いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話   作:シン_クワちゃん

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第二話 「少しずつ、分かってくる」

二年生になって二週間ほど経って、新しいクラスにもだいぶ慣れてきたと思う。誰が真面目で、誰がうるさくて、誰がどの授業中に寝るのか。そういうことも少しずつ分かってくる。

僕の場合、クラスには去年から知っている奴も多かったから、話す男子はそれなりにいたけど、去年はあまり話したことのなかった女子とも、なぜか話す機会が増えた。

 

「内田君、これ分かるかしら?」昼休み、早田が僕の机の横に立っていた。

「何?」

「さっきの数学の計算式なんだけど」ノートを見せられる。なんか、すごくきれいな字だ。

「この問題なのだけど、なんか内田君ノートにちゃんと書きとっていたから」

「う~ん、僕も分からない。黒板の式を書き写しただけなんだ」

「……そう」

「ごめん」

「いえ、もしかしたらってくらいで期待してなかったから」

「それはそれで傷つくな」

早田は小さく笑った。

 

早田沙織。成績優秀で先生からの信頼も厚い。男子からの人気も高くて、よく話に出てくるのを耳にする。でも本人は、そういうことにあまり興味がないらしい。というのは東田が言ってた。

それにたぶん、僕が男子の中でどれくらい普通なのかにも興味がない。そのあたりを意識していない早田は、楽に話せるから僕としても非常に助かる。

「やっほ!ウッチー、サオリンと何話しているの?」東田がやってきた。

「ウッチーって僕のこと?まぁいいや。早田さんに数学教えてる」

「え?ウッチーがサオリンに教えてるの?うっそぉ~」

「ほんとほんと」

「でも、わからないって言われたわ」

「教えられてないじゃん」

「まぁそうだな」

 

東田奈央は、とにかくよくしゃべる。誰とでも明るく話すし、よく笑う。クラスの男子達にも普通に話しかける。「東田かわいいよな。デカいし」という男子の声もよく聞く。デカい?、うんまぁそうだな。

そういえば、石田と話す時だけ、なぜか声が小さくなる気がする。

 

ちょうど、石田が教室に入ってきた。

「お、石田」

「おう」

 

石田が手を挙げる。

その横で、東田が一瞬だけ石田を見る。そのあと、すぐに目線をそらして顔も赤い。

僕は気づいた。たぶん、東田は石田のことが好きなんじゃないかと思う。本人にわざわざ聞くほどのことでもないけど、ちょっといたずら心で声をかけた。

「東田」

「なに?」

「いや、なんでもない」

「え~なによ」

「なんでもないって」

「なんか怪しい」東田は僕を睨んだ。

僕には普通に返してくるのに石田にはあの反応なのか。

 

その日の三時間目は国語だった。

子安先生の授業は、静かだけど退屈ではない。説明も分かりやすい。僕は普通に授業を聞いていた。

「先生」悠木が手を挙げた

「はい、悠木さん」

「この部分なんですけど、作者は身の回りのわずかな変化に動揺したという意味を込めていると考えていいんでしょうか」

うわ~そんなことまで考えているんだと、ちょっと感心。

子安先生も少し考えてから答える。

「面白いところに気がつきましたね」

「ありがとうございます」悠木の目が少し輝いた。ものすごく嬉しそうだ。

授業が終わったあとも、悠木は速攻で先生のところへ行って質問していた。

「先生、先ほどのところなんですが……」

先生も嫌な顔一つせず答えている。悠木は真剣に聞いている。

僕は教室の後ろからそれを見ていた。

きっと、あれは国語が好きなんだろう。うん、たぶん。

 

「内田っち」種村が机の横にいた。

「内田っちって僕?んで何?」

「まぁまぁいいじゃん。それでさ、いま悠木さんのこと見てたよね?」

「悠木さんというか、悠木さんと子安先生を見てた」

「気になるの?彼女のこと?」種村がニヤリとする。

「じゃなくて、悠木さんって国語が好きなんだなぁって感心してた」

「いやあれは国語じゃなくて、先生のことが好きだよね」

「悠木さんそうなの?」

「うん、結構自信ある」

「先生の授業が好きなんじゃない?」

「それもあると思う」

「じゃあ、好きってことでいいんじゃない?」

「いや、そういう意味じゃないから」

「じゃあどういう意味さ、種村」

「内田っち、鈍いね」

「だから内田っちってなんだよ。悪かったな鈍くて」

種村敦美。こいつはとにかく人をよく見ている。確か卓球部で髪が短いのもあってか、どことなくさばさばしてるし気さくに話してくる。そして、人のちょっとした変化にもよくに気づくし、それをネタに僕のことをちょいちょいいじってくる。

