いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話   作:シン_クワちゃん

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第九話「夏の終わりは二人の始まり」

夏休みも気がつけば後半、アタシと石田は図書館で宿題を頑張っている。

「宿題、半分くらいは終わった?」

「終わるわけないだろ。種村は?」

「聞く?」

「聞かない方がいい気がする」

「正解」

二人で顔を見合わせて笑う。

 

付き合い始めてから、何かが大きく変わったわけじゃない。

部活が重なった日は、一緒に帰って途中でコンビニに寄る。暇な日(いやもうそんな余裕はないけど)は図書館で宿題をやる。そんなことの繰り返しだ。

ただ、今までなら「たまたま一緒にいる」だったのが、今は「一緒にいたいから一緒にいる」になった。少しの変化だけど気持ちは大きく違う気がする。

 

「種村、ここ分かる?」石田が問題集をこちらに寄せる。

「この問題」

「それ、昨日アタシがやったところ」

「じゃあ教えて」

「しょうがないなぁ」アタシは問題集を覗き込んだ。

「ここは、この公式使えばいいじゃん」

「なるほど、分かった」

「じゃあ自分でやってみ」

「おう、任せろ」石田が問題を解き始めた。

 

アタシも自分の宿題に戻る。静かな図書館の中で、二人とも黙って問題集に向かう。

こういう時間も悪くない。ふと顔を上げると、石田が真剣な顔で問題を解いていた。

「……ふふ」

「何?」

「いや、なんでもない」

「なんだよ」

「別に」また問題集に目を戻す。

付き合うって、もっと特別なことをするものだと思っていた。でも、今はこうしているだけで楽しい。それなら、それでいいんだと思う。

 

帰り道、グループのメッセージに奈央から着信が入った。

(奈央)みんな、宿題どこまで終わった?私はあと少し!

(やよい)私は終わったよ~

(沙織)私は明日には終わる予定よ

(こころ)私は自由研究がまだです!

(敦美)アタシもまだまだ

(奈央)アツミン、部活ばっかりしてるからだよ

(敦美)奈央だって遊んでるじゃん

(奈央)私は計画的なの!

(やよい)ほんとかなぁ

(奈央)ほんとだって!

スマホを見ながら笑っていると、石田が覗き込んできた。

「何?」

「みんな宿題やってるって」

「種村もやってるじゃん」

「今日は頑張っただけ」

「俺も」

「じゃあ仲間だね」アタシはスマホをバッグに入れた。

 

 

「雄太、今日はどこ行こうか?」育美がスマホを見ながら聞いてきた。

「見て、このちょっとオシャレっぽいカフェ行ってみたい」

「そんなに遠くないし、いいよ」

「じゃあ行こう」

「はいはい」

 

夏休みに入ってから、育美とは何度も会っている。図書館で勉強したり、映画を見たり、買い物に付き合ったり。基本的にどこへ行くかを決めるのは育美だ。

「雄太、こっち」

「はい」

「ちゃんとついてきて」

「迷子じゃないんだから」

「でも、雄太ってぼーっとしてて気がついたらいなくなってそう」

「ひどいな」

そんなやり取りをしながら歩く。育美が楽しそうにしていると、こっちまで楽しくなる。最近は、それが結構好きになってきた。

マンションの前で別れるときも、「じゃあ、またね。雄太」「うん。またね、育美」って、自然に名前で呼ぶようになった。最初の頃は少し恥ずかしかったけど、今はもう慣れた。むしろ、そう呼ばれるのが嬉しい。

 

夏休みの終わりが近づいた頃、みんなでカラオケとボーリングに行くことになった。

(内田)男子一人って、やっぱりきついから石田を誘ってもいいかな?

(やよい)いいんじゃない?

(こころ)私も賛成です!

(沙織)石田君なら気を遣わなくていいわよね

(内田)じゃあ、石田を誘ってみるよ

 

 

アタシと石田のことは、まだみんなにはというか奈央にはまだ言えない。

グループのやり取りを見て、石田に速攻でメッセージした。

(敦美)内田っちからボーリングとカラオケ誘われたでしょ?

(石田)おう、何で知ってるんだ?

