病喚士物語 ~訳あり女性達の愛が重い~ 作:タスケ
いざ話し合いのために、幸成は部屋に戻るとヴァルティに恐る恐るどこか、勢いをつけて相談をしてみる。
「ヴァルティ。俺もだけどクラスメイト達が白米や味噌汁を食べたくなってるから、植物を自由に育てられる誰かを召喚してもいい?」
勇気を持って言ってしまった。
ここから先の反応が怖いと、幸成はヴァルティの顔を見れずに返答を待つ。
「…………」
対するヴァルティは無言。
今のところは怒りを見せてこないが、無言なのは怖い幸成は顔を上げられないでいる。
そんな幸成を見てヴァルティは溜息を吐いて、こう答えた。
「私は嫌だけど、ユキナリからすれば必要なことだよね?」
幸成からすれば必要なことだ。
そう思って、ヴァルティはなんとか理解しようと努力した。
本当なら許したくないが、このまま何もしなかったら幸成がクラスメイト関連で傷つく可能性が高い。
だからヴァルティは渋々と許そうとする。
「……今日に碇谷達もゴブリンを殺すことができたけど、それは手伝いがあっての話だから、まだフォローが必要なんだ」
一方で幸成は許してくれたかもしれない反応が返ってきたと思うが、それでも心配だった。
なので、更に理由を説明していく。
「これからもみんなのフォローをしていかないとならない。その1つとして食事は必須だ。だから、俺からヴァルティに頼みたい」
今まで以上にフォローしていかないといけない。
その為にも食事を含めた環境を整えていくべきだろう。
幸成はそこまで考えた上で、ヴァルティに頼むことにした。
「だから、頼む。植物を自由に育てられるナニカを呼ぼう。召喚して、協力をお願いしたいんだ」
「……なら、そのナニカを召喚した後からのお願いがあるんだけど」
「何かな?」
幸成はヴァルティからのお願いを聞くことにする。
可能な限りなんとかして叶えるつもりでいた。
「今日から最低でも毎日、私に添い寝して」
「えっ?」
だが、ここで出てきたお願いは添い寝だった。
「最低、でも?」
しかも、最低でもと聞こえた。
つまり、もしかしたらだが添い寝以上のことを求められるかもしれない。
「うん。ユキナリがしたいならエッチなこともしたい」
「……マジで?」
とか思っていたら更に踏み込んだ要求を聞いてしまった幸成は耳を疑いたくなるが、ヴァルティは至って真面目な表情だった。
「本気。私のことをもっと知ってもらいたい」
「でも俺、ヴァルティと出会ってまだ、そんなに経ってないよ?」
「知ってる。けど、私はあなたに触れたいと、傍にいたいと思う気持ちが強くなる一方なの。ここにいるユキナリも、やっぱりユキナリなんだって改めて思った」
ヴァルティの言葉を聞いていく内に、幸成はヴァルティは何を求めているのかが少しだけわかった気がした。
昔ならまだしも、今のヴァルティは独りが嫌なのかもしれない。
「どうしても、その願いは聞かないといけないの?」
「うん。聞かないと呼ぶのは無理。許可しない」
「そう、か……」
これはある意味困ったと、幸成は思う。
添い寝なんてしたら、ヴァルティから一線を越えようとするかもしれない。
それは避けたい。
ここは妥協点を探ろうとする。
「えっと。毎日添い寝する代わりにエッチなことはなし、とかは?」
「却下」
「……えぇ」
その結果はあっさりと却下されてしまい、幸成は若干泣きたくなった。
ヴァルティは譲らない。
幸成がヴァルティの願いを叶えるまでは、絶対に譲らないようだ。
「毎日の添い寝とアレなこと……でないと、俺は必要なナニカを召喚できない?」
「うん。駄目なら、私は許可しないし、呼ぶのに必要な名前も教えない。絶対にね」
本当に妥協点は見いだせないのか。
幸成はヴァルティが本気とわかって、更に言葉を重ねる。
