いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話 作:シン_クワちゃん
夏休みが始まって、しばらく経った。アタシは週に三回は部活で学校に行っているから、休みと言う感覚があまりないかも。宿題?うーん、きっとなんとかなる。そんなノ~天気な種村敦美一六歳、いや来月で一七歳です。
なんて、誰に向けたのかわからない自己紹介をしていたら、グループに着信通知が来た。
(奈央)ねえ、プールいつ行く?
(沙織)プール?そんな話があったわね
(奈央)うん。せっかくの夏休みなんだし、みんなで行こうよ
(沙織)塾の予定を見たら来週の水曜なら行けそうよ
(やよい)私はいいけど
(こころ)私も大丈夫です!
(敦美)その日は部活休みだしアタシもいいよ
(奈央)じゃあ決まりね!
(沙織)OKスタンプ
(敦美)内田っちと長谷部さんは誘う?
(内田)さすがにプールは女子だけ行ってください
(やよい)そうね。内田君たちとは別に遊べばいいし
(奈央)じゃあ、女子五人で決定!
(敦美)あ、アタシ、水着持ってないんだけど
(奈央)え?マジ?
(やよい)去年のは?
(敦美)去年は買ってない
(敦美)部活で忙しかったから
(沙織)じゃあ、買いに行きましょうか、今からでも
(こころ)え、今からですか?
(奈央)今から!行こう!
(奈央)(レッツゴーのスタンプ)
(内田)行ってらっしゃいませ
急遽アタシたちは水着を買いに行くことになって駅前のショッピングモールに集まった。
「私も新しいの買おうかな」奈央がそう言った。
「奈央は去年のがあるんじゃないの?」
「あるけど……」奈央が少しだけ言葉を濁す。
「きつい……じゃなくて新しいの欲しい!」
「なるほど」
「何よ、その顔」
「別に?」
「絶対なんか思ったでしょ」
「思ってないって」
そんなやり取りをしながらお店に入る。
「うわぁ……いっぱいある」こころが目を輝かせている。
「こころは去年はどんな水着だったの?」
「私、スクール水着しか持ってないんです」
「……本当に?」
「はい!」なぜか胸を張って答えるこころ。
「じゃあ、小森さんも買わないとだわね」
「そうですね!」元気な返事に沙織が苦笑する。
「私は、あまり派手なのは嫌だけど……」
「サオリンはこういうの似合いそう」奈央がいくつか手に取って見せる。
「ちょっと、奈央。ダメだよこんなに布の面積が少ないのを勧めちゃ」
「へっへっへ、だってかわいいじゃん」
「アタシはこれにしようかな」アタシが手に取った水着を見せると、奈央が頷いた。
「いいじゃん。アツミンっぽい」
「でしょ?」
「で、奈央はどうするの?」
「私は……」奈央が棚を見ながら、しばらく考えている。
「これにしようかな」
「へえ」やっぱり、アタシのとは大きさが違う。
「何?」
「いや、いいんじゃない?」
「だから、その顔やめてって」
「してないって」
みんなで水着を選んで、試着して、また悩んで。
結局、予定よりかなり時間がかかった。
「……結構疲れたね」やよいはなんかげんなりしてる。
「でも楽しかったですね!」こころが買ったばかりの袋を嬉しそうに抱えている。
「私は予定外の出費だったわ」サオリンがため息をつく。
「夏休みなんだからいいじゃん」
「奈央は楽しそうね」
「もちろん!」
そして、水曜日はいよいよプール!当日は朝から暑かった。
「暑い!」
「まだ駅から歩いただけよ」
「それでも暑い!」奈央が文句を言いながら歩いている。
プールに着いて着替えると、みんなでプールサイドに出た。
「わぁ……」こころが嬉しそうに声を上げる。
「こころ、そんなに楽しみだった?」
「はい! プールってあまり来たことないので!」
「じゃあ、今日は思いっきり遊ぼう」やよいがそう言って、さっそく水の中へ入っていく。
「やよっち、ココロンちょっと待ってよ!」
