いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話 作:シン_クワちゃん
今日の晩御飯は大好物のハンバーグをママが作ってくれたのに、ろくに喉を通らなかった。
「奈央ちゃん食べないの?」
「姉ちゃんまたダイエットはじめたのかよ」
弟に「違うよ!あんたうるさい!」と怒鳴ってしまった、まだまだ子供の東田奈央一六歳です。
最近、アツミンと石田君がよく一緒にいる気がする。
部活が終わる時間が大体同じだから一緒に帰ることがあって、この前は二人でコンビニに寄ってアイスを食べたらしい。
それに、今日の放課後に石田君とウッチーが話している時に「種村さん」って聞こえた。どんなことを話しているかまではわからなかったけど。パズルのピースがバラバラに増えているような感じがする。
「……私、なんで何も出来ないのかな」
自分から石田君に話しかければいい。私が委員会で遅くなる時とか一緒に帰ろうって誘えばいい。そんなことは分かっている。でも、できない。
何を話せばいいのか分からない。急に話しかけたら、変に思われるかもしれない。
そんなことを考えているうちに、いつもタイミングを逃してしまう。
きっとアツミンは、そんなことを考えずに石田君と話して、楽しそうに笑っている。
「……いいな」
思わず口に出た。そしてすぐに、自分が嫌になった。
アツミンは何も悪くない。私が勝手に好きになって、何もできずに勝手に悩んでいるだけ。
それなのに、アツミンを羨ましいと思ってしまう。
「私って、ほんとダメだな……」
落ち込みながら突っ伏していたら、いつの間にか寝ていて目が覚めたら朝だった。
朝、教室にいつものみんなが揃ったところでサオリンが言った。
「期末テストも近いし、またみんなで勉強しない?」
「いいね。内田っちも来る?」アツミンがすぐに乗った。
「うん、行くよ」
「あ、私も」とやよっちとココロン。
「奈央もくるでしょ?」
「え……あ、うん。もちろんやるやる。サオリンまたよろしくね」
「じゃあ決まりね」
いつもの五人とウッチーで勉強会をすることになった。
勉強会の日。図書室に集まってしばらくすると、ウッチーが遅れてやってきた。
「ごめん、遅れた」
「遅いよ、ウッチー」
「ごめんごめん。でね、実は紹介したい人がいるんだ」
内田君の後ろから、長谷部さんが顔を出した。
「こんにちは」
一瞬、全員が黙った。
「……誰?」やよっちが聞く。
「隣りのクラスの長谷部さん」
「で?」
「僕の……彼女」
「えーっ!」やよっちとサオリンとココロンが珍しく声を上げた。
「体育祭で告白されてたもんね」とニヤつくアツミン。
「だから、覗いてたのは忘れてよ」ウッチーが困った顔をする。
「無理」アツミンが即答してみんなが笑った。
「私も勉強会、一緒に混ざってもいいかな?」と長谷部さん。
「もちろんよ。わからないところは気軽に聞いてね」
サオリンが言い、私は「二人はここね」と二つ席を開けた。
ウッチーは長谷部さんとうまくいっているんだなぁってうらやましいと思いながら勉強会二日目。図書室に集まって始めようかと思った時に、石田君が図書室にやってきた。
(え?石田君がなんで?)と思わず口に出そうになった時に
「石田、どうしたの?」とウッチーが聞く。
「俺も勉強しないとヤバい。勉強会に混ぜてくれ」
「やっぱりそうか」
「悪かったな、よろしくたのむ」
石田君はそう言って空いていたアツミンの隣の席に座った。
勉強を始めてしばらくすると、アツミンと石田君が話し始めた。
「これ全然分からん」
「そこ昨日やったじゃん」
「マジ?」
「マジ」
「種村様どうか教えてくださいませ」
「しょうがないなあ」
二人で楽しそうに笑っている。
私はノートを見ているふりをした。でも、文字が頭に入ってこない。
まただ。また二人で話してる。
「……」
いたたまれないってこういう気持ちなんだと思った。
「ごめん。ちょっと外行ってくる」
「奈央さん?」ココロンの声が聞こえたけど、私はそのまま図書室を出た。
中庭のベンチに座っていると、「奈央」と声がした。やよっちだった。
「……何?」
「どうしたの?」
「なんでもない」
「そう」
やよっちは、それ以上聞かずに隣に座った。
「……ありがとう」
「別に」
「今日はこのまま帰ろうか」とやよっちが言ってくれて、そのまま二人で帰ることにした。