「どうしても? どうにもならない?」
「どうにもならない」
「俺がヴァルティと出会ってから、まだ10日以上がやっと過ぎた辺りなのに? それなのに、そんなことを求めてくるの?」
「求めるよ。私は本気だから」
「…………」
ここまで譲らないヴァルティに、幸成は言葉が出なくなってしまう。
ヴァルティは本気だからこそ、決して譲らない。
思わず沈黙という選択肢を取ってしまうが、それでもヴァルティは本気だという様子が伝わってくる。
「私からすればユキナリと出会ってから、もう4年以上も過ごしたんだから」
そんな中、ヴァルティはポツリと零した言葉を聞いて幸成は目を開きかける。
まさか、ヴァルティと出会ってから4年以上も経っているのか、と。
「それは、ヴァルティが初めて出会った俺のこと?」
「うん。前のユキナリと初めて出会ってから別れるまでの時間は長かったよ?」
幸成はヴァルティに初めて会ってから別れるまでに、4年以上も経っているのかを尋ねてみれば、ヴァルティは肯定する。
「ユキナリは優しい。2年辺りである程度は私の世界の常識を覚えたのに、まさかの敢えて私と一緒にいることを選んでくれた」
「その俺がヴァルティを庇って、みんなから悪く思われるかもしれなかったのに?」
「そうだよ。でも、ユキナリは私と共にいたいって言った。その言葉を聞いて、私の中で何かが弾けたような感覚を覚えたのは確か。だから、私は貴方とずっと一緒にいたいと思った」
ヴァルティが嬉しそうに話す内容は、幸成にとって衝撃的な内容だった。
もしもの自分がヴァルティを庇って、危ない目に遭ったかもしれないのに。
というか実際に遭ってしまったのに。
それでもその時の幸成は、ヴァルティと共にいることを選んだらしい。
つまり、ヴァルティとその幸成は両想いだったのかもしれない。
「今、目の前にいるユキナリも優しい。クラスメイト達とやらのためもあって、私に勇気を持って相談してきた」
「そ、そう?」
「うん。前のユキナリとは別の人生を歩んでるはずなのに、やっぱりユキナリは優しい。だから、私は今のユキナリも大好き」
目の前にいる幸成も優しい。
その優しさを評価しているヴァルティは、幸成のことが大好きだった。
いや、最初から幸成のことが大好きだった。
「だからこそ、私は私以外のナニカ達にユキナリを盗られるのは嫌。けど、私以外のナニカ達もユキナリを喪ったから、私がユキナリの傍にいられる可能性ができた。だから、私はその可能性を最大限に利用したい。利用した上で、私はユキナリのことを愛してるから」
「愛、してる?」
「うん。今も昔も関係なく、ユキナリを愛してる。だから、私はユキナリの傍から離れたくない」
前の幸成を知っているからこそ、今の幸成に惹かれている。
それは愛しているから離れないという選択肢しか存在しない。
「さあ、ユキナリはどうする? 私以外のナニカを呼ぶためには、私から名前を聞く必要があるよ? 聞くなら、覚悟して。私を沢山、受け入れてほしいから」
だから、ヴァルティは幸成に覚悟をしてほしい。
自分を受け入れてほしいという意味を含んだ、ヴァルティなりの告白をした。
「……せ、せめて、初日からアレなことは無理かなと思うんだ」
「なんで?」
「なんでと言われても、俺からすればヴァルティと出会ってから日が浅いのもあるけど、訓練があるから無理なんだよ。毎日の終わりの時にアレなことしたら、翌日に響くって!?」
まさかの告白をされた幸成は一応だが、初日からアレなことは無理と返す。
理由は色々だ。
そもそも出会ってから日が浅い。
その上に訓練で肉体的にも精神的にも、消耗している。
それなのに、毎日の終わりにそんなことをしたら翌日に響くのは確実だ。
なので無理と返す。
