「ただいま! お姉ちゃん!」
「おかえり。手洗って、ご飯にするよ」
「はぁーい」
扉が開くと、ユリアが元気な声を出して帰宅を知らせる。
私達が地球に帰還してから、既に半年が過ぎようとしていた。
人々が戻ってきたことで、いつしか自治や戸籍の再登録、制度の構築、そして学校も始まった。
孤児院育ちで戸籍の所在がわからない私とユリア、そしてコールドスリーブで死んだことになっていたルーシェは新しい戸籍をもらって、そして。
私とルーシェは、同じ戸籍になった。
更に私達は、制度上は養子としてユリアを迎え入れて、これで名実ともに私達3人は家族になった。
娘になってくれたからには、いつまでもユリアちゃんだと親としていけないと思って、呼び捨てにしてみた。でもユリアは、お母さんとは呼びにくそうで、私達もまだ違うかもねって言って。
だから、家族になっても呼び方以外は変わらない。
ただ、ユリアは段々と慣れてきたのかな。
「こらユリア! 脱いだ服そのままにしないで!」
「あとでやるもーん」
「後でやるんだよね、本当に?」
「やるってば!」
反抗期……始まっちゃった?
でもなんだかんだ、脱ぎ捨てた服は着替えた後で片付けてくれるし、料理も手伝ってくれる。いい子なのに変わりはない。
私達の家は変わらずシールベイだ。
地球にやってきた人達は多いけれど、まだ地球について分かっていないことも多い。もしものことがあった場合に備えて、まだ宇宙船を住まいにして、脱出できるようにしている。
シールベイはここに並んでいる宇宙船の中では小型だけど、3人で住んでいるから快適な一軒家みたいだ。
「ふぃー、ただいまぁ」
「ルーシェ、遅かったね」
「あ、ルーシェお姉ちゃんおかえ……うわぁどろんこだ……」
「そうなんだよぉ〜。今日の調査は本当大変でさぁ」
「ルーシェお姉ちゃん、まずは着替えてお風呂に入って」
「厳しいなぁユリアちゃん」
「おうち汚くなっちゃうから!」
「ユリアはとりあえず、さっきの服片付けようね」
「ぅぐ……今やるところだったのにぃ……」
これが、家族として正しい会話なのかは分からない。
でも、私の記憶に残る家族は、少なくともこうだった。
何気ない会話をして、何気ない事で笑って。そんな暖かい居場所が、家族なんだって。
「服片付けたー!」
「じゃあ座って、ご飯にしよっか」
「ルーシェお姉ちゃん待たなくていいの?」
「大丈夫だよ。ルーシェは食べるの早いから」
「……確かに! 確かに?」
首を傾げながら席に座るユリア。
その向かいに座って、私も手を合わせる。
「「いただきます」」
日本人の家系だった人に教えてもらった。日本では、昔こうやっていたって。
「ねぇねぇ聞いてよ」
「ん?」
ユリアは学校に通い始めた。コロニーでは文字の読み書きしか教わってなかったみたいだったから、毎日が新鮮らしい。
「明日ね、お友達と遊ぼうって約束したんだけどね」
「いいね。何するの?」
「んと……お友達が、お姉ちゃん達に会いたいって」
「私達に?」
「えー、いいじゃん。あたしら人気者?」
お風呂から上がったルーシェが、下着姿で髪を拭きながら会話に加わる。
「服着て、ルーシェ」
「はいはい」
「あの、えっと。ユウがお姉ちゃん達の話したの。前に、ミハルお姉ちゃん参観日とかにも来てくれたでしょ? そしたら、お友達がね、ミハルお姉ちゃんと話したいって」
「ちぇー、またミハルだけモテモテじゃん。魔性の女なの?」
「ルーシェ」
「服着たしご飯食べていい?」
「いいよ」
「ルーシェお姉ちゃん、こっちこっち」
ルーシェも席について、すごい勢いで食べ始める。
毎回だけど、味わかってるんでしょうねこの子。
「ねぇ、おうち呼んだらダメかな? お友達」
「もちろんいいよ。ユリアのお友達だもんね、何かしないと」
「明日はあたしもいるよ! 調査は明日と明後日お休みだから」
「ならルーシェを実験台に何か新しいお菓子でも作ってみようかな……」
「実験台って……」
「ユウもたまに、初めて作る時ルーシェお姉ちゃんに食べてもらってるよ」
「2人の中でのあたしの扱いは⁉︎」
「「食べ物お試し係」」
「なんでそれでかぶるの……? なんか、ユリアちゃんがミハルに似てきてあたしは心配だよ」
「ちょっと、それどういう意味!」
「あたしの肩身が狭くなってくる……」
「ルーシェお姉ちゃんみたいになっちゃうと、ミハルお姉ちゃん大変だもん」
「ユリアちゃんには敵わないよ……」
ルーシェが髪を撫でると、ユリアは得意な顔で笑う。
本当に可愛い……この家族。
私達はきっと、この星で、この場所で、この3人で暮らして行くんだと思う。
この先どうなるかなんてわからないけど、私は今の幸せを守りたいと思ってる。
長い旅でようやく見つけたこの居場所で、私達は。
⸺お父さん、お母さん。私は、私達は、今、とても幸せです。
これにて、星の放浪者、完結です!
ここまで呼んでくださった方々、ありがとうございました。
きっとこの後も3人の話は続いていきます。
この後は書かないつもりですが、この3人は書いていて好きになってきましたw