次の日からの勉強会は、石田君はウッチーと長谷部さんに挟まれて座っていて、わからないところはウッチーに聞いていた。
アツミンはココロンややよっちと話していて、石田君と話すことはなかった。
期末テストは何とか赤点を免れて部活を再開。ようやく解放された気分。
俺は試験でたるんだ身体を元に戻すためにいつもより少しハードに体育館を駆け回っていた。
ちょっと休憩。タオルで汗をぬぐいながらふとネットの向こうに目をやると、いつもより人が多い。どうやら卓球部が他校を招いての練習試合をやるみたいだ。
見渡すと、いつものジャージではなくユニフォーム姿の種村がいるのが見えた。
「あいつ、試合があるのか」
気になって、ちらちらと横目で見ながら練習してたら、後ろからボールが頭に当たったけどまぁ大丈夫。
種村が卓球台に出来てくるのが見えた。
「お、あいつ試合だ。頑張れ」
ちょうど休憩中だったので、壁に寄りかかって試合を眺めた。
得点板を見ると一進一退を繰り返していたが、あと少しというところで種村は負けた。
「ありがとうございました!」
種村は普通に挨拶をした。仲間とも普通に話している感じがした。
バスケ部の練習が終わり、卓球部も他校の選手は帰っていったようだった。
いつもの片付けのために体育館の裏の倉庫に行くと、そこに種村がいた。
「種村?」
「……石田?」
「こんなとこで何してんの?」
「別に」
「え、泣いてる?」
「泣いてない」
「いや、泣いてるだろ」
「泣いてないって!」 種村が顔を背けた。
「……」
「今日の試合ね」
「うん」
「初めて選手として出たの」
「そうか」
「私、勝ちたかった」小さな声だった。
「うん」
「みんなの前では平気だったけど……」種村の声が震えた。
「やっぱり悔しい……」涙がこぼれた。
俺は何を言えばいいのか分からなかった。
「……大丈夫、次勝てばいいじゃん」
「簡単に言わないでよ!」
「ごめん」
「……」しばらく、何も言えなかった。
「俺、種村がこういう顔するの、初めて見た」
「……見るな」
「見ちゃったんだから仕方ないだろ」
「……最悪」
「じゃあ……」回れ右でその場から消えようとしたら、軽く引っ張られる。
種村が俺のジャージの端をつまんでいた。
「石田……ちょっとだけ、ここにいて」
「……おう、わかった」
俺はその場にいた。
種村は顔を伏せたまま、しばらく泣いていた。俺は何もできずに、ただそばにいた。
一人の帰り道。俺はずっと、種村のことを考えていた。泣いていた顔。ユニフォームをつかんだ手。
「……」
種村のことが頭から離れない。
部活の後、一緒に帰るのが楽しい。話していると楽しい。笑っている顔を見ると、こっちまで楽しくなる。
でも今日は、泣いているところを見た。放っておけなかった。
俺に何かできることがないか必死に考えたけど、何も浮かばなくて悔しいと思ったし、もう大丈夫って言われるまで一緒にいたいと思った。
「だから、種村さんと一緒にいて楽しいとか、別れてからも種村さんのこと考えてるなら」
いつかの内田の言葉が頭に浮かんだ。
「……俺、種村のこと好きなんだ」
口に出してみると、不思議なくらい納得できた。
次の日。俺は昼休みで教室を出て行こうとする内田を呼び止めた。
「内田」
「ん?」
「ちょっと話がある」
「何?」
教室から離れ、人の少ない踊り場に行く。
「俺、種村に告白しようと思う」
「へ?」内田は驚いた顔をした。
「本当に?」
「ああ、マジだ」
「そっか」内田は少し黙った。何か考えているようだった。
「……どうした?」
「いや何でもない」内田は首を振った。
そう言ったけど何かありそうな様子。でも、俺はそれ以上聞かなかった。
「それで、どうやって告白するつもりなんだい?」
「今日部活が終わったら一緒に帰って、どこか場所を探すよ」
「そっか。あ、でも体育倉庫はやめとけよ。覗かれるから」
内田が笑いながら、俺の胸を叩いた。
放課後部活を終えた後、速攻で着替えて昇降口で種村を待っていると、鼻歌交じりで種村がやってきた。
「種村」
「石田?どうしたの?」
「おう、一緒帰ろうぜ。で、コンビニでアイス」
「お、いいねぇ乗った!」
コンビニでアイスを買ってから、二人でガードレールにもたれて食べ始めた。
「種村、俺、種村に話があるんだ」
「ん?な~に?」
俺は一度だけ息を吐いてから種村の目を見た。
「俺、種村のことが好きだ」
「……え?」
大きく目を見開いた種村の顔をとてもかわいく思えた。