「……あーっ。そう言われてみれば、今のユキナリは毎日ダンジョンに行くことになり始めてるし、肉体的にも精神的にも疲労してるね?」
「うん。だから、毎日の終わりにそんなことしたら、翌日は確実に寝坊してゴルドーさん達に迷惑をかけかねないんだよ」
ヴァルティが納得したことに、幸成は内心で安堵する。
添い寝以上の件は訓練に対する慣れが出てくれば、やらないとは言っていない。
ただし、今日から抱き枕扱いやらはされるが。
「……わかった。今は私からは何もしない。その代わり、添い寝は絶対だからね?」
なのでヴァルティは妥協点を探り、今の幸成に無理はさせないようにする。
その代わりに添い寝または抱き枕扱いは確定である。
「呼び出すための名前は明日に教えるとして、今は私と一緒にベッドに入って寝よ? ユキナリのことが心配だから、訓練が終わった後は一緒に休んだ方がいい」
ヴァルティは呼ぶための名前については明日にしようと言い、今夜からヴァルティと一緒に寝るように言ってきた。
「その寝る前に、ヴァルティが知る俺とヴァルティがどういう風に関係を築いたかを改めて教えてもらっていい? 内容からして、きっと色々あったんじゃないかなって思うから」
対する幸成はヴァルティと幸成が出会ってからの関係についてを教えてほしいと頼み込む。
関係がどういったものなのかが気になるので、知りたいと思ったのだ。
「その内容、語ってもいいの?」
「うん。ヴァルティがよければ、だけど」
するとヴァルティは幸成が望むなら、今からでも語っていいと確認をする。
望んでいるから幸成は頷けば。
「なら、私が知るユキナリと出会ってからの別れる前のことを話す。ベッドに入りながら、ね?」
ヴァルティは今から語ることに決め、幸成の手を引いてベッドの中に入る。手を引っ張られる形で幸成はベッドに横たわらされると、ヴァルティが左隣から抱きしめてくる。
いきなりのことに幸成の心臓の鼓動が速くなる。
「私が知るユキナリは、いつもの道を歩いてた時に突然、私の世界に来た。そこで森の中に迷い込んだりして、魔物達に襲われたりした。その際に私は偶然見かけて、助けてみたんだ。その時は単なる気紛れだったけど、そこからユキナリを好きになった理由が生まれてきた」
「それはつまり、ヴァルティに出会うきっかけは、その俺が異世界転移の類をしたのかな?」
「そういうこと。ユキナリから聞いたら、ユキナリは異世界転移をしたらしい。それも、ユキナリからすると前の日にはコウコウとやらを卒業していたんだって」
「高校卒業後の俺が異世界に……」
「うん。ユキナリは卒業して家に帰宅しようとしたんだ。だけど、歩いている最中にいつの間にか私の世界にいて、森の中にいた」
鼓動が速くなる中、幸成はヴァルティから『前の幸成』の話を聞いていく。まずはどうしてヴァルティの世界に幸成が来たのか。
その内容は高校卒業直後の幸成がいつもの道を歩いている最中に、異世界に来てしまったこと。
ヴァルティがいた世界で、森の中にいたことをヴァルティが語る。
「ユキナリは初めから戸惑ってた。なんでここにいるのか、どうしてこんなことになったのかって」
「それは戸惑うよね。いつもの道を歩いてただけなのに、いきなり異世界に来て魔物に襲われたりしたら」
その幸成は当然のことながら戸惑っていた。
当たり前のことながら、その幸成はヴァルティの世界についてを知らない。
何故にこんなことになったのかと、酷く戸惑っていたとヴァルティが語る。
「気紛れで助けてみたら、その時の私は知らなかったことだけどユキナリは異世界人だから、私のことをまるで恐怖の対象として見ていなかった」
「それは、ヴァルティのことを全然知らなかったからじゃないかな? 後、助けてもらった初対面だからじゃないかな?」
「確かにそれもあるかも。けど、ユキナリは私を恐れていなかった。それが私の中では凄い衝撃だった」
