! 本当にありがとう!!」
特に幸成は、感動して佐伯に感謝の言葉を連ねる。
それだけ嬉しかったと。
「山本の奴は嬉しそうだな。……それだけ和食が恋しかったのか?」
新田が幸成の嬉しそうな顔を見てそう呟く中、笹原が幸成に質問してみたくなる。
「山本、なんでそんなに嬉しそうなんだ?」
「だって、こっちの世界だと、昆布もカツオもなしだと思ってた。だけど、貝ダシが使えると知れば、更なる和食が作れる可能性があるってことだからさ。後、肉じゃがは俺の母さんが作る中では一番美味いしね」
理由は昆布もカツオもないと思っていた中、貝ダシが使えると知れば、和食の幅が広がる。
それもあるが、肉じゃがは幸成の母の作るものでは一番美味しいから食べたくなっていた。
「なるほど。そう聞くと、お袋のカレーが食べたくなる。お袋はスパイスから始める人だから、食べたくなったよ」
「お母さんのチキン南蛮が食べたくなった。こっちに来てから、全然食べれてないから……」
理由を聞いた笹原もだが、新田もそれぞれの家庭料理が食べたくなったと話す。
幸成を含むクラスメイト達も、それぞれの家庭料理が食べたくなったと口にし始めた。