いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話 作:シン_クワちゃん
体育祭明けの火曜日の昼休み。あ、月曜の代休日は筋肉痛で一日寝てました。
今日は席で弁当を食べていると、種村と東田がやってきた。
「ねえ、ウッチー」
「ん?」
「おとといさ」
「おととい?体育祭だったね」
「体育倉庫で……」種村の笑顔に嫌な予感がした。
「見たよ」
「え……見てたの?どこから?」
「最初から」
「最初?」
「うん。隣のクラスの女子、確か長谷部さん?が内田っちに告白するところ」
「……」
「いやー、青春だなぁ、いいなぁ」
「やめてよ」
「で、どうなの?」
「どうって?」
「付き合ってみて」
「まだよく分からないよ、昨日のことだし」
「ふーん。で、あれは長谷部さんでいいんだよね?」
「はいそうです、長谷部さんです」
「長谷部さん嬉しそうだったねぇ」二人はニヤニヤしながら僕の顔を見る。
「そうかな?」
「うんうん。ウッチーも嬉しそうだったよね」
「僕も?」
「そう」
「そうかな」
「そうだよ」
「……私も、あんなふうにできたらな」東田はぽつりと呟いた。
「え?」
「なんでもない!」東田は慌てて手を振った。
「なんでもないから!」
「そう?」
「そう!」
よく分からなかったけど、いつもの東田とは少し違う気がした。
「でも、よかったじゃん、ウッチー」
「何が?」
「彼女できて」
「彼女って言われると、なんかまだ変な感じがする」
「なんでさ?」と種村。
「まだ付き合い始めたばかりだし」
「ふーん」東田は少しだけ考えるような顔をした。
「で、デートの約束とかしたの?」
「まだしてない」
「えー!」二人は声を上げた。
「付き合ったのに?」
「いや、そんなすぐするものなの?」
「するよ~?初デートの約束はいつかなって、わたしだったらドキドキかも」と東田。
「そんなこと言われても、付き合ったことがないから知らないよ」
前の席の悠木が本から顔を上げこちらに振り向いた。
「内田君、恋愛に関しても本当に頼りないわね。今まで誰とも付き合ったことなかったんでしょ」
「そうだけど」
「じゃあ、長谷部さんに聞けばいいじゃないの」と悠木。
「何を?」
「デートしたいかどうか」
「……」
それはそうなんだけど。なんとなく自分から聞くのは恥ずかしかった。
今日は長谷部さんと一緒に帰る約束をしてる。昇降口で靴を履き替えていると、長谷部さんがやってきた。
「内田君」
「あ、長谷部さん」
「ねぇ、今度の日曜日って暇かな?」
「日曜日?」
「うん」
「特に予定ないけど」
「じゃあ……どこか行かない?」
「どこか?」
「うん。せっかくお付き合い始めたし」
「ああ」僕は少し考えた。
「じゃあ、行こうか」
「ほんと?」
「うん」
長谷部さんが嬉しそうに笑った。彼女は待たないで自分から行くタイプだと理解しました。
日曜日。僕たちは駅で待ち合わせをした。
「お待たせ」
「いや、僕も今来たところ」
長谷部さんは当然私服。制服姿しか見ていなかったので、なんとなく新鮮だった。
「どう?」くるっと一回りする長谷部さん。
「何が?」
「服」
「似合ってる。かわいい」
「……そういうの、さらっと言うんだね」
「え?」
「なんでもない。内田君もおしゃれだね」そう言って長谷部さんは笑った。
僕たちは電車に乗って急行が止まる××駅にあるアオンモールへ向かった。
フードコートでお昼を食べて、アオンシネマで映画を観て、あと服屋とか適当に店を回った。
特別なことをしたわけじゃない。でも、楽しかった。
カフェに入ってコーヒーを飲みながら二人で話す。うん、デートっぽい。
「映画、面白かったね」
「私はちょっと最後が意外だった」
「僕は途中でなんとなく展開が分かったかな」
「え、本当?」
「うん」
「途中で言わないでくれてありがとう」
二人で笑った。
そのあとも、どうでもいい話をした。
学校のこと。それぞれのクラスのこと。先生のこと。体育祭のこと。話していると、時間があっという間に過ぎていった。
駅へ戻る途中。長谷部さんは少し黙って歩いていた。
「どうしたの?」
「ううん」
少しして、長谷部さんが言った。
「今日、楽しかったね」
「うん。僕も楽しかった」
「また、どこか行こうね」
「そうだね」
駅に着く。改札の前で、長谷部さんが立ち止まった。
「……内田君」
「ん?」
「手を繋いでもいい?ほら、なんか人が多いし……」
「……」
少し考えてから答える。
「いいよ……育美」
「あ」
長谷部さんが目を丸くした。
「……今、名前で呼んだ?」
「うん」
「……」
長谷部さんの顔が赤い。
「嬉しい」
それから、そっと手を繋いだ。駅の中をホームに向かう。手を繋いで歩くのは、なんとなく落ち着かない。
家に帰ってからも、ベッドに寝ころび、その日のことを思い出した。
昼飯のこと。映画のこと。くだらない話。そして、手を繋いだこと。
今日は楽しかった。そう思った。
でも、した事が楽しかっただけじゃない。長谷部さんと一緒だったことが楽しかった。
また会いたい。また話したい。そんなことを考えている自分に気づいた。
「これが……好きってことなのかな」
まだ、よく分からない。でも、少しだけ分かった気がした。
俺は石田界人っていう高校二年生。バスケ部所属。
ちなみに、気が合う友達は意外と少ない。部活仲間を除けば一年から同じクラスの内田位だ。