「早く早く!」
「奈央、走らないで」沙織が注意する。
「は~い」そう言いながら、奈央は全然聞いていない。
「アタシも行こ」
「まって、私も行くわよ!」
結局、五人で水に入って泳いだり、浮かんだり、流れるプールで流されたり。
普段は学校で毎日顔を合わせているのに、こうして制服でもジャージでもない姿で一緒にいると、なんだか少し不思議な感じがする。
「アツミン、反対のプールサイドまで競争しようよ!」
「いいよ」
「負けたらジュースおごりね!」
「卓球部とはいえ、運動部だよアタシは」
「細かいことはいいの!」
「はいはい」
そんな感じで、気がつけば昼を過ぎていた。
プールサイドパラソルを立てて休憩していると、奈央が空を見上げた。
「そういえばさ」
「ん?」
「花火大会って、いつだっけ?」
「花火大会?」
「ほら、駅のポスターにあったじゃん」奈央がスマホを取り出す。
「あ、本当だ」
「結構大きいみたいね」やよっちが覗き込む。
「みんなで行こうよ!」
「いいわね。この日なら塾も早めに終わるし」沙織も頷く。
「私も行きたいです!」こころも賛成する。
「アタシは……」言いかけて、少しだけ考える。
「ごめん。その日は用事があるんだ」
「え?」奈央がアタシを見る。
「用事って何?」
「ちょっとね」
「そっか……残念」奈央は少しだけ寂しそうな顔をした。
「でも四人で楽しんできなよ」
「うん」
「じゃあ決まりね!」
四人が花火大会の話で盛り上がっている。私はその会話を聞きながらスマホを見た。
石田からメッセージが来ていた。
『こっちは、今日も部活』
たったそれだけのメッセージ。でも、なんとなく笑ってしまった。
花火の日は卓球部もバスケ部も部活の日だ。
「……アタシも、ちょっと楽しみかも」小さく呟いた。
はい、普通な男子高校生内田雄太。でも彼女がいます。
夏休みが始まってから、育美とは何度も会っている。今日は図書館で一緒に勉強をして、その帰りに近くの喫茶店で少し休んだ。
「今日はこのくらいでいいかな」育美が参考書に付箋をつけている。
「うん。結構やったね」
「じゃあ、そろそろ帰ろうっか、送ってくれる?」
「もちろんだよ、育美」
いつものように育美に言われるまま、一緒に駅まで歩く。
「ねえ、雄太」(最近名前で呼んでくれる)
「ん?」
「夏休み、どこか行きたいところある?」
「カラオケとボーリングはみんなと行くんだよね」
「それとは別に」
「うーん……」考えていると、育美が笑った。
「考えるの遅い」
「いや、急に言われても」
「じゃあ、私が考える」
「それなら任せるよ」
「うん。任せて」
こういうところは、もうすっかり僕たちのスタイルになっている気がする。
育美が行きたいところを言って、僕がついていく。僕はそれで結構楽しい。育美の住んでいるマンションの前で別れ、一人になったところでスマホを見る。五人とのグループには、花火大会の話が入っていた。
『ウッチーはくる?アツミンは用事があるみたい』奈央からのメッセージだった。
種村さんは何の用事なんだろうと思いつつ「僕も予定があるので行けないです」と返しておいた。だって、ねぇ。わかって欲しいなぁ。そう思って、そのままスマホをしまった。
花火大会がある日の夕方。今日も部活で一日中、ボール追いかけて頑張った。
着替え終えて部室から出ると、種村が体育館の出口に立っていた。
「石田」
「よう、おつかれ。今日も暑かったな」
「石田、帰ろ」
「おう、もちろん」
俺たちはいつものように並んで歩いた。そして、いつものようにコンビニに寄った。
「今日は何にする?」
「チョコ」
「俺はバニラ」アイスを買って、店の外で食べ始める。
「やっぱ部活の後はこれだな」
「だよねぇ」種村はそう言って笑った。
しばらく二人でアイスを食べていると、種村が急に口を開いた。
「石田」
「ん?」
