赤冬で青春をもう一度   作:タンカー

5 / 11
第5話 新しい仲間との出会い

 自動車部への入部が決まって、早速部室で小さな新人歓迎会が開かれた。といっても、部活での活動内容の確認や、教えるのを担当する先輩を割り振るためのものらしい。けど、ジュースを奢ってもらった。おいしい。

「割り振る、って言っても、まだ君たちを含めて4人しか入部届を受け取ってないんだけどね」

「そうなんですか?」

「うん。君たち結構早い方なんだよ。毎年、あと一週間くらいは後になるかな。1年生が入部届を出すの」

「そうだったんですね〜」

「まぁ早く入ったなら、その分是非とも業務に慣れて欲しいから、先に4人には自動車部の仕組みを説明するね。新入生はまず4人~5人の班に分かれるんだ。これが今後活動する仲間たちになる。班同士でサポートしながら業務を進めてくんだよ。乗り物の整備もこの班で行うし、戦車に乗り込むことになった時もこのメンバー。特に班の中で要望が出ない限り、卒業までこのメンバーだよ」

 業務をする上での仲間たちであり、戦車に乗る時のメンバー。しかも卒業まで一緒。とても大事な班だ。私は、なんとなく、隣にいる他の新入部員2人に視線を向けると、向こうもこちらを見ていたようで目が合った。1人は、もう1人の後ろへとそっと下がってしまう。

「そうだ、せっかく今の新入部員が全員集まってるんだし、お互い自己紹介しとこうか」

 というユイナ先輩の提案で、自己紹介が始まった。

「アタシは滝見リナ。こっちで隠れてるのが桑葉ライカだよ」

「あ、えっと……く、桑葉ライカ……です。よろしく、お願い、します」

「こいつ、ちょっと人前に出るのが苦手なもんで、この調子だけど大目に見てやってくれよ」

 そう言われて、さらにライカは申し訳なさそうにリナの後ろに下がってしまう。

「大丈夫。私は前宮ニコ。よろしく」

「丸田ユウリだよ〜。よろしくね〜、リナちゃん、ライカちゃん」

 ユウリは笑顔でそう言った。彼女は誰にでも朗らかに接する才能がある。

「とりあえず、その4人で班を組んでもらえるかな」

「分かりました」

「は〜い」

「了解!」

「わ、わかりましたぁ……」

 ユイナ先輩の言葉に、各々返事をした。ライカも、一応ちゃんと返事はできているし、見る限り気弱だけど、悪い子ではなさそうだった。

 それから、班になってからの業務の説明を受けて、班のメンバーに色々教える先輩が選ばれる。私たちは、顔なじみなこともあってか、部長であるユイナ先輩について回ることになった。

 まぁ、私とユウリもそうだが、リナとライカも今日入部したばかりだったらしいので、今日は親睦を深めるための自由行動、ということになった。

 新しい仲間を入れた私たち4人は、部室の隅のテーブルを囲んで、先輩から奢ってもらったジュースを飲みながら話していた。

「リナさんとライカさんって結構仲良さそうに見えるけど、知り合いなの?」

「リナで良い。あぁ、幼馴染なんだ。アタシもライカも山間部の豪雪地帯出身でさ。昔から、アタシと一緒に居るんだよ、こいつ」

 そう言われて、ライカの方を見ると、こちらに気付いて慌てふためいた後、小さく「はい……」と聞こえた。

「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ〜。リラックスしてこ!」

 とユウリがライカに声をかけている。それに対して「あっ、す、すみません……」と返ってくる。むしろあまり無理に声をかけても気を遣わせるだけだろう。

「ユウリ、そっとしといてあげなよ。ライカさんも、あんまり無理しなくていいからね」

「い、いえ……えっと、ありがとう、ございます」

「敬語じゃなくていいよ。これから一緒に部活する仲間だし、同級生なんだから」

「あ……う、うん。……わ、私も、呼び捨てで大丈夫で……あっ、大丈夫」

「うん。よろしくね、ライカ」

 そこにユウリがまた入り込んで来る。

「ねぇねぇ、リナちゃんとライカちゃんはどうして自動車部に入ろうと思ったの?」

 随分直球に聞くなぁ。と思っていると、リナが少し考える素振りをして、口を開いた。

「……まぁ、アタシはライカが心配でついてきたってのと……まぁ故郷では大砲の整備とかしてたんだ。豪雪地帯って大きな雪崩が起きると大変でさ、それを防ぐために、大砲を山に当てて、被害が出ないくらいの小さい雪崩を定期的に起こすんだ。その大砲の整備と使用が、アタシん家(ち)の役割なんだよ」

 ほらコレ、とリナは携帯を弄って写真を見せてくれる。そこに映っていたのは、前世でも見た事のある高射砲だった。高射砲の横にはリナが満面の笑みで写っている。今の時代でも、対雪崩砲として使われてるとは驚きだ。

「52-Kだ」

「知ってんのか?」

「あ、うん。本で見たことあるんだよね」

「へぇー……まぁ、それの整備で身に付けた道具の知識とか使えるかな、と思ってさ」

 そんなやり取りをして、ライカにも同じ話題を振ってみる。

「ライカは?」

「うぇっ!?……あ、あの……えっと。わ、私は……」

「うんうん」

「その……機械に触れるのが好きで……」

「そうなんだ」

「機械って嘘つかないし……」

「そう?結構嘘つく気がするけど」

 あれ、私、何言ってんだろ。けれど、そう思う頃にはつい口から出てしまっていた。

「部品の状態だったりで嘘つくことない?大切に整備してても壊れちゃうことだってあるよね。複雑な機械だと全部の部品に目が届かないから特に。世話が焼けることではあるけど……」

