赤冬で青春をもう一度   作:タンカー

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第12話 決戦!

 全員に作戦内容を伝え、地図で現在地を再確認すると、私は全員に対して声をかける。

「みんな、準備はいい?」

「うん……!」

「おう!」

「準備出来たよ〜!」

 全員から返事があったのを確認してから、私は号令をかけた。

「全速前進!」

 その直後、T-34のエンジンが唸り、履帯が地面を蹴って走り出す。

「作戦通り行くよ!ユウリ、榴弾!」

「は〜い!……んしょ、装填完了〜!」

 

 

 

「戦車が来たぞ!全員下がれ!」

 保安委員長は保安委員全員に対して戦車(T-34)に道を開けるよう指示を出した。保安委員たちは邪魔にならないよう資材を退け、開けた道をT-34が全速力で駆け抜けていく。道を抜け、やがてT-34は広場へと飛び込んだ。

 

 

 

 当然IV号戦車もT-34が広場に飛び込んできたのに気付いてこちらへ戦闘態勢を取る。

「レッドウィンターの戦車だ!仲間たちの分も仕返ししてやるぞ!徹甲弾込めろ!照準急げ!」

 改造IV号戦車は、その鈍重な動きで車体正面をT-34へ向け、砲を調整し始めた。

 

 

 

「……さぁ、一騎打ちだよ!リナ!照準!」

「ブレッブレだけど出来たぞ!」

「撃って!」

 閉鎖機が後退し、T-34から砲弾が放たれる。放たれた砲弾はIV号戦車には命中せず、IV号戦車の目の前の地面に命中し、炸裂した。爆発で黒煙が生じ、お互いの姿の視認性が一瞬だけ下がる。

 

 

 

「撃て!」

 

 

 

「右旋回!」

 その指示を聞いてすぐさまライカは速度を落とすことなく旋回挙動に入った。

 次の瞬間、IV号戦車から75mm砲弾が放たれる。榴弾の黒煙での視認性の低下と、直前の軌道変更で砲弾の狙いは逸れ、砲弾はT-34の車体側面に浅い角度で命中。そのまま砲弾は装甲の表面で滑り、装甲に薄らと凹みを作って弾かれた。T-34の車内には金属音が響くが、そんなことはお構い無しに指示を飛ばす。

「ユウリ、榴弾!リナ、私が指示したらしっかり当ててね!」

「おう!」

 ユウリは既に準備していた榴弾を素早く装填し、「装填完了〜!」と呼び掛けた。

「ライカ、とにかく加速!IV号戦車を回り込むように軽く左旋回しながら走って!私が指示したら急ブレーキと大きく左旋回!」

「うん……!」

 ライカはアクセルを目一杯踏んで加速しながら少しずつ左に曲がり、IV号戦車を回り込もうとする。

 

 

 

「回り込もうとしてるぞ!車体ごと回せ!」

 IV号戦車もそう易々と回り込ませない。その場でゆっくりと旋回し、近くに落ちていたドラム缶を踏み付け、ひしゃげさせる。ドラム缶には穴が開き、中に入ったディーゼル燃料が漏れ出した。そのままドクドクと流れ、燃料による水溜りを作っていく。

「そのまま狙っても当たらない!戦車の進行方向に偏差しろ!」

 その指示に従ってIV号戦車の砲手はT-34の進行方向へと照準をずらしていく。

「撃て!」

 

 

 

(1……2……3……4……)

 私はIV号戦車が砲塔を動かし始めてからの時間を数える。

(……5……)

 砲塔が、止まった。

「ライカ!」

「……!」

 ライカはすぐに左旋回の操向レバーを思いっ切り引いて、T-34を急旋回させ、ブレーキを踏みつける。

 T-34は全速力からの急旋回で履帯と路面から火花を散らしながら、一気に速度を落として向きを変えていく。

 次の瞬間、IV号戦車の主砲がまた火を噴いた。砲弾は急旋回をしなければそこにT-34が居たであろう場所の空気を貫き、その先の建物の壁へと着弾する。

 

 

 