「つまり、それまではヴァルティを恐れなかった相手は誰もいなかった?」
「うん。ユキナリが初めてだった」
「……そう、か」
「その時は私がユキナリを偶然見かけて、ユキナリを助けただけ。それだけでもユキナリは驚いたり戸惑ったりしてたけど、私を恐れていなかった。だから、興味が湧いたんだ」
「それで興味が湧いた、か。それからどうなったの?」
「その日以降もユキナリと一緒にいて、色々と教えあった。私の世界の常識、一部だけだったけどユキナリの世界の常識や物。色々と教えあっていくうちに、私はユキナリにどんどん興味を持っていった」
その幸成がヴァルティを怖がらなかった。
これがヴァルティには衝撃的だった。
初対面でもなんとかヴァルティを恐れないのは普通にできるのかもしれないが、それでも異世界人の幸成はヴァルティを恐怖の対象として見ていなかった。
それがヴァルティにとっては、まるで『奇跡』のように思えた。
「初めての経験だからか、私はもっと興味を持っていった。ユキナリの言葉を借りるなら、前のユキナリを段々と独占したくなってきてたんだ。けど、ユキナリは人間。人間社会へ行かないとならない。だから、2年が過ぎた最初は一旦、私の世界の人間社会をよく知るために森から出てみると言って、お別れをした」
「けど、森に戻ってきたと?」
「そうだよ。ユキナリからすると何も知らない人間達が私のことを悪く言うことが悲しかったと言ってた。その辺りから段々とユキナリに対する、より『好き』な感情が生まれてきたんだ」
2年が過ぎた頃に、ヴァルティが知る幸成は人間社会を知るために一度森から出て人間達と接していた。
その時の幸成は人間達にヴァルティのことを教えてもらえたが、その時の反応は悪いものだった。
人間達はヴァルティのことを良く思っていなかった。
それどころか、『人間達の敵』とまでは言わなかったが、ヴァルティのことを否定的に扱っていた。
「ユキナリが言ってた。人間達は私のことを全然わかろうとしていない。なら、わかってくれないなら森に戻る。その代わりに私のことをもっと知りたいと言ってた」
ヴァルティのことを人間達は全然わかろうとしていない。
だから、わかろうとしないなら人間社会に戻らない。
その代わりに、ヴァルティのことをもっと知りたいと、その幸成は言ってきた。
「そこからの日々は穏やかで平和だった。あの時までは」
そこから暫くは平和な日々を過ごした。毎日を穏やかに過ごすことができた。だが、それは長続きしなかった。
「ユキナリと出会ってから4年辺りが過ぎた日に、私を討伐しに来た人間達が来た。その人間達にユキナリは私の眷属か何かと勘違いされて、殺されそうになったから逃がして、私はその場でその人間達と戦って殺した。なのに、他にも人間達がいてユキナリが手にかけられ……これ以上はもう、無理。今でも思い出すだけで、私は辛くて苦しくなる……」
その人間達を相手にした結果、ユキナリは殺されてしまった。
ヴァルティは辛そうに、幸成の胸に顔を埋めてくる。
「俺なりに例えると、まだ生きてる両親を喪うのと一緒なくらいに辛かった?」
「うん……!」
ヴァルティの頭をゆっくりと撫でながら、幸成は自身の両親を喪うのと同等に辛かったのかを尋ねれば、ヴァルティは肯定する。
「俺はヴァルティが言う、その俺とは違う。ヴァルティが知る俺とは別人だと思う。だけど、その俺がヴァルティに何も遺せなかったのは悔しかったんだろうなとは思う」
幸成は、その幸成はヴァルティに何も遺せなかったことを悔しかっただろうと思った。
「……何度も思うよ。ユキナリはやっぱり優しすぎる。だからこそ、私はユキナリの傍にいたい。今度こそ、私はユキナリから離れない」