「種村は何でも分かるんだな」

「いやいや、そうでもないよ」

「じゃあ、僕が今何考えてるか分かる?」

「ん~購買の焼きそばパン食べたい」

「……正解」

「分かりやすっ」種村は笑った。

 

その日の最後六時間目。音楽の授業があった。

二年生は美術と別れて二クラス合同だった。

「今日は男女二人組でハーモニーを歌ってもらうから、男女でペアをつくって」先生がそう言った。

え~男女ペア?と騒がしくなったけど、そのうちぼちぼち決まりだした。

僕はどうしよう。たまに話す種村も東田も早田も美術組でここにはいない。

「あの……」

声をかけられたので振り返ると、知っている女子がいた。

コロッケパンの子。

「君はこの前の……」

「コロッケパン」

「そう、それ」

「長谷部さんだっけ?」

「え、私のこと知ってるの?内田君だよね」

「そうだけど、長谷部さんも僕のこと知ってるの?」

「うん、またコロッケパンを取り合った時に今度は譲りたいから、名前調べたの」

「あはは、なにそれ。んでなに?」

「一緒に歌わない?」

「え、僕と?」

「うん、二組は男子が少なくて、女子が一人余ってる感じだから」

「でも僕、歌うまくないよ?」

「平気だから、お・ね・が・い」

僕も女子を誘うのに戸惑っていたから無言でうなずいた。これが女子の必殺兵器上目遣いってやつか。

 

先生が楽譜を配る。歌う曲は誰でも知っているような曲だった。

「長谷部さんって、歌うまいの?」

「普通だよ」

「そうか、じゃあ普通同士ってことでよろしく」

 

僕たちの順番が来て曲が始まった。僕は普通に歌い始めた。

長谷部さんのパートに差し掛かると……普通じゃなかった。

声がよく通る。音程も安定している。声量もある。しかも歌っているときの表情が普段と全然違う。ハーモニーの所に来た時に長谷部さんがこちらを見る。

とても素敵な笑顔で、僕をリードしてくれる。とても合わせやすかった。

 

みんなから拍手をもらって、照れながら席に戻ると、空いていた隣に長谷部さんが座った。

「歌、めちゃくちゃうまいね」

「そうかな?ありがとう」

「うん、さすがコロッケパン効果」

「なにそれ」

長谷部の笑顔はかわいいなって思った。

 

授業が終わる。音楽室を出ようとしたときにまた声をかけられた。

「内田君」

「ん?」

「この前、コロッケパン譲ってくれたの、本当にありがとうね」

「別にいいよ」

「私、あれ好きなんだ」

「そうなんだ」

「うん」

それだけ話して、長谷部さんは自分のクラスへ戻っていった。

 

僕も教室に戻ろうと歩いていると美術組が前を歩いていた。東田がいた。石田と並んで歩いている。石田が何か言うと東田は照れたように目を逸らした。

向こうから子安先生が歩いてきた。悠木が「子安先生!質問が!」と呼び掛けて近づいていく。

 

教室に戻ると、種村は窓際で部活に行く準備をしている。早田さんはささっと本を出して読み始めた。小森はキョロキョロと教室を眺めている。最近はよく笑うようになった気がする。

一年の時はどちらかというと、陰キャ……いやいやこれは失礼だな。ごめん小森。

 

二年生になって、まだ一ヶ月も経っていない。でも、少しずつ分かってきた。

種村は、人のことをよく見ているし、距離感バグってる。

東田は、明るいけど、たぶん僕が思っていたよりちょっと不器用だ。

早田は、思っていたより普通の女子だ。

悠木は、頭がいい。そして先生が好きだ。先生の前だと表情が変わる。

小森は、少しずつみんなの中に入っていこうと頑張っているみたいだ。

 

そして、長谷部さん。隣のクラスで、歌が上手い。

……あと、コロッケパンが好き。

 

まあ、そんな風に気が付いたことが少しずつ増えていく。二年生の四月は、そうやって過ぎていった。

 

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