「……なっ、避け……!?!?」

 IV号戦車の車長が驚きの声を漏らしている間に、T-34は完全に停止し、砲塔を旋回させ始めた。

 

 

 

「……リナ!」

「あぁ!分かってる!」

 リナは照準器を覗き込んで落ち着いて狙いを付ける。照準が合い次第、リナは引き金を引いた。

 砲弾が放たれる。榴弾は真っ直ぐに飛んで行き、IV号戦車の足元に着弾した(・・・・・・・)。

 それと同時に、炸裂。榴弾の爆発の熱と圧力は、IV号戦車の足元に水溜まりを作ったディーゼル燃料の着火点に達し、火を灯す。すぐにディーゼルに灯った炎は燃え広がり、IV号戦車の左前方、IV号戦車とT-34の間が火の海になった。

 

 

 

 ディーゼル燃料が燃え、炎と共に黒煙がもうもうと立ち上る。IV号戦車の車長席からT-34の姿が消えた。

「うわぁ!燃えてるぅ!?」

「落ち着け!このくらいで鉄の塊が燃えるわけないだろ!前進しろ!」

 IV号戦車は車長の指示に従い、ゆっくりと前進し、黒煙の中から這い出すと、そこにT-34の姿は無い。

「……!?どこに行った!?」

 

 

 

「ユウリ、徹甲弾!」

「は〜い!……装填完了〜!」

 その頃、T-34は黒煙の中を駆け抜けていた。私は地図を手に、ライカは私の言葉と方位磁石を頼りに目的地へと戦車を導いていく。

「ここで10時に旋回!もうすぐ見えるよ!」

 ライカが操向レバーを引いて車体の向きを変えて数秒後。視界が、晴れる。T-34は、黒煙を掻き分け、その中から姿を現した。

「停止!!リナ、9時方向!!」

「おう!」

 T-34はすぐに停止し、砲身をIV号戦車の砲塔後面へと向けていく。

 

 

 

「……っ!後ろだ!」

 IV号戦車の車長は真後ろにいるT-34に気付いてそう声を上げたが、もう遅い。

 

 

 

「撃てぇーーー!!!」

「……くらいやがれ」

 リナが引き金を握り込む。T-34の主砲が火を噴き、85mmの砲弾を撃ち出した。それは100mと離れない距離を一瞬で飛翔し、IV号戦車の形がそのままになっている改造戦車の砲塔後面に直撃する。

 徹甲弾はしっかりと砲塔後面の装甲を貫いて、車長の目の前の位置で信管を作動させた。

 爆発音と共にIV号戦車の車長ハッチが弾け飛び、黒煙を吐き出す。それ以降動かないのを確認して私は全員に伝えた。

「撃破!」

「……っしゃあーーーっ!!」

「やったぁ〜!」

 やっと緊張が解けて、大きく息を吐いた後、全員に声をかける。

「みんなお疲れ様。全員完璧な働きだったよ」

「ニコの作戦あってこそだろ」

 リナが私にそう返すと、ライカやユウリもコクコクと頷いた。

「ははっ、ありがと。でも、本当に誰か一人でも欠けてたらこんなことできなかったと思う」

 これは紛れもない本心だった。状況に合わせた素早い砲弾装填はユウリの腕力あってこそ、私の思った通りの場所に砲弾を送り込めるのはリナの射撃あってこそ、どんな時でも自在に戦車を走り回らせられるのはライカの操縦技術あってこそだ。

 全員で照れ臭そうに笑い合って、リナが私を本題に戻してくれる。

「……さて、作戦担当さんよ。保安委員に伝えなきゃいけないんじゃないのか?」

「そうだね。すぐ伝えよう」

 リナの提案に頷きながらそう言って、私は車長ハッチを開けた。

 私はハッチから身を乗り出して周りから様子を伺う保安委員たちの方を見据え、勝利を称えるように、右手を掲げる。

「「「「「……うおおおおおおーーーっ!!!!」」」」」

 それを見た保安委員たちから、弾けるように歓声が広がり、広場にこだました。




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