そんな幸成に対してヴァルティは心から幸成の傍にいたいと思っている。今度こそ、幸成を守りたいと思っている。
「ユキナリに知らない誰かと思われるのは覚悟の上だった。けど、ユキナリはユキナリだった。前のユキナリもだけど、今も優しい。だから、私はユキナリを今度こそ守る。絶対に守る。私は、今度こそユキナリと一緒にいたい。どんな困難が待っていようと、一緒にいたい。そうじゃないと、私にとっては生き地獄だよ」
だから、今度こそ守る。
どんな困難が待っていようと、どんな不幸が待っていようと、ヴァルティは幸成とずっと一緒にいたい。
その思いが強くなったヴァルティは幸成に抱きつく力を強めていく。
ヴァルティの大きな胸が幸成に押し付けられるが、語る過去が重すぎて幸成はそれどころではない。
「ヴァルティ……」
「だから、ずっと一緒にいて。ずっと離れないで……! 他のナニカを召喚した後も、私から離れないで……!」
だから、ずっと一緒にいてほしい。その言葉と共にヴァルティは泣くように懇願してくる。
ヴァルティは今でも辛い過去に囚われているのかもしれないと幸成は思う。
痛々しいとも思えるヴァルティの姿に、幸成は『ヴァルティを慰めるために毎日添い寝くらいなら、していいか』と考えた。
もちろん、今は添い寝以上のことはしないと決めながら。
「少し長く話してたら疲れたかも。……そろそろ、寝たい」
「俺もね。色々と教えてくれてありがとう」
「うん……おやすみ、ユキナリ……」
「おやすみ、ヴァルティ」
幸成はヴァルティの頭をゆっくりとまた撫でながら、ヴァルティと共にベッドで眠りにつく。
その際に幸成は夢の中で、ヴァルティが知る『前の幸成』の夢をまた見る。
内容は本当に残酷な末路だった。それを見た幸成は、自分も同じ目に遭わないよう気をつけようと改めて決意した。
異世界召喚されてから13日目の早朝。
幸成の意識が目覚めようとするが、視界が真っ暗だった。
顔中に柔らかくて温かくて、いい匂いがする何かが押し付けられていた。
(なんだ、これ?)
なんとか顔を動かし視界を確保してみれば、その理由がわかった。
ヴァルティの大きな胸だった。
いつの間にか、ヴァルティが幸成の頭を抱きしめていた。
昨夜のことを思い出した幸成は一気に覚醒する。
「……寝起きから、やけに刺激的すぎないか?」
眠気が一気に吹き飛んだ。
刺激ある寝起きとなるなら、次にやるべきことはヴァルティから離れベッドから出ようとすることなのだが。
「んん……」
「えっ。ちょっ、待って」
離れようとしたらヴァルティに後ろから両手両脚を絡めて押さえられる形で拘束されてしまい、幸成は思わず硬直してしまった。
「ヴァルティ。朝、もう朝だから。だから起きてくれないか?」
これではベッドから、ヴァルティから抜け出せないままだ。
なので朝だから起きてくれと促した。
「もうちょっとだけ。もうちょっとだけ、ユキナリを感じてたい……」
だが、ヴァルティは更に身体を密着させようとしてくる。
幸成の顔は真っ赤になった。
押し付けられる胸の感触がかなり強く感じる。
柔らかい感触は幸成の理性を崩そうとするには十分すぎたが、幸成は必死に耐えるしかない。
「身支度する必要もあるんだ。それに、添い寝なら毎日なんだから、今は起きよう?」
「……わかった」
なんとか耐えて今日から毎日添い寝だと幸成は伝えれば、ヴァルティは渋々ながらも幸成から離れた。
あのまま絡みつかれたままだったら、幸成の理性が危なかったかもしれない。
そう思っては身支度を整え始める。着替えは流石に別々だ。
カーテンで区切っている中で別々に着替えた。
着替え終わり部屋から出て、食堂へ向かってみれば奈々や笹原達が待っていたかのように、クラスメイト全員して既に座っていた。
「おはよう、幸成。それで結果は?」