だからというわけでもないが、放課後は部活の練習に集中してる。
今日も体育館では、バスケ部と卓球部が練習していた。
体育館をネットで仕切っているので、向こうの様子はすぐわかる。
卓球部には、同じクラスの種村がいる。彼女は最近友達の女子達と内田によく絡んでいるのを見かける。まぁちょっとうらやましい。しかも、あいつ最近隣のクラスの長谷部さんと付き合い始めたらしい。なぜ、あいつばかりがモテるのかは謎だ。
スリーポイントシュートが決まった時、卓球台の向こうから種村が声をかけてきた。
「石田!」
「何?」
「今のシュート、いいじゃん」
「見てたの?」
「うん。結構きれいだった」
「そう?」
「前より上手くなったじゃん」そう言って種村は笑った。
「そうだろ?ありがとう」
種村は結構サバサバしてて、よく俺に声をかけてくる。
小柄で表情がクルクル変わるし、ショートカットが似合って、よく見ると結構かわいいかも。
コートから出て、汗を拭きながら気がつくと卓球台のほうを見ていた。
種村がラケットを振っている。スマッシュが決まると、仲間と笑っている。
明るくて、よく笑って、負けず嫌い。
失敗すると、
「もう一回!」と悔しそうにしている。それがいつもの種村だ。
練習が終わり、体育館横の部室からを出ると、ちょうど種村も隣の部室から出てきた。
「あ、石田」
「種村も今終わり?」
「うん」
「駅まで?」
「そう」
「じゃあ一緒に帰るか?」
「いいよ」
二人で歩き出した。
学校を出てしばらくすると、種村がコンビニを指差した。
「ねえ、アイス食べない?」
「今?」
「部活終わりだから食べるんじゃん」
「まあ、そうか」
コンビニでアイスを買った。店の外で、二人で食べる。
「石田、何それ?」
「チョコミント」
「意外」
「何が?」
「もっと普通の食べそう」
「普通って何だよ」
「バニラとか」
「じゃあ種村は?」
「私はこれ」種村がアイスを見せる。ストロベリー味らしいピンク色。
「それ、ストロベリー?」
「そう。しかも練乳入り!」種村がVサインで笑ってる。
そんなどうでもいい話をしながらアイスを食べ終わって、駅へ向かう。
「じゃあ、また明日」
「うん。また明日」
ホームに上る階段で俺たちは別れた。
帰宅してからも、なぜか種村のことが頭に浮かんだ。
今日のこと。体育館で笑っていたこと。コンビニでアイスを食べていたこと。
「……なんだこれ」
自分でもよく分からない。ただ、もう一度あんな時間が欲しいと思った。
翌日の昼休み。いつものように五人で話していると、
「アツミン、昨日部活終わった後、石田君と帰ったの?」東田が聞いた。
「うん。なんで知ってるん?」
「私も委員会で昨日遅くて、窓から帰るのがみえたから……二人で?」
「まぁそだね」
「……そっか」
「途中でコンビニ寄ってアイス食べた」
「アイス?」
「そう。石田がチョコミント食べてた」
「へえ……」東田の表情が少し曇った。
「なんか、二人とも仲いいね」
「そう?」
「うん」
「普通に部活体育館で一緒だし、同じクラスじゃん」
「……普通に」東田は小さく呟いた。
奈央の表情が変わった気がした。そんな奈央の顔を沙織は見ていた。
こころは、二人の顔を交互に見ていた。やよいは何も言わずに本をめくっている。
今日も僕は長谷部さん……いや育美と一緒に帰るつもり。
支度をして、準備が出来たことを育美にメッセージしていると石田が声をかけてきた。
「内田」
「ん?」
「ちょっと相談がある」
「何?」
「俺さ……」
石田は周りを見て顔を寄せて小声で話し始めた。
「種村のことが、気になるんだよ」
「種村?」
「そう」
「……好きなんじゃない?」
「なんだよその投げやりなのは」
「いや、突然言われたし」
「そうだけど、やっぱ俺好きなのかな?」
「僕にはわからないけど、少なくとも好きになろうとしているんじゃない?」
「俺もよく分からないんだよ。だから経験者に聞こうかなと思ってさ」
「僕も最初は分からなかったよ」
「内田も?」
「うん」
僕はこの前のことを思い出した。
「長谷部さんと付き合い始めたとき、実は好きなのかどうか、よく分からなかった」
「へぇ~」
「でも、この前一緒に出かけてさ」
「デートか?」
「まあ、そう」
「どうだった?」
「楽しかった」
「そんだけ?」
「それだけじゃない」僕は少し考えた。
「帰ってからも、その日のことを思い出してた」
「……」
「また会いたいって思ったし、また話したいって思った」
「と言うと?」
「だから石田も、種村さんと一緒にいて楽しいとか、別れてからも種村さんのこと考えてるなら……」
僕は石田を見る。
「好きなんじゃない?」
「……そっか」石田は少し笑った。
「なんか、分かった気がする」
「ならよかった」
「内田って、意外と恋愛相談もできるんだな」
「僕も最近始めたばかりなんだけど」
二人で笑った。
その少し離れたところに東田がいた。全部聞こえてはいないだろうけど種村と名前をはっきり言ってたな。
胸の奥が、少しだけざわつく。確か東田は石田のことを……
東田は背中をこちらに向けたまま動かない。あんな話を教室でするんじゃなかったな。
そして翌日の放課後。
「石田」種村が石田に声をかけてた。
「ん?」
「明日さ、部活終わったらアイス食べに行かない?」
「いいよ」
「やった」種村は笑っていつものVサイン。
そんなやり取りを聞きながら、僕は東田の様子を確かめようとしたけど、彼女はもう教室にいなかった。