「この前の返事なんだけど」
「……あ……おう」俺はスプーンを止めた。
「決めたのか?」
「うん」種村は少しだけ黙ってから、俺を見る。
「アタシ、石田のことが恋愛的に好きなのかは、まだよく分かんない」
「……そっか」
「でもさ」種村が少し笑った。
「石田と一緒にいるの、好きなんだよね」
「うん」
「一緒に帰るのも楽しいし、アイス食べるのも楽しい」
「うん」
「だから……」種村が少しだけ照れたように視線を逸らした。
「付き合ってみたい」
「……マジ?」
「マジ……です」
「そっか」
嬉しかった。でも、なんだか実感が湧かない。
「じゃあ……よろしく」そう言って、種村が右手を差し出した。
「……握手?」
「だって、こういうの分かんないし」
「俺も分かんないや」
「じゃあ、ちょうどいいじゃん」
「よろしく」俺は種村の手を握った。
「うん。よろしく」
ほんの一瞬の握手。でも、今までの俺たちとは少しだけ違う。
帰り道も、いつもと同じように歩いた。ただ、隣にいる種村のことが、昨日までとは少し違って見えた。
「なあ、種村」
「何?」
「これからも部活帰りにコンビニに寄っていくよな?」
「もちろん」
「じゃあ、付き合ってもあんまり変わらないな」
「そうかも」種村が笑った。
「でも、ちょっとだけ違うんじゃない?」
「どこが?」
「それは……」種村は少し考えてから、
「そのうち分かるんじゃない?」そう言って、また笑った。
夕暮れ時。今日は花火大会の日。
駅前の人混みを、僕は育美とそして女子四人と歩いていた。
はい、育美と二人で歩いていたらいきなり悠木さんに手を引っ張られました。
「なに、デートならデートって言いなさいよね」
東田も早田さんも小森さんもいた。
「あ、いや、その……」
「あ、みんな、こんばんは!」育美はみんなに挨拶してる。
「なるほど、予定というのはデートだったのね」と早田さんがぶっこんでくる。
「じゃあ、しばらくご一緒させていただきます」と答えておく。
「内田君、なんでそんなご丁寧なんですか?」小森さんもニヤニヤと突っ込んでくる。
「長谷部さん大丈夫だよ、迷子にならないようにウッチーを見張ってるから」
「僕、小学生じゃないんだけど」
「でも内田君、ぼーっとしてると長谷部さんに置いていかれそう」
「ふふ、それは否定できないかな」育美さんそこに突っ込みますか?
そんな会話をしながら、出店の並ぶ通りを歩いている。
「あ、りんご飴!食べたいです!」小森さんが足を止める。
「買えば?自分のお小遣いで」悠木さんは言い方きつくないか?
「いいんですか?じゃあ買ってきます」小森さんは気にしてないか……
少し先で東田が立ち止まった。
「そういえば……」
「どうしたの?」悠木さんが聞く。
「アツミンがいないとちょっと寂しいね」
「そういえば種村さん、用事があるって言ってたわね」早田が思い出したように言った。
「何の用事だったんだろ」
「さあ?」奈央はそう答えた。
そんなことより僕の一番の課題は、いかにしてこの四人をまいて二人きりになるかだけど……
ミッションインポッシブルかもしれない。
コンビニでの出来事の後、花火を見に行くことになったアタシたちは出店の通りから少し離れた公園で花火が始まるまでの時間、ベンチに二人で並んで座っていた。
「……なんか、変な感じ」種村が言った。
「何が?」
「こうやって二人で花火見に来てるの」
「俺も」
「でも、悪くないよね」
「おう」
種村は空を見上げた。
「ねえ、石田」
「ん?」
「これが二人の最初の思い出になるね」
「おう、そうだな」
二人の間には、まだ少しだけ照れくさい距離があった。でも、それはこれから二人でなくしていけばいい。
やがて、夜空に最初の花火が上がった。
「わぁ……」種村が小さく声を上げる。
俺は隣にいる種村を見た。種村もこっちを見た。
そして、二人で笑った。