奈々の第一声は結果報告の催促だった。ここは幸成は正直に答えるしかない。
「条件付きだけど、なんとか許してもらえた。後はヴァルティに呼ぶ誰かの名前を教えてもらえれば、いつでも呼べる」
「条件付き? ヤバい内容じゃないよね?」
「……詳しくは聞かないで」
条件付きで許してもらったこと。
それが気になった奈々はヤバい内容なのかを幸成に尋ねれば、幸成は苦笑しながらも説明を拒否する。
その説明内容を聞かれても答えたくないと幸成は思っている。
説明したら多分、主に男子側が羨ましいと叫び始めるかもしれない。
後は女子側がなんと言うか。
反応がある意味で予想できないから、幸成は余計に説明したくない。
「山本の反応からして、幸いにもかなり危険なことにはなりにくい条件付きらしい。だから聞くのはやめておこうか」
空気を読んで笹原がそう言う。
それを聞いた猪井と亀田が『わかってる』とばかりに頷くと、他のクラスメイト達も頷いた。
その後に今日の朝食のメニューこと鶏肉入りのリゾットを食べ終え、今日も憂鬱な訓練の前にゴルドー達に新たなナニカを召喚したいと願い出る。
「ゴルドーさん達には迷惑をかけますけど、必要なナニカを召喚したいと思ってます」
「ヴァルティ殿のような、ヤバいナニカをか?」
そう言う幸成にゴルドーは顔をしかめそうになるが、ペリエが宥める。
「ゴルドー殿、ここは有益になると判断しましょうか。我々からすれば未知の魔法か何かを得られるなら、それに越したことはないかと思いますので」
未知の魔法や技術などは得られる機会があるなら、逃したくない。
そういう思考を持つペリエはゴルドーに宥めの言葉をかける。
「だがな、初日にあった王の間での出来事もある。また似たようなことが起きかねないとしたら、あっさりとは頷けないな」
「なら、城の外、街の外にて出来る限り被害が発生しないよう対策をした上で行いましょう」
「ペリエ。お前は構わないのか?」
ゴルドーは背筋が凍る思いをした初日を思い出す。
ヴァルティの圧迫感で気絶した貴族達を思い出せば、再び似たようなことになるのではないかと不安が込み上げる。
だが、ペリエは外で出来る限り被害が発生しないよう対策するならいいと提案してきた。
その言葉にゴルドーはペリエの正気を疑いそうになるが、ペリエは平然と答える。
「必要なことです。我々は今の段階でダンジョン破壊の手がまるで追いつかないのは理解しているでしょう。ならばと、ユキナリ殿に期待したいという気持ちは否定できません」
「……確かに否定できん。だが、本当に大丈夫なのか?」
ゴルドーはペリエの言うことの理解はできる。
ダンジョン破壊の手がまるで追いつかないのも事実。
叶うなら幸成に直接または間接的に頼りたくなるのが事実だ。
それでもヴァルティと似たようなナニカを呼び出すことを、ゴルドーは怖れていた。
「それはわかりません。ですが、ヴァルティ殿は初日の時を除けば我々に敵意はありません。そう思っているからこそ、私はユキナリ殿に期待したいと思っています」
対するペリエはヴァルティに敵意は無いと判断していた。
だからこそ、幸成に期待したいと思っていることを伝える。
確かにと、ゴルドーは思う。
ヴァルティは積極的に襲いかかってはこない。
なのでゴルドーは、ペリエの提案を頷いて受け入れた。
「…………わかった。ダンジョンへ向かう前に、外でユキナリ殿が呼ぼうとするナニカの召喚を実施しよう。ただし、万が一のことを考えて、ヴァルティ殿もだがペリエが同行する形とする。いいな?」
「わかりました」
大きすぎる不安はある。
それでもこの世界に召喚した責任があるのも事実。
それに、今は使える手は全て使うべきときなのも事実。
そう判断したゴルドーは自身とペリエが同行する形で、幸成が行うナニカの召喚を許可した。