 私の返答を聞いた3人、特にライカが驚いたような顔でこっちを見ている。

「あ、あう……えっ……と。……」

 わなわなと震えたかと思ったら、ライカは突然立ち上がって走り出してしまった。

「あっ!?」

「あっ、あー……」

 リナは走り去るライカを見て、何かを察した顔をした。

「い、嫌だったのかな?ちょっと謝ってくる!」

 そう言って私もライカの走って行った方向へと走り出した。

「あれは追わなくても戻って……あー、行っちまった」

「ほえ?どうして〜?」

「あれは別に悲しいわけじゃなくてだな……」

 走り出した時にリナが何か言ったような気はしたが、私はそのまま追いかけた。

 

 

 

(あうぅ……ついやっちゃった……)

 ライカは、部室の奥にある資材倉庫に駆け込み、その出入口の横でしゃがみ込んだ。

「あんな返しが来るなんて久しぶりだったな……」

 私がライカを追いかけて倉庫に入ったのは、ライカがぼそりと呟いた直後だった。

「ひぇぁあ!?!?」

「あぁ、いたいた……」

 ニコはライカの前で立ち止まってしゃがみ込み、ライカと目線を合わせる。

「あ、あの……」

「ごめんね。逃げ出しちゃうくらい嫌だとは思わなくて……」

「あ、ああああの、その、嫌じゃなくて……」

「え?」

 ライカは慌てて視線を右往左往させながらも、「嫌じゃない」と言った。

「じゃあ、なんで……」

「あの……その……嬉しくて」

「へっ?」

 逃げ出したのに嬉しかった?思いもよらない返しに素っ頓狂な声を出してしまった。

「本当に機械をよく知ってる人じゃないと来ない返事だったから、その……本当に嬉しくて、けど嬉しい時どうしたらいいか分かんなくなっちゃってつい逃げ出しちゃう癖が……」

「……はぁ〜」

 私がため息をつくと、ライカがびくりと反応する。

「!?……あ、あの……ごめんなさい」

「……良かった……」

「あぇ……?」

「嫌なこと言っちゃったかなと思って不安だったから、安心したよ……」

 私はそう言って胸を撫で下ろした。

「逃げ出さなくてもいいのに。嬉しいなら笑えばいいんだよ。まぁなかなか癖だと難しいかもだけどさ。ほんと、ビックリしちゃった」

「ご、ごめんなさい……」

「いいよ。ほら、みんなの所に戻ろ?」

 私はそう言ってライカに微笑みかけて立ち上がり、手を差し出すと、ライカも眉を八の字にして弱々しくにへらと笑い、私の手を取った。

「うん……!」

 

 

 

 それから、私とライカはみんなの所に戻ってまた会話に興じる。故郷で何をしてたのかだとか、趣味は何かだとか、そんな話をした。ライカは故郷ではトラクターを使って資材運びなどをしてたらしい。趣味も機械いじりやトラクターの中でのんびりすること。家のことに関しては話そうとしなかったけれど、私やユウリも無理に聞こうとはしなかった。

 リナはイメージに違わずスキーやキャンプが趣味で、それに関連する情報にとても詳しかった。リナはライカが唯一心を許している相手なのだそうで、ライカとはよく遊ぶんだとか。私やユウリも少しは信用してくれているのか、ライカの表情も、少し前よりかは柔らかいものになっていた。

 ユウリの趣味は紅茶と甘い物を食べることらしい。……ってことはこの前夕食のプリンを譲ったの、ユウリにとっては私が思ってるよりも凄く大きなプレゼントだったのでは……?そう考えると確かにプリンをくれた時、凄く意を決した表情してた気がするなぁ。

「……あっ!ねぇねぇみんな〜」

 何か思い出したかのように声を上げれば、ユウリは携帯電話を取り出した。

「は、はい」

「あん?なんだ?」

「どうしたの?」

「モモトークの連絡先交換しようよ〜」

 MomoTalk(モモトーク)。学生の間で主にメールや通話の手段として使われる携帯アプリ。私も一応入れているけれど、家族と数少ない中学時代の友達くらいしか連絡先を交換していない。

「確かに今後は連絡取り合うことも多いだろうしね。もちろんいいよ」

「アタシもいいぞ!」

「あ、えと、ぜ、是非……」

「やった〜」

 そうして私の知る連絡先が3人増えた。後日ユイナ先輩とも連絡先交換するのはまた別の話。

 交換を済ませて、少ししたら、私たちはユイナ先輩に呼び出されて、トラックの運転を教えて貰う。私は前世の記憶があったのでマニュアルのトラックも無事に走らせることが出来た。ライカは最初おどおどしていたものの、ハンドルを握って深呼吸すれば教えられるまでもなくトラックを走らせ、バックや縦列駐車すらも完璧だったためユイナ先輩も感心していた。リナは少し苦戦していたけれど、ライカに教えてもらったのと持ち前の運動神経で何とかパス。ユウリは……クラッチ操作が苦手なようで、どうにか動かせるようになったところでOKを出されていた。

 今日の部活はこれで終わり、と部長に言われ、私たち4人は先に寮へと帰らせてもらった。

 

 

 

「……ん」

 ピロン、とモモトークの通知が鳴る。いつの間にかユウリが「自動車部の班のみんな」というグループを立ち上げて、何かの写真を投稿していた。その写真を皮切りにリナやライカも交えて雑談が盛り上がっている。仲間たちが楽しく話しているのを見て、私は微笑み、その雑談に混ざるべく発言した。

 新しい仲間と出会って、他愛ない会話で盛り上がるうち、夜もどんどん更けていくのだった。




評価、感想等いただけますと大変励みになります。よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。