(敦美)だって、グループで内田っちが石田を誘うって

(石田)いつものグループで集まる話か。なるほど、俺も行くよ

(敦美)それでね、付き合い始めたことはみんなには秘密にしてほしいの

(石田)ん~分かった

あっさり了承してくれた。たぶん、恥ずかしいのかな、くらいに思っているんだろう。実際、ちょっと恥ずかしい。でも、それだけじゃないんだ。

 

当日。まずはカラオケから始まった。部屋に入ると早速奈央がマイクを取った。

「最初、私!」

「はいはい」

「アツミン、何歌う?」

「アタシ? 歌えそうなの適当に入れるよ」

 

奈央が楽しそうに歌い始める。やよっちが手拍子をして、こころはタブレットを見ながら次に歌う曲を探している。サオリンは飲み物を飲みながら、時々奈央の歌に拍手している。

内田っちは育美ちゃん(アタシはそう呼ぶことにした)の隣に座っている。

「雄太、これ歌おうよ」

「うん」

「いいよ」

「じゃあ入れるね」

「はいよ」

 

なんか、いつもの二人だ。育美がやりたいことを言って、内田っちがそれについていく。

でもそれで内田っちは楽しそうだ。その様子を見ていると、なんとなく微笑ましい。

「種村」

「ん?」

隣に座っていた石田が、小さな声で言った。

「この前言ってた曲、入れる?好きなんだろ?」

「……まあね」

「じゃあ入れよう」石田がリモコンを操作する。

「ねぇちょっと」

「何?」

「そういうの、あんまり言わないでよ」

「何が?」

「いや……」

「なんか、恥ずかしいから」アタシは小声で言う。そのやり取りを、沙織が見ていた。

「……あら?」

「何?」

「いえ。種村さんと石田君って、そんなに仲が良かったかしらと思って」

「え?……いやいや普通だよ、普通!」アタシは両手をブンブンと振る。

「そう?」サオリンは少し考えるように首を傾げた。

「まあ、いいけれど」

向こうでは奈央が歌い終わった。

「じゃあ次、ウッチーとイクミン!」

「はいはーい。はい雄太もマイク」

曲が始まって育美ちゃんが歌い始める。

「なにこれ、超ウマ!」

「この後に歌うのプレッシャーすぎます」こころがビビってる。

あ、でも内田っちが歌い出したら安心したみたい。

 

カラオケの後は、ボーリング。バスケットボールよりは重いけど球技ならまぁ任せてくれ。

「私、結構得意なんだよ」東田がボールを持ってレーンへ向かう。

「この前もそう言ってガーター出してたじゃん」

「やよっち、それ言わないで!」

「ふふっ」

「サオリンまで笑わない!」

東田が投げる。ボールは真ん中を外れて、端のピンを一本だけ倒した。

「……まあまあかな」

「どこが?」

「うるさい!」

みんなが笑う。俺も笑った。

 

「次、種村だぞ」

「分かってる」

「一番ピンのちょっと右を狙った方がいい」

「もう、余計なこと言わないでよ」種村がボールを持ってレーンへ向かう。

「アツミン、頑張れ!」

「はいはい」

投げる。今度はかなりいいコースを球が進む。ストライクだ!

「おお!」

「やったじゃん!」

「でしょ?」種村が戻ってくる。

「石田、さっきのアドバイスのおかげ」

「だろ?」

「調子に乗るな」二人で笑う。

「……やっぱり」早田さんがつぶやく。

「何?」悠木が聞く。

「種村さんと石田君って、息が合ってると思わない?」

「え、そう?」悠木は二人を交互に見てる。

「石田君は種村さんが気になるの?」早田さんが突っ込んでくる。

「いやいや、違う違う」俺は慌てて否定する。

「でも、さっきから種村さんのことをよく見ている気がするわ」

「見てないって」

「そうかしら?」

「ほんとだって」

「……ふむ」小森さんが、唸る。

「小森、何?」

「いえ」

「何か考えてるでしょ」悠木が突っ込んでくる。

「いえいえ、特には何も」

「こころはいつも一人で唸って怪しいから」悠木が笑いながら言った。

みんなで笑った。俺も笑っていた。そんな楽しい時間は、あっという間に終わった。

 

駅でみんなと別れる。

「じゃあ、またね!」

「またねー」

「宿題、ちゃんとやってね」

「それ、奈央が言う?」

「私はやってるの!」

「はいはい」

 

みんながそれぞれ帰っていく。俺は種村と駅の反対方向へ向かった。

「今日は楽しかったな」

「うん」

「じゃあ、また明日も図書館で宿題な」

「うん。またね」

二人が並んで歩いていく。

 

 

東田は改札を抜けてから振り向いて二人の背中を見ていた。

「……」

さっきから、なんとなく気になっていた。

カラオケでもボーリングでも、石田君はアツミンのことをよく見ていた。アツミンも、石田君のことをよく見ていた。今までの二人と何か違う気がする。でも、何が違うのかは分からない。

 

「……石田君って」小さく呟く。

「アツミンのこと、好きなのかな」

もちろん、聞くことなんてできない。アツミンにも石田君にも、他の誰にも。

ただ、その疑問だけが頭の中に残った。

 

夏休みは、もうすぐ終わる。

私はその答えを知らないまま、新学期を迎えることになった。

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